もし自分の父親が殺されたら、あなたは復讐を考えますか?
平安時代、大江山の鬼の総大将・酒呑童子が源頼光に討たれた後、その息子が父の仇討ちに立ち上がりました。
牛の腹の中に隠れてまで復讐を狙った執念の鬼、それが鬼童丸です。
この記事では、父への想いと復讐に生きた悲劇の鬼「鬼童丸」について詳しくご紹介します。
概要

鬼童丸(きどうまる)は、酒呑童子の子どもとされる鬼です。
鎌倉時代の説話集『古今著聞集』に登場し、父を殺した源頼光への復讐を企てた物語が語られています。
頼光への恨みは深く、あの手この手で暗殺を狙いましたが、最後は頼光の知略に負けて討たれてしまいました。
親子二代にわたる頼光との因縁は、平安時代の鬼退治伝説の中でも特に印象的な物語なんです。
姿・見た目
鬼童丸の姿については、いくつかの特徴が伝えられています。
鬼童丸の外見
- 生まれながらに歯が生え揃っていた
- 7〜8歳で驚異的な力を持つ
- 鬼の血を引く異形の存在
特に印象的なのは、生まれた時から歯が生えていたという点です。 これは父・酒呑童子や茨木童子と同じ特徴で、鬼の血筋であることを示していたんですね。
幼い頃から石を投げてシカやイノシシを仕留めるほどの怪力を持っていたといいます。
特徴

鬼童丸の最大の特徴は、その執念深さと知恵です。
鬼童丸の能力と性格
- 怪力(鎖を簡単に引きちぎる)
- 変装・潜伏能力(牛の腹に隠れる)
- 執念深い復讐心
- 父への深い愛情
単純に力任せではなく、策略を使って頼光に近づこうとしました。
わざと頼光の弟に捕まって内部に潜入したり、牛の死体に隠れて待ち伏せしたりと、知恵を使った復讐を企てたんです。
伝承

鬼童丸の復讐劇は、『古今著聞集』に詳しく記されています。
頼光への接近
鬼童丸は父の仇である頼光を狙うため、まず頼光の弟・源頼信にわざと捕まりました。 頼信の家の厠(トイレ)に捕らえられていた鬼童丸を見た頼光は、「鎖でしっかり縛っておけ」と注意します。
しかし鬼童丸は鎖を簡単に引きちぎり、天井に上って頼光の寝床を覗いて暗殺の機会をうかがいました。
鞍馬寺での待ち伏せ
頼光は鬼童丸の気配を察知し、従者に「明日は鞍馬寺に参詣する」と大声で言います。 これを聞いた鬼童丸は先回りして鞍馬寺へ向かいました。
途中の市原野で放し飼いの牛を見つけた鬼童丸は、牛を殺してその腹の中に隠れ、頼光を待ち伏せたんです。
最期の戦い
しかし、これもすべて頼光の計算通りでした。 頼光は渡辺綱に命じて牛を弓矢で射抜かせます。
牛の中から飛び出した鬼童丸は頼光に斬りかかりましたが、頼光の一刀のもとに斬り捨てられてしまいました。 首を斬られた後も、体だけで暴れまわったといいますが、頼光四天王によってバラバラにされたそうです。
出生の悲劇
京都府福知山市雲原の伝承によると、鬼童丸の母は酒呑童子に捕らわれていた女性でした。 酒呑童子が討たれた後、精神に異常をきたしてしまい、故郷に帰れずに山中で鬼童丸を産んだといいます。
母親は狂って猪や猿を捕らえて食べるような状態で、その子である鬼童丸も異常な力を持って生まれてきたのです。
まとめ
鬼童丸は、父への愛と復讐心に生きた悲劇の鬼でした。
重要なポイント
- 酒呑童子の息子として父の仇討ちを企てた
- 生まれながらの異形で怪力を持つ
- 知略を使って頼光に近づくも見破られる
- 牛の腹に隠れて待ち伏せという奇策を使った
- 最後は頼光に討たれて親子二代の因縁に終止符
ただ力に頼るだけでなく、知恵を使って復讐を試みた鬼童丸。
その執念は恐ろしくもあり、父を想う気持ちは哀しくもある、複雑な感情を呼び起こす鬼の物語なんです。
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