もしも、はるか昔のインド洋に、巨大な大陸が存在していたとしたら?
そこでは高度な文明を持つ蛇のような生物が王国を築き、やがて登場した人類と1000年にもわたる戦争を繰り広げた――そんな壮大な物語が語り継がれているんです。
19世紀の科学者が動物の分布の謎から導き出した「レムリア大陸」は、やがて神話や小説の世界で、失われた超古代文明の舞台として蘇りました。
この記事では、ムーやアトランティスに匹敵する幻の大陸「レムリア」について、その発見の経緯から神話的な物語まで、詳しくご紹介します。
概要

レムリア大陸は、かつてインド洋に存在したとされる超古代の幻の大陸です。
ムー大陸やアトランティス大陸と並び称される三大失われた大陸の一つで、19世紀のイギリス人科学者が動物の分布を研究する中で、その存在を仮説として提唱しました。
科学的な仮説として始まったレムリアは、後に神話や伝承、ファンタジー小説の舞台として発展していきます。特にクトゥルフ神話の世界では、人類が誕生する前から存在し、蛇人間という高度な文明種族が支配していた古代大陸として描かれているんです。
現在では海底深くに沈んだとされ、その痕跡を見つけることはできません。
レムリア仮説の誕生
レムリア大陸の存在を最初に考えたのは、19世紀のイギリス人動物学者フィリップ・スクレイターです。
キツネザルが教えてくれた謎
スクレイターは、キツネザルの一種である「レムール」という動物の分布を調査していました。すると、不思議なことに気づいたんです。
レムールの奇妙な分布
- インド洋のスリランカやインドネシアに生息
- 遠く海を隔てたマダガスカルやアフリカにも生息
- 間の海には全く生息していない
普通に考えれば、海を泳いで渡れない動物が、こんなに離れた場所に同じように住んでいるのはおかしいですよね。
スクレイターは考えました。「もしかして、昔はこれらの地域が陸続きだったのではないか?」と。
仮説の提唱
1864年、スクレイターはこの謎を説明するために、かつてインド洋に巨大な大陸が存在していたという仮説を発表しました。
彼はこの幻の大陸を、調査対象だったレムールにちなんで「レムリア」と名付けたのです。
ドイツの生物学者エルンスト・ヘッケルもこの説に賛同し、さらに「レムリアこそが人類発祥の地だ」とまで主張しました。
伝説のレムリア大陸
科学仮説として生まれたレムリアは、やがて神話や伝説の世界で独自の発展を遂げていきます。
大陸の誕生
伝説によれば、レムリア大陸が姿を現したのは今から50万年前のことです。
インド洋上に隆起したこの新しい大陸に、最初の住人がやってきました。それは人間ではなく、蛇人間という不思議な種族だったんです。
蛇人間たちの移住
蛇人間たちは、もともと別の場所に住んでいました。彼らの故郷はハイパーボリア大陸という、もっと古い大陸です。
しかし氷河期が訪れてハイパーボリアが衰退すると、蛇人間たちは新天地を求めてレムリアへと移り住んだのです。
蛇人間の特徴
- 爬虫類のような頭部を持つ
- 瞬きをしない目
- 大きく開く口
- 時には人間の姿に化けることができる
- 近づくと不気味な臭いがした
恐竜が栄えるよりもはるか昔、二足歩行する爬虫類から進化したとされる蛇人間たち。彼らは人類よりもずっと高度な文明を持っていました。
蛇人間の王国
レムリアに定住した蛇人間たちは、その優れた知識と技術を駆使して強大な王国を築き上げました。
彼らは大陸全体を支配し、繁栄を謳歌します。しかし、その平和な時代は永遠には続きませんでした。
人類との大戦争

時が経つにつれ、新しい勢力が台頭してきました。それが人類です。
戦いの始まり
身体的にも精神的にも十分な力をつけてきた人類は、レムリア大陸の支配権を求めて蛇人間に挑戦しました。
こうして、レムリアの歴史を二分する大きな戦争が始まったのです。
千年戦争
この戦いは、想像を絶する長期戦となりました。なんと1000年もの間、蛇人間と人類は戦い続けたんです。
高度な文明を持つ蛇人間と、数と勢いで勝る人類。激しい攻防が何世代にもわたって繰り広げられました。
蛇人間王国の滅亡
しかし、ついに蛇人間の王国は崩壊します。
長い戦いの中で、蛇人間のほとんどが人類との闘争で命を落としました。わずかに生き延びた蛇人間の密教師たちは、「外なる神々」と呼ばれる存在を地球に呼び寄せようと陰謀を企てます。
でも、その計画も人類の英雄によって阻止されました。こうして、レムリア大陸は人類の支配地となったのです。
大陸の沈没
人類が支配するようになったレムリアでは、多くの英雄たちが活躍し、数々の伝説を残しました。
しかし、そのレムリア大陸も永遠ではありませんでした。やがて大陸は地殻変動によって海中に沈み、インド洋の深い海底に消えていったのです。
人類が栄えた一つの時代が、こうして幕を閉じました。
伝承と創作
レムリアの物語は、さまざまな作品で語られ続けています。
ムー大陸との関係
面白いことに、レムリアとムー大陸の関係については、研究者によって意見が分かれているんです。
ムー大陸の存在を主張したジェームズ・チャーチワードは、「レムリアが地殻変動を繰り返してムー大陸に生まれ変わった」と説きました。つまり、レムリアとムーは同じ大陸だというわけですね。
でも、多くの物語や神話では、レムリアとムーは別々の大陸として扱われることが多いようです。
場所についての異説
科学仮説ではインド洋にあったとされるレムリアですが、神智学者ウィリアム・スコット=エリオットは南太平洋にあったと主張しました。
クトゥルフ神話の世界では、この南太平洋説が採用されることが多いんです。
レムリアン・サーガ
レムリアを舞台にした代表的な作品が、リン・カーターの小説シリーズ「レムリアン・サーガ」です。
1967年に刊行された『邪神と闘うゾンガー』に始まるこのシリーズは、超古代のレムリア大陸を舞台に、強者ゾンガーが爬虫類人や魔道師の陰謀と戦う、本格的なヒロイック・ファンタジー小説なんです。
作品には「悪竜の王」という蛇人間を思わせる存在が登場します。リン・カーター自身は明確な関連付けをしませんでしたが、後にテーブルトークRPG『クトゥルフの呼び声』で、この設定がクトゥルフ神話体系に取り込まれました。
こうして、レムリアの物語は今も進化し続けているんですね。
まとめ
レムリア大陸は、科学仮説から生まれ、壮大な神話へと発展した幻の古代大陸です。
重要なポイント
- 19世紀にキツネザルの分布から仮説が立てられた
- インド洋(または南太平洋)に存在したとされる超古代大陸
- 蛇人間という高度な文明種族が最初の支配者だった
- 人類との1000年戦争の末、蛇人間の王国は滅亡
- 現在は海底深くに沈んでいるとされる
- ムー、アトランティスと並ぶ三大失われた大陸の一つ
- 小説や神話の中で今も語り継がれている
動物の分布という科学的な疑問から始まったレムリアの物語は、やがて蛇人間と人類の壮大な戦いの舞台として、私たちの想像力をかき立て続けています。もしかしたら、インド洋の深い海底には、今も古代の遺跡が眠っているのかもしれませんね。


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