リトアニアはスラブ系?バルト系?混同しやすい民族の違いを徹底解説

「リトアニアってスラブ系の国なの?」

東ヨーロッパの国々について調べていると、こんな疑問を持つ方も多いはず。ロシアやポーランドといったスラブ系の国々に囲まれているリトアニア。地理的にも似ているし、同じグループかと思いますよね。

でも実は、答えは「ノー」なんです。

リトアニアはスラブ系ではなく、「バルト系」という別の民族グループに属しています。今回は、この混同されやすいバルト系とスラブ系の違いを、分かりやすく解説していきます。

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リトアニアはバルト系民族

結論から言うと、リトアニア人はバルト系民族であり、スラブ系ではありません。

バルト系とは何か

バルト系民族は、バルト海東岸に住む人々のグループです。

現在、バルト系民族が主体となっている国は2つだけ。

  • リトアニア
  • ラトビア

この2カ国だけが、純粋なバルト系民族の国家なんです。

バルト三国の民族構成

よく「バルト三国」という言葉を聞きますよね。リトアニア、ラトビア、エストニアの3カ国を指す言葉です。

でも実は、この3カ国は民族的には全く異なります。

バルト三国の内訳

  • リトアニア:バルト系民族
  • ラトビア:バルト系民族
  • エストニア:ウラル語族(フィンランド人に近い)

エストニアは「バルト三国」と呼ばれていますが、これは地理的な分類。民族的にはバルト系ではなく、フィンランド人やハンガリー人と同じウラル語族なんです。

バルト語とスラブ語の関係

「でも、言葉は似てるんじゃないの?」と思う方もいるかもしれません。

確かに、バルト語派とスラブ語派には深い関係があります。

共通の祖先を持つ可能性

言語学者の多くは、バルト語派とスラブ語派が、古代に共通の祖先言語「バルト・スラブ祖語」から分岐したと考えています。

つまり、遠い昔には同じ言語グループだったかもしれないということ。

でも、それは数千年も前の話。現在のバルト語とスラブ語は、はっきりと別の言語グループなんです。

リトアニア語の特徴

リトアニア語には、とても興味深い特徴があります。

現存するインド・ヨーロッパ語の中で、最も古い特徴を保持している言語だと言われているんです。

どういうことかというと、リトアニア語は何千年も前の古い言語の特徴を、今でも残しているということ。

例えば、サンスクリット語(古代インドの言葉)とリトアニア語を比較すると、驚くほど似ている部分があるんですよ。

スラブ語との類似点

リトアニア語(バルト語)とスラブ語には、確かに似ている部分もあります。

共通する特徴の例

  • 文法構造の一部
  • 100以上の共通語彙
  • 音の変化パターン
  • アクセントの位置

ただし、これは「同じグループ」というより「親戚関係」のようなもの。英語とドイツ語が似ているようなイメージですね。

スラブ系民族とは何が違うのか

バルト系とスラブ系、何が違うのでしょうか。

民族の分布

スラブ系民族の国々

  • 東スラブ:ロシア、ウクライナ、ベラルーシ
  • 西スラブ:ポーランド、チェコ、スロバキア
  • 南スラブ:セルビア、クロアチア、ブルガリアなど

スラブ系は約2億人もの人口を持つ、ヨーロッパ最大級の民族グループ。

一方、バルト系はリトアニアとラトビアだけで、人口は約600万人程度。圧倒的に少数なんです。

言語の違い

リトアニア語とスラブ語は、お互いに通じません。

例えば、リトアニア人がポーランド語やロシア語を聞いても、理解できないんです。

これは、日本語と韓国語が文法的に似ていても通じないのと同じようなもの。別の言語グループなんですね。

宗教の違い

宗教面でも違いがあります。

リトアニア:主にカトリック(ポーランドの影響)
ラトビア:プロテスタントが多い(ドイツの影響)

これに対して…

東スラブ圏:正教会が主流(ロシア、ウクライナ、ベラルーシ)
西スラブ圏:カトリックが主流(ポーランド、チェコ)

リトアニアはカトリックなので、その点ではポーランドなど西スラブ圏と共通しています。

なぜ混同されやすいのか

「じゃあ、なんでリトアニアがスラブ系だと思われるの?」

理由はいくつかあります。

地理的な近さ

リトアニアは、スラブ系の国々に完全に囲まれています。

  • 南:ポーランド(西スラブ)
  • 東:ベラルーシ(東スラブ)
  • 南西:ロシアのカリーニングラード州(東スラブ)

