【長野の鬼伝説】八面大王とは?その正体・能力・退治伝説を分かりやすく解説!

神話・歴史・伝承

長野県の安曇野を旅したことがある人なら、「耳塚」という不思議な地名を見かけたことがあるかもしれません。

実はこの地名、平安時代に暴れまわった恐ろしい鬼の体の一部が埋められた場所なんです。

その鬼の名前は「八面大王(はちめんだいおう)」。8つの顔を持つとされる最強クラスの鬼で、有名な武将・坂上田村麻呂でさえ苦戦したという伝説が残っています。

この記事では、長野県に伝わる最強の鬼・八面大王の正体から退治伝説まで、詳しくご紹介します。

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概要

八面大王は、平安時代に長野県の安曇野市にある有明山に住んでいたとされる鬼です。

「魏石鬼(ぎしき)」という別名もあり、地元では「饅頭鬼(まんじゅうおに)」とも呼ばれていました。手下の鬼たちを従えて村を襲い、食べ物や家畜、財宝を奪ったり、女性をさらったりと、住民を苦しめていたんです。

天皇の命令を受けた坂上田村麻呂が退治に向かいましたが、とんでもない苦戦を強いられました。なぜなら、八面大王は普通の鬼とは違う、特別な力を持っていたからです。

起源

八面大王の伝説は、実は複数の要素が混ざり合って生まれたものなんです。

もともとは、有明山周辺で実際に起きた盗賊団の事件が元になっているという説が有力です。『

仁科濫觴記』という古い文書によると、8人の首領を持つ盗賊集団が「八面鬼士大王」を名乗って暴れていたそうです。

この実際の事件に、時代を経て次のような要素が加わりました。

伝説を構成する3つの要素

  • 鬼伝説(地域に伝わる鬼の話)
  • 坂上田村麻呂伝説(英雄による鬼退治)
  • 動物報恩譚(山鳥の恩返しの話)

特に江戸時代になると、坂上田村麻呂の名前が加わって、現在知られているような退治伝説の形になったんですね。

姿・見た目

「八面大王」という名前から、顔が8つある化け物を想像しちゃいますよね。

でも実際は、そうではなかったようです。

民俗学では「八」という数字は「たくさん」という意味を表します。
つまり八面大王は、8つの顔を持つのではなく、いろんなものに変身できる能力を持っていたと考えられているんです。

人間だけでなく、動物にも化けることができたかもしれません。まさに変身の達人だったわけです。

顔の色も特徴的で、伝承によると赤い顔をしていたとか、色とりどりに塗っていたという話も残っています。

特徴

八面大王は、ただの鬼じゃありません。

恐ろしいほどの超能力を持っていました。

八面大王の持つ能力

神通力(じんつうりき)

  • 相手が来るのを事前に察知できる
  • 矢が当たらないようにバリアを張れる
  • 自由自在に変身できる

天候操作

  • 雲を呼んで風を起こす
  • 雨を降らせる
  • 空から大石を降らせる

その他の能力

  • 血液に毒があり、雨となって降ると病気を引き起こす
  • 死んでも生き返る可能性がある(再生能力?)

これだけの能力があれば、普通の武器では太刀打ちできませんよね。実際、坂上田村麻呂が放った矢も、最初はまったく効きませんでした。

伝承

八面大王退治の伝説は、とても詳しく語り継がれています。

田村麻呂の苦戦

坂上田村麻呂が有明山にやってくると、八面大王は神通力で察知して、暗闇を作り出し、大石を雨のように降らせました。田村麻呂の軍勢は山に近づくことさえできません。

やっとの思いで矢を放っても、八面大王の魔力バリアで防がれてしまいます。困った田村麻呂は、観音様にお祈りをしました。

山鳥の恩返し

すると観音様から「13節ある山鳥の尾で矢を作れば退治できる」というお告げがありました。

この特別な山鳥の尾を持ってきたのが、弥助という青年でした。実は3年前、弥助が罠にかかった山鳥を助けたことがあり、その山鳥が人間の女性に化けて恩返しに来ていたんです。女性は13節の尾を残して姿を消しました。

八面大王の最期

山鳥の尾で作った矢には不思議な力がありました。

3本の矢の効果

  1. 1本目:天候操作を封じる
  2. 2本目:八面大王の胸に命中し、倒す
  3. 3本目:手下の鬼たちを追い散らす

倒された八面大王の体は、生き返らないようにバラバラにして各地に埋められました。

体の部位と現在の地名

  • 耳 → 耳塚(安曇野市)
  • 足 → 足谷
  • 首 → 首塚(松本市筑摩神社)
  • 胴体 → 大王農場(わさび畑)

血の雨による災い

八面大王が倒された時、その血が雨となって降り注ぎました。この血の雨を浴びた住民たちは次々と病気になってしまいます。

再び田村麻呂が観音様に祈ると、「温泉が湧くから、その湯に浸かれば治る」というお告げがありました。これが現在の中房温泉の始まりだといわれています。

まとめ

八面大王は、長野県安曇野に伝わる日本最強クラスの鬼です。

八面大王の重要ポイント

  • 変身能力と神通力を持つ超強力な鬼
  • 天候を自在に操り、矢も効かない
  • 特別な山鳥の矢でないと倒せなかった
  • 体をバラバラにして埋めた場所が地名の由来に
  • 血の雨が病気を引き起こしたが、温泉で治った

この伝説は、実際の盗賊事件に英雄譚や動物の恩返し話が加わって生まれたものですが、地名として今も残っているのが興味深いところです。安曇野を訪れる機会があれば、八面大王ゆかりの地を巡ってみるのも面白いかもしれませんね。

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