美しい女性に声をかけられて、思わず心がときめいたことはありませんか?
でも、もしその女性が夜の山道や人里離れた場所にあなたを誘ったとしたら…ちょっと注意が必要かもしれません。
なぜなら、それは女郎蜘蛛(じょろうぐも)という妖怪かもしれないからです。
女郎蜘蛛は、日本の妖怪の中でも特に「美しさと恐ろしさ」を併せ持つ存在として知られています。一見すると魅力的な女性ですが、その正体は人間を狩る恐ろしい蜘蛛の化け物なんです。
この記事では、女郎蜘蛛の正体から見た目、その危険な手口、そして全国に残る恐ろしい伝承まで、詳しくご紹介します。
女郎蜘蛛ってどんな妖怪?

「女郎蜘蛛(じょろうぐも)」という名前を聞くと、なんとなく艶やかで美しい印象を受けますよね。
女郎蜘蛛の基本情報
女郎蜘蛛とは、美しい女性に化ける蜘蛛の妖怪です。
人間の男性を誘惑し、最終的には命を奪うという恐ろしい存在として語り継がれています。
- 女郎:江戸時代の遊女や美しい女性を指す言葉
- 蜘蛛:そのまま、クモのこと
- 危険度:非常に高い(命に関わる)
姿・見た目
女郎蜘蛛の最大の特徴は、二つの全く違う姿を使い分けることです。
本来の姿は蜘蛛なのですが、人の前に現れる時は美女に化けます。
特徴
女郎蜘蛛の最も恐ろしい特徴は、その魅力を活かした誘惑です。
- 美しい女性の姿で誘惑して人を食べる
- 時に小蜘蛛を引き連れている
- 時に滝や沼、池に住んでいて、人間に糸を巻きつけて水中に引きずり込む
- 時にこの世ではない場所にいる
伝承

女郎蜘蛛の伝承は、日本全国に数多く残されています。
『宿直草』における妖怪退治の物語
「急なるときも、思案あるべき事」という教訓を込めた話として、次のような物語が記されています。
ある青年武士の前に、19~20歳ほどの女性が幼い子供を抱いて現れました。女性は子供に向かって「あの方があなたのお父様です。行って抱きついてもらいなさい」と言いました。
しかし武士は、この女性の正体が妖怪であることを見抜きます。すぐさま刀を抜いて斬りかかると、女性は天井裏へと逃げ込んでいきました。
翌日、天井裏を調べてみると、1~2尺(約30~60センチ)ほどの大きな絡新婦(女郎蜘蛛)が刀傷を負って死んでいました。
そしてその周りには、この絡新婦に食い殺された無数の人間の死体が発見されたということです。
娘と結婚してくれ!
孫六という男の前に1人の老婆が現れ、「私の娘があなたを慕っています」と言い、孫六を館に招きました。
館には美しい娘がいて、「自分と結婚してください」と頼んできます。
孫六が自分には妻がいることを理由に断ると、たちまち館が消えて、いつの間にか自分の家にいました。
妻曰く、孫六は縁側で少し寝ていただけなのだそうです。
夢かと思いあたりを見ると、そこには蜘蛛がいて、蜘蛛の巣を張っていたそうだ。
滝に引きずり込む糸
とある滝の近く、木こりの足元に小蜘蛛が現れ、彼の足に糸をつけてきました。
男はこの糸をわずらわしく思い、近くの木に巻き付けました。
すると、糸がすごい力で引っ張られ、木を滝の中へと引きずり込んでいきました。
他の伝承
他にも多くの伝承が残されている。
ここで紹介した話以外には、以下のような伝承がある。
- 女郎蜘蛛を見たことを黙っているように言われるが、結局見たことを話してしまい死亡
- とある男に、女郎蜘蛛が襲ってくるので「助けてください」と頼み込んでくるウナギ。
男は承諾するが、怖くなって約束を破る。
ウナギと男は共に死んでしまう。 - 女郎蜘蛛との恋
女郎蜘蛛の話は、彼女がとてつもなく恐ろしいことを伝えている話が多いです。
まとめ
女郎蜘蛛は、美しさという最も人を惹きつける要素を武器にする、非常に危険な妖怪です。
重要なポイント
- 美しい女性に化ける蜘蛛の妖怪
- 男性を誘惑して命を奪う恐ろしい存在
- 全国各地に様々な伝承が残っている
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