黒縄地獄とは?

仏教の教えの中で、死後に悪い行いをした人が落ちるとされる「八大地獄」。黒縄地獄(こくじょうじごく)は、その中で上から2番目に位置する地獄なんです。
地獄というと、なんとなく怖いイメージがあると思いますが、実は仏教では「自分の行いの結果として生まれる苦しみの世界」という考え方をするんですよ。黒縄地獄は、殺生(生き物を殺すこと)と盗みの罪を犯した人が落ちる場所とされています。
この記事では、黒縄地獄がどんな恐ろしい場所なのか、どんな責め苦が待っているのか、詳しく解説していきます。
黒縄地獄の名前の由来
「黒縄」って聞いて、ピンとこない人も多いでしょう。
実はこれ、大工さんが使う「墨縄(すみなわ)」という道具のことなんです。墨をつけた糸をピンと張って、木材にまっすぐな線を引く道具ですね。昔の大工さんには欠かせない道具でした。
黒縄地獄では、この墨縄のように熱く焼けた鉄の縄で罪人の体に線を引いて、その線に沿って切り刻むという恐ろしい責め苦があることから、この名前がついたんです。
どんな罪で落ちるのか

黒縄地獄に落ちる条件は明確です。
落ちる条件
- 殺生(必要もないのに生き物を殺した)
- 窃盗(他人の物を盗んだ)
等活地獄(一番軽い地獄)では殺生だけでしたが、黒縄地獄では盗みの罪が加わるんですね。つまり、より重い罪を犯した人が落ちる場所ということになります。
面白いのは、ただ盗んだだけでなく、盗んだことで誰かを餓死させてしまった場合なども含まれること。行為だけでなく、その結果まで問われるんです。
恐ろしい責め苦の数々
黒縄地獄の責め苦は、想像を絶するものばかり。主なものをご紹介しましょう。
1. 墨縄の責め
獄卒(地獄の鬼)が罪人を熱鉄の上に押し倒し、焼けた鉄の縄で体に縦横の線を引きます。そして、その線に沿って斧やのこぎり、刀で体を切り刻むんです。まるで木材を加工するように、人間の体を切り分けていくという恐ろしい責め苦です。
2. 熱鉄の衣
赤く焼けた鉄の縄で作った服を着せられることも。皮膚はもちろん、肉も骨も焼け焦げ、骨髄まで溶けてしまうといいます。
3. 綱渡りの刑
大きな鉄の山と山の間に鉄の縄を張り、その下にはぐつぐつと煮えたぎる大釜が。罪人は無理やり綱渡りをさせられますが、当然落ちてしまい、釜の中で煮られるんです。
4. 崖からの突き落とし
これは特に投身自殺をした人が受ける罰。険しい断崖絶壁から、刀が生えた熱い地面に突き落とされ、火を吐く犬に食われるという責め苦を永遠に繰り返します。
苦しみの期間と程度
黒縄地獄での苦しみは、等活地獄の10倍といわれています。
期間も気が遠くなるほど長く、人間界の時間に換算すると約13兆年も苦しみ続けるんだとか。しかも、どんなに苦しくても死ぬことはできません。死んでも「活きよ、活きよ」という声とともに生き返り、同じ苦しみが繰り返されるんです。
十六の小地獄

黒縄地獄には、本体とは別に16の小地獄があるとされています。ただし、詳しく記録が残っているのは3つだけ。
主な小地獄
等喚受苦処(とうかんじゅくしょ)
- 崖から飛び降り自殺した人が落ちる
- 熱い縄に縛られて崖から突き落とされる
旃荼処(せんだしょ)
- 薬物中毒者が落ちる
- 鳥や獣に目や舌を抜かれる
畏熟処(いじゅくしょ)
- 強盗殺人を犯した人が落ちる
- 永遠に走らされ続ける
現代に伝わる教訓
黒縄地獄の話は、単なる恐怖話ではありません。
仏教では、「因果応報」という考え方があります。自分の行いが必ず自分に返ってくるという教えです。黒縄地獄の描写は極端に思えるかもしれませんが、「他人の命や財産を大切にしなさい」という戒めが込められているんですね。
特に注目すべきは、自殺も罪とされていること。命を粗末にすることへの警告でもあるんです。
まとめ
黒縄地獄は、殺生と盗みの罪を犯した人が落ちる恐ろしい地獄です。
重要なポイント
- 八大地獄の中で2番目に位置する地獄
- 殺生と窃盗の罪で落ちる
- 熱した鉄の縄で体に線を引き、切り刻まれる
- 等活地獄の10倍の苦しみ
- 人間界の約13兆年という途方もない期間苦しむ
- 投身自殺をした人への特別な罰もある
地獄の話は怖いものですが、それは私たちに「正しく生きること」の大切さを教えてくれています。他人の命や財産を尊重し、自分の命も大切にする。そんな当たり前のことを、改めて考えさせられる教えなんですね。


コメント