古事記と日本書紀には、日本の始まりから皇室と神々の系譜までが綴られています。
数多く登場する神々は、その音の響きや役割が難解に思えがちです。
「神様の名前が覚えられない…」
「どの神様がどんな役割なの?」
「神話の全体の流れがわからない」
そんな疑問を持つ方も多いでしょう。
そういう人に向けて、この記事では、日本神話の代表的な神々をカテゴリごとにまとめ、一覧形式でわかりやすく紹介します。
古事記と日本書紀について

基本情報
古事記(こじき)
- 成立年:712年(和銅5年)
- 編纂者:太安万侶(おおのやすまろ)
- 特徴:物語性が豊か、感情的な描写が多い
- 文体:漢字を使った日本語表記
日本書紀(にほんしょき)
- 成立年:720年(養老4年)
- 編纂者:舎人親王(とねりしんのう)ほか
- 特徴:歴史書として体系的、複数の異説を併記
- 文体:漢文で記述
なぜ二つの書物があるの?
目的の違い
古事記:
- 国内向け:日本人のアイデンティティ確立
- 物語重視:神話としての面白さを追求
- 感情表現:神々の人間らしい感情を描写
日本書紀:
- 対外向け:中国など外国への正史
- 歴史重視:年代順の正確な記録を目指す
- 客観的記述:複数の説を併記して信憑性を高める
神話の時代区分
全体の流れ
日本神話は大きく5つの時代に分けられます:
時代 | 内容 | 主要な神々 |
---|---|---|
1. 天地開闢 | 世界の始まり | 造化三神、別天神 |
2. 国産み・神産み | 日本列島と神々の誕生 | イザナギ・イザナミ |
3. 神々の活躍 | 三貴神の物語 | アマテラス・ツクヨミ・スサノオ |
4. 国造り | 地上世界の統治 | オオクニヌシなど出雲の神々 |
5. 天孫降臨 | 神話から歴史へ | ニニギノミコト、神武天皇 |
第1章:天地開闢の神々(造化三神・別天神・神世七代)

世界の始まり
最初の状態
古事記によれば、世界の始まりは混沌とした状態でした。
天と地が分かれていない、何もかもが入り交じった状態から、少しずつ秩序が生まれていきます。
造化三神(ぞうかさんしん)
世界で最初に現れた三柱の神々です。
天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)
役割と性格:
- 宇宙の中心を司る最高神
- 絶対的な存在だが、神話では積極的に活動しない
- 見えない力として世界を統制
現代での信仰:
- 妙見信仰(北極星・北斗七星への信仰)
- 水天宮などで祀られる
- 安産・子育ての神としても信仰
高御産巣日神(たかみむすびのかみ)
役割と性格:
- 創造と生成の神
- 天界の秩序を司る
- 後の天孫降臨で重要な役割を果たす
特徴:
- 「ムスビ」は生成・結合・調和を意味
- 男性的な創造力の象徴
- 皇室の守護神の一柱
神産巣日神(かみむすびのかみ)
役割と性格:
- 高御産巣日神と対をなす創造神
- 女性的な生成力の象徴
- 慈愛と養育の力を持つ
神話での活躍:
- 大国主命の復活に関与
- 少名毘古那神の親として登場
- 医療・農業の発展に寄与
別天神(ことあまつかみ)
造化三神の後に現れた神々です。
主要な別天神
宇摩志阿斯訶備比古遅神(うましあしかびひこぢのかみ):
- 葦の芽を神格化
- 生命力の象徴
- 名前の意味:「美しい葦の芽の男神」
天之常立神(あめのとこたちのかみ):
- 天の永続性を表す
- 不変の秩序の神
- 天界の基盤を築く
神世七代(かみよななよ)
天地が安定してから現れた七代の神々です。
