ギガースとは?ギリシャ神話の巨人族を徹底解説

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「ジャイアント」という言葉、日常でよく使いますよね。
野球チームの名前にもなっているし、「巨大な」を表す言葉としてすっかり定着しています。

実はこの言葉、ギリシャ神話の巨人族「ギガース」が語源なんです。
彼らは山を引き抜いて投げ飛ばすほどの怪力を持ち、オリンポスの神々に真正面から戦いを挑んだ存在でした。

この記事では、ギガースの誕生から神々との壮絶な戦い、そして現代への影響まで詳しく解説していきます。

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ギガースとは

ギガース(Γίγας)はギリシャ神話に登場する巨人族です。
これは単数形で、複数形は「ギガンテス(Γίγαντες)」といいます。

日本語では「ギガス」と表記されることもありますね。
英語の「Giant(ジャイアント)」はまさにこのギガースから派生した言葉で、現代でも「巨大なもの」を表す際に広く使われています。

彼らは「ゲゲイネス」——つまり「大地より生まれし者」という別名も持っていました。
その名の通り、大地の女神ガイアから生まれた存在なんですね。

ギガースの誕生

ギガースの誕生には、なかなか衝撃的なエピソードがあります。

古代ギリシャの詩人ヘシオドスが書いた『神統記』によると、天空神ウラノスが息子のクロノスに男性器を切り落とされた時、その血が大地に滴り落ちました。
その血を受けた大地の女神ガイアが身籠もり、ギガースたちが生まれたのです。

彼らが生まれた場所はトラキア地方のパレーネー半島。
「フレグラ(燃える大地)」とも呼ばれる火山地帯でした。

実はギガースの誕生した血からは、復讐の女神エリニュスたちも同時に生まれています。
ウラノスへの怒りから生まれた存在たち、とも言えるかもしれませんね。

ギガースの姿

面白いことに、ギガースの姿は時代によって大きく変化しています。

古い時代の描写

ヘシオドスは「輝かしい青銅の鎧をまとい、長槍を持つ」と記述しています。
古代ギリシャの壺絵でも、完全に人間の姿をした重装歩兵として描かれていました。

これは当時のギリシャ人にとって、ギガースが「巨大な野蛮人」というより「強大な戦士」としてイメージされていたことを示しています。
ギリシャ北部トラキア地方の原始的な部族を象徴していた、という説もあるんですよ。

後世の描写

紀元前400年頃から、ギガースの姿は徐々に怪物的になっていきます。

長い髪と髭を蓄え、下半身は蛇の形をしている——。
毛皮をまとい、岩や燃え盛る樫の木を武器にする野蛮な巨人として描かれるようになりました。

ペルガモンの大祭壇(紀元前2世紀頃)に刻まれたレリーフでは、蛇の脚を持つギガースたちが神々と激しく戦う姿が見られます。
「文明vs野蛮」という対立構図が、より強調されるようになったんですね。

神には殺せない存在

ギガースには、とんでもない特殊能力がありました。
それは「神の力だけでは殺すことができない」というもの。

オリンポスの神々がどれだけ強力でも、ギガースに致命傷を与えることはできなかったのです。
予言によれば、彼らを倒すには「人間の力」が必要でした。

この予言を知った大地の女神ガイアは、ギガースを人間からも守る薬草を探し始めます。
しかしゼウスは先手を打ちました。

太陽神ヘリオス、月の女神セレネ、曙の女神エオスに命じて光を消させ、世界を闘に包んだのです。
そして暗闇の中で薬草を見つけ出し、すべて刈り取ってしまいました。

さらにゼウスは、人間の女性アルクメネとの間にヘラクレスをもうけ、味方につけます。
半神半人の英雄なら、予言を満たすことができる——そう考えたわけですね。

ギガントマキア——巨人戦争

ギガースたちが神々に戦いを挑んだ「ギガントマキア(巨人戦争)」は、ギリシャ神話でも屈指の大決戦です。

戦争の原因

なぜギガースたちは神々に戦いを挑んだのでしょうか?

きっかけは、ゼウスがティターン族をタルタロス(奈落)に幽閉したことでした。
ティターン族もガイアの子どもたち。
自分の子どもたちへの仕打ちに激怒したガイアが、ギガースたちをけしかけたのです。

一説には、ギガースのアルキュオネウスが太陽神ヘリオスの牛を盗んだことが発端だったとも言われています。

壮絶な戦い

ギガースたちは凄まじい勢いでオリンポスに攻め込みました。
山脈や島々を引き裂きながら進軍し、燃え盛る巨大な樫の木や山そのものを武器にして神々を攻撃したのです。

まさに天地を揺るがす大戦争。
神々も迎撃を開始し、ティタノマキア以来の宇宙の支配権を賭けた戦いが再び始まりました。

神々の反撃

オリンポスの神々は総力を挙げて戦いました。
それぞれの得意分野を活かした戦い方が面白いんですよ。

ゼウスは雷霆で巨人たちを次々と撃ち倒し、戦闘不能になった者たちはヘラクレスの強弓の餌食となりました。
アテナは島ごと巨人に投げつけ、ポセイドンも同じく島を武器にしています。

ディオニュソスは杖(テュルソス)で、ヘカテは松明で、ヘパイストスは溶けた金属を浴びせて戦いました。
運命の女神モイラたちも青銅の棍棒を振るい、ヘルメスは剣で、アルテミスは弓矢で巨人たちを討ち取っていきます。

