映画やアニメ、ゲームで「ヘラクレス」「アキレス」といった名前を聞いたことはありませんか?
これらはすべて、古代ギリシャ神話に登場する伝説の英雄たちの名前です。
ギリシャ神話の英雄(ヘーロー)とは、神の血を引きながらも人間として生き、数々の試練を乗り越えて偉大な功績を残した存在のこと。彼らは怪物を倒し、王国を建設し、戦争で活躍することで、永遠に語り継がれる伝説を築きました。
「名前は知ってるけど、どんな英雄なの?」「それぞれの違いがよくわからない」という方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ギリシャ神話に登場する英雄たちを、わかりやすい一覧形式で詳しくご紹介します。
ギリシャ神話の英雄って何?

英雄(ヘーロー)の定義
古代ギリシャにおける「英雄」とは、単なる勇敢な人間ではありません。
英雄の特徴として、以下のようなものが挙げられます。
- 神と人間の間に生まれた半神半人(ゼウスなど神々の子が多い)
- 超人的な力や知恵を持つ
- 困難な試練を乗り越える
- 怪物退治や冒険で功績を残す
- 死後に神として崇められることもある
古代ギリシャ人は、これらの英雄を通して勇気、知恵、名誉といった価値観を学びました。
なぜ英雄たちは冒険に出たの?
英雄たちが冒険に出る理由は様々です。
王への奉仕として課せられた任務、罪の償い、王位の奪還、愛する人の救出など、それぞれの事情がありました。
共通しているのは、英雄たちが「名誉」を非常に重んじていたこと。彼らにとって、困難に立ち向かい功績を残すことは、生きる意味そのものだったのです。
最も有名な英雄たち【主要7人】
ヘラクレス(Heracles)──最強の英雄
基本情報
- ギリシャ名: ヘラクレス(Ἡρακλῆς)
- ローマ名: ヘルクレス(Hercules)
- 父: ゼウス(神々の王)
- 母: アルクメネ(人間の王女)
- 象徴: 獅子の毛皮、棍棒
どんな英雄?
ギリシャ神話における最強の英雄です。
ゼウスと人間の女性アルクメネの間に生まれた半神半人で、その怪力はオリンポスの神々にも匹敵するほどでした。
名前の「ヘラクレス」は「ヘラの栄光」を意味しますが、皮肉なことにゼウスの妻ヘラからは生涯にわたって憎まれ続けました。
有名なエピソード:12の功業
ヘラの呪いで狂気に陥り、自分の妻子を殺してしまったヘラクレス。罪を償うため、神託に従いミケーネ王エウリュステウスに仕え、12の難業を達成することになりました。
12の功業一覧
- ネメアのライオン退治: 武器が通じない魔獣を素手で絞め殺す
- レルネのヒュドラ退治: 首を切っても再生する9つの頭を持つ大蛇を倒す
- ケリュネイアの鹿の生け捕り: アルテミス女神の聖獣を1年かけて追跡
- エリュマントスの猪の生け捕り: 山を荒らす巨大な猪を捕獲
- アウゲイアスの家畜小屋の掃除: 30年間掃除されていない牛舎を1日で清掃
- ステュムパロスの鳥退治: 青銅のくちばしを持つ怪鳥の群れを退治
- クレタの牡牛の生け捕り: 火を吐く狂暴な牡牛を捕獲
- ディオメデスの人喰い馬の奪取: 人間を餌とする馬たちを手なずける
- アマゾンの女王の帯の獲得: 戦闘民族アマゾネスの女王から帯を奪う
- ゲリュオンの牛の奪取: 三つの体を持つ怪物から赤い牛を奪う
- ヘスペリデスの黄金の林檎の獲得: 世界の果ての園から黄金の林檎を入手
- 冥界の番犬ケルベロスの生け捕り: 地獄の門番である三つ首の犬を地上へ連れ出す
英雄の最期
12の功業を終えたヘラクレスでしたが、最期は悲劇的でした。
新しい妻デイアネイラが、夫の愛を繋ぎとめようとケンタウロスの血を塗った服を贈ります。しかし、その血には猛毒が含まれていました。
激痛に耐えられなくなったヘラクレスは、自ら火葬の薪に身を投じます。その魂はオリンポス山に昇り、神々の一員として迎えられました。
現代への影響
- ディズニー映画『ヘラクレス』の主人公
- 「ヘルクレス座」として星座にもなっている
- スポーツ選手の象徴として広く使われる
アキレウス(Achilles)──トロイア戦争最強の戦士
基本情報
- ギリシャ名: アキレウス(Ἀχιλλεύς)
- ローマ名: アキレス(Achilles)
- 父: ペーレウス(プティーア王)
- 母: テティス(海の女神)
- 主な登場作品: ホメロス『イーリアス』
どんな英雄?
