【神話・伝承】中国の龍の一覧|四神から龍生九子まで種類と特徴を徹底解説

神話・歴史・伝承

中国の龍といえば、皇帝の象徴として有名ですよね。

でも実は、中国神話には驚くほどたくさんの種類の龍が登場するんです。

東西南北を守る四神の青龍、五つの方角を司る五方龍王、海を支配する四海龍王、さらには龍の子供たち「龍生九子」まで——その数は数えきれないほど。

この記事では、中国神話に登場する代表的な龍たちの種類・特徴・伝承を一覧形式でわかりやすくご紹介します。


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概要

中国において龍は、単なる空想上の生き物ではありません。

水や天候を司る神聖な存在として、古くから人々に崇められてきました。雨を降らせ、嵐を呼び、川や海を支配する——そんな強大な力を持つ霊獣として信仰されてきたのです。

中国の龍の大きな特徴は、西洋のドラゴンとはまったく異なるということ。西洋のドラゴンが「邪悪な怪物」として描かれるのに対し、中国の龍は縁起の良い瑞獣(ずいじゅう)として扱われています。

龍の姿は「九似(きゅうじ)」と呼ばれ、9つの動物の特徴を併せ持つとされています。

龍の九似

  • 頭:ラクダに似る
  • 角:鹿に似る
  • 目:鬼(または兎)に似る
  • 首:蛇に似る
  • 腹:蜃(しん・伝説の貝)に似る
  • 鱗:鯉に似る
  • 爪:鷹に似る
  • 掌:虎に似る
  • 耳:牛に似る

このように複数の動物を組み合わせた姿こそが、中国の龍の特徴なんですね。

それでは、具体的にどんな龍たちがいるのか見ていきましょう。


四神の青龍(せいりゅう)

中国神話で最も有名な龍といえば、四神(ししん)の一つである青龍でしょう。

四神とは、東西南北の四方を守護する霊獣のこと。それぞれの方角と色、季節が結びついています。

四神の構成

  • 東:青龍(せいりゅう)——春を司る
  • 南:朱雀(すざく)——夏を司る
  • 西:白虎(びゃっこ)——秋を司る
  • 北:玄武(げんぶ)——冬を司る

青龍は東方を守護し、春を象徴する存在です。「青」という色は五行思想で東と木の要素に対応しており、成長や生命力を表しています。

この四神信仰は日本にも伝わり、高松塚古墳やキトラ古墳の壁画にも青龍の姿が描かれているんですよ。京都の清水寺では毎年、青龍を祀る儀式が行われています。


五方龍王(ごほうりゅうおう)——五色の龍

四神の考えをさらに発展させたのが、五方龍王という概念です。

東西南北の4方向に加えて「中央」を加え、それぞれに色の異なる龍を配置したものになります。

五方龍王の一覧

方角龍の名前対応する季節
青龍(せいりゅう)青・緑
赤龍(せきりゅう)
中央黄龍(こうりゅう)土用
西白龍(はくりゅう)
黒龍(こくりゅう)

この五方龍王は、道教の経典に登場し、雨乞いの儀式でも重要な役割を果たしました。干ばつのときには、五色の龍を土で作って祭壇に並べ、雨を祈ったという記録が残っています。

黄龍について

五方龍王の中でも特別な存在が黄龍です。

黄龍は中央を守護する龍であり、「四龍の長」とも呼ばれる最高位の存在。皇帝の権威を象徴する龍としても知られています。

伝説によると、古代の帝王である黄帝は、天に昇るとき黄龍の姿になったとされています。このことから、中国人が自らを「龍の子孫」と呼ぶようになったという説もあるんですよ。


四海龍王(しかいりゅうおう)——海を支配する龍

中国神話では、四つの海にはそれぞれ龍王が棲んでいると考えられていました。これが四海龍王です。

彼らは海底の水晶宮に住み、エビやカニを従え、雲と雨を操る力を持っています。

四海龍王の一覧

龍王の名前別名
東海敖広(ごうこう)広徳王
南海敖欽(ごうきん)広利王
西海敖閏(ごうじゅん)広潤王
北海敖順(ごうじゅん)広沢王

四海龍王は『西遊記』や『封神演義』といった古典小説にも登場します。

『西遊記』では、孫悟空が東海龍王の宮殿から如意棒(にょいぼう)を奪い取るエピソードが有名ですね。また『封神演義』では、英雄・哪吒(なた)が東海龍王の息子を殺してしまい、大きな騒動になる場面が描かれています。

