海岸を歩いていたら、巨大な白い肉の塊が打ち上げられているのを発見したら、あなたはどう思うでしょうか?
しかも、それが何の生物なのか全く分からない姿だったとしたら…。
世界中の海岸では、こうした「正体不明の巨大な肉塊」が実際に発見されているんです。
この記事では、海のミステリー「グロブスター」について、その正体や特徴、興味深い目撃談を詳しくご紹介します。
概要

グロブスターは、海岸に漂着する正体不明の死骸や肉塊を指す言葉です。
1962年にアメリカの動物学者アイヴァン・T・サンダースンが提唱した用語で、「グロテスク(grotesque = 奇怪な)」「ブロブ(blob = 不定形の塊)」「モンスター(monster = 怪物)」という3つの単語を組み合わせた造語なんですね。
簡単に言えば、「何らかの生物の死骸や体組織の一部と推定されるが、正体を確定できない漂着物」のことです。
世界中の海岸で発見されており、オーストラリア、スコットランド、中国、バミューダ、チリなど、報告例は数多くあります。日本でも21世紀以降、複数の発見例が報告されているんです。
初めて本格的な調査が行われたのは、1960年にオーストラリアのタスマニアで発見された個体でした。
姿・見た目
グロブスターの外見は、とにかく不気味で正体不明な肉塊といった感じなんです。
グロブスターの外見的特徴
- 大きさ: 6〜24メートル程度(発見例によって異なる)
- 形状: ほぼ円形に近い、不定形の塊
- 表面: 全身が短い白い毛のようなもので覆われている
- 質感: ぬるぬるした感触、繊維質の皮膚
- 色: 白っぽい色をしていることが多い
- 構造: 骨格や内臓など、通常の生物が持つ器官が見つからない
タスマニアで発見された個体は、直径が約6メートルもあり、濡れた形状をしていました。
特徴的なのは、目や頭部、骨格といった、生物を特定するための重要な部分が見当たらないということなんですね。
また、ひどい腐敗臭を放つため、発見後すぐに処分されてしまうことが多いのも特徴です。
特徴

グロブスターには、科学的に興味深い特徴がいくつかあります。
組成と構造
分析が行われた例では、グロブスターの大半はコラーゲンで構成されていることが分かりました。
白い毛のように見える部分は、実は筋繊維や腱の可能性が高いんです。
発見される場所
- 世界中の海岸に漂着
- 特に大型海棲哺乳類が生息する海域の近く
- 嵐の後に発見されることが多い
現代の調査結果
近年、DNA分析技術の発展により、多くのグロブスターの正体が明らかになってきました。
ニューファンドランド・ブロブのDNA分析では、その組織がマッコウクジラのものであることが判明しています。
他の分析でも、以下のような生物の死骸だと特定されました。
- クジラ類(最も多い)
- セイウチ
- サメ類(特にウバザメ)
- 大型イカ
- 深海魚
なぜ正体が分からなくなるのか?
海中で死骸が漂ううちに、このような変化が起こります。
- 腐敗による変質: 内臓や骨格が分解される
- 脂肪層の分離: クジラの厚い脂肪層が体から剥がれる
- 海水の影響: 脂肪分が溶け出し、組織が硬化する
- 筋繊維の露出: 白い毛のような見た目になる
つまり、元の生物とは全く違う姿に変わってしまうんですね。
伝承

