もし自分の腕を切り落とされたら、あなたならどうしますか？ 平安時代、渡辺綱に腕を斬られた鬼がいました。
その鬼は老婆に化けて腕を取り戻し、再び京の都を恐怖に陥れたんです。
この記事では、酒呑童子の右腕として活躍した最強の鬼「茨木童子」について詳しくご紹介します。
概要
茨木童子（いばらきどうじ）は、平安時代に京都を荒らし回った鬼の一人です。
大江山を本拠地にしていた鬼の総大将・酒呑童子の第一の家来として知られています。
源頼光の部下である渡辺綱と戦って腕を斬られたという話が特に有名なんですね。
その後、老婆に化けて腕を取り戻すエピソードは、能や歌舞伎などの題材として今も親しまれているんです。
起源
茨木童子の出生地には複数の説があり、どれが本当なのかは分かっていません。
主な出生地説
- 摂津国説（大阪府茨木市・兵庫県尼崎市）
- 越後国説（新潟県長岡市）
特に有名なのが大阪府茨木市の伝承です。
生まれた時から歯が生え揃い、すぐに歩き出したという異常な赤ん坊だったそうです。
母親は恐怖のあまりショック死してしまい、父親は気味悪がって茨木村の床屋の前に捨てたといいます。
鬼になった経緯
床屋夫婦に拾われた童子は、5〜6歳で大人のような体格に成長しました。
床屋の仕事を覚えさせられましたが、ある日客の頭を剃っている時に手を滑らせて傷つけてしまったんです。
何気なく血を舐めた童子は、その味の美味しさに目覚めてしまいました。
それ以降、わざと客を傷つけては血を舐めるようになり、ついに親方に叱られます。
翌朝、川面に映った自分の顔が鬼になっているのを見て、そのまま山へ逃げ込んだそうです。
その後、大江山で酒呑童子と出会い、配下になったといわれています。
姿・見た目
茨木童子の姿は、物語によって異なる描写がされています。
様々な姿
- 童髪（おかっぱ頭）の子供として描かれることがある
- 白髪の鬼女の姿（歌舞伎や絵巻で最も一般的）
- 美しい女性に変身できる
- 老婆にも化けることができる
渡辺綱に斬られた腕については、指が4本だったという記録も残されています。 変身能力に優れ、人を騙すのが得意な鬼だったんですね。
特徴
茨木童子には、他の鬼とは異なる独特の特徴があります。
主な能力と性格
- 怪力を持つ強力な鬼
- 変身能力に優れ、美女や老婆に化ける
- 執念深い性格で、斬られた腕を必ず取り戻す
- 知略に長け、相手を騙すのが上手い
- 酒呑童子への忠誠心が厚い
特に変身能力は非常に高く、源頼光の家来たちですら見破れなかったほどです。 美しい女性に化けて油断させ、襲いかかるという戦法を得意としていました。
伝承
茨木童子の伝承で最も有名なのが、渡辺綱との戦いです。
一条戻橋での遭遇
ある夜、渡辺綱が一条戻橋を通りかかると、美しい女性が立っていました。 「五条まで送ってください」と頼まれ、親切に馬に乗せてあげたんです。
ところが途中で女は「本当は愛宕山に行きたい」と言い、突然鬼の姿に変身しました。 鬼は綱の髪をつかんで空中に飛び上がりましたが、綱は冷静に名刀「髭切」を抜いて鬼の腕を斬り落としたのです。
腕の奪還
腕を失った茨木童子でしたが、諦めませんでした。 陰陽師の安倍晴明は「7日間は誰も家に入れるな」と綱に忠告していました。
しかし6日目、綱の伯母が訪ねてきます。
情に負けて家に入れると、伯母は「鬼の腕を見せて」とせがみました。
封印を解いて見せた瞬間、伯母は茨木童子の正体を現し、腕を奪って逃げ去ったのです。
最期
腕を取り戻した茨木童子は、再び酒呑童子の配下として京都を荒らし回りました。 しかし源頼光の討伐隊によって大江山は攻められ、酒呑童子が討たれます。
主君の死を見た茨木童子は頼光に飛びかかりましたが、渡辺綱にかばわれ、最後は頼光によって首を斬られたといいます。
まとめ
茨木童子は、執念深さと変身能力を武器に京都を恐怖に陥れた強力な鬼でした。
重要なポイント
- 酒呑童子の第一の家来として活躍
- 生まれながらの異形で、血の味を覚えて鬼になった
- 渡辺綱に腕を斬られるも、老婆に化けて奪還
- 変身能力と怪力を持つ知略派の鬼
- 最後は源頼光によって討たれる
単なる力任せの鬼ではなく、知恵と執念を持った恐ろしい存在。 それが茨木童子だったんです。
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