地下から聞こえてくる重い足音、垂直に裂ける巨大な口…。
もし夢の中でこんな怪物に出会ったら、あなたはどうしますか?
クトゥルフ神話の世界には、そんな恐ろしい巨人「ガグ(Gugs)」という種族が存在します。
彼らは幻夢郷(ドリームランド)の地下深くに潜み、不用心な夢見人を狙っているんです。
この記事では、H.P.ラヴクラフトが生み出した恐怖の巨人「ガグ」について、その異形の姿や特徴、興味深い伝承を分かりやすく解説します。
概要

ガグは、クトゥルフ神話に登場する独立種族の一つです。
H.P.ラヴクラフトの代表作『未知なるカダスを夢に求めて』(1926-27年執筆)で初めて描かれました。
かつては幻夢郷の地上で暮らしていましたが、邪悪な儀式を行ったために神々の怒りを買い、地下世界へ追放されたという歴史を持っています。現在は地底の巨大な石造都市で生活し、独自の文明を築いているんですね。
ガグは単なる怪物ではなく、知能を持った種族です。ただし、その知能は限定的で、人間との会話はほぼ不可能。粗末な道具や武器を使う程度の知性はありますが、基本的には獰猛な肉食性の巨人として恐れられています。
姿
ガグの外見は、まさに悪夢から飛び出してきたような恐ろしさです。
ガグの身体的特徴
- 身長:約6メートル(20フィート)という巨体
- 体毛:全身が黒い剛毛で覆われている
- 腕:前腕が肘から二つに分かれた4本腕
- 手:それぞれの腕の先に鋭い爪がある
- 口:頭頂部にあり、垂直に顔が割れて開く
- 牙:巨大で鋭い牙が並んでいる
- 目:頭の左右についており、背後も見える
最も特徴的なのは、やはり垂直に開く口でしょう。
普通の生き物の口は横に開きますよね?でもガグの口は頭のてっぺんから顎まで、まるで顔が真っ二つに割れるように開くんです。この異様な構造は、獲物を丸呑みにするために発達したのかもしれません。
また、4本の腕も特異な点です。肘から先が二股に分かれているため、物をつかむのは不器用ですが、その分パワーは強大。獲物を捕らえて引き裂くには十分すぎる力を持っています。
特徴

ガグには、地下世界で生き抜くための独特な能力や習性があります。
生態と能力
暗視能力
地下の暗闇でも問題なく活動できる優れた視覚を持っています。頭の両側についた目により、360度の視界を確保。背後から忍び寄ることはほぼ不可能です。
食性
主食は地下に生息するガーストという別の怪物ですが、最も好むのは夢見人の肉。人間が幻夢郷を訪れると、その匂いを嗅ぎつけて襲ってくるんです。
社会性
同族間での意思疎通は可能らしく、集団で狩りをすることもあります。ただし、その方法が言語なのか、それとも別の手段なのかは謎に包まれています。
宗教的側面
興味深いことに、ガグは邪神を崇拝する宗教的な一面を持っています。地下の神殿で恐ろしい儀式を行うことがあり、これが地上から追放された原因でもあるんですね。
生息地
ガグは幻夢郷の地下世界に築かれた巨大な石造都市に住んでいます。
この都市は、ガグのサイズに合わせて作られているため、人間から見ると異常に巨大。高さ10メートル以上の扉や、巨人用の階段など、すべてが規格外のスケールで建造されています。
地下世界への入り口は幻夢郷の各地にありますが、最も有名なのはナスの谷からの通路です。ここから地下に降りると、ガグの領域に足を踏み入れることになります。
出典
ガグが登場する主な作品と、その描写について見ていきましょう。
『未知なるカダスを夢に求めて』での描写
ラヴクラフトの原作では、主人公ランドルフ・カーターが地下世界でガグと遭遇します。
カーターは食屍鬼(グール)たちの助けを借りて、ガグの都市を通り抜けなければならなくなります。その際の描写では、ガグたちが巨大な神殿で邪悪な儀式を行っている場面が登場。彼らが崇拝する邪神の正体は明かされませんが、その儀式の恐ろしさが強調されています。
追放の理由
なぜガグは地下に追放されたのでしょうか?
原作によると、彼らは「大いなるもの」(幻夢郷の神々)の怒りに触れたとされています。具体的には:
- 様々な神性を崇拝し、冒涜的な儀式を行った
- 地上で人間を捕食していた
- 神々が忌み嫌う邪悪な存在を召喚しようとした
これらの行為により、神々はガグを地下世界へと封印したのです。
まとめ
ガグは、クトゥルフ神話の幻夢郷に潜む恐怖の巨人種族です。
重要なポイント
- H.P.ラヴクラフトが創造した独立種族
- 身長6メートル、4本腕、垂直に開く口という異形の姿
- 神々の怒りを買い、地下世界へ追放された
- 地下の巨大都市で独自の文明を築いている
- 邪神を崇拝し、人間の肉を好む危険な存在
- 知能はあるが人間との意思疎通は困難
もし夢の中で幻夢郷を訪れることがあったら、地下への入り口には絶対に近づかないようにしましょう。そこには、垂直に裂ける口を持つ恐怖の巨人が、次の獲物を待ち構えているかもしれませんから…。


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