トロイア戦争におけるギリシャ軍最強の戦士です。
叙事詩『イーリアス』の主人公であり、その圧倒的な武力で敵将を次々と討ち取りました。一人で戦況を変えるほどの力を持ち、「駿足のアキレウス」と呼ばれるほど足も速かったといいます。
有名なエピソード:アキレス腱の由来
アキレウスが生まれると、母テティスは息子を不死身にしようとしました。
冥府を流れるステュクス川に赤ん坊を浸したのですが、そのときテティスが掴んでいた踵(かかと)だけは水に浸からず、弱点となってしまいます。
これが「アキレス腱」の語源となりました。
また、テティスは息子がトロイア戦争で命を落とすと予言されていたため、アキレウスを女装させてスキューロス島に隠しました。しかし、知将オデュッセウスが商人に変装して武器を見せると、アキレウスだけが手を伸ばしたため正体がばれてしまいます。
トロイア戦争での活躍
トロイア戦争では、親友パトロクロスとともにミュルミドーン人を率いて参戦しました。
戦争10年目、総大将アガメムノーンに愛妾を奪われたアキレウスは激怒し、戦線を離脱。すると、ギリシャ軍は劣勢に陥ります。
見かねたパトロクロスがアキレウスの鎧を借りて出陣しますが、トロイアの英雄ヘクトールに討たれてしまいました。
親友の死に激昂したアキレウスは戦場に復帰。ヘクトールを討ち取り、その遺体を戦車で引きずり回すという残虐な行為に及びます。しかし、ヘクトールの父プリアモス王が息子の遺体を返してほしいと懇願すると、アキレウスは自らも親友を失った悲しみに共感し、遺体を返却しました。
英雄の最期
トロイアの王子パリス(一説ではアポロン神)が放った矢が、アキレウスの唯一の弱点である踵を射抜きます。
最強の英雄は、こうして命を落としました。
現代への影響
- 「アキレス腱」という解剖学用語
- 映画『トロイ』(ブラッド・ピット主演)
- 「アキレスの踵」=弱点という慣用句
オデュッセウス(Odysseus)──知恵の英雄
基本情報
- ギリシャ名: オデュッセウス(Ὀδυσσεύς)
- ローマ名: ウリクセス / ユリシーズ(Ulysses)
- 父: ラエルテス(イタケー王)
- 母: アンティクレイア
- 主な登場作品: ホメロス『オデュッセイア』
どんな英雄?
