日本神話に登場する動物一覧|古事記・日本書紀の神獣から神の使いまで完全ガイド

神話・歴史・伝承

アニメやゲームで「八咫烏(ヤタガラス)」「白兎」といった名前を見かけたことはありませんか?

これらはすべて、日本神話に登場する動物たちの名前です。

日本には「八百万(やおよろず)の神」がいるといわれますが、神々の中には動物の姿をしたものや、動物を使いとする神様もたくさんいます。
稲荷神社のキツネ、天満宮のウシ、春日大社のシカなど、神社でおなじみの動物たちも実は深い神話的な意味を持っているんです。

「名前は知っているけど、どんな神話なの?」「なぜその動物が神聖視されているの?」という疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

この記事では、古事記や日本書紀に登場する動物たち、そして神の使いとして信仰される動物について、エピソードや象徴する意味とともに詳しくご紹介します。


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日本神話における動物の役割とは?

神話の中の動物たち

古代の日本人は、自然現象や人の営みを「神々の行い」として理解していました。
動物たちも例外ではなく、神話の中で重要な役割を担っています。

動物が担う主な役割

  • 神様の意思を伝える「神使(しんし)
  • 英雄を導く道案内役
  • 神様そのものの化身
  • 神話のストーリーを動かす重要キャラクター

『古事記』や『日本書紀』には、ウサギ、カラス、ヘビ、シカなど多彩な動物が登場します。
彼らは単なる脇役ではなく、神話の展開に欠かせない存在として描かれているんです。

なぜ動物が神聖視されるの?

日本の神道には「アニミズム」と呼ばれる考え方があります。
これは、すべてのものに魂が宿るという信仰のことです。

山、川、木、石、そして動物にも神が宿ると古代の日本人は考えていました。
特に人間にはない能力を持つ動物は、神秘的な力の象徴として崇められるようになったのです。

たとえば、空を飛ぶ鳥は天と地をつなぐ存在として、脱皮を繰り返すヘビは再生や不死の象徴として捉えられました。


古事記・日本書紀に登場する有名な動物たち

日本神話の二大文献である『古事記』(712年)と『日本書紀』(720年)には、印象的な動物たちが数多く登場します。
それぞれの神話エピソードとともに見ていきましょう。

八咫烏(ヤタガラス)──神武天皇を導いた三本足のカラス

基本情報

  • 読み方:やたがらす
  • 登場神話:神武東征
  • 象徴:導き、太陽

どんな動物?

八咫烏は、三本足の大きなカラスで、太陽の化身とされています。
「咫(あた)」は長さの単位で、八咫は「とても大きい」という意味。
つまり、普通のカラスとは比べものにならないほど巨大な存在なんです。

神話エピソード

初代天皇である神武天皇が、九州から大和(現在の奈良県)へ東征する際、熊野の山中で道に迷ってしまいます。
このとき、天照大御神が遣わしたのが八咫烏でした。

八咫烏は神武天皇一行を先導し、無事に大和国へ導いたのです。
この功績から、八咫烏は「導きの神」として信仰されるようになりました。

現代への影響

  • 日本サッカー協会のシンボルマークに採用
  • 熊野三山の神使として崇敬
  • 自衛隊の情報部隊のシンボルにも使用

因幡の白兎(いなばのしろうさぎ)──予言の力を持つ兎神

基本情報

  • 読み方:いなばのしろうさぎ
  • 登場神話:大国主神の求婚譚
  • 別表記:稲羽の素兎(いなばのしろうさぎ)
  • 象徴:予言、再生

どんな動物?

日本神話の中で最も親しまれている動物の一つです。
小学校の国語教科書にも登場するため、名前を知っている方も多いでしょう。

「素兎」の「素」は「裸の」という意味で、皮を剥がれて丸裸になった状態を表しています。

神話エピソード

隠岐の島に住んでいた白兎は、因幡(現在の鳥取県東部)に渡りたいと考えました。
そこで海のワニ(サメとも解釈される)を騙し、「どちらの一族が多いか数えよう」と持ちかけます。

ワニたちを一列に並ばせ、その背を踏んで渡ろうとした白兎。
しかし最後のワニを踏む直前、つい「騙されたね!」と口を滑らせてしまいます。
怒ったワニに皮を剥がれ、白兎は苦しんでいました。

そこへ通りかかった八十神(やそがみ)は「海水を浴びて風に当たれ」と嘘の治療法を教え、白兎はさらに苦しむことに。
その後、荷物持ちとして遅れてやってきた大穴牟遅神(おおなむちのかみ、後の大国主神)が正しい治療法を教え、白兎は回復します。

白兎は感謝の印として、大国主神に「八上比売(やかみひめ)との結婚は成功するでしょう」と予言。
その通り、大国主神は八上比売を妻に迎えることができました。

ポイント

  • 「ワニ」が鰐なのか鮫なのかは、現在も議論が続いている
  • 白兎は予言の神として白兎神社(鳥取県)に祀られている
  • 「因果応報」の教訓を含む説話として解釈される

ヤマタノオロチ──八つの頭を持つ大蛇

基本情報

  • 読み方:やまたのおろち
  • 漢字表記:八岐大蛇
  • 登場神話:須佐之男命のオロチ退治
  • 象徴:自然の脅威、水害

どんな動物?