世代順の神々
代 | 神名 | 特徴 |
---|---|---|
1代 | 国之常立神 | 国土の基盤 |
2代 | 豊雲野神 | 豊かな雲の神 |
3代 | 宇比地邇神・須比智邇神 | 泥土の神(男女対) |
4代 | 角杙神・活杙神 | 杭(境界)の神 |
5代 | 意富斗能地神・大斗乃弁神 | 大地の神 |
6代 | 淤母陀流神・阿夜訶志古泥神 | 完成への神 |
7代 | 伊邪那岐神・伊邪那美神 | 国産み・神産みの主役 |
第2章:国産み・神産みの神々

伊邪那岐命・伊邪那美命(いざなぎのみこと・いざなみのみこと)
天沼矛(あめのぬぼこ)による国産み
物語の始まり:
天界の神々から天沼矛という神聖な矛を授かった二神は、天浮橋(あめのうきはし)に立って海をかき混ぜます。
最初の島の誕生:
矛の先から滴り落ちた塩水が固まって、淤能碁呂島(おのごろとう)が生まれました。
結婚と国産み:
- 淤能碁呂島に降り立つ
- 天之御柱を立てて宮殿を建設
- 結婚の儀式を行う
- 日本列島を次々と生み出す
生まれた島々
大八島国(おおやしまのくに):
- 淡路島(淡道之穂之狭別島)
- 四国(伊予之二名島)
- 隠岐島(天之忍許呂別島)
- 九州(筑紫島)
- 壱岐島(伊伎島)
- 対馬(津島)
- 佐渡島(佐度島)
- 本州(大倭豊秋津島)
神産み(かみうみ)
重要な神々の誕生
国産みの後、二神は様々な神々を生み出します。
自然現象の神々:
- 石土毘古神(いはつちびこ):石の神
- 石巣比売神(いはすひめ):砂の神
- 大戸日別神(おほとひわけ):戸口の神
- 天之吹男神(あめのふきお):風の神
生活に関わる神々:
- 大山津見神(オオヤマツミ):山の神
- 鹿屋野比売神(かやのひめ、野椎神):野の神
- 志那津比古神(しなつひこ):風の神
- 大綿津見神(おおわたつみ):海の神
火之迦具土神(ひのかぐつちのかみ)の誕生

悲劇の始まり
最後に生まれた火の神カグツチによって、イザナミは大やけどを負い、命を落としてしまいます。
イザナミの死:
- 火の神を産んだことで陰部に大やけど
- 苦しみながら病気の神々も生む
- ついに**黄泉国(よみのくに)**へと旅立つ
イザナギの怒り: 愛する妻を失ったイザナギは、激怒してカグツチを**十拳剣(とつかのつるぎ)**で斬り殺します。
カグツチの死から生まれた神々
カグツチの死体や血から、多くの重要な神々が誕生します。
血から生まれた神々:
- 石拆神・根拆神・石筒之男神:岩石の神
- 甕速日神・樋速日神・建御雷之男神:雷の神
- 淤加美神:雨の神
死体から生まれた神々:
- 正鹿山津見神:山の神
- 淤縢山津見神:山の尾根の神
- 奥山津見神:奥山の神
第3章:三貴神(天照・月読・スサノオ)
黄泉国訪問と禊
黄泉国での出来事
- イザナミとの再会: イザナギは愛する妻に会いたくて黄泉国まで迎えに行きます。
- 変わり果てた姿: しかし、そこで見たのは腐敗して蛆にたかられた妻の姿でした。
- 約束破り: 「見ないでください」というイザナミの約束を破って火を灯したイザナギ。
- 追跡劇: 怒ったイザナミに雷神や黄泉醜女に追いかけられ、命からがら現世に逃げ帰ります。
禊(みそぎ)と三貴神の誕生
汚れを清める儀式:
黄泉国の穢れを清めるため、イザナギは筑紫の日向の橘小門の阿波岐原で禊を行います。
三貴神の誕生:
最後に顔を洗ったときに、三柱の貴い神が生まれました。
天照大御神(あまてらすおおみかみ)
基本的な性格と役割
太陽神としての性格:
- 左目から生まれた太陽の女神
- 高天原(天界)の主宰者
- 皇室の祖先神として最も重要
統治者としての能力:
- 優れた政治能力:天界を平和に統治
- 慈愛深い性格:神々や人々を慈しむ
- 知恵と判断力:困難な状況でも適切な判断
主要なエピソード
天岩戸神話:
- スサノオの乱暴:暴れまわる弟に心を痛める
- 岩戸隠れ:ついに天岩戸に隠れてしまう
- 世界の暗黒:太陽が隠れて世界が真っ暗に
- 神々の作戦:アメノウズメの踊りなどで誘い出し
- 世界の復活:光が戻り、秩序が回復
三種の神器:
- 八咫鏡(やたのかがみ):真実を映す鏡
- 天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ):スサノオから贈られた剣
- 八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま):神聖な勾玉
月読命(つくよみのみこと)
謎多き月の神
基本的な性格:
- 右目から生まれた月の神
- 夜の世界を統治する役割
- 古事記・日本書紀での記述が少ない謎の神
保食神殺害事件: 唯一の主要エピソードは**保食神(うけもちのかみ)**殺害事件です。
事件の経緯:
- 保食神の饗応:口から食べ物を出してもてなし
- ツクヨミの激怒:汚らわしいと怒って殺害
- アマテラスの怒り:ツクヨミとの絶縁を宣言
- 昼夜の分離:これが昼と夜が分かれた理由
須佐之男命(すさのおのみこと)
嵐の神の複雑な性格
基本的な性格:
- 鼻から生まれた嵐と海の神
- 感情の激しさ:泣き叫ぶ、暴れる、優しくなる
- 破壊と創造:乱暴者でありながら英雄でもある
主要なエピソード
母への恋慕: 生まれてからずっと泣き続け、「亡き母(イザナミ)の国へ行きたい」と訴えます。
高天原での乱暴: 姉のアマテラスに会いに行った際の乱暴ぶり:
- 田の畦を壊す:農業の妨害
- 機屋に皮を剥いだ馬を投げ込む:織女を驚かせる
- 神殿に糞をまく:神聖な場所を汚す
追放と英雄への転身: 高天原を追放されたスサノオは、出雲の地で英雄に生まれ変わります。
八俣遠呂智(やまたのおろち)退治:
- 巨大な蛇の怪物:8つの頭と8つの尻尾
- 少女クシナダヒメを生贄にしようとする
- 酒で酔わせる作戦:8つの酒壺を用意
- 十拳剣で退治:見事に怪物を倒す
- 天叢雲剣の発見:尻尾から神剣を発見
- 結婚と定住:クシナダヒメと結婚、出雲に宮殿を建設
第4章:英雄的国つ神・出雲の神々

大国主命(おおくにぬしのみこと)
スサノオの子孫の英雄
基本的な性格:
- スサノオの6世孫(または子)
- 国造りの神として地上世界を統治
- 優しく慈悲深い性格で人々に愛される
別名の多さ:
- 大穴牟遅神(おおなむちのかみ)
- 葦原色許男神(あしはらしこおのかみ)
- 八千矛神(やちほこのかみ)
- 宇都志国玉神(うつしくにたまのかみ)
因幡の白兎
物語の概要:
- 兄神たちとの旅:八十神(やそがみ)たちと因幡国へ
- 白兎との出会い:皮を剥がれて苦しむ兎を発見
- 治療法の指導:真水で洗い、蒲の花粉をつけるように指示
- 予言の成就:兎の「八上比売と結ばれる」という予言
物語の意味:
- 慈悲深さ:困っている者を助ける心
- 知恵:正しい治療法を知っている
- 謙虚さ:兄神たちの荷物持ちをしている
兄神たちとの対立
八十神の嫉妬: 八上比売(やがみひめ)に選ばれたオオクニヌシを、兄神たちが激しく嫉妬します。
殺害と復活:
- 赤猪に見せかけた焼石で焼死
- 母神の嘆願で蘇生
