「グリム童話の悪役って、なんであんなに怖いの?」
子どもの頃に読んだ童話を思い出してみてください。ヘンゼルとグレーテルの人食い魔女、白雪姫を殺そうとする継母、赤ずきんを丸呑みにするオオカミ……。どれも強烈なインパクトを残していませんか?
実はグリム童話に登場する悪役たちは、現代のフィクションにおける「ヴィラン像」の原型になっているんです。ディズニー映画の悪役たちも、多くがグリム童話からインスピレーションを得ています。
この記事では、グリム童話に登場する悪役たちを一覧でご紹介します。有名どころから「え、こんな怖いキャラがいたの?」というマイナーな悪役まで、たっぷりお届けしますね。
グリム童話の悪役とは?

グリム兄弟が19世紀に編纂した『子供たちと家庭の童話』には、約200の物語が収録されています。そのほとんどに「悪役」が登場するんですね。
面白いのは、グリム童話の悪役には明確なパターンがあること。魔女、継母、オオカミ、小人、悪魔……。これらは単なる「悪い奴」ではなく、当時の社会が恐れていたものの象徴でもあるんです。
たとえば「継母」が悪役として頻繁に登場するのは、当時の高い死亡率と再婚率が背景にあります。実母が亡くなり、新しい母親がやってくる——そんな状況への不安が、童話の中で「邪悪な継母」として表現されたわけですね。
ちなみに、初版では「実母」が悪役だった物語もあります。白雪姫やヘンゼルとグレーテルがその例です。でも「母親が子どもを殺そうとする」のはさすがにマズいということで、後の版で継母に変更されました。グリム兄弟も色々と気を遣っていたんですね。
悪役のタイプ別分類
グリム童話の悪役は、大きく分けて以下のタイプに分類できます。
魔女・魔法使い
グリム童話の悪役といえば、やはり魔女。森の奥に住み、魔法を使い、時には子どもを食べる……。中世ヨーロッパの魔女狩りの記憶が、これらのキャラクターに反映されているのかもしれません。
オオカミ
中世のヨーロッパでは、オオカミは実際に脅威でした。家畜を襲い、時には人も襲う。その恐怖が童話の中で擬人化され、狡猾で恐ろしい悪役として描かれています。
継母・義姉
血のつながらない家族への不信感が形になったキャラクター。財産目当て、嫉妬、単純な悪意など、動機はさまざまですが、共通しているのは「家庭内の敵」であること。逃げ場がない怖さがありますよね。
小人・妖精
すべてが悪役というわけではありませんが、ルンペルシュティルツヒェンのように不気味で謎めいた存在も。彼らは人間とは異なるルールで動いており、その「理解できなさ」が恐怖を生みます。
悪魔・死神
キリスト教的な「悪」の象徴。魂を狙い、契約を持ちかけ、人間を堕落させようとする存在として描かれています。
特に印象的な悪役たち
ヘンゼルとグレーテルの魔女
グリム童話で最も有名な悪役の一人でしょう。お菓子の家で子どもたちを誘い込み、太らせてから食べようとする——。このビジュアルと設定のインパクトは絶大です。
興味深いのは、この魔女には名前がないこと。「魔女」という役割そのものが、キャラクターになっているんですね。最期はグレーテルに釜に押し込まれて焼き殺されます。子どもが悪を倒すという展開は、当時としては画期的だったかもしれません。
白雪姫の継母(王妃)
「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰?」
このセリフは、おそらく童話史上最も有名なセリフの一つ。自分より美しい娘への嫉妬から、何度も殺害を試みる王妃は、純粋な悪意の象徴です。
ディズニー版では「エヴィル・クイーン」と呼ばれていますが、実は原作でもこの王妃には固有の名前がありません。映画史上最も偉大な悪役の一人に選ばれているにもかかわらず、です。
グリム版の最期は衝撃的で、白雪姫の結婚式で真っ赤に焼けた鉄の靴を履かされ、死ぬまで踊らされます。ディズニーの「崖から落ちる」エンディングが、むしろ優しく感じられますね。
赤ずきんのオオカミ
おばあさんに化けて赤ずきんを待ち構える狡猾さ。「おばあさん、どうしてそんなに大きなお口なの?」「おまえを食べるためさ!」というやり取りは、世界中で知られています。
このオオカミは単なる猛獣ではなく、「言葉巧みに騙す者」として描かれています。見知らぬ人について行ってはいけない、という教訓が込められているんですね。
ルンペルシュティルツヒェン
名前を当てられると力を失うという、独特な設定を持つ小人。藁から金を紡ぐ代わりに、王妃の赤ん坊を要求します。
