もしもあなたが夕方の人通りの少ない道で、マスクをした美しい女性に「私、きれい?」と声をかけられたら…どう答えますか?
それはもしかすると、昭和の日本を震撼させた最恐の都市伝説「口裂け女(くちさけおんな)」かもしれません。
口裂け女は1978年から1979年にかけて全国的に広まった都市伝説で、パトカーの出動や集団下校が行われるほどの社会現象にまで発展しました。
赤いコートを着た美しい女性が、マスクを外すと耳まで口が裂けているという恐ろしい姿で、多くの子どもたちを恐怖に陥れたんです。
この記事では、昭和最大の都市伝説「口裂け女」について詳しくご紹介していきます。
概要

口裂け女(くちさけおんな)は、1978年から1979年にかけて日本全国を恐怖に陥れた都市伝説です。
この都市伝説は単なる怖い話にとどまらず、実際の社会問題にまで発展しました。福島県郡山市や神奈川県平塚市ではパトカーが出動する騒ぎになり、北海道釧路市や埼玉県新座市では小学校で集団下校が実施されるなど、全国規模のパニック状態になったんです。
口裂け女の基本情報
- 流行時期: 1978年12月〜1979年夏
- 発祥地: 岐阜県とされる
- 初報道: 1979年1月26日の岐阜日日新聞
- 標的: 主に小学生や中学生
- 特徴: 「私、きれい?」という質問が決まり文句
社会現象としての規模
口裂け女の噂は、現代のSNSがない時代に子どもたちの口コミだけで全国に広まりました:
拡散の経緯
- 1978年12月: 岐阜県で最初の噂が発生
- 1979年1月: 新聞が初めて記事化
- 1979年春〜夏: 全国各地で目撃談が続出
- 1979年8月: 夏休み入りとともに急速に沈静化
影響の規模
- 北海道から九州まで全国で目撃談
- 学校での集団下校の実施
- パトカー出動騒ぎ
- マスコミでの大々的な報道
昭和の代表的都市伝説
口裂け女は、昭和後期を代表する都市伝説として現在でも語り継がれています:
時代的背景
- 高度経済成長期の終わり
- 都市化の進行による地域共同体の変化
- 核家族化の進展
- 子どもの安全への不安の高まり
口裂け女がどんな存在かが分かったところで、次はその印象的な見た目について詳しく見ていきましょう。
姿・見た目

口裂け女の最大の特徴は、美しさと恐ろしさの極端な対比です。
基本的な外見
- 身長: 背が高くスタイルが良い
- 顔: 女優のような美人(マスク着用時)
- 服装: 赤いコートまたは赤いワンピース
- マスク: 顔の下半分を隠す大きな白いマスク
- 髪: 長い黒髪
服装の詳細
口裂け女の服装は、地域によって微妙な違いがありますが、「赤」が共通のキーワードです:
典型的なスタイル
- 赤いコート: 最も多く報告される服装
- 赤いベレー帽: 頭に被っている場合も
- 赤いハイヒール: 足音が特徴的
- 白いマスク: 顔の下半分を完全に隠すサイズ
地域別のバリエーション
- 東京都王子: 白いコートと白いブーツ
- 東京都八王子・国分寺: 着物姿でサングラス
- 東京都江戸川区: 赤い傘をさして空を飛ぶ
- 岡山県岡山市: 片手にツゲの櫛を持っている
マスクを外した恐ろしい姿
口裂け女の最も恐ろしい瞬間は、マスクを外した時です:
裂けた口の特徴
- 耳まで大きく裂けた口
- 縫い目のような痕跡がある場合も
- 血がにじんでいることもある
- 不自然に大きく開く口
表情の変化
- マスク着用時:美しく穏やかな表情
- マスク除去後:邪悪で不気味な笑み
- 眼つきも急激に変化する
- 全体の雰囲気が一変する
武器として持つ刃物
口裂け女は様々な刃物を持っているとされています:
都市部でよく目撃される武器
- ハサミ: 最も多く報告される
- メス: 医療用の鋭利な刃物
- 鎌: 隠し持ちやすいサイズ
地方でよく目撃される武器
