「白雪姫」「シンデレラ」「眠り姫」……。
ディズニー映画でおなじみのプリンセスたち、実は原作がグリム童話だって知っていましたか?
グリム童話には、王子様を待つだけの受け身な姫から、自分の力で運命を切り開く強い姫まで、さまざまなタイプのプリンセスが登場します。しかも原作には、ディズニー版にはない驚きの展開が隠されていることも。
この記事では、グリム童話に登場する代表的な姫15人を一覧でご紹介します。知っているようで知らない、プリンセスたちの本当の姿を見ていきましょう。
グリム童話とは?

グリム童話は、19世紀ドイツのグリム兄弟(ヤーコプとヴィルヘルム)が、民間に伝わる昔話を集めて編纂した童話集です。正式名称は『子供と家庭のための童話集』といいます。
1812年に初版が出版されて以来、何度も改訂が重ねられました。実は初版には残酷な描写も多く、子ども向けに少しずつマイルドに書き換えられていったんですね。
収録作品は200話以上。その中には、現代でも愛され続ける「プリンセス・ストーリー」がたくさん含まれています。
超有名!みんなが知ってる姫たち
まずは誰もが知っている、グリム童話を代表するプリンセスから見ていきましょう。
白雪姫
「鏡よ鏡、この世で一番美しいのは誰?」
このセリフで有名な白雪姫は、グリム童話を代表するプリンセスです。継母である王妃にその美しさを妬まれ、森へ追放されてしまいます。
意外なのは、グリム童話の原作には「王子様のキス」がないこと。白雪姫が目覚めるきっかけは、棺を運ぶ途中でつまずいた衝撃で毒リンゴが喉から飛び出したから、なんです。
さらに衝撃的なのはラストシーン。白雪姫の結婚式に呼び出された継母は、真っ赤に焼けた鉄の靴を履かされ、死ぬまで踊らされるという復讐を受けます。
シンデレラ(灰かぶり姫)
ガラスの靴で有名なシンデレラ。グリム童話では「灰かぶり(Aschenputtel)」と呼ばれています。
ディズニー版との大きな違いは、魔法使いが登場しないこと。グリム版のシンデレラは、亡き母の墓に植えた木に住む小鳥たちの力を借りて舞踏会に行くんです。
そして義姉たちの結末がエグい。靴に足を入れるため、長女はつま先を、次女はかかとを自分で切り落とすのです。それでもバレて、最終的には結婚式でシンデレラの小鳥たちに両目をくり抜かれてしまいます。
いばら姫(眠り姫)
100年の眠りにつく姫——「眠れる森の美女」として知られるお話です。グリム童話では「いばら姫」というタイトルで収録されています。
呪いをかけた魔女に恨みを買ったのは、洗礼式に13人目の魔女だけ招待しなかったから。金のお皿が12枚しかなかったという、なんとも切ない理由なんですね。
興味深いのは、王子が姫を助けに来るタイミング。ちょうど100年が経った瞬間に訪れたので、いばらが勝手に道を開いてくれたのです。それまでに姫を助けようとした王子たちは、いばらに絡まれて命を落としていました。
ラプンツェル
塔の上から長い髪を垂らす姫。ディズニー映画『塔の上のラプンツェル』の原作です。
「ラプンツェル、ラプンツェル、髪をおろして」という呼びかけで、魔女は姫の髪を梯子代わりにして塔を上り下りしていました。
原作では、ラプンツェルが王子との逢瀬を重ねた結果、妊娠してしまいます。それが魔女にバレたきっかけは「最近、服がきつくなってきたの」という何気ない一言。怒った魔女はラプンツェルの髪を切り落とし、荒野へ追放してしまうのです。
知る人ぞ知る!隠れた名作の姫たち
グリム童話には、あまり知られていないけれど魅力的なプリンセスがたくさんいます。
がちょう番の女
本来は王女なのに、侍女に身分を奪われてしまう悲劇の姫です。
嫁入りの旅の途中、侍女に脅されて衣装と馬を奪われ、さらには「誰にも言わない」と誓わされてしまいます。王女は「がちょう番」として働くことに。