一つの胴体に八つの頭と八つの尾を持つ巨大な蛇です。
その大きさは「八つの谷と八つの峰にまたがるほど」と描写され、目はホオズキのように赤く、体にはコケやヒノキ、スギが生えていたといいます。

龍として描かれることもありますが、古事記では「大蛇」と記されています。

神話エピソード

高天原(たかまがはら)を追放されたスサノオが出雲国に降り立つと、泣いている老夫婦と娘に出会います。

老夫婦によれば、「八人いた娘をヤマタノオロチに毎年一人ずつ食べられ、最後の一人である櫛名田比売(くしなだひめ)も狙われている」とのこと。

スサノオは櫛名田比売を妻にすることを条件に、オロチ退治を引き受けます。
強い酒を八つの樽に用意し、オロチに飲ませて酔わせた隙に、剣で切り伏せました。

このとき、オロチの尾から出てきたのが天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)
後に「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」と呼ばれ、三種の神器の一つとなります。

オロチの正体とは?

ヤマタノオロチの正体については諸説あります。

  • 斐伊川(ひいがわ)の氾濫を象徴しているという説
  • 製鉄集団を表しているという説(たたら製鉄との関連)
  • 水神としての蛇信仰の反映という説

いずれにしても、人間の力を超えた自然の脅威を神話的に表現したものと考えられています。


ワニ──海の世界の支配者

基本情報

  • 読み方:わに
  • 正体:サメ説、鰐説あり
  • 登場神話:因幡の白兎、海幸山幸神話
  • 象徴:海の力

ワニは鰐?サメ?

日本神話に登場する「ワニ」の正体は、長年議論されてきました。

古代日本に爬虫類のワニは生息していなかったため、サメのことを「ワニ」と呼んでいたという説が有力です。
山陰地方では現在でもサメのことを「ワニ」と呼ぶ地域があります。

神話での登場場面

ワニは因幡の白兎の神話以外にも、「海幸山幸(うみさちやまさち)」の神話で重要な役割を果たします。

海の神の娘・豊玉姫(とよたまひめ)が出産する際、「産屋を覗かないで」と夫の山幸彦に約束させます。
しかし山幸彦が約束を破って覗くと、そこには巨大なワニの姿で出産する豊玉姫がいました。

正体を見られた豊玉姫は恥じて海の国へ帰り、二度と戻ることはなかったのです。


鹿(シカ)──神の伝令を務める聖獣

基本情報

  • 登場神話:国譲り神話
  • 関連する神:武甕槌神(たけみかづちのかみ)、天迦久神(あめのかくのかみ)
  • 象徴:神の使い、伝令

神話エピソード

国譲り」の神話において、天照大神は大国主神に国土の譲渡を求める使者を派遣します。
その伝令役を務めたのが天迦久神(あめのかくのかみ)でした。

「迦久」は「鹿児(かこ)」、つまり「鹿の子供」を意味することから、天迦久神は「鹿の神」と考えられています。

この神話に基づいて、武甕槌神を祀る鹿島神宮の神使は鹿とされるようになりました。
春日大社の鹿も、鹿島神宮から武甕槌神を迎える際に白鹿に乗ってきたという伝承に由来しています。

鹿の神聖性

古事記には「白鹿」「白犬」など、白い動物が神の使いとして登場する場面が多く見られます。
白い動物は特に神聖視され、吉兆として捉えられていました。


蛇(ヘビ)──水と再生の象徴

基本情報

  • 登場神話:三輪山伝説、ヤマタノオロチなど
  • 象徴:水、再生、雷、豊穣

なぜ蛇は神聖視されるの?

蛇が日本神話で重要な存在となった理由は、その生態にあります。

  • 脱皮を繰り返す→再生や不死の象徴
  • 水辺に生息する→水神・雨神としての性格
  • 稲作と関わりが深い→田んぼや用水路に多く見られた

弥生時代以降、稲作が定着すると、水辺で見かける蛇は「水の神」「田の神」として信仰されるようになりました。

三輪山の神話

日本書紀には、大物主神(おおものぬしのかみ)が蛇の姿で人間の女性のもとに通う物語が記されています。

孝霊天皇の皇女・倭迹迹日百襲姫命(やまとととひももそひめのみこと)は、夜にしか現れない夫に「姿を見せてほしい」と頼みます。
翌朝、櫛箱の中に現れた夫の姿は、美しい小さな蛇でした。

