知恵と水の神「エンキ」とは?メソポタミア神話の賢き守護者

神話・歴史・伝承

メソポタミア(シュメール)神話の中で、人間にもっとも優しかった神がいるのをご存じでしょうか?

その名は「エンキ」。彼は知恵の神でありながら、水・芸術・魔法・創造といった、多くの重要な力を持っていた万能の神です。

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名前の意味

「エンキ(Enki)」という名前は、シュメール語で「EN.KI」と書きます。

  • 「EN(エン)」= 主(あるじ)・支配者
  • 「KI(キ)」= 地(ち)・大地

つまり、エンキの名前は「大地の支配者」や「地の主」という意味を持っています。(※諸説あり)

系譜(かぞく)

エンキは、メソポタミア神話のなかでもかなり古い神のひとりです。
その系譜をまとめると、以下のようになります。

  • 父:アン(天の神) – すべての神の父として知られ、神々の頂点に立つ存在
  • 母:キ(地の女神) – エンリルと同じく、地の力を象徴する女神
  • 兄:エンリル(風と秩序の神) – 神々の支配者。苛烈な兄に対して、エンキは柔和な知恵の神
  • 妻:ニンフルサグ
  • 子ども:マルドゥク(後にバビロニアの主神になる)

天と地の神から生まれた「知恵と水の神」であり、兄のエンリルとは対照的な性格を持っていました。

姿・見た目

エンキのビジュアルは、比較的よく残されています。
神話のレリーフや印章には、以下のような特徴で表現されています:

  • 長いヒゲをたくわえた賢者風の男性
  • 円錐状の帽子(あるいは角の生えた冠)をかぶっている
  • 肩から水(川)が流れ出している

この「水を流す肩」という特徴が、彼が「水」の神であることを象徴しています。
また、2つの流れる水は、チグリス川とユーフラテス側を象徴しています。

神格・神性

エンキは、知恵・創造・水・魔法・工芸など、非常に多くの分野にかかわる神でした。特に次のような力を持っています。

  • 水の神(特に淡水)
  • 知恵の神
  • 創造神
  • 豊穣・繁殖
  • 魔法
  • 建築や工芸、道具の発明者

水という根源的なものを司り、知恵に優れた神です。

また、メソポタミア神話の中でも人間に優しい神として知られています。

神話でのエピソード

登場する主な神話
  • 人間の創造:エンキが知恵を貸す
  • 大洪水:エンキが人類を救う
  • エンキとイナンナ:イナンナに大事なものを取られたる
  • イナンナ関連神話:ピンチになった時にイナンナを助けたりする。

エンキは、数多くの神話に登場します。その中でも特に有名なエピソードを2つ紹介します。

イナンナに〇〇を取られる

若い女神イナンナは、エリドゥの老神エンキを宴でもてなした。

エンキは酔ってしまい、文明の知識や技術の象徴である「メー」を全てイナンナに与えてしまう。

翌朝、酔いから覚めたエンキは自分の失態に気づき、メーを取り戻そうと悪魔を差し向けるが、イナンナは無事に逃げ切ってウルクへ戻る。

最終的に、エンキは騙されたことを認め、ウルクとの友好を受け入れた。

「アトラ・ハシース神話(洪水伝説)」

人間が増えすぎて騒がしくなり、エンキの兄エンリルが洪水で人類を滅ぼそうとする場面があります。

でも、エンキはこっそり人間に「箱舟を作って逃げろ」と助け舟を出すのです。

この物語は、聖書の「ノアの方舟」とそっくりで、世界最古の洪水神話とされています。

まとめ

項目内容
名前の意味「地の主」だけど、実際は水の神
系譜天の神アンと地の神キの子
見た目肩から水が流れる、賢者風の男性として描かれる
神格知恵・水・魔法・創造の神
有名な神話『イナンナとエンキ』でイナンナに大事なメー(恵み)を取られてしまう、洪水神話で人間を救う

エンキは「知恵」と「水」をつかさどる万能の神であり、人間の味方として、しばしば助けてくれる存在でした。

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