クトゥグアとニャルラトホテプの関係とは?天敵同士の因縁を徹底解説

神話・歴史・伝承

クトゥルフ神話に登場する神格の中で、「這い寄る混沌」ニャルラトホテプと「生ける炎」クトゥグアの関係をご存知でしょうか?

実は、この二柱の神格はクトゥルフ神話における最も有名な「天敵」関係にあるんです。
外なる神の中でも最強クラスの力を持つニャルラトホテプが、唯一恐れる存在がクトゥグアだと言われています。

「どうして敵対しているの?」「どちらが強いの?」という疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

この記事では、クトゥグアとニャルラトホテプの敵対関係について、その起源から現代作品での描かれ方まで詳しく解説していきます。


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クトゥグアとニャルラトホテプの基本情報

まずは、それぞれの神格について簡単におさらいしましょう。

ニャルラトホテプとは

ニャルラトホテプは、H.P.ラヴクラフトが1920年に創造した外なる神です。

項目内容
創造者H.P.ラヴクラフト
初出『ナイアーラトテップ』(1920年)
異名這い寄る混沌、千の貌を持つ者、無貌の神
分類外なる神
元素(ダーレス体系)

ニャルラトホテプは、外なる神の中で唯一、積極的に人類と関わる存在として知られています。
1000以上もの化身を持ち、人間の姿で現れることも多いのが特徴。
他の神々が無関心または眠っているのに対し、彼は意図的に人類を堕落させることを楽しむ、まさに「トリックスター」的な存在なんです。

クトゥグアとは

クトゥグアは、オーガスト・ダーレスが1944年に創造した火の神格です。

項目内容
創造者オーガスト・ダーレス
初出『アンドルー・フェランの手記』(1944年)
異名生ける炎(The Living Flame)
分類旧支配者
元素(ダーレス体系)
住処フォーマルハウト星近く

クトゥグアは巨大な「生ける炎」の姿で現れ、無数の「炎の精(Fire Vampires)」を従えています。
地球から約27光年離れたフォーマルハウト星の近くを住処としているとされています。


なぜ天敵関係なのか?敵対の起源

ダーレスの元素体系が生んだ対立

クトゥグアとニャルラトホテプの敵対関係は、オーガスト・ダーレスが導入した「元素体系」に由来します。

ダーレスはクトゥルフ神話の神格を古典的な四元素に分類しようとしました。

  • :クトゥグア
  • :クトゥルフ
  • :ハスター、イタカ
  • :ニャルラトホテプ

この体系において、火と地は相反する属性として位置づけられました。
つまり、火の神格であるクトゥグアと、地の神格であるニャルラトホテプは、元素的に対立する宿敵として設定されたわけです。

クトゥグアが創造された理由

実は、クトゥグアが生まれた背景には面白いエピソードがあります。

ダーレスが神格を四元素に分類しようとした際、火の元素を担当する神格が存在しなかったんです。
この問題を指摘したのがフランシス・T・レイニーで、ダーレスはこれを解決するためにクトゥグアを創造しました。

つまり、クトゥグアは最初から「ニャルラトホテプの天敵」として設計された神格だったと言えます。


『闇に棲みつくもの』── 因縁が描かれた物語

物語のあらすじ

クトゥグアとニャルラトホテプの敵対関係が初めて具体的に描かれたのは、ダーレスの短編『闘に棲みつくもの(The Dweller in Darkness)』(1944年)です。

物語の舞台はアメリカ・ウィスコンシン州にあるリック湖という僻地。
この湖の周辺には「ン・ガイの森」と呼ばれる禁忌の森があり、古くから人々が謎の失踪を遂げる場所として恐れられていました。

主人公たちは、この森で調査中に失踪したガードナー教授を捜索するうちに、恐ろしい真実を知ることになります。
ン・ガイの森にはニャルラトホテプの化身「闇に棲むもの」が潜んでいたのです。

クトゥグア召喚の決戦

失踪したガードナー教授の声が録音機器を通じて届き、衝撃的な情報がもたらされます。

「ン・ガイの森に現れる存在はニャルラトホテプである。彼を追い払える唯一の存在はクトゥグアだ」

教授はクトゥグアを召喚するための呪文を伝えます。

召喚の呪文

「Ph’nglui mglw’nafh Cthugha Fomalhaut n’gha-ghaa naf’l thagn! Iä! Cthugha!」

この呪文を、フォーマルハウト星が地平線に昇るタイミングで三度唱えることで、クトゥグアを召喚できるとされています。

物語のクライマックスでは、主人公がこの呪文を唱え、クトゥグアが出現。
巨大な炎の塊がン・ガイの森を焼き尽くし、ニャルラトホテプの化身を追い払うことに成功しました。


クトゥグアはニャルラトホテプより強いのか?