しかし王女には不思議な力がありました。風に語りかけて従わせることができたのです。最終的には真実が明らかになり、侍女は自ら言い渡した刑罰——裸で樽に入れられ、馬に引きずり回される——を受けることになります。
マレーン姫
グリム童話史上、最も「強い」と言われる女性主人公です。
父王に結婚相手を反対され、7年間も真っ暗な塔に閉じ込められるマレーン姫。食料が尽きかけた頃、なんと自力で壁を打ち壊して脱出するんです。
外に出ると、国は戦争で荒廃しており、愛する王子は他の女性と結婚することに。それでもマレーン姫は諦めず、ついには本当の花嫁として認められます。グリム童話の中で、処刑されそうになった時に自ら抵抗した唯一の女性でもあります。
千匹皮姫
父親からの近親婚を逃れるため、1000匹の動物の毛皮で作ったマントをかぶって城を抜け出す王女の物語。
王女は台所の下働きとして雇われ、「千匹皮」と呼ばれるようになります。しかし舞踏会のたびにこっそりドレスに着替え、スープに指輪を入れて自分の存在を王にアピール。ついに正体が明かされ、王と結ばれるのです。
シンデレラと似た構造ですが、こちらは「父親から逃げる」という重いテーマを含んでいます。
カエルの王様のお姫様
金の毬を泉に落としてしまったお姫様。カエルに拾ってもらう代わりに、一緒に食事をして一緒に寝るという約束をします。
ディズニー版では「キスで王子に戻る」設定ですが、グリム童話ではなんと「壁に叩きつける」んです。約束を守らないお姫様に付きまとうカエルに怒り、思い切り壁に投げつけたら……イケメン王子に変身。
「嫌なものを拒絶したら良い結果になった」という、なかなかロックな教訓かもしれません。
手なし娘
父親に両手を切り落とされるという、衝撃的な始まり方をするお話。
悪魔との取引で娘を差し出すことになった父親。娘が清らかすぎて悪魔が触れられなかったため、「手を切り落とせ」と命じられるのです。
両手を失った娘は森をさまよい、王と出会って結婚。しかし留守中に悪魔の策略で追放されてしまいます。7年間森で暮らすうちに神の力で両手が再生し、最後には王と再会。忍耐と信仰の物語です。
つぐみひげの王さまの姫
高慢な王女が「あのあごはつぐみのくちばしみたい」と求婚者をバカにしまくった結果、父王に物乞いと結婚させられてしまうお話。
貧しい暮らしを強いられ、市場でかごを売ったり、城で下働きをしたり。ようやく謙虚になったころ、実は夫は変装した「つぐみひげの王」だったと判明。全ては高慢を直すための教育だったのです。
「性格を直す」という目的のために、ここまでするか……とも思いますが、最後はハッピーエンドです。
姉妹で活躍するプリンセス
グリム童話には、姉妹で力を合わせて困難を乗り越えるお話も。
雪白と薔薇紅
同じ「白雪姫」と訳されることもありますが、こちらは別のお話。「雪白(Schneeweißchen)」と「薔薇紅(Rosenrot)」という仲良し姉妹が主人公です。
森で出会った気難しい小人を何度も助ける心優しい姉妹。その小人を追いかけてきた熊が、実は呪われた王子だったのです。呪いが解けた王子とお姉さんが結婚し、弟王子と妹も結ばれるという、ダブルハッピーエンドが待っています。
十二人の踊る姫
毎晩、12人の王女たちの靴がボロボロになる謎。どこで踊っているのか突き止めた者には、好きな姫との結婚が許されるというお話です。
実は姫たちは毎晩、地下世界へ降りて魔法の王子たちと踊り明かしていたのです。復員兵がその秘密を暴き、一番上の姫と結婚することに。
興味深いのは、姫たちが自分の意思で楽しんでいたという点。呪いではなく、完全に自分たちの意思なんですね。
六羽の白鳥の姫
