【雨の夜に現れる青白い炎】妖怪「陰火(いんか)」とは?水では消えない不思議な火の正体を解説!

神話・歴史・伝承

夜道を歩いていると、青白くぼんやりと光る火を見かけたことはありませんか?

触れても熱くない、水をかけても消えない…そんな不思議な火が、日本の伝承には数多く残されているんです。

特に雨の降る夜に現れやすいこの火は「陰火(いんか)」と呼ばれ、幽霊とともに姿を見せる恐ろしい存在として語り継がれてきました。

この記事では、水では消えない不思議な炎「陰火」について、その特徴や伝承を分かりやすくご紹介します。

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概要

陰火は、日本全国で語り継がれてきた火妖怪の一種なんです。

江戸時代の百科事典『和漢三才図会』によると、鬼火や火の玉と呼ばれる妖怪は日本全国で百種類をはるかに超えており、それらは大きく「陽火」と「陰火」の二つに分類されるとされています。

陽火と陰火の違い

この二つの火には、正反対の性質があります。

陽火の特徴

  • 触れると熱い
  • 火災の原因になることがある
  • 水をかけると消える(普通の火と同じ)

陰火の特徴

  • 触れても熱さを感じない
  • 水をかけるとかえって燃えさかる
  • 雨の降る夜に現れやすい
  • 白色または青白い色をしている
  • 静かに燃えて陰気な雰囲気を出す

つまり、陰火は私たちが知っている普通の火とはまったく逆の性質を持っているんですね。

陰火の外見

陰火は燐光(りんこう)のように光るだけで、それ自体は何の影響も及ぼしません。

見た目の特徴としては:

  • 白色または青白い色が多い
  • いかにも陰気な雰囲気
  • ほとほとと静かに燃える
  • うら寂しい印象を与える

よく幽霊とともに現れるのがこの陰火で、怪談話に登場する火はほとんどがこのタイプだと考えられています。

伝承

陰火には、日本各地でさまざまな種類が伝えられています。

雨の日に現れる陰火

『和漢三才図会』によると、陰火は湿気によって燃え盛るという特殊な性質があります。

このため、雨が降る日に現れる火妖怪は、すべて陰火の一種だとされているんです。

雨の日の陰火の例

  • 螢火(ほたるび):全国各地で見られる
  • 螢虫(ほたるむし):新潟地方での呼び名
  • カボタル:千葉県印旛沼周辺に伝わる
  • 釣瓶火(つるべび):京都府亀岡地方の伝承
  • 小右衛門火(こえもんび):奈良県橿原地方に残る話

これらの火は、雨の夜にふわふわと漂いながら現れるという共通点があります。

雨に関係なく現れる陰火

一方で、天気に関係なく出現する陰火も多く存在します。

代表的なのが遺念火(いねんび)で、沖縄地方に伝わる陰火です。

これは人の強い恨みや未練が火となって現れたものとされ、幽霊の魂そのものが光っているような存在だと考えられていました。

『和漢三才図会』の記述

江戸時代の百科事典『和漢三才図会』には、陰火についてこう記されています。

陰火は草木を焼かず、金石(きんせき=金属や石)も流さない。湿気によって燃え盛り、天に至ってようやく止む

つまり、陰火は物を燃やす力はないけれど、湿気があるとどんどん強く燃えるという不思議な存在なんです。

水をかけるとかえって燃えさかるというのも、この性質から来ています。

雨の夜に現れやすいのは、まさにこの理由だったんですね。

まとめ

陰火は、日本の火妖怪の中でも特に神秘的で不思議な存在です。

重要なポイント

  • 日本全国に伝わる火妖怪の一種で、陽火と対をなす存在
  • 触れても熱くなく、水をかけると燃えさかる特殊な性質
  • 青白い色で静かに燃え、陰気な雰囲気を持つ
  • 湿気によって燃え盛るため、雨の夜に多く現れる
  • 幽霊とともに出現することが多い
  • 螢火・釣瓶火・遺念火など、各地に様々な種類がある

もし雨の降る夜に青白い火を見かけたら…それは陰火かもしれません。

普通の火とは違って水では消せないので、近づかずにそっと見守るのが一番ですよ。


参考文献

  • 『和漢三才図会』寺島良安編 / 島田勇雄・竹島淳夫・樋口元巳訳注
  • 『日本妖怪大事典』村上健司編著

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