夜空に輝くフォーマルハウトという星を見上げたことはありますか?
実はその星の近くには、巨大な炎の塊として存在する恐ろしい神がいるとされています。
クトゥルフ神話に登場する「生ける炎」は、火を司る旧支配者クトゥグアの別名なんです。
「生ける炎って聞いたことあるけど、どんな存在?」「クトゥグアって何者なの?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、クトゥルフ神話に登場する「生ける炎」ことクトゥグアについて、その正体から能力、恐ろしい化身まで分かりやすく解説していきます。
「生ける炎」とは?

クトゥグアの異名
「生ける炎(Living Flame)」とは、クトゥルフ神話に登場する旧支配者クトゥグア(Cthugha)の異名です。
「燃えるもの(The Burning One)」とも呼ばれることがあります。
この名前は、クトゥグアが顕現するときの姿に由来しているんですね。
地球に現れる際、クトゥグアは文字通り巨大な生きている炎として姿を現します。
ただの火ではなく、意志を持って動き、燃え盛る炎そのものが神格として存在しているというわけです。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | クトゥグア(Cthugha) |
| 別名 | 生ける炎、燃えるもの |
| 分類 | 旧支配者(Great Old One) |
| 属性 | 火 |
| 住処 | フォーマルハウト(地球から約25光年) |
| 創造者 | オーガスト・ダーレス |
| 初出 | 『闘に棲みつくもの』(1944年) |
クトゥグアの誕生背景
ダーレス神話と四大元素
クトゥグアは、H.P.ラヴクラフトの後継者オーガスト・ダーレスによって創造された神格です。
ダーレスはクトゥルフ神話の神々を古典的な四大元素(火・水・風・地)に分類しようとしました。
ところが、1943年にフランシス・T・レイニーという研究者から「火の元素を司る神がいない」と指摘されたんです。
この指摘を受けてダーレスが作り出したのがクトゥグアでした。
つまり、クトゥグアは神話体系を完成させるために後から追加された神格なんですね。
初登場作品
クトゥグアの名前が最初に言及されたのは、1944年の『アンドルー・フェランの手記』という作品です。
しかし、実際に姿を現したのは同年発表の『闇に棲みつくもの(The Dweller in Darkness)』が最初でした。
この作品では、ナイアーラトテップの拠点である「ンガイの森」を焼き払う強大な存在として描かれています。
クトゥグアの姿と特徴
巨大な炎の塊
クトゥグアの姿は、一言で表すなら巨大な炎の塊です。
その大きさは恒星級、あるいは惑星規模とも言われています。
地球に召喚される際は、さすがにフルサイズでは現れません。
縮小されたサイズか、一部だけが召喚されるのが一般的とされているんです。
もしフルサイズで現れたら、地球そのものが滅んでしまいますからね。
不定形の炎
クトゥルフ神話の神々といえば、触手やねばねばした粘液質の姿を想像する方も多いでしょう。
しかしクトゥグアは珍しく、そういった特徴を持ちません。
純粋な炎として存在する、ある意味で「きれいな」神格なんです。
ただし、その中心部には光の小球の集合体が見えるとされています。
住処と封印
フォーマルハウト
クトゥグアの住処は、地球から約25〜27光年離れたフォーマルハウトという恒星の近くです。
フォーマルハウトは秋の夜空で見つけやすい一等星で、「みなみのうお座」に属しています。
一説によると、フォーマルハウトの近くにあるコルヴァズという小さな恒星の中に棲んでいるとも言われています。
コルヴァズがフォーマルハウトの別名だという説もあり、詳細は謎に包まれたままです。
旧神による封印
クトゥグアは旧神(Elder Gods)によって封印されているとされています。
ダーレスの設定では、旧支配者たちは旧神との戦いに敗れ、それぞれの場所に封じ込められました。
クトゥグアもその一柱として、フォーマルハウト付近に封印されているというわけです。
クトゥグアの召喚方法
召喚呪文
クトゥグアは、特定の呪文を唱えることで地球に召喚できるとされています。
その呪文は以下の通りです。
「Ph’nglui mglw’nafh Cthugha Fomalhaut n’gha-ghaa naf’l thagn! Iä! Cthugha!」
この呪文をフォーマルハウトが地平線上に見えているときに唱えると、クトゥグアを呼び出せると言われています。
召喚の危険性
クトゥグアの召喚は非常に危険です。
召喚に成功した場合、クトゥグアは無数の炎の精(Fire Vampires)を従えて現れ、周囲を焼き尽くします。
召喚者にとって都合よく動いてくれる保証はどこにもありません。
むしろ、召喚者ごと焼き払われる可能性のほうが高いでしょう。
配下:炎の精(Fire Vampires)
炎の精とは
クトゥグアには「炎の精」と呼ばれる配下が存在します。
英語では「Fire Vampires」、日本語では「炎の吸血鬼」とも呼ばれることがあります。
小さな光の球体、あるいは赤い稲妻のような姿をした存在で、クトゥグアが召喚されると数百、数千という数が一緒に現れるんです。
炎の精の特徴
炎の精には以下のような特徴があります。
- 触れたものを発火させる
- 催眠性の踊りで人間を惑わす
- 水や消火器が弱点
- 物理攻撃では倒せない
TRPGでは、放火事件や人体発火のシナリオで登場させやすい神話生物として人気があります。
フサッグァ
炎の精を統率する存在としてフサッグァ(Fthaggua)という王がいます。
フサッグァはクトゥグアの従者、あるいは化身とも言われており、クトゥグアとともにフォーマルハウトに住んでいるとされています。
