山奥でひっそりと暮らす兄妹。
でも、もし大切な家族が人を食べる鬼に変わってしまったら、あなたはどうしますか?
九州地方に伝わる「人食い妹(ひとくいいもうと)」は、まさにそんな恐ろしくも悲しい物語なんです。
家族の変貌による恐怖で、背筋が凍るような昔話として語り継がれています。
この記事では、九州地方(特に鹿児島県)に伝わる恐怖の昔話「人食い妹」について、その特徴と伝承をわかりやすくご紹介します。
概要

「人食い妹」は、九州地方の山奥を舞台にした日本の昔話です。
この物語は「鬼は妹」という別名でも知られており、兄妹の悲劇的な運命を描いています。
物語の中心となるのは、人間の肉を好んで食べるという恐ろしい性質を持つ妹の存在です。
物語の基本情報
- 名称:人食い妹(ひとくいいもうと)
- 別名:鬼は妹
- 地域:九州地方(特に鹿児島県に多く分布)
- 登場人物:兄、妹、両親、兄の妻
最初は普通の人間だった妹が、いつしか本物の鬼へと変貌を遂げてしまうという、恐怖の物語として知られています。
特徴
人食い妹には、恐ろしい特徴がいくつもありました。
妹の異常な行動
夜中の外出:
- 兄が寝入ると布団を抜け出す
- 明け方に体を冷やして帰ってくる
- 牧場で牛の血を吸っている
人食いの性質:
- 人間の肉を好む
- 家族さえも食べてしまう
- 「新鮮な生の食材(あったら無塩ぶいん)」と人間を呼ぶ
鬼としての能力
「鬼は妹」として恐れられた存在は、普通の人間では考えられない力を持っていました。
- 怪力:木を根こそぎ倒そうとする
- 執念深さ:どこまでも兄を追いかける
- 擬態能力:普通の妹のふりをして家族を欺く
- 歯を研ぐ:人を食べる前の準備として
特に恐ろしいのは、家族でさえ妹が鬼だと気づかないほど巧妙に化けていることです。
伝承

「人食い妹」の物語には、地域によっていくつかのバージョンが存在します。
基本的な物語の流れ
兄の発見:
ある夜、兄は妹の不審な行動に気づきます。
こっそり後をつけると、妹が牛の血を吸っている恐ろしい光景を目撃してしまうのです。
「鬼は妹だった」という衝撃の事実を知った兄は震え上がりました。
両親の不信:
兄は両親に「妹は鬼だ」と訴えますが、両親は全く信じません。
それどころか「お前の心根の方が鬼だ」と言って、兄を家から追い出してしまいます。
動物たちとの出会 い:
追放された兄は旅の途中で、様々な動物を助けます。
- 子供たちにいじめられていた蚊を助ける
- 足に釘が刺さった虎を助ける
- かつて命を救ったワシとの再会
村の全滅:
しばらくして兄が故郷に戻ると、村は静まり返っていました。
妹だけが生き残っており、「流行り病で村人は全員死んだ」と言います。
しかし実際は、人食い妹が村人全員を食べてしまったのです。
両親の霊からの警告:
太鼓を叩いて待つよう言われた兄の前に、白と黒のネズミが現れます。
それは両親の霊で、「妹は今、歯を研ぎに行った。すぐ逃げろ」と警告します。
両親もついに「鬼は妹」だったことを認めたのです。
最後の逃走劇:
兄は必死に逃げますが、人食い妹は執拗に追いかけてきます。
馬の足を切って投げつけながら時間を稼ぎ、最後は松の木に登って逃げました。
絶体絶命のその時、兄がかつて助けた虎が現れて妹と戦い、ついに鬼を倒すのです。
別バージョンの結末
興味深いことに、この物語には異なる結末も存在します。
- ワシが兄を背に乗せて空へ逃げる版
- 妹の口から謎の生物が出て、妹が元に戻る版
- 妹がどうなったか分からないまま終わる版
これらの違いは、地域によって「人食い妹」の語り継がれ方が異なることを示しています。
まとめ
「人食い妹」は、家族愛と恐怖が複雑に絡み合った九州地方の昔話です。
この物語の重要ポイント
- 人間が鬼に変わる恐怖を描いた「鬼は妹」の物語
- 家族でも信じてもらえない孤独と絶望
- 動物への恩が命を救
- 両親が白鼠の霊となって警告する場面
- 地域により異なる結末が存在
- 鹿児島県を中心に九州全体で語り継がれる
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