山で雪が降った翌日、雪の上にポツン、ポツンと一本足の足跡が続いているのを見つけたら、あなたはどう思いますか?
熊野地方の人々にとって、それは単なる動物の足跡ではありませんでした。
それは一つ目で一本足の不思議な妖怪「一本だたら」が通った証拠だったのです。
この記事では、地方に伝わる謎多き妖怪「一本だたら」について詳しくご紹介します。
一本だたらってどんな妖怪なの?

一本だたら(一本踏鞴、一つだたら)は、主に山中に棲む一眼一足の妖怪です。
恐ろしい見た目に反して人間を襲うことはなく、雪の上に特徴的な一本足の足跡を残すことで知られています。
地方によって伝承内容に違いがあり、その正体については鍛冶師(タタラ師)との関連や、古い神様の零落した姿など、様々な説が語られています。
姿・見た目
一本だたらの姿は地域によって少し違いますが、共通する特徴があります。
基本的な特徴
- 一つ目: 皿のような大きな目を持つ
- 一本足: 足は一本だけ
地域による違い
和歌山県・奈良県境(果無山脈)
- 皿のような目を持つ一本足の妖怪
- 12月20日のみ現れる
奈良県伯母ヶ峰山
- 電柱に目鼻をつけたような姿
- 雪の日に宙返りしながら移動
和歌山県熊野山中
- 姿を見た者はいない
- 雪の上に幅1尺ほどの足跡のみ残す
特徴

一本だたらには独特な行動パターンがあります。
行動の特徴
- 足跡を残す: 雪の上に一本足の足跡をつける
- 宙返り移動: 宙返りしながら移動することもある
- 人を襲わない: 恐ろしい見た目だが基本的に無害
面白い特徴
- 郵便屋は襲わない: 人を襲う地域でも郵便屋だけは例外
- 姿が見えない: 多くの場合、足跡だけで姿は見られない
伝承
一本だたらには地域ごとに興味深い伝承があります。
果無山脈の伝承
12月20日は「果ての二十日」と呼ばれる厄日で、この日に一本だたらが現れるため人通りが無くなりました。
猪笹王(いのささおう)伝説
奈良県伯母ヶ峰山では、一本だたらは「猪笹王」という鬼神を指すこともあります。
- 背中に熊笹の生えた大イノシシが狩人に撃たれて死んだ
- 亡霊となって一本足の鬼の姿で人々を襲うようになった
- 丹誠上人という高僧によって封印された
- 封印の条件として年に一度、12月20日だけは解放される
タタラ師との関係
「だたら」という名前は鍛冶師(タタラ師)に由来するという説があります。
関連する理由
- 鍛冶師は片足で鞴(ふいご)を踏むため片脚が萎える
- 炉を片目で見続けるため片目の視力が落ちる
古い鍛冶の神様である天目一箇神(あめのまひとつのかみ)が零落した姿だとも考えられています。
まとめ
一本だたらは、見た目は恐ろしいが基本的に無害な、興味深い妖怪です。
重要なポイント
妖怪の特徴
- 一つ目で一本足の独特な姿
- 人間を襲わない比較的温和な妖怪
- 雪の上に特徴的な足跡を残す
出現パターン
- 12月20日の厄日に現れる
- 熊野地方の山中が主な出没地
- 姿よりも足跡で存在が確認される
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