「お前は悪魔から聞いたな!」と叫んで自分で自分を引き裂いてしまう最期は、かなりショッキング。日本の「大工と鬼六」に似た話があることでも知られています。
トゥルーデおばさん
知名度は低いですが、グリム童話の中でもトップクラスに容赦がない悪役です。
好奇心から訪ねてきた少女を、丸太に変えて暖炉にくべてしまう。それも「なんとも明るい光だわい」と言いながら。教訓も救いもない、純粋な恐怖だけが残る物語です。
現代への影響
グリム童話の悪役たちは、現代のポップカルチャーに計り知れない影響を与えています。
ディズニー映画の悪役——マレフィセント、アースラ、ジャファーなど——の多くは、グリム童話の悪役をルーツに持っています。ミュージカル『イントゥ・ザ・ウッズ』では複数のグリム童話の悪役が一堂に会しますし、ドラマ『ワンス・アポン・ア・タイム』では現代に生きる童話キャラクターが描かれました。
Sound Horizonの音楽アルバム『Märchen』では、グリム童話のヒロインたちが復讐を果たす物語が展開されています。悪役たちの「その後」を想像する作品も多く、彼らがいかに人々の心に残っているかがわかりますね。
グリム童話の悪役一覧表
| 悪役 | 登場作品 | タイプ | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 人食い魔女 | ヘンゼルとグレーテル | 魔女 | お菓子の家で子どもを誘い、食べようとする |
| 継母(王妃) | 白雪姫 | 継母/魔女 | 魔法の鏡を持ち、娘より美しくありたいと願う |
| オオカミ | 赤ずきん | オオカミ | おばあさんに化けて赤ずきんを騙す |
| オオカミ | 狼と七匹の子山羊 | オオカミ | 声を変え、足を白くして母山羊に化ける |
| 継母と義姉 | シンデレラ(灰かぶり) | 継母 | シンデレラを虐待し、舞踏会に行かせない |
| ゴーテル(魔女) | ラプンツェル | 魔女 | ラプンツェルを塔に閉じ込める |
| 悪い妖精 | いばら姫(眠り姫) | 妖精 | 招待されなかった恨みで姫に呪いをかける |
| ルンペルシュティルツヒェン | ルンペルシュティルツヒェン | 小人 | 藁から金を紡ぐ代わりに赤ん坊を要求 |
| トゥルーデおばさん | トゥルーデおばさん | 魔女 | 訪ねてきた少女を丸太に変えて燃やす |
| 継母(魔女) | 兄と妹 | 継母/魔女 | 泉に呪いをかけ、兄を子鹿に変える |
| 魔女 | 恋人ローランド | 魔女 | 実の娘を可愛がり、まま娘を殺そうとする |
| 魔女 | 二人兄弟 | 魔女 | 人間を石に変える力を持つ |
| 魔女 | 黄金の子供たち | 魔女 | 子犬を飼い、人を石に変える |
| 盗賊の花婿 | 盗賊の花婿 | 人間 | 婚約者を殺して食べようとする人食い盗賊 |
| 青髭 | 青髭(初版のみ) | 人間 | 歴代の妻を殺害し、秘密の部屋に隠す |
| 侍女 | がちょう番の女 | 人間 | 王女になりすまし、本物の王女を下働きにする |
| 死神 | 死神の名付け親 | 死神 | 名付け子に治療の力を与えるが、裏切ると命を奪う |
| 悪魔 | 悪魔の三本の金の髪の毛 | 悪魔 | 地獄に住み、人間に試練を与える |
| 継母 | 十二人兄弟 | 継母 | 12人の息子を殺そうとする |
| 王様 | 千匹皮 | 人間 | 実の娘と結婚しようとする |
| 巨人 | 勇ましいちびの仕立て屋 | 巨人 | 主人公に倒される怪物 |
| 山賊 | ブレーメンの音楽隊 | 人間 | 森の中の家に住む悪党たち |
| 悪い魔法使い | めっけ鳥 | 魔女 | 変身して逃げる子どもたちを追いかける |
| 猫 | 猫とねずみと友だち | 動物 | 友だちのねずみを最後に食べてしまう |
まとめ
グリム童話の悪役について見てきました。ポイントをまとめると……
- 悪役には魔女、オオカミ、継母、小人、悪魔などのタイプがある
- 初版では実母が悪役だった物語も、後に継母に変更された
- ヘンゼルとグレーテルの魔女や白雪姫の王妃は特に有名
- 悪役たちは現代のディズニー作品などにも大きな影響を与えている
- 知名度は低いがトゥルーデおばさんなど救いのない怖い話もある
200年以上前に編まれた物語の悪役たちが、今でも私たちを怖がらせ、魅了し続けているのは不思議ですよね。それだけ彼らが「人間の恐怖」の本質を突いているということなのかもしれません。


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