武力ではなく知恵と策略で名を残した英雄です。
イタケー島の王であり、トロイア戦争ではギリシャ軍の参謀として活躍しました。「トロイの木馬」の作戦を考案し、10年続いた戦争に終止符を打った人物として有名です。
有名なエピソード:トロイの木馬
10年間攻め落とせなかったトロイアの城壁。
オデュッセウスは巨大な木馬を作り、その中に精鋭を潜ませることを提案しました。ギリシャ軍が撤退したように見せかけると、トロイア軍は木馬を戦利品として城内に運び込みます。
夜、木馬から出た兵士たちが城門を開け、ギリシャ軍を引き入れました。こうしてトロイアは陥落したのです。
10年の漂流:オデュッセイア
戦争が終わり、オデュッセウスは故郷イタケーを目指しますが、帰路は困難を極めました。
海神ポセイドンの怒りを買い、10年もの間地中海を漂流することになったのです。
主な冒険
- キュクロプス(一つ目巨人)との戦い: 洞窟に閉じ込められるが、巨人の目を焼き潰して脱出
- セイレーンの誘惑: 美しい歌声で船乗りを惑わす魔女たちを、自らをマストに縛りつけてやり過ごす
- 魔女キルケーの島: 部下を豚に変えられるも、神の助けで逆に魔女を従わせる
- カリュブディスとスキュラ: 大渦巻きと六つ首の怪物の間を通り抜ける
20年ぶりに帰国したオデュッセウスは、妻ペネロペイアに群がる求婚者たちを弓で射殺し、王座を取り戻しました。
現代への影響
- ジェームズ・ジョイスの小説『ユリシーズ』
- 映画『オー・ブラザー!』(コーエン兄弟監督)
- 宇宙探査機「ユリシーズ」
ペルセウス(Perseus)──メドゥーサを倒した英雄
基本情報
- 名前: ペルセウス(Περσεύς)
- 父: ゼウス
- 母: ダナエ(アルゴス王女)
- 象徴: 翼のあるサンダル、見えなくなる兜、メドゥーサの首
どんな英雄?
怪物メドゥーサを退治した英雄として知られています。
ゼウスが黄金の雨に姿を変えてダナエに近づき、生まれたのがペルセウスでした。「孫に殺される」という予言を恐れた祖父アクリシオスによって、母子は箱に入れられ海に流されますが、セリポス島に流れ着いて助けられました。
有名なエピソード:メドゥーサ退治
成長したペルセウスは、セリポス島の王から「メドゥーサの首を持ってこい」と命じられます。
メドゥーサは、見た者を石に変えてしまう恐ろしい怪物。髪は無数の蛇で、かつては美しい女性でしたがアテナの怒りを買って怪物の姿にされました。
ペルセウスは神々から以下の道具を授かります。
- 翼のあるサンダル(ヘルメスから)──空を飛べる
- 見えなくなる兜(ハデスから)──姿を消せる
- 輝く盾(アテナから)──鏡として使える
- キビシス(鉤爪のついた袋)──メドゥーサの首を入れる
ペルセウスは盾に映るメドゥーサの姿を見ながら近づき、剣で首をはねることに成功しました。
アンドロメダ王女の救出
帰路、ペルセウスは海岸の岩に縛られた美しい王女アンドロメダを発見します。
彼女は母の傲慢な発言のせいで、海の怪物ケートスの生贄にされようとしていました。ペルセウスはメドゥーサの首を使って怪物を石に変え、王女を救出。二人は結婚しました。
英雄の最期
セリポス島に戻ったペルセウスは、母を苦しめていた王をメドゥーサの首で石に変えます。
その後、ペルセウスはアルゴスに戻りますが、競技会で投げた円盤が偶然祖父アクリシオスに当たり、予言通り祖父を殺してしまいました。罪悪感からアルゴスを離れたペルセウスは、ティリュンスで王となり、ミケーネ文明の礎を築いたとされています。
現代への影響
- 映画『タイタンの戦い』シリーズ
- 「ペルセウス座」「アンドロメダ座」として星座に
- ヘラクレスの先祖(曽祖父にあたる)
テセウス(Theseus)──アテナイの建国英雄
基本情報
- ギリシャ名: テーセウス(Θησεύς)
- 父: アイゲウス(アテナイ王)/一説ではポセイドン
- 母: アイトラ(トロイゼン王女)
- 象徴: 剣とサンダル
どんな英雄?
