深い森の中から、血も凍るような悲鳴が聞こえてきたら、あなたはどうしますか?
アメリカ・ニュージャージー州の住民たちは、300年もの間、この恐怖と共に生きてきました。馬のような顔、コウモリの翼、そして悪魔のような尾を持つ謎の怪物。それが「ジャージー・デビル」です。
1909年には、わずか1週間で1000人以上が目撃し、学校が休校になるほどの大パニックを引き起こした伝説の化け物。
この記事では、アメリカで最も有名な未確認生物「ジャージー・デビル」の恐ろしい姿と、その背後に隠された呪われた家族の物語について詳しくご紹介します。
概要

ジャージー・デビル(Jersey Devil)は、アメリカ・ニュージャージー州のパインバレンズ(松林地帯)で、18世紀から現在まで目撃され続けている伝説の怪物です。
別名「リーズ・デビル(Leeds Devil)」や「リーズ家の悪魔」とも呼ばれ、地元では悪魔の化身として恐れられています。単なる都市伝説とは違い、実際に多くの目撃証言があり、1909年には社会現象になるほどの大騒動を引き起こしたんです。
この怪物の最大の特徴は、呪われた出生伝説を持っていること。1735年、リーズ家の母親が13番目の子供を産む時、「こんなに苦しませるなら悪魔でも生まれてくればいい」と呪いの言葉を吐いたところ、本当に悪魔が生まれてしまったという、ゾッとする言い伝えが残っているんですね。
姿・見た目
ジャージー・デビルの姿は、まるで悪夢から飛び出してきたような奇怪な合成獣です。
目撃者の証言をまとめると、その姿はこんな感じになります。
ジャージー・デビルの身体的特徴
- 頭部:馬、ヤギ、または鹿のような細長い頭
- 目:真っ赤に光る不気味な目
- 翼:背中に生えた巨大なコウモリの翼
- 胴体:黒っぽい毛で覆われた動物の体
- 脚:ひづめのある2本の脚(カンガルーのような後ろ脚という説も)
- 尻尾:先が二股に分かれた悪魔のような長い尾
- 体長:約1~1.8メートル
想像してみてください。馬の頭を持つ生き物が、コウモリの翼で空を飛び、悪魔のような尾を振り回しながら襲ってくる姿を。これだけでも十分恐ろしいですよね。
面白いのは、目撃証言によって細部が微妙に違うこと。ある人は「羊のような顔」と言い、別の人は「ワニのような頭」と表現しています。でも共通しているのは、翼があって、ひづめがあって、とにかく不気味だということです。
特徴
ジャージー・デビルには、ただ見た目が怖いだけじゃない、恐ろしい特徴があります。
行動パターンと能力
- 血も凍るような叫び声:「キィィィー!」という甲高い悲鳴のような鳴き声を発する
- 驚異的な飛行能力:巨大な翼で素早く空を飛び回る
- 家畜を襲う習性:鶏、羊、犬、猫などのペットや家畜を殺して食べる
- 不死身の体:大砲で撃たれても平気だったという証言がある
- 馬のような足跡:雪の上や屋根の上に、ひづめの跡を残す
出現パターン
ジャージー・デビルが現れる時には、ある共通点があるんです。
まず、夜中から早朝にかけて活動することが多い。そして、現れる前には必ず、あの恐ろしい叫び声が森の奥から聞こえてくるそうです。
特に興味深いのは、大量目撃が周期的に起きること。1909年の大騒動のように、突然あちこちで目撃されるようになり、しばらくするとぱったり姿を消してしまうんです。まるで、何かのサイクルで活動しているみたいですね。
伝承