- 大木に挟まれて再び死亡
- 再度の復活
根の国での試練: スサノオのいる根の国で様々な試練を乗り越え、真の英雄へと成長します。
少名毘古那神(すくなびこなのかみ)
小さな知恵の神
基本的な性格:
- 神産巣日神の子
- 非常に小さな体(手のひらサイズ)
- 医療と農業の知恵を持つ
オオクニヌシとのコンビ:
- 国造りのパートナー:二神で協力して国を開発
- 医療技術の伝授:病気の治療法を教える
- 農業技術の普及:稲作などの技術を広める
- 温泉の発見:道後温泉などの開発
常世国への旅立ち: 国造りが完成すると、常世国(理想郷)へと旅立ってしまいます。
その他の出雲の神々
事代主神(ことしろぬしのかみ)
役割:
- オオクニヌシの子
- 託宣の神:神の意志を人間に伝える
- 恵比寿神:七福神の一柱として信仰
建御名方神(たけみなかたのかみ)
役割:
- オオクニヌシの子
- 力の神:相撲の元祖とされる
- 諏訪大社の祭神:信州に逃れて土着の神となる
第5章:天孫降臨と皇族の祖

国譲り神話
天界からの要求
天界の決定: 高天原の神々は、地上世界(葦原中国)を天界の統治下に置くことを決定します。
使者の派遣:
- 天菩比神:出雲に行ったまま戻らず
- 天若日子:オオクニヌシの娘と結婚して裏切り
- 建御雷神・天鳥船神:武力を背景にした最終交渉
オオクニヌシの決断
息子たちとの相談:
- 事代主神:「お従いします」と即答
- 建御名方神:力比べを挑むも敗北して信州へ逃走
国譲りの条件:
- 出雲大社の建設:壮大な宮殿を建ててもらう
- 祭祀の継続:永遠に祀り続けてもらう
- 子孫の保護:子孫の神々を守ってもらう
瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)の天孫降臨
天界からの出発
降臨の決定: アマテラスの孫であるニニギノミコトが地上統治のために選ばれます。
三種の神器の授与:
- 八咫鏡:「私の魂と思って祀りなさい」
- 天叢雲剣:スサノオから献上された剣
- 八尺瓊勾玉:神聖な装身具
随行の神々:
- 天児屋命:祭祀を司る(藤原氏の祖)
- 布刀玉命:占いを司る(忌部氏の祖)
- 天宇受売命:芸能を司る(猿女君の祖)
- 伊斯許理度売命:石工を司る
- 玉祖命:玉作りを司る(玉祖氏の祖)
降臨地の伝説
筑紫の日向の高千穂: 現在の宮崎県高千穂地方とされています。
降臨の様子: 天界から厚い雲を押し分けて降り立ったとされる壮大な場面です。
木花咲耶姫(このはなさくやひめ)との結婚
美しい姫との出会い
大山津見神の娘: ニニギノミコトは、山の神の娘である美しい木花咲耶姫に出会います。
求婚と父の提案: 父の大山津見神は、姉の石長比売(イワナガヒメ)も一緒に嫁がせようとします。
ニニギの選択:
- 木花咲耶姫:美しいので選ぶ
- 石長比売:醜いので断る
選択の代償
父神の怒り: 「石長比売を選ばなかったため、天孫の寿命は限りあるものになる」
木花咲耶姫の意味:
- 花の美しさ:美しいが短命
- 季節の移ろい:移ろいやすい時間
石長比売の意味:
- 岩の永続性:永遠の命
- 不変の強さ:変わらない力
海幸彦・山幸彦の物語
ニニギの子供たち
火照命(ほでりのみこと):
- 海幸彦と呼ばれる
- 海で漁をして生活
- 兄として威厳がある
火遠理命(ほおりのみこと):
- 山幸彦と呼ばれる
- 山で狩りをして生活
- 弟として素直な性格
道具の交換と失敗
提案と結果:
- 弟が「道具を交換しよう」と提案
- 兄の釣り針を紛失してしまう