アテナイ(現在のアテネ)の建国神話の中心人物です。
ミノタウロス退治で有名な英雄で、プルタルコスの『英雄伝』ではローマの建国者ロムルスと並ぶ偉大な人物として紹介されています。ヘラクレスほどの怪力はありませんが、大岩を持ち上げるほどの力を持っていました。
有名なエピソード:ミノタウロス退治
クレタ島には、頭が牛で体が人間という怪物ミノタウロスが幽閉されていました。
この怪物の餌として、アテナイは毎年7人の少年と7人の少女をクレタに送らなければなりませんでした。テセウスは自ら生贄の一人として志願し、クレタへ向かいます。
クレタ島に着くと、王女アリアドネがテセウスに一目惚れしました。彼女は迷宮から脱出する方法として「糸玉」を渡します。
テセウスは糸を伸ばしながら迷宮に入り、ミノタウロスを倒し、糸をたどって無事に脱出しました。
悲劇的な帰還
テセウスはアリアドネと共にクレタを脱出しますが、途中のナクソス島で彼女を置き去りにしてしまいます(理由は諸説あり)。
さらに大きな悲劇が待っていました。
出発前、父アイゲウスは「無事なら白い帆を、失敗なら黒い帆を」と約束していましたが、テセウスは帆を変えるのを忘れてしまいます。黒い帆を見た父は息子が死んだと思い込み、海に身を投げて亡くなりました。
この海は後に「エーゲ海」と呼ばれるようになったといいます。
現代への影響
- 「テセウスの船」という哲学的パラドックス
- アテネの国民的英雄として今も愛される
イアソン(Jason)──金羊毛を求めた冒険家
基本情報
- ギリシャ名: イアーソーン(Ἰάσων)
- ローマ名: ジェイソン(Jason)
- 父: アイソン(イオルコス王)
- 母: アルキメデ
- 象徴: アルゴ号、金羊毛
どんな英雄?
金羊毛(きんようもう)を求める航海を指揮した英雄です。
叔父ペリアスに王位を奪われたイアソンは、王位を取り戻すために「金羊毛を持ち帰れ」と命じられます。金羊毛とは、黄金に輝く羊の毛皮で、王権の象徴とされていました。
有名なエピソード:アルゴナウタイの冒険
イアソンは50人の英雄を集め、アルゴナウタイ(アルゴ号の乗組員)を結成しました。
メンバーには、ヘラクレス、オルペウス、双子の英雄カストルとポリュデウケスなど、錚々たる顔ぶれが揃っています。
金羊毛があるコルキス(現在のグルジア付近)にたどり着いたイアソンは、王アイエテスから以下の試練を課されました。
- 火を吐く牡牛を従える
- 竜の歯を蒔き、生えてくる兵士たちと戦う
- 眠らない竜を倒す
王女メデイアがイアソンに恋をし、魔術でこれらの試練を乗り越える手助けをしました。おかげで金羊毛を手に入れることに成功します。
悲劇的な結末
イアソンとメデイアは結婚し、子供も生まれました。
しかし後にイアソンはメデイアを捨て、コリントスの王女と結婚しようとします。
裏切られたメデイアの復讐は凄まじいものでした。新しい花嫁を毒の衣装で殺害し、自分の子供たちまで殺して逃亡したのです。
すべてを失ったイアソンは、老朽化したアルゴ号の下で眠っていたところ、船体が崩れ落ちて命を落としたといいます。
現代への影響
- 映画『アルゴ探検隊の大冒険』
- アルゴス星(小惑星)の名前の由来
ベレロポン(Bellerophon)──天馬を駆る英雄
基本情報
- ギリシャ名: ベレロポンテース(Βελλεροφόντης)
- 父: ポセイドン(海神)
- 母: エウリュノメー
- 象徴: 天馬ペガサス
どんな英雄?