驚いた姫が声を上げると、蛇は三輪山へ去ってしまいます。
この物語から、三輪山の神は蛇神として信仰されるようになったのです。


神の使い(神使)として信仰される動物一覧

神話に直接登場するわけではありませんが、神社で「神使(しんし)」として崇められる動物たちがいます。
神の意思を伝える使者として、古くから大切にされてきました。

狐(キツネ)──稲荷神の使い

項目内容
関連する神稲荷神(宇迦之御魂神)
主な神社伏見稲荷大社、全国約3万社の稲荷神社
ご利益五穀豊穣、商売繁盛

全国に約3万社あるとされる稲荷神社で、神の使いとして狛犬の代わりに鎮座しているのがキツネです。
白狐(びゃっこ)は特に神聖な存在として信仰されています。

稲荷神社のキツネは「お稲荷さん」の名で親しまれ、油揚げが好物とされています。
これは、キツネが農作物を荒らすネズミを退治してくれることから、稲作の守護者として崇められるようになったためです。


猿(サル)──山王神の使い

項目内容
関連する神山王神(大山咋神)
主な神社日吉大社、日枝神社
ご利益厄除け、縁結び

神猿(まさる)」と呼ばれ、「魔が去る」「勝る」に通じることから縁起の良い動物とされています。
日吉大社では実際に猿が飼育されており、「神猿さん」として親しまれています。


牛(ウシ)──天満宮の使い

項目内容
関連する神天満大自在天神(菅原道真公)
主な神社太宰府天満宮、北野天満宮など全国の天満宮
ご利益学業成就、合格祈願

天満宮には「撫で牛」と呼ばれる牛の像が置かれています。
菅原道真公と牛には多くの縁起話があり、道真公の遺体を運んだ牛が動かなくなった場所に太宰府天満宮が建てられたという伝承が有名です。


鳩(ハト)──八幡神の使い

項目内容
関連する神八幡神(応神天皇)
主な神社宇佐神宮、鶴岡八幡宮など全国の八幡宮
ご利益勝運、武運長久

八幡宮の「八」の字は、向かい合った二羽の鳩をかたどったものともいわれます。
平和の象徴とされる鳩ですが、武神である八幡神の使いでもあるんです。


狼(オオカミ)──山の守護神

項目内容
関連する神大口真神(おおぐちのまがみ)
主な神社三峯神社、武蔵御嶽神社
ご利益厄除け、害獣除け

大口真神は日本狼が神格化されたもので、作物を荒らすイノシシやシカから田畑を守る神として信仰されました。
日本書紀では、日本武尊(やまとたけるのみこと)の道案内をしたとも伝えられています。


その他の神使動物

動物関連する神・神社象徴
蛸(タコ)速玉男命・福岡神社航海安全
亀(カメ)松尾大社長寿
鶏(ニワトリ)天照大御神・伊勢神宮夜明け、太陽
蜂(ハチ)二荒山神社勤勉
鯛(タイ)恵比寿神豊漁、商売繁盛
鰻(ウナギ)三島大社水の神
鷺(サギ)氷川神社清浄

日本神話の動物 完全一覧表

ここでは、古事記・日本書紀に登場する動物と、神使として信仰される動物をまとめました。

古事記・日本書紀に登場する動物

動物名読み方登場神話役割・象徴
八咫烏ヤタガラス神武東征道案内、太陽の化身
白兎シロウサギ因幡の白兎予言、縁結び
八岐大蛇ヤマタノオロチスサノオの冒険自然の脅威
ワニワニ因幡の白兎、海幸山幸海の力
鹿シカ国譲り神の伝令
ヘビ三輪山伝説ほか水神、再生
キジ天若日子神話天の使者
海幸山幸釣り、漁業
クマ神武東征山の力
イノシシ日本武尊伝説山の神の化身
ウマスサノオ神話神への供物

神使として信仰される動物

動物名関連する神・神社ご利益
稲荷神社商売繁盛、五穀豊穣
鹿春日大社、鹿島神宮開運招福
日吉大社、日枝神社厄除け
天満宮学業成就
八幡宮勝運
三峯神社厄除け、害獣除け
白兎神社、大神神社縁結び
大神神社金運、開運
松尾大社長寿
伊勢神宮再生、開運

現代文化に生きる日本神話の動物たち

ゲーム・アニメでの登場

日本神話の動物たちは、現代のエンターテイメントでも大人気です。

  • 大神:アマテラスが白い狼として活躍
  • ペルソナシリーズ:八咫烏やヤマタノオロチがペルソナとして登場
  • モンスターハンター:ヤマタノオロチをモチーフにしたモンスター
  • Fate/Grand Order:日本神話の動物や神々がサーヴァントとして登場

シンボルマークとしての活用

  • 八咫烏:日本サッカー協会のシンボル
  • 鳳凰:天皇家の紋章の一つ
  • :多くの家紋や企業ロゴに採用

まとめ

日本神話に登場する動物たちは、単なる物語のキャラクターではありません。

古代日本人の自然観や信仰が凝縮された存在なんです。

八咫烏は導きの象徴として、白兎は予言と縁結びの神として、ヤマタノオロチは克服すべき自然の脅威として、それぞれが深い意味を持っています。

神社を訪れた際には、そこにいる動物の像や絵に注目してみてください。
「なぜこの動物がここにいるのか」を知ることで、日本の神話と文化への理解がぐっと深まるはずです。

興味を持った動物がいたら、ぜひその神話の原典にも触れてみてくださいね。
古事記や日本書紀は現代語訳も多く出版されているので、意外と読みやすいですよ。

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