この地理的環境から、「周りがスラブ系だからリトアニアもそうだろう」と思われがちなんです。

歴史的な関係

リトアニアは、歴史的にスラブ系の国々と深い関わりを持ってきました。

14世紀〜18世紀:リトアニア・ポーランド連合王国

この時代、リトアニアはポーランドと連合国家を形成。政治的・文化的に強く結びついていました。

また、リトアニア大公国の時代には、現在のベラルーシやウクライナの一部も支配下に置いていました。この影響で、リトアニア宮廷では東スラブ系の言語が公用語として使われていた時期もあるんです。

ソ連時代の影響

1940年から1990年まで、リトアニアはソ連の一部でした。

この50年間、ロシア語が強制され、ロシア化政策が進められました。この時代の影響で、リトアニア=スラブ系というイメージを持つ人もいるかもしれません。

でも重要なのは、リトアニア人はこの間も、自分たちのアイデンティティを守り続けたということ。現在でも人口の約85%がリトアニア系で、リトアニア語を母語としています。

少数民族という現実

バルト系民族は、ヨーロッパの中では非常に少数派。

スラブ系が2億人なのに対し、バルト系は約600万人。その差は約30倍以上です。

数が少ないため、「バルト系」という概念そのものが知られていない。その結果、「東ヨーロッパ=スラブ系」という単純な理解で、リトアニアもスラブ系だと思われてしまうんです。

バルト系民族の歴史

バルト系民族は、どんな歴史を歩んできたのでしょうか。

古代のバルト族

紀元前2000年頃、バルト族はバルト海東岸から、モスクワやキエフあたりまで広がる広大な地域に住んでいました。

つまり、今よりもずっと広い範囲がバルト族の居住地だったんです。

スラブ族の北上

4世紀以降、ゲルマン民族の大移動の影響で、スラブ族が北へ移動してきました。

その結果、バルト族は徐々に西へ押しやられ、居住地域が縮小。現在のリトアニアとラトビアだけが、バルト系の土地として残りました。

ドイツ騎士団との戦い

13世紀、リトアニアは西からドイツ騎士団の侵攻を受けます。

このドイツ騎士団との戦いの中で、リトアニアは団結して大国へと成長。14世紀には、バルト海から黒海まで支配する巨大な国家「リトアニア大公国」となりました。

ヨーロッパ最後の異教国

実は、リトアニアはヨーロッパで最後までキリスト教化されなかった国なんです。

周辺のポーランドやロシアが10世紀頃にキリスト教を受け入れたのに対し、リトアニアは14世紀末(1387年)まで異教を守り続けました。

この独自性も、バルト系民族の特徴の一つです。

まとめ:リトアニアはバルト系の国

最後にもう一度、重要なポイントをまとめておきましょう。

リトアニアはスラブ系ではなく、バルト系民族の国です。

覚えておきたい5つのポイント

  1. 民族:リトアニアはバルト系、ロシアやポーランドはスラブ系
  2. 言語:リトアニア語はバルト語派、スラブ語派とは別グループ
  3. バルト三国:リトアニアとラトビアがバルト系、エストニアはウラル語族
  4. 歴史:スラブ系国家と深い関係があるが、民族的には別物
  5. 現代:人口の85%がリトアニア系で、独自のアイデンティティを保持

なぜ重要なのか

「民族の違いなんて、そんなに重要?」と思う方もいるかもしれません。

でも、リトアニア人にとっては、これはとても大切なこと。

長い歴史の中で、ドイツ、ポーランド、ロシアなど、様々な大国に支配されながらも、リトアニア人は自分たちの言語と文化を守り続けてきました。

「バルト系民族である」というアイデンティティは、彼らの誇りそのものなんです。

もっと知りたい方へ

リトアニアは、バルト系という独自の民族性を持ちながら、ヨーロッパ史の重要な舞台でもありました。

杉原千畝が「命のビザ」を発給したのも、このリトアニア。
第二次世界大戦中、多くのユダヤ人の命を救った場所です。

バスケットボール大国としても知られ、人口わずか280万人ながら、世界レベルの強豪国。

小さくても、独自の文化と誇りを持つ国。それがリトアニアなんです。

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