もし夜道で困っている美女に出会ったら、あなたは助けてあげますか?
平安時代、京都の一条戻橋で美しい女性を助けた武将が、とんでもない恐怖体験をしました。
なんとその美女の正体は、人を襲う恐ろしい鬼女だったんです。
この記事では、渡辺綱と死闘を繰り広げた伝説の妖怪「一条戻橋の鬼女」について詳しくご紹介します。
概要

一条戻橋の鬼女(いちじょうもどりばしのきじょ)は、平安時代に京都の一条戻橋に現れた妖怪です。
美しい女性に化けて人を騙し、源頼光四天王の一人である渡辺綱と戦った話が『平家物語』などに記されています。
この鬼女は、綱を愛宕山へ連れ去ろうとしましたが、名刀「髭切」によって腕を斬り落とされました。 しかし後日、綱の養母に化けて屋敷を訪れ、見事に腕を取り戻したという執念深い妖怪なんです。
姿・見た目
一条戻橋の鬼女は、変身能力に優れた妖怪でした。
人間に化けた姿
- この世のものとは思えないほどの美女
- 上品で優雅な振る舞い
- 夜道で困っているように見せかける
本来の鬼の姿
- 恐ろしい形相の鬼女
- 丸太のような太い腕
- 切り落とされた腕は牛のように黒く、白い毛が生えていた
特に印象的なのは、その変身の巧みさです。
源頼光四天王の一人である渡辺綱ですら、最初は完全に騙されてしまったほどなんですね。
特徴
一条戻橋の鬼女には、他の妖怪とは異なる特殊な能力がありました。
主な能力と行動
- 完璧な変身能力(美女や老婆に化ける)
- 空を飛ぶ能力(人を掴んで飛行できる)
- 怪力(成人男性を軽々と持ち上げる)
- 執念深さ(腕を取り戻すまで諦めない)
出現場所の特徴
一条戻橋は、京都の鬼門(北東の方角)にあたる場所でした。 鬼門は鬼が出入りする不吉な方角とされ、あの世とこの世をつなぐ魔界の入口と考えられていたんです。 だからこそ、この橋に鬼女が現れたのも偶然ではなかったのかもしれません。
伝承

一条戻橋の鬼女と渡辺綱の戦いは、平安時代の有名な武勇伝の一つです。
運命の出会い
ある夜、渡辺綱が主人の源頼光の用事で一条大宮へ行った帰り道でのことです。 一条戻橋にさしかかると、美しい女性が一人で立っていました。
女性は「五条まで送ってほしい」と頼み、綱は親切に馬に乗せてあげます。 ところが途中で女性は「実は家は都の外の愛宕山にある」と言い出したんです。
正体を現す鬼女
その瞬間、美女は恐ろしい鬼の姿に変身しました。 「我々の仲間を殺した恨み、今こそ晴らしてくれる!」と叫び、綱の髪の毛を掴んで空高く舞い上がったのです。
しかし綱は冷静でした。 北野天満宮の屋根が見えた時、腰の名刀「髭切」を抜いて鬼女の腕を一刀両断。 綱は天満宮の屋根に落下して助かり、腕を失った鬼女は愛宕山へ逃げ去りました。
腕の奪還
しばらくして、綱の養母が屋敷を訪ねてきました。 「鬼の腕を見せてほしい」とせがむ養母に、綱が腕を見せた瞬間、養母は鬼女の正体を現し、腕を奪って逃げ去ったのです。
この執念深さこそが、一条戻橋の鬼女の恐ろしさを物語っています。
起源
一条戻橋の鬼女の正体については、いくつかの説があります。
茨木童子説
一部の伝承では、この鬼女は茨木童子(酒呑童子の配下)と同一視されることがあります。 渡辺綱に腕を斬られ、後に取り戻すという話が共通しているためです。
橋姫説
また、橋に関連する妖怪として橋姫との関連も指摘されています。 宇治の橋姫神社にも似た伝説が残されているんです。
安倍晴明との関係
一条戻橋の近くには陰陽師・安倍晴明の屋敷があり、晴明の式神がこの橋の下に住んでいたという伝承もあります。 魔界との境界にある特別な場所だったことがうかがえますね。
まとめ
一条戻橋の鬼女は、美貌と恐怖を併せ持つ平安時代の代表的な妖怪です。
重要なポイント
- 美女に化けて渡辺綱を騙した妖怪
- 一条戻橋は魔界の入口とされた特別な場所
- 名刀「髭切」で腕を斬られるも執念深く奪還
- 変身能力と飛行能力を持つ強力な鬼
- 茨木童子と同一視されることもある
単なる妖怪退治の話ではなく、人の優しさにつけこむ恐ろしさと、執念の強さを描いた物語。
それが一条戻橋の鬼女の伝説なんです。
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