ナイアーラトテップとの関係
天敵同士
クトゥグアとナイアーラトテップ(ニャルラトホテプ)は天敵同士という設定があります。
『闇に棲みつくもの』では、ナイアーラトテップの地球上の拠点「ンガイの森」を、クトゥグアが完全に焼き払う場面が描かれました。
なぜ両者が敵対しているのかは明確には語られていませんが、この設定のおかげでクトゥグアは「使いやすい神格」として知られています。
対ナイアーラトテップの切り札
TRPGやフィクションでは、ナイアーラトテップの脅威に対抗するためにクトゥグアを召喚するという展開がよく見られます。
ただし、火を以て火を制するようなもので、召喚した結果がどうなるかは保証の限りではありません。
恐ろしい化身:生ける漆黒の炎
生ける漆黒の炎とは
クトゥグアには「生ける漆黒の炎(Living Flame of Deepest Black)」という恐ろしい化身が存在します。
これはクトゥグアの召喚に失敗したときに現れる存在なんです。
その姿
生ける漆黒の炎の姿は以下のように描写されています。
- 炎をまとった雄牛のような筋肉の塊
- 7本の角を持つ
- 黒い炎で覆われている
- 光を吸収するため闘の中では見えにくい
ギリシャ神話のミノタウロスを彷彿とさせる姿ですね。
制御不能の存在
この化身の恐ろしいところは、理性が一切ないという点です。
クトゥグアの純粋なエネルギーだけが形を得たもので、周囲を焼き尽くすことしか考えていません。
魔術師エイボンですら、この存在を束縛する方法を知らなかったと言われています。
古代のハイパーボリアやアトランティスでは、「炎をもたらすもの」という教団がこの化身を崇拝していたそうです。
クトゥグアの子:アフーム=ザー
凍える炎
クトゥグアにはアフーム=ザー(Aphoom-Zhah)という子供がいます。
興味深いことに、アフーム=ザーは父とは正反対の性質を持っています。
その姿は「生ける灰色の炎」と呼ばれ、触れたものを凍りつかせる極寒の炎なんです。
冷たきものたちの長
アフーム=ザーは、かつてハイパーボリアで神として崇拝されていました。
また、ルリム・シャイコースなどの「冷たきもの」たちの長としての側面も持っています。
炎の神から氷の神が生まれるという、クトゥルフ神話らしい逆説的な設定ですね。
現代作品での登場
這いよれ!ニャル子さん
日本で最もクトゥグアの知名度を上げた作品といえば、『這いよれ!ニャル子さん』でしょう。
この作品では「クー子」という名前で、赤髪の美少女キャラクターとして登場します。
ニャル子(ナイアーラトテップ)とは犬猿の仲という設定が、原典の「天敵」設定を踏襲しているんですね。
ゲーム作品
クトゥグアは様々なゲーム作品にも登場しています。
- Fate/Grand Order:楊貴妃に宿る存在として
- パズドラ:モンスターとして
- モンスト:コラボキャラクターとして
- 東京放課後サモナーズ:擬人化ドラゴンとして
- デモンベインシリーズ:旧支配者として
擬人化される際は、炎をイメージした赤髪の女性キャラクターになることが多いですね。
TRPGでのクトゥグア
使いやすい神格
クトゥルフ神話TRPGにおいて、クトゥグアは比較的「使いやすい」神格として知られています。
その理由は以下の通りです。
- 召喚方法が明確(呪文とフォーマルハウトの条件)
- ナイアーラトテップへの対抗手段になる
- 炎というわかりやすい属性
- 配下の炎の精がシナリオに組み込みやすい
データ的な特徴
TRPGでは、クトゥグアは以下のような能力を持つ存在として設定されています。
- 四大元素の「火」を司る
- 遭遇するとSAN値が大幅に減少する
- 物理攻撃では倒せない
- 召喚には特定の条件が必要
シナリオでは、放火事件の調査や、炎の精との遭遇、クトゥグア教団との戦いなどで登場することが多いです。
崇拝と教団
古代の崇拝
クトゥグアは古代において人間に崇拝されていた歴史があります。
リチャード・L・ティアニーの作品によると、古代ローマのメルカース教会などでクトゥグアへの信仰が行われていたそうです。
また、ゾロアスター教の予言者ネスター・モベダン・モベドがクトゥグア教団を率いていたという設定もあります。
現代への継続
これらの教団は歴史の闇に消えたように見えますが、実は密かに活動を続けているという設定も存在します。
フィクションでは、サンフランシスコを炎で包むためにクトゥグアを召喚しようとする教団などが描かれています。
まとめ
「生ける炎」とは、クトゥルフ神話に登場する火の旧支配者クトゥグアの異名です。
この神格についてまとめると、以下のようになります。
- オーガスト・ダーレスが四大元素の「火」を補完するために創造
- フォーマルハウト近くに封印されている
- 巨大な炎の塊として顕現する
- ナイアーラトテップの天敵
- 配下に「炎の精」を持つ
- 召喚に失敗すると「生ける漆黒の炎」が現れる
- 子供のアフーム=ザーは氷の炎を持つ
クトゥルフ神話の中でも比較的シンプルで分かりやすい神格ですが、その力は恐ろしく強大です。
もし夜空でフォーマルハウトを見つけたら、その近くに巨大な炎の神が眠っていることを思い出してみてください。
そして、決して呪文を唱えようなどとは思わないことをおすすめします。
召喚に成功しても失敗しても、待っているのは炎に包まれる未来だけですから。
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参考文献
- オーガスト・ダーレス『闇に棲みつくもの』(1944年)
- リン・カーター『ゾス=オムモグ』(1976年)
- 『クトゥルフ神話TRPG』各種ルールブック
- 『新クトゥルフ神話TRPG マレウス・モンストロルム』


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