ジャージー・デビルの伝承で最も有名なのが、1735年の呪われた誕生物語です。
リーズ夫人の13番目の子供
ニュージャージー州のパインバレンズに、リーズ夫人という女性が住んでいました。彼女にはすでに12人の子供がいて、13番目の子供を妊娠した時、極度の疲労と苦痛から、つい呪いの言葉を口にしてしまったんです。
「こんなに苦しませる子なら、いっそ悪魔でも生まれてくればいい!」
すると、生まれてきた赤ちゃんは、母親の腕の中で突然変身。翼が生え、尾が伸び、恐ろしい怪物の姿になって、家族を襲った後、煙突を突き破って夜空へ消えていったといいます。
1909年の大パニック事件
ジャージー・デビル史上、最も有名な事件が1909年1月16日から23日にかけて起きました。
わずか1週間で30以上の町で目撃され、なんと1000人以上が「悪魔を見た」と証言したんです。この騒動のすごさを箇条書きにすると:
- フィラデルフィアで路面電車が襲撃される
- 警察官が銃撃するも効果なし
- 複数の学校が休校に追い込まれる
- 工場労働者が恐怖で出勤拒否
- 自警団が結成され、悪魔狩りが行われる
- 動物園が懸賞金1万ドルを提示
この時期の新聞には、毎日のようにジャージー・デビルの記事が掲載され、まさに社会現象となりました。
その他の有名な目撃談
- 1778年:アメリカ海軍のスティーヴン・ディケーター代将が大砲で撃つも、弾丸が貫通しただけで逃げられた
- 1820年頃:ナポレオンの兄、ジョゼフ・ボナパルトが自分の領地で目撃
- 1840年代:家畜が次々と殺される事件が多発、悪魔の仕業とされる
- 1951年:少年グループが森で怪物と遭遇
- 1993年:森林管理官が2本足で立つ怪物を目撃
- 2007年、2008年:YouTubeに目撃動画が投稿される(真偽不明)
起源
ジャージー・デビル伝説の起源を探ると、実在の人物と歴史的な確執が浮かび上がってきます。
実在したリーズ家
驚くことに、デボラ・リーズという女性は実在していました。彼女は1736年の記録で、夫ジャフェット・リーズとの間に少なくとも12人の子供がいたことが確認されています。つまり、13番目の子供が生まれた可能性は十分あるんですね。
ダニエル・リーズと悪魔のレッテル
歴史学者ブライアン・リーガルの研究によると、ジャージー・デビル伝説の本当の起源は、17世紀の宗教的・政治的な対立にあるといいます。
ダニエル・リーズ(1651-1720)という人物は、もともとクエーカー教徒でしたが、占星術を含む暦を出版したことで教会から追放されました。その後、彼は反クエーカー派となり、イギリス王室を支持する立場を取ったんです。
当時のクエーカー教徒たちは、リーズを「悪魔の手先」と呼んで非難。1700年には「Satan’s Harbinger(悪魔の先触れ)」という批判文書まで出版されました。
ベンジャミン・フランクリンの悪ふざけ
さらに面白いのは、ベンジャミン・フランクリンも関わっていること。
ダニエルの息子タイタン・リーズは、フランクリンのライバル出版者でした。フランクリンは1733年、冗談でタイタンの死を「予言」し、実際に死んでいないのに「幽霊が暦を書いている」とからかい続けたんです。
紋章の竜が怪物のモデルに?
リーズ家の紋章には、翼を持つ竜(ワイバーン)が描かれていました。2本足で立ち、コウモリの翼を持つこの紋章の生き物は、まさにジャージー・デビルの姿にそっくり。これが怪物のイメージの元になった可能性が高いんです。
つまり、ジャージー・デビル伝説は:
- 実在の一族への悪評
- 宗教的対立による悪魔呼ばわり
- 紋章の竜のビジュアル
- 民間伝承
これらが長い年月をかけて混ざり合い、今の形になったと考えられています。
まとめ
ジャージー・デビルは、アメリカで300年以上語り継がれる、最も有名な怪物伝説です。
重要なポイント
- 18世紀から現在まで目撃が続く、ニュージャージー州の伝説的怪物
- 馬の頭、コウモリの翼、悪魔の尾を持つ奇怪な合成獣
- 1735年、リーズ家の呪われた13番目の子供として誕生したという伝説
- 1909年の大パニックでは1000人以上が目撃、社会現象に
- 血も凍るような叫び声を発し、家畜を襲う習性がある
- 実在のリーズ家への宗教的・政治的迫害が起源という説が有力
- リーズ家の紋章の竜が怪物のビジュアルの元になった可能性
単なる民間伝承と思われがちなジャージー・デビルですが、その背景には実在の人物たちのドラマがあり、宗教対立、政治闘争、そして人々の恐怖心が複雑に絡み合って生まれた伝説だったんですね。
今でもニュージャージー州では、時々「悪魔を見た」という報告があります。もしあなたがパインバレンズの森を訪れて、夜中に恐ろしい叫び声を聞いたら…それはもしかしたら、300年前から生き続けるジャージー・デビルかもしれません。


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