天馬ペガサスを手なずけ、空から怪物を退治した英雄です。
コリントスの王子でしたが、誤って兄弟を殺してしまい、国を追われました。
有名なエピソード:キマイラ退治
ベレロポンはリュキア王から、恐ろしい怪物キマイラを退治するよう命じられます。
キマイラは、ライオンの頭、ヤギの体、蛇の尻尾を持ち、口から火を吐く怪物でした。
女神アテナから黄金の手綱を授かったベレロポンは、泉で水を飲んでいたペガサスを見事に手なずけます。ペガサスはメドゥーサの血から生まれた翼を持つ神馬でした。
ペガサスに乗って空から攻撃したベレロポンは、地上からでは不可能だったキマイラ退治を成し遂げました。
英雄の傲慢と転落
数々の功績を上げたベレロポンは、やがて自分は神と同等だと考えるようになります。
ペガサスでオリンポス山に登ろうとした彼に、ゼウスは怒りの雷を落としました。ベレロポンは地上に落下し、両足を失って残りの人生を不遇のうちに過ごしたといいます。
一方、ペガサスはオリンポスに辿り着き、ゼウスの雷を運ぶ役目を与えられました。
現代への影響
- 「ペガサス座」として星座に
- 傲慢の戒めとして語り継がれる
あまり知られていない重要な英雄たち
オルペウス(Orpheus)──音楽の英雄
基本情報
- 父: アポロン(一説ではオイアグロス)
- 母: カリオペ(ムーサの一人)
- 象徴: 竪琴
特徴と物語
ギリシャ神話における最高の音楽家です。
彼が竪琴を奏でると、野獣も静まり、川の流れさえ止まったといいます。
妻エウリュディケが毒蛇に噛まれて死んだとき、オルペウスは冥界まで下りていきます。冥王ハデスの前で竪琴を奏で、その美しい音色に心を動かされたハデスは、「振り返らずに地上まで歩けば妻を返す」という条件を出しました。
しかし、あと少しで地上というところでオルペウスは振り返ってしまい、エウリュディケは永遠に冥界へ消えていきました。
アタランテ(Atalanta)──女性英雄
基本情報
- 父: イアソス(アルカディア王)
- 象徴: 弓、黄金の林檎
特徴と物語
ギリシャ神話では珍しい女性の英雄です。
生まれてすぐ山に捨てられましたが、熊に育てられ、狩りの名手に成長しました。
カリュドンの猪狩りでは、巨大な猪に最初の一矢を射込む活躍を見せます。また、イアソンのアルゴナウタイに参加したという伝承もあります。
結婚を望まなかったアタランテは、「自分より足の速い男としか結婚しない」と宣言。多くの求婚者が挑戦しましたが、全員敗れて命を落としました。
最終的に、アフロディーテから黄金の林檎を授かった青年ヒッポメネスが、林檎を投げてアタランテの気を散らし、見事勝利して妻にしました。
ディオメデス(Diomedes)──神と戦った人間
基本情報
- 父: テュデウス(七将の一人)
- 出身: アルゴス
特徴と物語
トロイア戦争において、神々にまで傷を負わせた唯一の人間です。
アテナ女神の加護を受けたディオメデスは、軍神アレスを槍で突き、愛の女神アフロディーテの手を剣で斬りました。
アキレウスが戦線を離脱している間、ギリシャ軍を支えた最強クラスの戦士でした。
メレアグロス(Meleager)──運命に翻弄された英雄
基本情報
- 父: オイネウス(カリュドン王)
- 母: アルタイア
特徴と物語
カリュドンの猪狩りを主催した英雄です。
生まれたとき、運命の女神が「暖炉の薪が燃え尽きるとこの子も死ぬ」と予言しました。母アルタイアは急いで薪を消し、大切に保管していました。
成長したメレアグロスは、父が女神アルテミスへの供物を怠ったため送り込まれた巨大な猪を退治します。彼はアタランテに恋をしており、猪の毛皮を彼女に与えようとしました。
しかし、これに怒った叔父たちとの争いで、メレアグロスは叔父たちを殺してしまいます。息子に兄弟を殺された母アルタイアは、悲しみと怒りから、隠していた薪を火にくべました。
薪が燃え尽きると同時に、メレアグロスも命を落としました。
英雄たちの系譜と相関関係
世代別の分類
ギリシャ神話の英雄たちは、大きく以下の世代に分けられます。
第1世代:ペルセウスの時代
- ペルセウス(メドゥーサ退治、ミケーネ建国)