四海龍王は玉皇大帝(ぎょくこうたいてい・天界の最高神)の臣下として、雨を降らせたり海を管理したりする役目を担っていました。


龍生九子(りゅうせいきゅうし)——龍の9人の子供たち

「龍には9人の子供がいる」という伝承があります。

面白いことに、この9人の子供たちは誰一人として親である龍の姿にはならなかったとされているんです。それぞれが独自の姿と性格を持ち、建築物や道具の装飾として今も見ることができます。

龍生九子の一覧(『懐麓堂集』による)

名前特徴・性格見られる場所
囚牛(しゅうぎゅう)音楽を好む琴の頭部
睚眦(がいし)殺生を好む刀剣の柄
嘲風(ちょうふう)険しい場所を好む屋根の角
蒲牢(ほろう)吠えることを好む鐘の吊り手
狻猊(さんげい)座ることを好む仏像の台座
霸下(はか)重いものを背負うことを好む石碑の台座
狴犴(へいかん)訴訟を好む牢獄の門
負屭(ふき)文章を好む石碑の装飾
蚩吻(しふん)飲み込むことを好む屋根の棟

例えば、寺院の鐘の上に龍のような飾りがついているのを見たことはありませんか?あれは鳴くことを好む蒲牢なんです。また、屋根の両端についている龍の飾りは、火を飲み込んで火事を防ぐとされる蚩吻ですね。

このように龍生九子は、装飾としてさまざまな場所に今も残っているのです。


その他の有名な龍たち

中国神話には、上記以外にもさまざまな龍が登場します。代表的なものをご紹介しましょう。

応龍(おうりゅう)

翼を持つ特別な龍が応龍です。

伝説によると、応龍は黄帝に仕え、蚩尤(しゆう)との戦いで大活躍しました。洪水の水を飲んで人々を救ったのですが、水の元素を取り込みすぎたため天に戻れなくなってしまったとか。

現在は中国南部を飛び回っており、そのため南部には雨が多いのだと言われています。

龍の成長過程では、蛟(みずち)が千年を経て龍となり、さらに五百年で角龍、千年で応龍になるとされています。つまり応龍は、龍の最終進化形態ともいえる存在なんですね。

蛟龍(こうりゅう)

蛟(みずち)は、龍になる前の段階の生き物です。

蛇に似た姿で四本の足を持ち、川や湖に棲んでいます。『本草綱目』によると、長さは3メートル以上になり、首には白い模様があるとされています。

蛟は五百年から千年かけて龍へと進化していきます。この「蛟から龍へ」という変化は、「鯉の滝登り」(登龍門)の伝説とも関連しているんですよ。

燭龍(しょくりゅう)

燭龍は、北西の章尾山に住む龍神です。

顔は人間、体は蛇で、赤い鱗が光り輝いているとされています。最大の特徴は、その目の開閉で昼夜が決まること。燭龍が目を開けると昼になり、閉じると夜になるのです。

食べることも眠ることもせず、風や雨、四季を操る力を持つという、まさに自然そのものを体現した存在といえるでしょう。


まとめ

中国の龍は、神話・伝承の中で非常に重要な位置を占める霊獣です。

この記事のポイント

  • 四神の青龍:東方を守護し、春を司る龍
  • 五方龍王:五つの方角と五色に対応した龍たち(青・赤・黄・白・黒)
  • 四海龍王:東西南北の海を支配する龍王(敖広・敖欽・敖閏・敖順)
  • 龍生九子:龍の9人の子供で、それぞれ独自の姿と役割を持つ
  • 応龍:翼を持つ龍の最終進化形態
  • 蛟龍:龍になる前段階の水棲生物

中国の龍は西洋のドラゴンとは異なり、水と天候を司る縁起の良い存在として崇められてきました。皇帝の象徴であり、雨をもたらす神であり、中国人自身が「龍の子孫」と呼ぶほど、深く文化に根付いています。

寺院の装飾、建築物の彫刻、お祭りの龍舞など、現代でも龍の姿は至るところで見ることができます。中国を訪れた際には、ぜひこれらの龍たちを探してみてくださいね。

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