グロブスターには、単なる死骸説を覆すような興味深い目撃談もあります。
南アフリカの戦闘目撃事件(1933年)
最も有名なのが、1933年に南アフリカで起きた目撃事件です。
事件の詳細
- 地元の農場主が、二頭のクジラと戦う巨大な怪生物を目撃
- 戦いは数時間続き、最終的にクジラが勝利
- 多くの人々が目撃者となった
- 戦いに敗れた怪生物の死骸が浜辺に打ち上げられた
死骸の特徴
打ち上げられた死骸は、次のような特徴がありました。
- 体長: 約14メートル
- 体幅: 約2.1メートル
- 尾の長さ: 約1.5メートル
- 外見: 全身が白い毛で覆われていた
この目撃談は、グロブスターが単なる死骸ではなく、未知の生物が実在する可能性を示唆する重要な証言として注目されています。
トゥランコ事件(1924年)
南アフリカで目撃された、海岸に打ち上げられた謎の生物です。この事例は今でも正体が特定されていません。
日本での発見例
日本でも複数の発見例が報告されていますが、あまりの大きさと悪臭のため、詳しい調査が行われる前に焼却処分されてしまったケースが多いんです。
地震予兆説
日本では、グロブスターの漂着を大地震の予兆とする説もあります。
海底でプレートが動くと高周波が発生し、クジラなどの海棲哺乳類の方向感覚が狂うため、方向感覚を失った生物が漂着する可能性が指摘されているんですね。
起源
グロブスターという概念の誕生には、一人の学者の功績があります。
提唱者アイヴァン・T・サンダースン
アイヴァン・T・サンダースン(Ivan T. Sanderson)は、アメリカの動物学者で、1962年に「グロブスター」という用語を提唱しました。
彼は未確認動物(UMA)や超自然現象の研究に傾倒していた人物で、実は他にも有名な用語を生み出しています。
- オーパーツ(時代に合わない不思議な遺物)
- ファフロツキーズ(空から降ってくる奇妙な物体)
タスマニアの発見がきっかけ
サンダースンがこの用語を作ったのは、1960年にタスマニアで発見された謎の死骸を説明するためでした。
この死骸には以下の特徴がありました。
- 目が確認できない
- 明確な頭部がない
- 骨格構造が見当たらない
こうした「普通の生物学的分類が難しい漂着物」を指す言葉として、グロブスターという造語が生まれたんですね。
語源
「Globster(グロブスター)」という言葉自体は、以下の要素から構成されています。
- Grotesque(グロテスク): 奇怪な、グロテスクな
- Blob(ブロブ): 不定形の塊、かたまり
- Monster(モンスター): 怪物、巨大生物
この3つの言葉が組み合わさって、「奇怪な肉の塊の怪物」という意味になるわけです。
科学的調査の発展
サンダースンの提唱以降、グロブスターの科学的調査が進みました。
判明したグロブスターの正体
- ストロンセイ・ビースト(1808年): ウバザメの死骸
- セント・オーガスティン・モンスター(1896年): クジラの死骸
- バミューダ・ブロブ(1988年、1997年): クジラの死骸
- チリアン・ブロブ(2003年): クジラの脂肪塊
- ニュージーランド・グロブスター(1965年): クジラの死骸
多くの事例で、大型海棲哺乳類、特にクジラの死骸が変質したものであることが科学的に証明されました。
ただし、正体が判明したものは、厳密には「グロブスター」ではなくなります。グロブスターはあくまで「正体不明」の漂着物を指す言葉だからです。
まとめ
グロブスターは、海岸に打ち上げられる謎めいた漂着死骸の総称です。
重要なポイント
- 1962年にアメリカの動物学者サンダースンが提唱した用語
- 世界中の海岸で発見される正体不明の巨大な肉塊
- 大きさは6〜24メートル、白い毛のような繊維で覆われている
- 多くはクジラやセイウチなど大型海棲哺乳類の死骸が変質したもの
- DNA分析により正体が判明する例が増えている
- 南アフリカでの戦闘目撃談など、未知の生物説を支持する証言もある
- 日本でも発見例があり、地震予兆説も存在する
科学技術の発展により、多くのグロブスターの正体が解明されてきました。しかし、今でも正体不明のままの事例もあり、海の神秘は完全には解き明かされていません。
もしかしたら、次に海岸に打ち上げられるグロブスターこそ、本当の未知の生物かもしれませんね。


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