- 出刃包丁: 殺傷力の高い大型刃物
- 鉈(なた): 木を切る道具
- 斧: より大型で危険な武器
身体的特徴
口裂け女には、人間を超えた能力があるとされています:
異常な身体能力
- 高速走行: 100メートルを6秒で走る
- 空中浮遊: 地面から浮いて移動する
- 壁登り: 建物の壁を駆け上がる
口裂け女の衝撃的な見た目が分かったところで、次はその行動パターンや特徴について見ていきます。
特徴

口裂け女には、他の都市伝説にはない独特な行動パターンがあります。
決まり文句「私、きれい?」
口裂け女の最も有名な特徴は、その質問攻撃です:
基本的な流れ
- 初回の質問: 「私、きれい?」
- マスク除去: 「これでも…きれい?」
- 相手の反応: 答え方によって運命が決まる
- 結果: 逃走成功か、攻撃を受けるか
質問の意図
- 相手を心理的に追い詰める
- 答えに困らせて判断力を奪う
- どの答えを選んでも危険な状況を作る
答え方による結末の違い
口裂け女への答え方によって、その後の展開が変わります:
「きれい」と答えた場合
- マスクを外して裂けた口を見せる
- 「これでも私、きれい?」と再質問
- さらに「きれい」と答えると刃物で攻撃される
「きれいじゃない」と答えた場合
- その場で激怒して攻撃される
- 逃げる暇もなく切りつけられる
- 最も危険な答え方
「ふつう」「まあまあ」と答えた場合
- 口裂け女が迷っている隙に逃げられる
- 最も安全とされる答え方
- 曖昧な答えが効果的
様々な撃退法
口裂け女から逃れるための方法が、全国各地で語り継がれています:
アイテムによる撃退法
最も有名なのが以下の2つです:
ポマード
- 「ポマード」と3回唱えると逃げられる
- 整形手術の執刀医がポマードをつけていた記憶
- 手のひらに「ポマード」と書いて見せる方法も
べっこう飴
- 口裂け女の大好物とされる
- 飴を与えている間に逃げる
- 関東では逆に嫌いなものとして投げつける
その他のアイテム
- 豆腐: 見せると逃げ出す
- ニンニク: 匂いを嫌がる
- 百円玉: スペースインベーダー好きの時代背景
言葉による撃退法
- 「犬が来た」: 犬を恐れる設定
- 「ハゲ」: なぜか効果があるとされる
- 「リキッド」: 二口女(派生型)に有効
行動による撃退法
- 2階以上に逃げる: 階段を上れない設定
- 3軒目の家に逃げ込む: 地域限定の方法
- レコード店や化粧品店: 特定の店舗に入ると追ってこない
出現パターンと標的
口裂け女には、明確な行動パターンがあります:
出現時間
- 夕方から夜にかけて: 最も多い目撃時間
- 薄暗くなった頃が危険
- 深夜の目撃は比較的少ない
出現場所
- 通学路: 子どもがよく通る道
- 児童公園: 子どもが集まる場所
- 空き地: 人通りの少ない場所
- 住宅街の路地: 逃げ場の少ない狭い道
標的となる人
- 小学生: 最も狙われやすい
- 中学生: 特に女子生徒
- 若い女性: 大人でも被害に遭う
- 一人でいる人: 集団では現れにくい
現代への影響
口裂け女は1979年夏に一度沈静化しましたが、その後も何度か復活しています:
1990年代の復活
- 整形手術ブームと関連付けられる
- 医療過誤による被害者説が登場
- インターネットでの創作話が増加
現代での位置づけ
- 日本の都市伝説の代表格
- 漫画・映画・小説の題材として活用
- 海外(韓国・中国)でも知られる存在
これらの特徴を理解したところで、次は口裂け女の発祥と広まりの歴史について見ていきましょう。
伝承

口裂け女には、その発祥から全国拡散まで、興味深い歴史があります。
岐阜県発祥説
最も有力とされるのが岐阜県発祥説です:
1978年12月の最初期 岐阜県で最初の噂が発生しました:
