夜空に輝く星の中に、想像を絶する恐ろしい存在が潜んでいるとしたら、どう思いますか?
地球から27光年離れたフォーマルハウトという星には、巨大な炎の塊として燃え盛る邪神が棲んでいるといわれています。
それが「生ける炎」と呼ばれる旧支配者、クトゥグアです。
この記事では、クトゥルフ神話に登場する火の邪神クトゥグアについて、その恐るべき姿と特徴、興味深い伝承を詳しくご紹介します。
概要

クトゥグアは、クトゥルフ神話に登場する旧支配者と呼ばれる太古の神々の一柱です。
「生ける炎」という異名を持ち、文字通り巨大な炎の姿をした存在として知られています。地球から27光年離れた南のうお座の恒星フォーマルハウトを住処としており、無数の小さな炎の精霊を従えているんです。
この邪神の最大の特徴は、ナイアーラトホテップという別の邪神と敵対関係にあることです。1940年に地球に召喚された際には、ナイアーラトホテップの拠点だったンガイの森を焼き尽くしたという恐ろしい記録が残っています。
実はクトゥグアは、ラヴクラフト本人が創造した神ではなく、オーガスト・ダーレスという作家が1940年代に生み出した神格なんです。四大元素(火・水・風・地)のうち「火」を司る存在として創られました。
系譜
クトゥグアの起源は、なんと45億年前にまでさかのぼります。
地球への飛来
まだ地殻が安定せず、海すらなかった原始の地球に、巨大な炎の塊として飛来したのがクトゥグアでした。地球に初めて出現した生命体であり、火の神格だったといわれています。
その後、地球には様々な存在が到来し文明を築きましたが、クトゥグアは他の存在には無関心で、ただひたすら地底の奥深くに潜り続けていたそうです。
旧神による封印
しかし3億年前、旧き神と呼ばれる存在が地球を訪れ、旧支配者たちを駆逐しました。クトゥグアもこの時に地球から追放され、現在はフォーマルハウトかその近くの恒星コルヴァスに封じ込められているとされています。
子と眷属
クトゥグアにはアフーム=ザーという子がいます。これは冷気の炎という不思議な存在で、触れたものすべてを凍らせる能力を持っているんです。通常の炎とは正反対の性質を持つ、とても興味深い存在ですね。
姿・見た目
クトゥグアの姿は、人間の理解を超えた恐ろしいものです。
基本形態
- 巨大な炎の塊:絶え間なく形を変える生ける炎
- 太陽のような輝き:まばゆい光を放つ巨大な火球
- 変幻自在:固定した形を持たず、常に揺らめき変化する
従える存在
クトゥグアが現れる時は、必ず炎の精と呼ばれる無数の小さな炎の球体を従えています。これらは知性を持つプラズマ生命体で、赤い稲妻のような姿をしていることもあるそうです。
その光景は、まるで巨大な太陽の周りを無数の火の玉が舞っているような、壮大で恐ろしい光景だといわれています。
特徴

クトゥグアには、他の旧支配者にはない独特な特徴があります。
主な能力と性質
- 破壊的な炎の力:触れるものすべてを焼き尽くす
- 召喚可能:特定の呪文と条件で地球に呼び出せる
- ナイアーラトホテップの天敵:この邪神と激しく対立
- 無関心な性格:基本的に他の存在には興味を示さない
召喚の条件
興味深いことに、クトゥグアは条件さえ整えば人間が召喚できるんです。フォーマルハウトが空に昇る時、特定の呪文を唱えることで呼び出せるといわれています。ただし、失敗すると代わりにヤマソンという別の炎の神が現れ、召喚者に復讐し続けるという恐ろしいリスクがあります。
伝承・神話
クトゥグアにまつわる伝承の中でも、特に有名なものをご紹介します。
「闇に棲みつくもの」事件(1940年)
アメリカのウィスコンシン州で起きた最も有名な事件です。ある人物がクトゥグアを召喚し、ナイアーラトホテップの地球上の拠点だったンガイの森を完全に焼き払ったという記録が残っています。
この時のナイアーラトホテップは「闇に吠える者」という姿をしていましたが、クトゥグアの圧倒的な炎の力の前に敗れ、どこかへ逃げ去ったそうです。
古代の崇拝
- 古代スティギア:最初にクトゥグアを崇拝した文明
- カルタゴ人:モロクという神として崇めた
- 6世紀のネスター・モペダン・モペナ:20年かけて信者を集めたが、最後に町を焼き払おうとして失敗
ハイパーボリア文明の滅亡
クトゥグアの子であるアフーム=ザーが、北極圏の古代文明ハイパーボリアを氷河期によって滅ぼしたという説もあります。炎の神の子が冷気で文明を滅ぼすという、なんとも皮肉な話ですね。
出典
クトゥグアが登場する主な作品をご紹介します。
初期の重要作品
- 『クトゥルー神話小辞典』(1943年):フランシス・T・レイニーが初めて言及
- 『闇に棲みつくもの』(1944年):オーガスト・ダーレスが実際に登場させた最初の作品
- 『平家物語』:実は登場しません(これは鵺の話です)
発展期の作品
- リン・カーター作品:アフーム=ザーを創造
- 『クトゥルー・オペラ』(1980-1982年):赤竜の姿として描写
- 『邪神伝説シリーズ』(1988-1993年):単眼と多腕を持つ節足動物のような姿
まとめ
クトゥグアは、クトゥルフ神話における火の元素を司る恐るべき旧支配者です。
重要なポイント
- 生ける炎の姿をした巨大な火の神格
- 地球から27光年離れたフォーマルハウトに封印されている
- ナイアーラトホテップの天敵として知られる
- 無数の炎の精を従える
- オーガスト・ダーレスが四大元素の火として創造
- 条件が整えば人間でも召喚可能(ただし危険)
クトゥグアは、宇宙の彼方で今も燃え続ける、人知を超えた存在です。もし夜空にフォーマルハウトを見つけたら、その星の中で燃え盛る恐ろしい炎の神のことを思い出してみてください。


コメント