- 兄が激怒して弁償を要求
海神宮への旅: 困った山幸彦は海神(わたつみ)の宮殿へ相談に行きます。
豊玉姫との結婚
海神宮での歓待:
- 豊玉姫(とよたまひめ)との恋愛
- 3年間の海中生活
- 龍宮城的な楽園の体験
釣り針の発見と帰還: 魚の喉から釣り針を発見し、さらに潮満珠・潮干珠という宝物をもらって帰還。
兄への復讐: 宝物の力で兄を懲らしめ、王権の確立に成功。
神武天皇への系譜
豊玉姫の出産
- 約束: 「出産の様子を見ないでください」
- 約束破り: 山幸彦が覗くと、豊玉姫が鮫の姿で出産していました。
- 永遠の別れ: 恥ずかしくなった豊玉姫は海の国に帰ってしまいます。
神武天皇の誕生
生まれた子:
- 鵜草葺不合命(うがやふきあえずのみこと)
- 叔母の玉依姫と結婚
- その子が神武天皇(初代天皇)
神話から歴史へ: ここから神話の時代が終わり、人間の天皇の時代が始まります。
第6章:自然を司る神々

風の神々
志那都比古神(しなつひこのかみ)
基本的な性格:
- 風を司る代表的な神
- イザナギ・イザナミの子
- 農業にとって重要な風の調節
信仰の広がり:
- 竜田大社(奈良県)が有名
- 風鎮祭:台風などの災害を防ぐ祭り
- 航海の安全:船旅の守護神
級長戸辺命(しなとべのみこと)
志那都比古神の妻:
- 穏やかな風を司る女神
- 豊作をもたらす風の神格化
- 夫婦で風の調和を図る
雨・水の神々
淤加美神(おかみのかみ)
誕生の経緯:
- カグツチの血から誕生
- 雨と雪を司る竜神
- 水の恵みをもたらす神
別名と信仰:
- 高龗神(たかおかみのかみ):山の水
- 闇龗神(くらおかみのかみ):谷の水
- 貴船神社などで祀られる
- 雨乞い・雨止めの祈願対象
現代での信仰:
- 農業の守護神:適度な雨をもたらす
- 災害防止:洪水や干ばつを防ぐ
- 清浄な水:生活用水の守護
水波能売神(みずはのめのかみ)
イザナミの尿から誕生:
- 清らかな水を司る女神
- 生活用水の神格化
- 井戸や泉の守護神
信仰の特徴:
- 水源地の保護
- 水質の浄化
- 生命の源としての水への感謝
山の神々
大山津見神(おおやまつみのかみ)
山の総司令官:
- 全ての山を統括する最高神
- イザナギ・イザナミの子
- 木花咲耶姫の父として重要
山の恵み:
- 木材資源:建築・燃料の提供
- 鉱物資源:金属や石材
- 狩猟資源:動物たちの管理
- 薬草:医療用植物の恵み
現代での信仰:
- 三島大社(静岡県)が総本社
- 安全祈願:登山や林業の安全
- 自然保護:森林環境の保全
木花咲耶姫(このはなさくやひめ)
桜の女神:
- 大山津見神の娘
- ニニギノミコトの妻
- 桜の花を象徴する美しい女神
象徴する意味:
- 美しさ:桜の花の美
- はかなさ:散りゆく花の運命
- 再生:毎年咲く花の循環
信仰の内容:
- 安産祈願:出産の守護
- 子育て:母性の象徴
- 美容:美しさの祈願
- 桜の名所:各地の桜スポットで祀られる
石長比売(いわながひめ)
岩の女神:
- 木花咲耶姫の姉
- 永続性と不変を象徴
- 醜いが強いとされる女神
断られた理由とその結果:
- ニニギに容姿を理由に断られる
- その結果、天孫の寿命に限りができる
- 美と永続性の選択というテーマ
現代的な解釈:
- 内面の美しさの重要性
- 持続的な価値vs 一時的な魅力
- 多様性の受容の必要性
穀物・農業の神々
宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)
