亡くなった大切な人にもう一度会いたい、話を聞きたい…そんな願いを叶えてくれるという不思議な力を持つ女性たちがいることをご存知でしょうか?
東北地方には古くから、死者の魂を呼び出して言葉を伝える「イタコ」と呼ばれる巫女が存在してきました。
特に青森県の恐山で行われる口寄せは全国的に有名で、多くの人々が亡き人との再会を求めて訪れています。
この記事では、東北地方に伝わる神秘的な巫女「イタコ」について、その特徴や伝承を分かりやすくご紹介します。
概要
イタコってどんな人たち?
イタコは、日本の東北地方で口寄せを行う特別な巫女のことなんです。
シャーマニズムという、霊的な世界と現実世界をつなぐ信仰に基づいて活動しています。地域によって呼び名が違って、宮城県では「オガミサマ」、山形県では「オナカマ」、福島県では「ミコサマ」とも呼ばれているんですね。
イタコの主な役割
イタコの仕事は、大きく分けて3つあります。
主な仕事内容:
- 口寄せ – 死者や生きている人の霊を呼び出して話をさせる
- オシラアソバセ – 東北の民間信仰「おしら様」の儀式を行う
- お祓い – 悪霊退治、虫封じ、魔除けなどを行う
特別な道具「イラタカ数珠」
イタコが使う道具の中でも特に重要なのが「イラタカ数珠」です。
これは300個以上の黒いムクロジの実をつなげたもので、そこに鹿の角、イノシシの牙、熊の爪、鷹の爪なんかの野生動物の骨がついています。まさに自然の力を集めた、霊的なパワーを持つ道具なんですね。
津軽地方では、梓弓(あずさゆみ)という特別な弓を使うこともありました。弓の弦を竹の棒で叩いて音を出し、その音で霊を呼び寄せるんだそうです。
伝承
厳しい修行の道
イタコになるためには、とても厳しい修行が必要でした。
多くのイタコは、生まれつきか幼い頃に目が見えなくなった女性たちです。昔は、目の不自由な女性が生きていくための数少ない職業の一つだったんですね。
修行の流れ:
- 師匠のもとで1~5年間の修行
- 板の間で祓いの文句やオシラ祭文を覚える
- イニシエーション(成人式のような儀式)を受ける
- 氏神様の社に一週間こもる
- 独立して仕事を始める
修行中は、ひたすら板を打ちながら呪文を覚えるという、まさに体で覚える訓練だったそうです。
恐山大祭での口寄せ
イタコといえば、青森県の恐山大祭が最も有名です。
毎年7月20日から24日の間、恐山にある円通寺の参道にイタコたちが集まり、参拝者のために口寄せを行います。恐山はあらゆる霊が集まる場所とされているので、どんな人の霊でも呼び出せるというんです。
3種類の口寄せ:
- 死に口(しにくち) – 亡くなった人の霊を呼ぶ
- 生き口(いきくち) – 生きている人の霊を呼ぶ
- 神口(かみくち) – 神様の霊を呼ぶ
イタコは呪文を唱えながら自己催眠状態に入り、やがて死者が生前に残した言葉を語り始めます。まるで本当に亡くなった人がそこにいるかのような、不思議な体験ができるんだそうです。
源頼政の退治伝説との関連
実は、平安時代の妖怪「鵺(ぬえ)」を退治した源頼政の話にも、イタコのような巫女が関わっているという説があります。
天皇の病気の原因を探るために巫女が呼ばれ、その占いによって鵺の存在が明らかになったという話も残っているんです。昔から、霊的な問題を解決するためには、イタコのような特別な力を持つ人が必要だったんですね。
まとめ
イタコは、東北地方に伝わる霊的な力を持つ特別な巫女です。
重要なポイント:
- 東北地方特有の巫女で、死者の霊を呼び出す「口寄せ」を行う
- 目の不自由な女性が厳しい修行を経てなることが多かった
- イラタカ数珠という特別な道具を使って霊を呼び出す
- 恐山大祭では多くのイタコが集まり口寄せを行う
- 後継者不足で伝統が失われつつある
死者と生者をつなぐ架け橋として、長い間東北の人々の心の支えとなってきたイタコ。
科学が発達した現代でも、大切な人を失った悲しみを癒やし、もう一度話がしたいという願いに応えてくれる存在として、その神秘的な力は人々を魅了し続けています。
もし機会があれば、恐山大祭でイタコの口寄せを体験してみるのも、日本の神秘的な文化に触れる貴重な経験になるかもしれませんね。


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