【長崎・五島列島に伝わる憑き物】「インネン」とは?その正体と恐ろしい伝承を解説!

神話・歴史・伝承

原因不明の病気に苦しんでいる時、それが単なる病気ではなく、霊的な存在による「知らせ」だとしたら、あなたはどうしますか?

長崎県の五島列島には、人に取り憑いて病気や災いをもたらす霊的存在「インネン」の伝承があります。

供養されていない先祖の霊や動物霊が、私たちに何かを訴えかけるために病という形で現れるというのです。

この記事では、五島列島に伝わる憑き物「インネン」について、その正体と伝承を詳しくご紹介します。

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概要

インネンは、長崎県福江市(現・五島市)や南松浦郡に伝わる憑き物のことなんです。

五島列島の最西端に位置する福江島では、人に取り憑いて病気や不和をもたらす霊的な存在を「インネン」と呼んできました。

インネンの正体

インネンとして人に憑依するのは、以下のような様々な霊的存在です。

インネンになりうる存在

  • 人間の死霊:亡くなった人の霊
  • 生霊:生きている人の強い念や恨み
  • 動物霊:狐などの動物の霊
  • 河童:水辺に住む妖怪
  • 神仏:神様や仏様の祟り

これらの霊は、憑依した人の血縁者や家に関係した者の霊、家の周辺にいる正体不明の霊などとされています。

インネンがもたらす症状

インネンに憑かれると、様々な心身の異常が現れるんです。

主な症状

  • 精神の異常
  • 内臓疾患
  • 皮膚病や腫瘍
  • 事業の不振

これらの症状は病院で治療することもできますが、根本的な原因であるインネンを祓わない限り、完治することはないと信じられてきました。

なぜインネンは憑くのか

インネンが人に憑くのには、必ず理由があります。

それは供養不足に対する要求だったり、何らかの知らせだったりするんです。

つまり、霊が生きている人に対して「供養してほしい」「何かを伝えたい」という思いを、病気という形で訴えかけているということなんですね。

ホウニンによる祓除

インネンに憑かれた場合、ホウニンと呼ばれる呪術者に祈ってもらう必要があります。

ホウニンはシャーマンのような存在で、インネンを自分自身に憑依させることができるんです。

そして、憑依したインネンと直接言葉を交わし、その要求を聞き出して受け入れることで、インネンによる害を払うことができます。

伝承

インネンにまつわる具体的な事例を2つご紹介しましょう。

【事例1】腫れ物に苦しんだ主婦の話

ある農家の主婦が、脇の下にできた腫れ物で夜も眠れないほど苦しんでいました。

悪性腫瘍が疑われて手術を受けたのですが、すぐに再発してしまい、二度目の手術を受けることになったんです。

ホウニンの診断

そこで、主婦はホウニンを訪ねることにしました。

するとホウニンは、インネンの声を聞いてこう告げました。

「あなたの屋敷内には多数の霊がいる。先祖ではないか。祀ってほしいと知らせている。霊は腫れ物の数だけいる。大皿に飯を盛り、大木の下に置いて拝みなさい」

霊の正体

調べてみると、この主婦が住む土地には、かつて平家の末裔が居住していたという伝承があり、その墓地が存在していたことが分かったんです。

つまり、供養されていない平家の末裔の霊たちが、供養を求めて主婦に知らせていたということなんですね。

【事例2】旅館経営者の災難

ある旅館の経営者が、病気に加えて経営不振にも悩まされていました。

水神の怒り

困り果てた経営者がホウニンに相談したところ、意外な原因が判明しました。

旅館にあった古い井戸が水質汚染で汚されてしまったため、水神が怒って祟りを成したというのです。

この事例では、神様の怒りがインネンとして現れ、経営者に災いをもたらしていたんですね。

伝承から分かること

これらの事例から、インネンの特徴が見えてきます。

インネンの特徴

  • 病気は霊からの「知らせ」や「要求」である
  • 供養不足の霊が多い
  • 土地に関係した霊が憑くこともある
  • 自然(水神など)への不敬も原因となる
  • ホウニンを通じて霊と対話できる

まとめ

インネンは、五島列島に伝わる憑き物で、霊的存在からの大切なメッセージを伝える存在です。

重要なポイント

  • 長崎県五島列島に伝わる憑き物の伝承
  • 死霊、生霊、動物霊、河童、神仏などが憑依する
  • 精神異常、内臓疾患、皮膚病などの症状をもたらす
  • 供養不足や何らかの知らせのために憑く
  • ホウニンという呪術者が祓除を行なう
  • 霊と対話して要求を受け入れることで解決する
  • 病院での治療だけでは根本的には治らない

現代では病気の多くが医学で説明できるようになりましたが、五島列島では今でもこうした霊的な世界観が生活の中に息づいているのかもしれません。

原因不明の病気や不運が続く時、それは誰かからの「知らせ」なのかもしれませんね。


参考文献

  • 佐々木宏幹『霊と呪力』
  • 佐々木宏幹『聖と呪力』

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