誰かに強い恨みを持たれたとき、突然原因不明の頭痛や病気に襲われたことはありませんか?
もしかしたらそれは、沖縄で古くから恐れられている生霊「イチジャマ」の仕業かもしれません。
生きている人間の念が相手を苦しめるという、この恐ろしい呪術は、琉球王国時代には死罪にもなったほど人々に恐れられていました。
この記事では、沖縄の闇の伝承として語り継がれる生霊「イチジャマ」について、その恐ろしい特徴と伝承を分かりやすく解説します。
概要

イチジャマは、沖縄県に伝わる生霊(いきりょう)の呼び名です。
漢字では「生邪魔」と書くこともあり、まさに生きている人間の邪悪な念が他人の邪魔をするという意味が込められているんですね。
本土でいう生霊と似ていますが、沖縄のイチジャマには独特の特徴があります。それは、意図的に呪術として使えるという点なんです。
イチジャマの基本的な性質
イチジャマには3つの意味があります:
- 生霊そのもの:生きている人間から抜け出た魂や念
- 呪術の名前:相手に生霊を送る呪法のこと
- 呪術師の呼び名:イチジャマを操る人(イチャヤーともいう)
つまり、憎しみや恨みの念が相手に取り憑いて害を与えるだけでなく、それを意図的にコントロールできる人がいるということなんです。
誰が狙われるの?
イチジャマの恐ろしいところは、人間だけでなく家畜や農作物にまで被害が及ぶことです。
被害を受けやすいもの:
- 人間:突然の病気、原因不明の頭痛、不運な事故
- 家畜:牛、馬、豚などが病気になる
- 農作物:畑の作物が枯れたり、収穫が激減する
イチジャマを使う人の特徴
イチジャマを操る人(イチャヤー)には、いくつかの特徴があるといわれています。
- 主に女性が多い
- 鋭い目つきをしている
- 嫉妬深く、恨みを持ちやすい性格
- 母から娘へと能力が受け継がれる
- 家系には美男美女が多い
面白いことに、イチジャマの家系は美形が多いため、知らずに恋に落ちて悲劇的な結末を迎える話も伝わっているんです。
伝承

恐ろしい呪法の方法
イチジャマの呪術には、いくつかの方法があります。
最も有名なのが「イチジャマブトキ(生邪魔仏)」を使った呪法です。
イチジャマブトキを使った呪い
- 人形を鍋に入れる:呪いたい相手を表す人形を用意
- 呪文を唱える:「頭、頭、頭…」と痛めたい部位を繰り返す
- 人形を煮る:鍋で人形を煮ながら念を送る
- 相手が苦しむ:呪われた相手は突然その部位に激痛が走る
でも実は、道具がなくても「あいつが憎い」と強く思うだけで、相手にイチジャマが取り憑くこともあるというから恐ろしいですね。
見分け方と対処法
イチジャマに取り憑かれた時の症状
- 原因不明の病気や痛み
- 脈の打ち方が異常になる(これが見分けるポイント)
- 急な不運や事故が続く
沖縄の霊能者であるユタ(巫女)なら、脈を診ただけですぐにイチジャマかどうか分かるそうです。
治療方法
イチジャマを追い払う方法もちゃんとあります:
- ユタによる祈祷:病人の親指を紐で縛り、釘を打つ真似をしてイチジャマを送り返す
- 悪口を言いまくる:病人の前でその人の悪口を言うと追い払える
- 豚の糞を投げる:儀礼的に汚すことで呪いを解く
なんだか変わった方法ばかりですが、これらは古くから伝わる対処法なんです。
歴史的な記録
イチジャマは単なる迷信ではなく、琉球王国時代には実際に処罰の対象でした。
死罪になった事例
- 1676年、1678年、1687年:イチジャマを使ったとされる女性が告発され、死罪に
- 1679年:ある女性がイチジャマ使いとして告発されそうになり自殺、関係者全員が罰金刑に
当時の人々がいかにイチジャマを恐れ、真剣に対処していたかが分かりますね。
贈り物の罠
イチジャマには、もう一つ恐ろしい手口があります。
それは贈り物を使った呪いです。
イチジャマは本人と同じ姿で現れ、こんなものを贈ってきます:
- 芭蕉(バナナの仲間)
- ニンニク
- ラッキョウ
これらを受け取ってしまうと、イチジャマに取り憑かれ、やがて死に至るという恐ろしい話が伝わっています。
まとめ
イチジャマは、沖縄に伝わる恐ろしい生霊の呪術です。
重要なポイント
- 生きている人間の念が相手を苦しめる沖縄独特の生霊
- 「生邪魔」とも書き、意図的な呪術として使える
- イチジャマブトキという人形を使った呪法が有名
- 人間だけでなく家畜や農作物にも被害が及ぶ
- ユタ(巫女)による祈祷で治療可能
- 琉球王国時代には死罪になるほど恐れられていた
現代でも沖縄では、原因不明の病気や不運が続くと「イチジャマかも?」と考える人がいるそうです。
もし急に体調が悪くなったり、見知らぬ人から芭蕉やニンニクをもらったりしたら…それはイチジャマの仕業かもしれません。
人の恨みや嫉妬の念は、時として想像を超える力を持つということを、この伝承は教えてくれているのかもしれませんね。


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