稲荷神の正体:
- 穀物と商業の神
- スサノオの子またはイザナギ・イザナミの子
- 稲荷信仰の中心神
稲荷信仰の特徴:
- 商売繁盛:商業の守護神
- 五穀豊穣:農業の守護神
- 家内安全:家庭の平和
- 諸願成就:様々な願いを叶える
現代での広がり:
- 伏見稲荷大社:総本宮
- 全国3万社以上の稲荷神社
- 企業の守護神:会社やお店でも祀られる
- キツネの使い:神使としての狐
豊宇気毘売神(とようけびめのかみ)
食物の女神:
- イザナミが死ぬ間際に産んだ神
- 食物全般を司る
- 伊勢神宮外宮の祭神
役割と信仰:
- 食物の安定供給
- 料理の守護
- 栄養と健康
- 衣食住の基盤
保食神(うけもちのかみ)
食物創造の神:
- 口から食物を出す不思議な能力
- ツクヨミに殺される悲劇的な運命
- 死体から五穀が生まれる
物語の意味:
- 食物への感謝の大切さ
- 生命の循環:死から新たな生命
- 清浄観念:食物への向き合い方
工芸・技術の神々
天目一箇神(あめのまひとつのかみ)
製鉄の神:
- 一つ目の神(片目または独眼)
- 鍛冶技術の神格化
- 金属加工の守護神
信仰の背景:
- 古代の製鉄技術
- 武器・農具の製造
- 職人の守護神
石凝姥命(いしこりどめのみこと)
鏡作りの神:
- 八咫鏡を製作した神
- 金属工芸の守護神
- 技術の伝承
天津麻羅(あまつまら)
鍛冶の神:
- 最初の鍛冶師
- 道具作りの神
- 技術革新の象徴
第7章:病気・災害・死の神々

病気の神々
大禍津日神・禍津日神(おおまがつひのかみ・まがつひのかみ)
災いの神々:
- イザナギの黄泉国体験から生まれた
- 様々な災いをもたらす神
- 厄除けの対象となる神
直毘神・大直毘神(なおびのかみ・おおなおびのかみ)
災いを正す神々:
- 禍津日神と対をなす神
- 災いを正常に戻す力
- 厄除け・魔除けの神
死の神々
黄泉津大神(よもつおおかみ)
死者の国の神:
- イザナミの別名
- 黄泉国の支配者
- 死者の管理
道反之大神(ちがえしのおおかみ)
境界の神:
- 黄泉比良坂で生まれた神
- この世とあの世の境界を守る
- 魔除けの神として信仰
現代に生きる神々の信仰

主要神社と祭神
日本全国の重要神社
神社名 | 祭神 | 特徴 |
---|---|---|
伊勢神宮(内宮) | 天照大御神 | 皇室の祖先神 |
伊勢神宮(外宮) | 豊受大御神 | 食物の神 |
出雲大社 | 大国主大神 | 縁結びの神 |
住吉大社 | 住吉三神 | 海上安全 |
春日大社 | 武甕槌命ほか | 藤原氏の氏神 |
諏訪大社 | 建御名方神 | 軍神・狩猟神 |
伏見稲荷大社 | 宇迦之御魂大神 | 商売繁盛 |
熱田神宮 | 草薙神剣 | 三種の神器 |
まとめ:神話体系から見えてくる日本のルーツ
神話の構造と流れ
5段階の発展
- 天地の創造:混沌から秩序へ
- 造化三神による宇宙の基盤
- 別天神による世界の枠組み
- 神世七代による段階的発展
- 日本列島の生成:国土と自然の誕生
- イザナギ・イザナミによる国産み
- 自然現象の神格化
- 生命誕生の神秘
- 天界統治の確立:秩序ある世界の実現
- 三貴神による役割分担
- アマテラスのリーダーシップ
- 対立と調和の物語
- 地上世界の開発:人間世界の基盤
- オオクニヌシによる国造り
- 出雲神話の英雄たち
- 協力と発展の物語
- 神話と歴史の接続:現実世界への橋渡し
- 天孫降臨による統治の正統性
- 皇室との系譜の確立
- 神話的権威の現実化
コメント