結末

激戦の末、ギガースたちは神々とヘラクレスによって全滅させられました。

ただし彼らは「殺された」というより、火山や島の下に「封印された」というべきかもしれません。
死ぬことなく、今も地下で苦しんでいる——そんな伝承が残っています。

主要なギガースたち

ギガースの数は伝承によって異なりますが、約100体いたとも言われています。
その中でも特に有名な者たちを紹介しましょう。

アルキュオネウス

ギガースの中でも最強クラスの一角。
故郷のパレーネー半島にいる限り不死身という、とんでもない能力を持っていました。

ヘラクレスの矢を受けて倒れても、大地に触れると即座に復活してしまうのです。
まるでゲームの「特定エリア内無敵バフ」ですよね。

しかしアテナの助言を受けたヘラクレスは、アルキュオネウスを故郷の外まで引きずり出しました。
不死の力を失った彼は、そこでようやく息絶えたのです。

ポルピュリオーン

「巨人たちの王」と呼ばれた最強の一角。
ヘラクレスと女神ヘラに同時に襲いかかるという、無謀な戦いを挑みました。

ここでゼウスが取った作戦がなかなか狡猾です。
ポルピュリオーンの心に「ヘラへの激しい欲情」を植え付けたのです。

ヘラの衣を引き裂こうとしたその瞬間、ゼウスの雷霆が彼を直撃。
よろめいたところをヘラクレスの矢が貫き、ポルピュリオーンは倒れました。

エンケラドス

アテナと戦った巨人です。
逃げ出したところをアテナに追いつかれ、なんとシチリア島を丸ごと投げつけられて押し潰されました。

彼はエトナ山の下に封印されていると言われています。
火山の噴火は彼の吐く炎、地震は彼が寝返りを打つ音——。
現代のギリシャでも、地震のことを「エンケラドスの一撃」と呼ぶことがあるそうですよ。

ポリュボーテース

ポセイドンの敵となった巨人。
海神ポセイドンは、コス島の一部を引きちぎって彼に投げつけました。

その破片がニシロス島となり、ポリュボーテースは今もその下に封印されているとされています。

火山とギガース

興味深いことに、ギガースの伝承は火山地帯と深く結びついています。

  • エトナ山(シチリア島):エンケラドス、または怪物テュポーンが封印されている
  • ヴェスヴィオ山(イタリア):アルキュオネウスと多くの巨人たちが眠る
  • ニシロス島:ポリュボーテースが封印されている
  • プロキダ島:ミマスが封印されている

火山の噴火や地震といった自然現象を、古代の人々は「封印された巨人たちの苦しみ」として説明していたのですね。
神話が自然現象の「説明装置」として機能していた、良い例かもしれません。

ティターン族との違い

ギガースとティターン族、どちらも「巨人」として知られていますが、実は別の存在です。

項目ティターン族ギガース
ウラノスとガイアの子ウラノスの血からガイアが生んだ
性質神々(巨神)巨人族
戦争ティタノマキアギガントマキア
結末タルタロスに幽閉火山や島の下に封印

ただし後世になると、この2つはしばしば混同されるようになりました。
「巨大で強力な存在」というイメージが重なっていったのでしょう。

現代への影響

ギガースたちの物語は、現代のエンターテインメントにも大きな影響を与えています。

ゲーム

「ファイナルファンタジー」シリーズでは、「ギガース」や召喚獣「タイタン」がお馴染みですよね。
「ゴッド・オブ・ウォー」シリーズでは、ギリシャ神話がそのまま舞台になっており、巨大なティターン族とのバトルが圧巻です。

小説・漫画

リック・リオーダンの「オリンポスの神々と7人の英雄」シリーズでは、ギガースたちが重要な敵として登場します。
各ギガースが特定の神に対抗するために生まれたという設定が面白いですね。

「進撃の巨人」も、「九つの巨人」という設定などにギリシャ神話の影響が見られると言われています。

言語

そして何より、「Giant(ジャイアント)」「Gigantic(ギガンティック)」といった言葉として、私たちの日常に溶け込んでいます。
データ容量の「ギガ」も、語源をたどればギガースに行き着くんですよ。

ギガース一覧

神話に登場する主要なギガースと、その運命をまとめました。

名前読み方倒した神/英雄運命
アルキュオネウスAlcyoneusヘラクレス故郷の外に引きずり出されて死亡
ポルピュリオーンPorphyrionゼウス+ヘラクレス雷霆と矢で死亡
エンケラドスEnceladusアテナシチリア島(エトナ山)の下に封印
ポリュボーテースPolybotesポセイドンニシロス島の下に封印
エピアルテスEphialtesアポロン+ヘラクレス両目を射抜かれて死亡
エウリュトスEurytusディオニュソステュルソスで殺害
クリュティオスClytiusヘカテ松明で焼き殺された
ミマスMimasヘパイストス溶けた金属を浴びせられて死亡
パラスPallasアテナ皮を剥がれ、盾にされた
グラティオンGrationアルテミス矢で射殺
アグリオスAgriosモイラ(運命の女神)青銅の棍棒で殺害
トオンThoonモイラ(運命の女神)青銅の棍棒で殺害
ヒッポリュトスHippolytusヘルメス剣で殺害
アリスタイオスAristaeus唯一生き残った(糞虫の姿に変身して逃走)
エウリュメドンEurymedon巨人たちの王(ホメロスによる)

※伝承によって異なる説もあります。

まとめ

ギガースについてのポイントをまとめます。

  • ウラノスの血から大地の女神ガイアが生んだ巨人族
  • 「神には殺されない」能力を持っていた
  • ガイアに唆されてオリンポスの神々に戦いを挑んだ(ギガントマキア)
  • ヘラクレスの参戦により敗北
  • 火山や島の下に封印された
  • 「Giant」の語源として現代に生きている

神々でさえ倒せなかった巨人たち。
でも結局、人間の血を引く英雄ヘラクレスによって滅ぼされてしまいました。

絶対的に見える力にも、必ず弱点がある——。
ギガースの物語は、そんなことを教えてくれているのかもしれませんね。

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