ニャルラトホテプが唯一恐れる存在

クトゥルフ神話において、ニャルラトホテプが恐れる存在として明確に言及されているのはクトゥグアだけです。

これは非常に興味深い設定です。
なぜなら、ニャルラトホテプはアザトースの子であり、外なる神の「魂と使者」として絶大な力を持つ存在だからです。

力の比較

両者の力関係について、神話内での位置づけを見てみましょう。

比較項目ニャルラトホテプクトゥグア
分類外なる神旧支配者
アザトース不明
行動範囲全宇宙で自由に活動フォーマルハウト付近
化身1000以上複数(生ける漆黒の炎など)
知性高い(策略を好む)本能的(破壊衝動)

一般的に、外なる神は旧支配者より上位の存在とされています。
しかし、クトゥグアはニャルラトホテプを撃退できるほどの力を持つことから、旧支配者の中でも外なる神に匹敵する存在と考えられています。

なぜクトゥグアはニャルラトホテプを恐れさせるのか

いくつかの解釈があります。

  1. 元素的な相性
    火の属性は闇を照らす力を持っています。ニャルラトホテプの「混沌」「未知」「闇」といった本質を、クトゥグアの炎が打ち消すという解釈。
  2. 理性なき破壊力
    ニャルラトホテプは知性的な策略家ですが、クトゥグアは理性を持たない純粋な破壊衝動の塊。計算が通用しない相手だからこそ恐ろしいという見方。
  3. 狂気による強さ
    一説では、クトゥグアは旧神との戦争で放射能を浴び、永久的な狂気に陥ったとされています。狂気ゆえに恐れを知らず、ニャルラトホテプにとって予測不能な脅威となっている可能性も。

他に敵対する神格はいるのか?

ニャルラトホテプと対立関係にある神格は、クトゥグアだけではありません。

ノーデンス(旧神)

ノーデンスは、ラヴクラフトの『未知なるカダスを夢に求めて』に登場する旧神です。
ドリームランドでニャルラトホテプと対立し、主人公ランドルフ・カーターを助ける場面があります。

ただし、ノーデンスとニャルラトホテプの対立は「天敵」というほど明確ではなく、ある種の「ライバル関係」に近い印象です。

ハスター

ハスターとニャルラトホテプの関係については諸説あり、敵対しているとする解釈もありますが、明確な「天敵」とは言い難い状況です。

結論として、ニャルラトホテプの唯一の天敵と呼べる存在はクトゥグアと言ってよいでしょう。


現代作品での描かれ方

這いよれ!ニャル子さん

ライトノベル・アニメ『這いよれ!ニャル子さん』では、クトゥグアは「クー子」という名前で登場します。

作中では、クトゥグア種族の宇宙人という設定で、主人公ニャル子(ニャルラトホテプ)に異常なまでの執着を見せるキャラクターとして描かれています。
原典の「敵対関係」が「ヤンデレ的な愛情」に変換されているのが面白いところ。

Fate/Grand Order

スマートフォンゲーム『Fate/Grand Order』でも、この対立関係が反映されています。

  • BB(BBペレ):ニャルラトホテプの力を宿したサーヴァント
  • 楊貴妃:クトゥグアの器となったサーヴァント

作中では、この二人がライバル関係として描かれており、ダーレスの原典へのオマージュとなっています。

デモンベイン

ニトロプラスのゲーム『デモンベイン』シリーズでも、クトゥグアとニャルラトホテプの敵対関係が描かれています。
「ン・ガイの森」がニャルラトホテプの化身として登場し、クトゥグアがそれを救出するというエピソードがあります。


クトゥルフ神話TRPGでの活用

最終手段としてのクトゥグア召喚

テーブルトークRPG『クトゥルフ神話TRPG』において、クトゥグアはニャルラトホテプ関連のシナリオで「最終手段」として登場することがあります。

ニャルラトホテプに追い詰められたプレイヤーキャラクターが、やけくそでクトゥグアを召喚するというシチュエーション。
確かにニャルラトホテプは追い払えますが、召喚者も周囲も全て焼き尽くされるため、文字通りの「諸刃の剣」なんです。

召喚の注意点

クトゥグアの召喚には大きなリスクがあります。

  • 成功した場合:クトゥグアが出現し、辺り一面を焼き尽くす(召喚者も巻き込まれる可能性大)
  • 失敗した場合ヤマンソという別の恐ろしい存在が現れ、召喚者を捕食する

どちらにしても生還は難しい、まさに「死ぬか死ぬか」の選択と言えます。


なぜこの対立関係は人気なのか?

クトゥグアとニャルラトホテプの「天敵」設定が多くの作品で採用される理由を考えてみましょう。

ドラマ性の高さ

最強クラスの邪神にも天敵がいるという設定は、物語に大きなドラマ性をもたらします。
絶望的な状況でも「クトゥグアを召喚すれば……」という一縷の希望が生まれるわけです。

対比の美しさ

  • ニャルラトホテプ:闇、混沌、知性、策略
  • クトゥグア:炎、破壊、本能、純粋な力

この対照的な性質が、キャラクターとしての魅力を引き立てています。

アレンジのしやすさ

「敵対関係」は作品によって「恋愛関係」「ライバル関係」「共闘関係」など、様々にアレンジできます。
這いよれ!ニャル子さんのように、原典の設定を逆手に取った解釈も可能なのが面白いところです。


まとめ

クトゥグアとニャルラトホテプの関係について、重要なポイントを整理しましょう。

  • クトゥグアはニャルラトホテプの「天敵」であり、唯一恐れる存在
  • この設定はオーガスト・ダーレスの元素体系から生まれた
  • 『闇に棲みつくもの』(1944年)で初めて対立関係が描かれた
  • クトゥグアは旧支配者だが、外なる神に匹敵する力を持つとされる
  • 現代の作品でも、この対立関係は様々な形でオマージュされている

クトゥルフ神話の神格同士の関係性を知ることで、物語の理解がより深まります。
特にニャルラトホテプが登場する作品を読む際には、「彼にも恐れる存在がいる」という事実を念頭に置くと、また違った楽しみ方ができるでしょう。

邪神たちの複雑な関係性を知れば知るほど、クトゥルフ神話の深淵にはまっていく……。
それこそが、この神話体系の魅力なのかもしれません。

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