「ティラノサウルス」「トリケラトプス」「ステゴサウルス」——恐竜の名前って、なんだかカッコいいけどやたら長いですよね。
実はこれ、適当につけられているわけではありません。恐竜の名前には、発見した人の思いやユーモア、時には「イライラした感情」まで込められていることがあるんです。
この記事では、恐竜の名前のつけ方から、思わず笑ってしまうような命名エピソードまで紹介していきます。
そもそも「恐竜」という言葉はどこから来た?
恐竜を英語で言うと「ダイナソー(Dinosaur)」。この言葉を作ったのは、1842年のイギリスの学者リチャード・オーウェンでした。
ギリシャ語の「デイノス(恐ろしい)」と「サウロス(トカゲ)」を組み合わせて「Dinosauria」と名づけたんですね。日本語の「恐竜」は、この「恐ろしいトカゲ」を直訳したものです。
ただ、ここでちょっと面白い誤解があります。「デイノス」には「恐ろしい」だけでなく「とてつもなく大きい」という意味もあるんです。オーウェンが本当に言いたかったのは「めちゃくちゃデカいトカゲ」だったのかもしれません。
ところが今では、ニワトリサイズの小さな恐竜もたくさん見つかっています。「恐ろしいトカゲ」どころか、むしろ可愛いレベル。命名って難しいですね。
恐竜の名前には「暗号」が隠れている
恐竜の名前をよく見ると、同じパーツが繰り返し登場することに気づきます。これ、実はギリシャ語やラテン語のパーツを組み合わせて作られているんです。
「サウルス」は「トカゲ」。だからティラノサウルスは「暴君トカゲ」、ステゴサウルスは「屋根トカゲ」という意味になります。屋根トカゲって何?と思いますよね。背中の板が屋根瓦みたいに見えたからだそうです。
「ドン」は「歯」を表します。イグアノドンは「イグアナの歯」。最初に見つかった歯がイグアナに似ていたことからこう呼ばれました。
「ケラトプス」は「角のある顔」。トリケラトプスは「3本の角がある顔」という意味です。そのまんまですね。
「ラプトル」は「泥棒」や「略奪者」。ヴェロキラプトルは「素早い泥棒」、オヴィラプトルは「卵泥棒」。ちなみにオヴィラプトルは卵を盗んでいたわけではなく、自分の卵を温めていただけだったことが後に判明しています。完全に濡れ衣でした。
こうした「暗号」を知っておくと、初めて聞く恐竜の名前でもなんとなく姿が想像できるようになります。
研究者のユーモアが爆発!変わった名前の恐竜たち
恐竜の命名権は、基本的に発見者や研究者にあります。ここからは、思わず「それでいいの?」と言いたくなる名前をつけられた恐竜たちを紹介しましょう。
イリタトル——「イライラしたから」
ブラジルで見つかったスピノサウルスの仲間に「イリタトル」という恐竜がいます。学名は「イリタトル・チャレンジャリ」。
なぜこんな名前になったのかというと、化石を売っていた業者が「高く売れるように」と勝手に石膏で頭骨を伸ばしていたんです。研究者たちは、偽装を見抜いて修復するのに膨大な時間を費やしました。
その時の気持ちを込めて「irritation(イライラ)」から「イリタトル」と命名。論文には「控えめに言っても、我々はイライラした」と書かれています。怒りがにじみ出ていますね。
ちなみに種小名の「チャレンジャリ」は、コナン・ドイルの小説『失われた世界』に登場するチャレンジャー教授から取られています。怒りと遊び心が同居した命名です。
ドラコレックス・ホグワーツィア——ハリー・ポッターの世界から
2006年に新種として発表されたパキケファロサウルスの仲間は、頭にトゲトゲが生えた、まるでドラゴンのような見た目をしていました。
化石はインディアナポリス子ども博物館に寄贈され、来館者の子どもたちにも意見を聞いて名前を決めることに。その結果つけられた名前が「ドラコレックス・ホグワーツィア」——「ホグワーツのドラゴン王」です。
そう、ハリー・ポッターのホグワーツ魔法魔術学校から取られています。作者のJ.K.ローリングも「ハリー・ポッターを書いて以来、最も予想外の名誉です」とコメントしたそうです。
ただし現在では、この恐竜は独立した種ではなく、パキケファロサウルスの若い個体だったという説が有力になっています。成長すると頭の形が変わるため、若い頃は違う恐竜に見えていたというわけですね。
ゴジラサウルス——あの怪獣へのオマージュ
1997年、アメリカのニューメキシコ州で見つかった三畳紀の肉食恐竜に「ゴジラサウルス」という名前がつけられました。
命名した古生物学者ケネス・カーペンターは、ゴジラ映画のファン。この恐竜が三畳紀の肉食恐竜としては大型だったことから、日本の怪獣王の名前を拝借したのです。発見場所はアメリカなのに、名前は日本由来。国境を越えた怪獣愛ですね。
エウブロンテス・ノビタイ——のび太が恐竜に!?
2021年、中国で新種の恐竜の足跡化石が発見され、「エウブロンテス・ノビタイ」と命名されました。「ノビタイ」——そう、『ドラえもん』ののび太です。
命名した中国の研究者は、子どもの頃から「のび太の恐竜」を見て育った世代。恐竜と少年の友情を描いたこの作品への敬意を込めて、のび太の名前を学名に入れたのでした。
藤子・F・不二雄先生も、まさか自分のキャラクターが学術論文に登場するとは思わなかったでしょうね。
日本発の恐竜たちも名前が面白い
日本で見つかった恐竜にも、ユニークな名前がつけられています。
フクイラプトルは福井県で発見された肉食恐竜。日本で初めて全身骨格が復元された肉食恐竜として知られています。「福井の泥棒」という意味ですが、最初は大きなカギ爪が「足の爪」だと勘違いされていました。だから「ラプトル(泥棒)」という名前に。後の研究で、実は「手の爪」だったと判明するのですが、名前は変わりませんでした。
フクイサウルスは「福井のトカゲ」。種小名の「テトリエンシス」は、化石が見つかった手取層群から来ています。正式な学名がつく前は「フクイリュウ(福井竜)」という愛称で呼ばれていました。
フクイティタンは「福井の巨人」。ティタンはギリシャ神話の巨人族のことで、大きな竜脚類によく使われる名前です。
福井県からはこのほかにも「コシサウルス」「フクイベナートル」など、たくさんの恐竜が見つかっています。恐竜王国・福井の面目躍如ですね。
まとめ
恐竜の名前について見てきました。ポイントをまとめると、こんな感じです。
- 「恐竜(ダイナソー)」は「恐ろしいトカゲ」の意味で1842年に命名された
- サウルス(トカゲ)、ドン(歯)、ケラトプス(角のある顔)など、パーツを知ると名前の意味がわかる
- 研究者が「イライラした」という理由でつけられた名前もある
- ハリー・ポッターやゴジラ、のび太の名前を持つ恐竜も存在する
- 日本では福井県から多くの恐竜が発見されている
恐竜の名前って、学術的で堅苦しいイメージがあるかもしれません。でも実際は、発見者の感情やこだわり、時にはユーモアまで詰め込まれた「作品」なんですね。
次に恐竜の名前を見かけたら、「この名前にはどんな物語があるんだろう?」と想像してみてください。きっと恐竜がもっと身近に感じられるはずです。


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