【クトゥルフ神話】一夜にして海底へ沈んだ「ムー大陸」とは?旧支配者が支配した太平洋の古代文明

神話・歴史・伝承

クトゥルフ神話の世界で、太平洋のどこかに巨大な大陸が存在していたことをご存知ですか?

その大陸は、現代の日本列島がすっぽり入ってしまうほど広大で、恐るべき旧支配者クトゥルフやガタノソアが支配していました。高度な文明を持った人類も暮らしていましたが、ある日突然、一夜にして海の底へ沈んでしまったのです。

この記事では、クトゥルフ神話における「ムー大陸」について、その規模や歴史、恐るべき支配者たち、そして消滅の真相を詳しくご紹介します。

スポンサーリンク

概要

ムー大陸は、クトゥルフ神話において太平洋上に存在したとされる伝説の大陸です。

この大陸は、旧支配者クトゥルフとその眷属が最初に支配した場所として描かれています。その後、外宇宙から飛来したミ=ゴ(ユゴス星人)に支配され、やがて人類の文明が栄えましたが、最終的には邪神ガタノソアの力によって一夜にして水没したとされるんです。

クトゥルフ神話における重要な舞台の一つで、H・P・ラヴクラフト、ヘンリー・カットナー、リン・カーターといった作家たちが、それぞれの作品で描きました。

現実世界では、20世紀初頭にイギリス人探検家ジェームズ・チャーチワードが『失われたムー大陸』を著し、この幻の大陸の存在を世に広めています。クトゥルフ神話草創期においては、この1931年の説がリアルタイムの新概念として取り入れられました。

ムー大陸の規模

クトゥルフ神話におけるムー大陸がどれほど大きかったのか、具体的な数字を見てみましょう。

広大な面積

  • 東西の距離:約8,000キロメートル
  • 南北の距離:約5,000キロメートル
  • 位置:東は現在のハワイ諸島、西はマリアナ諸島まで

これは太平洋のおよそ半分を占めるほどの大きさだったといいます。東京からアメリカ西海岸までの距離が約8,800キロですから、ムー大陸はほぼそれに匹敵する広さを持っていたんですね。

もしこれほどの大陸が本当に存在していたら、地球の地理は今とまったく違っていたはずです。

支配者たちの変遷

クトゥルフ神話のムー大陸には、長い歴史の中で3つの支配者が存在しました。

第一期:大いなるクトゥルフの時代(3億5千万年前)

最初にこの大陸を支配したのは、大いなるクトゥルフとその眷属でした。

彼らはゾス星系という遠い宇宙から飛来し、ムー大陸に古代都市ルルイエを築きました。しかし3億年前、星辰の変化に伴う大規模な地殻変動が発生。ルルイエは海底に沈み、クトゥルフは今なお深い眠りについているとされています。

クトゥルフの眷属には、ダゴンやヒュドラといった神レベルの存在がいます。彼らは「深きものども」と呼ばれる水棲種族を従えていました。また、オトゥーム(クトゥルフの騎士)やムナガラー(クトゥルフの右腕)といった従神もいたんです。

第二期:ミ=ゴの支配(1億6千万年前)

クトゥルフが眠りについた後、外宇宙から新たな支配者が飛来しました。それがミ=ゴ(ユゴス星人)です。

彼らはムー大陸の聖地ヤディス=ゴー山に巨大な要塞を築きました。黒々とした絶壁に建つこの石造りの要塞は、地球に生命が誕生する以前につくられたものだといわれています。

そしてミ=ゴは、連れてきた恐るべき邪神ガタノソアとロイガー族を、ヤディス=ゴー山の地下深くに幽閉したのです。やがてミ=ゴは姿を消しましたが、ガタノソアだけは地下に残されました。

第三期:人類の文明(20万年前)

最後にムー大陸を支配したのは、私たち人類でした。

20万年前、ムー大陸には人間の王国が築かれ、アトランティスハイパーボリアといった他の古代文明と交易を行い、繁栄を極めました。南米にまで植民地を広げるほどの勢力だったんです。

当時のムー大陸では、大いなるクトゥルフ、父なるイグ、シュブ=ニグラス、そしてガタノソアが神として崇拝されていました。クトゥルフ崇拝の拠点は世界に8箇所あるとされ、ムー大陸はその一つだったんですね。他の拠点には、南太平洋のポナペ、北米のインスマス、ペルーの地底湖などがあります。

ガタノソアの恐怖

クトゥルフ神話において、ムー大陸の地下に幽閉されていたガタノソアは最も恐ろしい邪神の一つとされています。

石化の呪い

ガタノソアの最も恐ろしい力は、見た者を石に変える能力です。

その姿を目にした者、あるいは影や映像を見ただけでも、体が石のように固まってしまいます。しかし、さらに恐ろしいのは、脳だけは生きたまま永遠に意識を保ち続けるという点なんです。

想像してみてください。体は動かず、声も出せず、ただ意識だけが永遠に閉じ込められた状態を。これはある意味、死よりも残酷な運命かもしれません。

ムー大陸滅亡の原因

17万5千年前、クトゥルフ神話のムー大陸は一夜にして海底に沈みました。

現実世界でのチャーチワードの説では、その原因を地殻変動によるものだと説明されています。しかし、クトゥルフ神話においては、ガタノソアの邪悪な力が原因だとされているんです。

