【神話で読み解く】龍の成長過程とは?水蛇から天を翔ける神獣になるまでの3000年

神話・歴史・伝承

龍といえば、空を自在に飛び回り、雨を降らせる神秘的な存在ですよね。

でも実は、龍は最初から龍だったわけではないんです。

中国の古い伝承によると、龍はもともと水辺に棲む小さな蛇から始まり、何千年もの時間をかけて成長していくとされています。

この記事では、龍がどのような段階を経て成長していくのか、その神秘的な変化の過程を詳しくご紹介します。


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概要

龍の成長過程は、6世紀ごろに書かれた中国の書物『述異記』に詳しく記されています。

それによると、龍は水虺(すいき)という水蛇から始まり、蛟(こう)角龍(かくりゅう)応龍(おうりゅう)という5つの段階を経て成長するとされているんです。

この成長には、なんと合計3000年もの歳月が必要だといわれています。

最終形態の応龍は翼を持ち、さらに年老いると「黄龍」と呼ばれる最高位の存在になると伝えられています。


第一段階:水虺(すいき)~すべての始まり~

龍の成長は、水虺(すいき)という水辺に棲む蛇から始まります。

虺(き)というのは、マムシのような毒蛇や水蛇を指す言葉なんですね。この段階では、まだ普通の蛇とほとんど変わりません。

水虺は淵や池の底でひっそりと暮らしながら、長い年月をかけて力を蓄えていきます。そして500年が経つと、次の段階である「蛟」へと姿を変えるのです。


第二段階:蛟(こう)~龍への入り口~

500年を生きた水虺は、蛟(こう)という存在に変化します。

蛟は「蛟龍(こうりゅう)」とも呼ばれ、龍の仲間として扱われる生き物です。

蛟の特徴

  • 体長は3メートル以上になることも
  • 蛇のような体に4本の足がある
  • 頭は小さく、首は細い
  • 首のまわりに白い模様がある
  • 胸は赤褐色、背中には青い斑紋

蛟はまだ角を持っていませんが、すでに水を操る力を身につけています。

面白いのは、蛟には「魚の王」としての役割もあるということ。古い文献によると、池の魚が一定数を超えると蛟がボスとなり、魚たちを率いて飛び去ってしまうとされていました。

この蛟が1000年を生き延びると、いよいよ本格的な「龍」へと進化するのです。


第三段階:龍~ついに完成する神獣の姿~

1000年を経た蛟は、ついにの姿を獲得します。

この段階で、私たちがよく知る龍らしい姿が完成するんですね。

龍の姿「三停九似」

南宋時代の書物によると、龍の姿は「三停九似(さんていきゅうじ)」と表現されます。

  • は鹿に似ている
  • はラクダに似ている
  • はウサギに似ている
  • 胴体は蛇に似ている
  • は蜃(しん・大ハマグリの妖怪)に似ている
  • は魚に似ている
  • は鷹に似ている
  • は虎に似ている
  • は牛に似ている

つまり、龍は9種類の動物の優れた部分を併せ持つ、まさに「合成獣」のような存在なのです。

この龍がさらに500年を過ごすと、頭に立派な角が生え、「角龍」と呼ばれる段階に入ります。


第四段階:角龍(かくりゅう)~威厳を纏う龍~

龍として500年を生きた存在は、角龍(かくりゅう)へと成長します。

この段階では、鹿のような立派な角が発達し、より威厳のある姿になります。角は龍の力と格を示す重要なシンボルなんですね。

角龍は雲を呼び、雨を降らせる力がさらに強まるとされています。水神・雨神としての能力が完成に近づいているのです。

そして角龍が1000年を超えて生き続けると、龍の最終形態である「応龍」になることができます。


最終段階:応龍(おうりゅう)~翼を持つ至高の存在~

3000年の歳月を経て、龍はついに応龍(おうりゅう)という最終形態に到達します。

応龍の最大の特徴は、翼を持っているということ。

通常の龍は翼がなくても空を飛べますが、応龍は鳥のような翼を備えた特別な存在です。中国神話では、黄帝を助けて敵と戦ったり、大禹の治水事業を手伝ったりと、英雄的な活躍をする龍として描かれています。

応龍の神話での活躍

  • 黄帝の戦いで洪水を飲み干して人々を救った
  • 尾で地面に線を引き、川の流れを作った
  • 水を蓄えて雨を降らせる能力を持つ

さらに、年老いた応龍は黄龍(こうりゅう)と呼ばれるようになります。黄龍は五行思想において中央を守護する最高位の龍とされ、皇帝の象徴ともなりました。


龍生九子~龍の子どもたち~

ところで、成長した龍は子どもを産むこともあります。

中国の伝承には「龍生九子(りゅうせいきゅうし)」という言葉があり、龍が生んだ9匹の子どもたちのことを指しています。

面白いのは、この9匹はどれも龍になれなかったということ。それぞれが異なる姿と性格を持っていて、建築物や道具の装飾として今でも見ることができます。

龍生九子の例

  • 囚牛(しゅうぎゅう):音楽を愛し、楽器の装飾になった
  • 睚眦(がいし):戦いを好み、刀剣の装飾になった
  • 蒲牢(ほろう):吼えることを好み、鐘の装飾になった
  • 狴犴(へいかん):正義を好み、牢獄の門を守る
  • 贔屓(ひいき):重いものを背負うことを好み、石碑を支える

「贔屓(ひいき)」という言葉は、ここから来ているんですよ。


まとめ

龍の成長過程について見てきましたが、いかがでしたか?

龍の成長段階

  1. 水虺(0年~):水蛇の段階
  2. (500年~):4本足を持ち、魚の王となる
  3. (1500年~):9種の動物の特徴を持つ完成形
  4. 角龍(2000年~):立派な角が発達
  5. 応龍(3000年~):翼を持つ最終形態
  6. 黄龍(さらに年を経て):最高位の存在

ポイント

  • 龍は最初から龍ではなく、水蛇から進化した存在
  • 完全な龍になるまでに3000年もの歳月が必要
  • 応龍は翼を持ち、神話で英雄的な活躍をする
  • 龍の子どもたちは龍になれず、それぞれ独自の姿を持つ

何千年もかけてゆっくりと成長していく龍の姿は、自然の力や時間の重みを象徴しているのかもしれません。

次に龍の絵を見るときは、「この龍は今どの段階なのかな?」と想像してみると、また違った楽しみ方ができるかもしれませんね。

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