魔女に兄6人を白鳥に変えられてしまった末娘の物語。呪いを解くには、6年間一言も話さず、笑わず、イラクサで6枚のシャツを編まなければなりません。
その間に王と結婚し、3人の子供を産みますが、義母の陰謀で「子供を食べた」と濡れ衣を着せられ、処刑されそうに。火刑台の上でついに6枚目のシャツが完成し、兄たちが人間に戻って真実を証言。義母が代わりに火刑に処されます。
一つ目・二つ目・三つ目
目が1つ、2つ、3つの三姉妹の物語。主人公は普通の目が2つの「二つ目」です。
目が2つという「普通さ」ゆえに、母と姉妹からいじめられる二つ目。しかし魔法のヤギとの出会いで運命が変わります。最終的には騎士と結婚し、いじめっ子だった姉妹は物乞いになるという、シンデレラ的な逆転劇です。
グリム童話の姫 一覧表
| 姫の名前 | 登場作品 | KHM番号 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 白雪姫 | 白雪姫 | KHM53 | 継母に命を狙われる。7人の小人と暮らす |
| シンデレラ(灰かぶり) | 灰かぶり | KHM21 | 義姉にいじめられる。小鳥たちの力で舞踏会へ |
| いばら姫 | いばら姫 | KHM50 | 紡錘に刺され100年眠る。いばらの城で目覚め |
| ラプンツェル | ラプンツェル | KHM12 | 長い髪を持つ。魔女に塔に閉じ込められる |
| がちょう番の女 | がちょう番の女 | KHM89 | 侍女に身分を奪われる。風と話せる |
| マレーン姫 | マレーン姫 | KHM198 | 塔に7年閉じ込められる。自力で脱出する強い姫 |
| 千匹皮姫 | 千匹皮 | KHM65 | 毛皮マントで変装。父からの結婚を逃れる |
| カエルの王様の姫 | かえるの王さま | KHM1 | 金の毬を泉に落とす。カエルとの約束 |
| 手なし娘 | 手なしむすめ | KHM31 | 父に両手を切られる。7年後に再生 |
| つぐみひげの王の姫 | つぐみのひげの王さま | KHM52 | 高慢な性格。物乞いとの結婚で改心 |
| 雪白 | 雪白と薔薇紅 | KHM161 | 心優しい姉。熊を助け王子と結婚 |
| 薔薇紅 | 雪白と薔薇紅 | KHM161 | 心優しい妹。弟王子と結婚 |
| 十二人の踊る姫 | 踊ってすり減らした靴 | KHM133 | 毎晩地下世界で踊る。秘密を暴かれる |
| 六羽の白鳥の姫 | 六羽の白鳥 | KHM49 | 6年間沈黙を守る。兄たちの呪いを解く |
| 二つ目 | 一つ目、二つ目、三つ目 | KHM130 | 普通ゆえにいじめられる。騎士と結婚 |
※KHM番号はグリム童話集第7版(最終版)の収録番号
グリム童話の姫に共通する3つの特徴
グリム童話のプリンセスたちを見てきましたが、いくつかの共通点があります。
1. 試練を乗り越える
美しいだけでは幸せになれません。継母のいじめ、塔への幽閉、身分の剥奪——どの姫も何かしらの試練を経験しています。
2. 忍耐が報われる
手なし娘の7年間、六羽の白鳥の姫の6年間など、長い忍耐の末に救いが訪れるパターンが多いです。
3. 悪者には相応の罰が
グリム童話では、悪役への報復がかなり苛烈。焼けた鉄の靴、目のくり抜き、火刑など……。因果応報がしっかり描かれています。
まとめ
グリム童話には、ディズニー映画とは一味違う個性豊かなプリンセスたちが登場します。
待っているだけでなく自ら行動する姫、長い忍耐の末に幸せをつかむ姫、高慢を改める姫——彼女たちの物語には、200年経った今でも心に響く教訓が詰まっています。
原作を知ると、見慣れたプリンセスたちがまた違って見えてくるはず。ぜひグリム童話の原作にも触れてみてください。


コメント