- 岐阜県本巣郡真正町: 農家の老婆がトイレで口裂け女を目撃
- 子どもたちの間で拡散: 小学生を中心に話が広まる
- 地域メディアの注目: 地元新聞が取り上げ始める
1979年1月26日 岐阜日日新聞が初めて記事化し、全国的な注目を集めました。
全国への拡散過程
段階的な拡散
口裂け女の噂は、以下のような順序で全国に広まりました:
- 岐阜県美濃地方 → 中京地区
- 東海地方 → 近畿地方
- 関東地方 → 全国各地
- 九州地方 → 最終的に全国規模
九州での大きな反響 1979年2月から3月にかけて、九州北部で特に大きな騒動になりました:
- 登下校時の集団行動の呼びかけ
- 学校での緊急保護者会
- 地域パトロールの実施
江戸時代の類似伝承
実は、口裂け女のような存在は江戸時代にも記録されています:
『怪談老の杖』の記録
江戸時代の怪談集に、以下のような話があります:
あらすじ
- 大窪百人町(現・東京都新宿区)での出来事
- 権助という男性が雨の夜に歩いていた
- ずぶ濡れの女性に傘を差し出す
- 振り向いた女性の口が耳まで裂けていた
- 権助の変化: 老人のようになり言葉も話せなくなる
『絵本小夜時雨』の記録
吉原遊郭での話:
- 太夫(高級遊女)が廊下を歩いている
- 客が戯れに引き止める
- 振り向いた太夫の口が耳まで裂けていた
- 客は気を失い、二度とその遊郭に行かなくなった
実在人物モデル説
口裂け女のモデルとして、実在の人物の話も伝わっています:
滋賀県信楽の「おつや」 明治時代中期の女性で、以下のような行動を取っていたとされます:
- 恋人に会うために山道を一人で通る
- 安全のために白装束で変装
- 三日月型の人参を口にくわえる
- 手に鎌を持って峠を越える
この姿が人々を驚かせ、都市伝説の原型になったという説があります。
現代的な解釈の変化
時代とともに、口裂け女の「正体」についても様々な説が生まれました:
1970年代の解釈
- 精神病院からの脱走者
- 事故による顔面損傷者
- 座敷牢からの脱出者
1990年代以降の解釈
- 整形手術の失敗者
- 医療過誤の被害者
- 嫉妬による復讐者
現代の解釈
- 都市化への不安の象徴
- 子どもの安全神話の崩壊
- 美に対する価値観の変化
海外への伝播
口裂け女の話は日本だけでなく、海外にも伝わっています:
韓国での流行 2004年に韓国で「빨간 마스크」(赤いマスク)として流行しました:
- 血の色を象徴する赤いマスク
- 生理や性の象徴としての解釈
- 韓国独自の文化的背景との融合
中華圏での認知 台湾や香港でも口裂け女の話が知られており、現地の文化と混合した形で語られています。
これらの伝承を通して、口裂け女は単なる日本の都市伝説を超えた、国際的な文化現象になったことが分かります。
まとめ
口裂け女は、昭和後期の日本社会を象徴する最も成功した都市伝説なんです。
口裂け女の重要なポイント
外見的特徴
- 赤いコートを着た背の高い美しい女性
- 白いマスクで顔の下半分を隠している
- マスクを外すと耳まで口が裂けている
- 様々な刃物を持って攻撃してくる
行動の特徴
- 「私、きれい?」という決まり文句
- 答え方によって運命が決まる残酷さ
- 主に子どもや若者を標的にする
- 夕方から夜にかけての出現が多い
社会現象としての意義
- 1978-79年に全国的なパニックを引き起こした
- パトカー出動や集団下校など実際の社会問題に発展
- 子どもたちの口コミだけで全国に拡散した驚異的な伝播力
- メディアとの相互作用による現象の拡大
撃退法と対処方法
- ポマードやべっこう飴などのアイテムによる撃退
- 「ふつう」「まあまあ」などの曖昧な回答が有効
- 2階以上への避難や特定店舗への逃げ込み
- 地域ごとに異なる様々な対処法の存在
コメント