研究者のライオネル・アーカートは、地下に幽閉されていたガタノソアが、その恐るべき力で大陸全体を破滅に導いたと主張しています。ガタノソアはムー大陸を滅ぼした後も、太平洋の海底で複数の文明や都市を破壊し続けているといわれます。

作家による描写の違い

クトゥルフ神話におけるムー大陸は、複数の作家によって描かれており、それぞれ異なる解釈が存在します。

主な作家

H・P・ラヴクラフトヘンリー・カットナーリン・カーターが主にムー大陸を舞台として描きました。面白いことに、各作家の作品では登場する神々の顔ぶれが異なっているんです。

リン・カーターの解釈

リン・カーターの『奈落の底のもの』では、独自の設定が加えられています。

この作品では、イソグサという邪神の復活を阻止するために、旧神(オールド・ワン)がムー大陸に攻撃を加えて滅ぼしたという設定になっているんです。つまり、ガタノソアではなく、旧神によって滅ぼされたという解釈ですね。

レムリアとの関係

クトゥルフ神話においては、ムー大陸とレムリアが同一視されることもあります

レムリアは18世紀から知られていた概念ですが、ムー説は1931年と比較的新しいものでした。クトゥルフ神話草創期においては、このリアルタイムの新概念がすぐに取り入れられたんですね。

チャーチワードと『失われたムー大陸』

クトゥルフ神話にムー大陸が登場する背景には、現実世界でのムー大陸説の流行がありました。

発見の経緯

ジェームズ・チャーチワードは、イギリス陸軍大佐を称する探検家で、インドのレンドゥー教寺院に保存されていたナアカル碑文という古代の粘土板を解読したといいます。

この碑文を元に、彼は1931年に『失われたムー大陸』を出版し、世界中に大きな反響を呼びました。

忘れられていた名前

実は、ムー大陸という名前は、チャーチワードの著書が出るまで、ほとんど知られていませんでした。

クトゥルフ神話の中でも、わずかに以下の古文献に名前が見られる程度だったんです:

  • 『トジアンの書』(アトランティスで書かれたとされる魔道書)
  • 『無名祭祀書』(フリードリヒ・ウィルヘルム・フォン・ユンゲット著)

チャーチワードの研究は、ウェールズ出身の退役陸軍大佐ライオネル・アーカートに引き継がれ、彼の著書『ムー大陸の謎』へと結実しています。

アーカートは、古代のムー大陸がアンドロメダ星雲より飛来したロイガー族と関連していると考え、ガタノソアをロイガー族の首魁だと主張しました。

ただし、現代の考古学では、チャーチワードがナアカル碑文を発見した時の年齢が16歳と若すぎることなどから、彼の創作である可能性が高いとみなされています。

クトゥルフ神話における重要な場所

ムー大陸には、クトゥルフ神話において重要な意味を持つ場所がいくつかあります。

ヤディス=ゴー山

ムー大陸の聖地とされる山で、以下の特徴があります:

  • 頂上:巨石造りのミ=ゴの要塞(地球に生命が誕生する前に建造)
  • 地下:邪神ガタノソアとロイガー族が幽閉されている
  • 特徴:黒々とした絶壁に建つ古代の要塞

ルルイエ

クトゥルフが築いた古代都市で、ムー大陸の一部として水没しました:

  • 現在の状態:海底に存在
  • 住人:大いなるクトゥルフが深い眠りについている
  • 意味:クトゥルフ神話で最も重要な場所の一つ

クトゥルフ神話への影響

ムー大陸は、クトゥルフ神話において重要な舞台として機能しています。

神話における位置づけ

  • 旧支配者たちの支配の歴史を示す場所
  • 人類文明の興亡を象徴する舞台
  • クトゥルフ崇拝の8大拠点の一つ
  • 複数の作家によって異なる解釈で描かれた

現代作品への影響

クトゥルフ神話をテーマにした小説、ゲーム、TRPG(テーブルトークRPG)などで、ムー大陸は頻繁に登場します。特に、クトゥルフ神話TRPGでは、ムー大陸に関連するシナリオが多数作られているんです。

まとめ

クトゥルフ神話におけるムー大陸は、太平洋上に存在したとされる幻の大陸で、旧支配者たちと人類の歴史が交錯する重要な舞台です。

重要なポイント

  • 太平洋の約半分を占める広大な大陸(東西8,000km、南北5,000km)
  • クトゥルフ→ミ=ゴ→人類と、3つの支配者の時代があった
  • 邪神ガタノソアは見た者を石に変える恐ろしい力を持つ
  • 17万5千年前、一夜にして海底に沈んで消滅した
  • ラヴクラフト、カットナー、カーターなど複数の作家が描いた
  • クトゥルフ崇拝の8大拠点の一つとして重要な位置を占める
  • 1931年のチャーチワード説を取り入れた草創期の重要概念

クトゥルフ神話におけるムー大陸は、単なる失われた文明ではなく、旧支配者たちの恐るべき力と人類の儚さを象徴する場所として描かれています。太平洋の深海のどこかに、今もルルイエとともに眠っているのかもしれませんね。

コメント

タイトルとURLをコピーしました