第2世代:ヘラクレスの時代
- ヘラクレス(ペルセウスの曾孫、12の功業)
- テセウス(ミノタウロス退治)
第3世代:アルゴナウタイの時代
- イアソン(金羊毛探索)
- オルペウス(音楽の達人)
- カストルとポリュデウケス(双子の英雄)
- アタランテ(女性英雄)
- ペレウス(アキレウスの父)
第4世代:トロイア戦争の時代
- アキレウス(最強の戦士)
- オデュッセウス(知恵の英雄)
- ディオメデス(神を傷つけた英雄)
- アイアス(大楯の英雄)
家系のつながり
英雄たちは血縁関係で結ばれていることが多いです。
ペルセウス家系
ペルセウス
│
(子孫)
│
アルクメネ ━━ ゼウス
│
ヘラクレス
アキレウス家系
ペレウス(アルゴナウタイ)━━ テティス(海の女神)
│
アキレウス
師弟関係
多くの英雄たちは、ケンタウロスの賢者ケイローンに育てられました。
- ヘラクレス
- アキレウス
- イアソン
- アスクレピオス(医術の神)
地域別・都市別の英雄たち
アテナイ(アテネ)の英雄
| 英雄名 | 主な功績 |
|---|---|
| テセウス | ミノタウロス退治、アテナイ建国 |
| ケクロプス | 大地から生まれたアテナイ初代の王 |
スパルタの英雄
| 英雄名 | 主な功績 |
|---|---|
| メネラオス | スパルタ王、ヘレネの夫 |
| カストルとポリュデウケス | 双子座の由来となった英雄 |
テーベの英雄
| 英雄名 | 主な功績 |
|---|---|
| カドモス | テーベ建国者、アルファベットを伝えた |
| オイディプス | スフィンクスの謎を解いた王 |
アルゴス・ミケーネの英雄
| 英雄名 | 主な功績 |
|---|---|
| ペルセウス | メドゥーサ退治、ミケーネ建国 |
| ヘラクレス | 12の功業 |
ギリシャ神話の英雄が現代文化に与えた影響
エンターテイメント業界での活用
ギリシャ神話の英雄たちは、現代のエンターテイメントでも大人気です。
映画
- 『トロイ』(2004年)──アキレウス役にブラッド・ピット
- 『タイタンの戦い』シリーズ──ペルセウスの冒険
- ディズニー『ヘラクレス』(1997年)──アニメ映画の名作
ゲーム
- 『ゴッド・オブ・ウォー』シリーズ──ギリシャ神話を題材にしたアクションゲーム
- 『Fate/Grand Order』──英雄たちがサーヴァントとして登場
- 『Hades』──冥界を舞台にしたローグライクゲーム
アニメ・漫画
- 『聖闘士星矢』──ギリシャ神話をモチーフにした作品
- 『終末のワルキューレ』──神々と人類の代表が戦う
言葉への影響
ギリシャ神話の英雄に由来する言葉は、現代でも使われています。
- アキレス腱:弱点の代名詞
- オデュッセイ:長く困難な旅
- トロイの木馬:コンピュータウイルスの一種
星座への影響
多くの英雄が星座として夜空に輝いています。
- ペルセウス座
- ヘルクレス座
- オリオン座(巨人狩人オリオン)
- ふたご座(カストルとポリュデウケス)
まとめ
ギリシャ神話の英雄たちは、単なる古い物語の登場人物ではありません。
彼らの物語には、人間の根源的な感情や価値観が詰まっています。
英雄たちが教えてくれること
- ヘラクレス:どんな困難も乗り越える力と忍耐
- アキレウス:名誉を重んじる誇りと、怒りの代償
- オデュッセウス:知恵と機転で道を切り開く大切さ
- ペルセウス:勇気を持って運命に立ち向かうこと
- テセウス:自己犠牲と祖国への愛
- イアソン:仲間との協力と、裏切りの代償
- ベレロポン:傲慢がもたらす破滅
これらの英雄たちの物語は、2500年以上前に生まれたものでありながら、現代の私たちの心にも深く響きます。
それは、勇気、愛、裏切り、成功と挫折といった人間の根本的な経験が、時代を超えて変わらないからかもしれません。
興味を持った英雄がいたら、ぜひその物語を詳しく調べてみてください。きっと新たな発見があるはずです。


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