海の中には、私たちの知らない不思議な生き物がたくさんいます。
江戸時代、日本の海辺に「人間のような姿をした謎の生物」が現れたという記録が残されているんです。
その名も海人(かいじん)。
人間そっくりなのに、手足には水掻きがあり、言葉も通じない——そんな奇妙な存在が、いったい何者だったのでしょうか?
この記事では、江戸時代の文献に記された謎の妖怪「海人」について、その姿や特徴、伝承を分かりやすくご紹介します。
概要

海人(かいじん)は、江戸時代の書物に登場する海に棲む人型の妖怪です。
『大和本草(やまとほんぞう)』や『長崎見聞録』といった当時の文献に、その姿が詳しく記録されています。
『大和本草』というのは、江戸時代中期に貝原益軒が著した博物学の書物のこと。『長崎見聞録』は長崎地方の珍しい事物を記録した本で、どちらも当時の知識人たちが実際に見聞きしたことをまとめたものなんですね。
海人の最大の特徴は、見た目がほとんど人間と変わらないという点にあります。
頭には髪の毛が生え、眉毛もある。一見すると普通の人間のように見えるのですが、よく観察すると人間とは明らかに違う部分があったのです。
伝承

姿・見た目
文献によると、海人の外見には以下のような特徴がありました。
海人の身体的特徴
- 頭部:髪の毛、鬢(びん=もみあげ)、眉毛がある
- 腰回り:肉の皮のようなものが垂れ下がり、袴(はかま)を履いているように見える
- 手足:指の間に水鳥のような水掻きがついている
- その他:上記以外は人間とほぼ同じ
特に印象的なのが、腰のあたりにひらひらした肉片があるという描写でしょう。
まるで着物の袴のように見えたというのですから、かなり奇妙な姿だったことが想像できます。
不思議な習性
海人には、人間とは決定的に異なる習性がありました。
海人の行動特性
- 言葉が通じない:人間の言葉を理解できず、コミュニケーションが取れなかった
- 食事をしない:食べ物や水を与えても、一切口にしようとしなかった
- 陸でも生存可能:陸地に上がっても数日間は生きていられた
普通の魚や海の生き物なら、陸に上がればすぐに弱ってしまうはずです。
しかし海人は数日間も生き延びることができたといいます。これは、海人が単なる海洋生物ではなく、何か特別な存在だったことを示しているのかもしれません。
海人の正体とは?
では、海人の正体はいったい何だったのでしょうか?
当時の人々の間でも、さまざまな説が唱えられていました。
ある人は「古代に絶滅した種族の生き残りではないか」と考えたそうです。
しかし、海人は滅多に目撃されることがなく、詳しく調べる機会もほとんどありませんでした。そのため、正体は謎のまま現代に至っています。
人魚や河童のような水にまつわる妖怪は日本各地に伝わっていますが、海人はそれらとも少し異なる、独特の存在として記録に残されているのです。
まとめ

海人は、江戸時代の文献に記された謎多き海の妖怪です。
重要なポイント
- 『大和本草』『長崎見聞録』に記載された海に棲む人型の存在
- 髪や眉毛があり、一見すると人間とほぼ同じ姿
- 腰に袴のような肉片、手足に水掻きがあるのが特徴
- 言葉は通じず、食べ物も一切口にしない
- 陸地でも数日間は生存できた
- 正体は古代の絶滅種族という説もあるが、真相は不明
目撃例が極めて少なく、詳しい調査もできなかったため、海人の正体は今も謎に包まれたままです。
もしかすると、広い海の底には、まだ私たちの知らない「海人」のような存在が潜んでいるのかもしれませんね。
参考文献
- 『大和本草』貝原益軒
- 『長崎見聞録』
- 『日本未確認生物事典』笹間良彦
- 『日本妖怪変化語彙』日野巌・日野綾彦


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