中国神話の神一覧|創世の神から道教の最高神まで完全ガイド

神話・歴史・伝承

「西遊記」や「封神演義」に登場する神々の名前を聞いたことはありませんか?

玉皇大帝、女媧、伏羲……これらはすべて、悠久の歴史を持つ中国神話に登場する神々です。

中国神話は、ギリシャ神話や日本神話とは少し異なる特徴を持っています。
それは、神話・歴史・道教・仏教が複雑に絡み合っているという点。
古代の伝説上の帝王が神格化されたり、実在の人物が死後に神として崇められたりするケースも多いんです。

「名前は知っているけど、どんな神様なの?」「たくさんいすぎて関係がよくわからない」という方も多いのではないでしょうか。

この記事では、中国神話に登場する主要な神々を、創世神話から道教の神々まで体系的にわかりやすく解説します。

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  1. 中国神話の特徴と基本構造
    1. 中国神話はなぜ複雑なの?
    2. 主な神話資料
  2. 創世の神々──世界と人類の創造者
    1. 盤古(ばんこ)──天地を開いた最初の神
    2. 女媧(じょか)──人類を創った母なる女神
    3. 伏羲(ふくき)──文明を授けた最初の帝王
  3. 三皇五帝──神と人の境界にある聖王たち
    1. 三皇五帝とは?
    2. 三皇(さんこう)──神々に近い古代の帝王
    3. 神農(しんのう)──農業と医学の父
    4. 五帝(ごてい)──理想の聖王たち
    5. 黄帝(こうてい)──中華民族の始祖
  4. 道教の最高神──天界を統べる神々
    1. 玉皇大帝(ぎょくこうたいてい)──天界の最高神
    2. 三清(さんせい)──道教の根源的な三神
    3. 西王母(せいおうぼ)──不老不死の女神
  5. 四神(しじん)──方位を守る聖獣たち
    1. 四神とは?
    2. 青龍(せいりゅう)──東方の龍神
    3. 白虎(びゃっこ)──西方の虎神
    4. 朱雀(すざく)──南方の霊鳥
    5. 玄武(げんぶ)──北方の亀蛇
    6. 黄龍(こうりゅう)──中央を司る龍
  6. その他の重要な神々
    1. 関聖帝君(かんせいていくん)──忠義の神
    2. 媽祖(まそ)──航海の女神
    3. 羿(げい)──九つの太陽を射落とした英雄
    4. 龍王(りゅうおう)──海と水を司る神々
  7. 中国神話の神 一覧表
    1. 創世・創造の神々
    2. 三皇五帝(伝説の帝王)
    3. 道教・民間信仰の神々
    4. 四神(四象)
    5. 英雄・その他の神々
  8. 中国神話が現代文化に与えた影響
    1. ゲーム・アニメ・漫画での登場
    2. 言葉や慣用句への影響
  9. まとめ

中国神話の特徴と基本構造

中国神話はなぜ複雑なの?

中国神話が複雑に見える理由は、一つの統一された神話体系が存在しないからです。

主な特徴を見てみましょう。

歴史と神話の融合

  • 伝説上の帝王(三皇五帝)が実在の人物として扱われることも
  • 歴史書『史記』にも神話的な人物が登場

道教・仏教・民間信仰の混合

  • 道教の神々と古代神話の神々が同一視される
  • 仏教の菩薩が中国独自の神として変容(例:観音菩薩)
  • 実在の人物が神格化される(例:関羽→関聖帝君)

地域による違い

  • 黄河流域、長江流域、南方などで異なる神話が存在
  • 漢民族以外の少数民族にも独自の神話がある

主な神話資料

中国神話の主要な出典はこちらです。

資料名時代特徴
山海経(せんがいきょう)戦国〜漢代神話的地理書、神々や怪物を記載
楚辞(そじ)戦国時代南方の神話を含む詩集
淮南子(えなんじ)前漢創世神話や伝説を収録
史記(しき)前漢三皇五帝を歴史として記述

創世の神々──世界と人類の創造者

盤古(ばんこ)──天地を開いた最初の神

基本情報

  • 別名:盤古氏
  • 役割:天地開闢の神、創造神
  • 初出:三国時代の『三五歴記』(3世紀)

どんな神?

中国神話における天地創造の神です。
ただし、古事記のイザナギ・イザナミや、旧約聖書の神とは違い、「意志を持って世界を創った」というよりは、「盤古の存在自体が世界になった」という神話なんです。

天地開闘の神話

最初、宇宙は混沌(こんとん)という巨大な卵のような状態でした。
この卵の中で盤古は1万8千年眠り続けます。

目覚めた盤古は、卵を割って立ち上がりました。
軽くて澄んだ気(陽)は上昇してとなり、重くて濁った気(陰)は下降してとなったのです。

盤古は天と地の間に立ち、両者が再び混ざらないよう支え続けました。
毎日、天は一丈(約3メートル)高くなり、地は一丈深くなり、盤古の身体も一丈伸びていきました。
これが1万8千年続いたとされています。

盤古の死と世界の完成

やがて盤古は力尽きて倒れます。
しかし、その死によって世界は完成しました。

  • 左目 → 太陽
  • 右目 →
  • 吐息 → 風と雲
  • 声 →
  • 四肢 → 四方の山々
  • 血液 →
  • 毛髪 → 草木
  • 汗 → 雨露

盤古の身体そのものが、この世界を形作っているという壮大な神話なんです。


女媧(じょか)──人類を創った母なる女神

基本情報

  • 別名:媧皇(かこう)、女希氏
  • 役割:人類創造、天の修復
  • 象徴:人頭蛇身(上半身が人間、下半身が蛇)

どんな女神?

中国神話において人類を創造した母なる女神です。
ギリシャ神話のプロメテウスが「火を与えた」のに対し、女媧は「人間そのものを作った」存在として崇められています。

人類創造の神話

盤古の死後、世界には山や川、動物がいましたが、人間はまだいませんでした。

ある日、女媧は川のほとりを歩いていました。
水面に映る自分の姿を見て、ふと寂しさを感じます。
「この美しい世界に、自分のような存在がいたらいいのに」

そこで女媧は黄土をこね、自分に似せた人形を作り始めました。
一体、また一体と丁寧に作った人形に息を吹きかけると、彼らは命を持って動き出したのです。

しかし、一人ずつ手作りするのは時間がかかりすぎます。
そこで女媧は縄を泥に浸して振り回し、飛び散った泥のしずくを人間に変えました。

伝説によると、最初に手で作られた人々は貴族となり、縄で作られた人々は庶民になったとも言われています。

天を修復した英雄

女媧のもう一つの偉業が「天の修復」です。

ある時、水神共工と火神祝融が激しく争いました。
敗れた共工は怒りのあまり、天を支える柱の一つ「不周山」に頭から突っ込んでしまいます。

すると天に大きな穴が開き、大地は傾き、洪水と火災が世界を襲いました。

女媧は五色の石を集めて溶かし、天の穴を塞ぎます。
さらに巨大な亀の足を切って新しい柱とし、天を支え直しました。
こうして世界は再び安定を取り戻したのです。


伏羲(ふくき)──文明を授けた最初の帝王

基本情報

  • 別名:伏犠、庖犧(ほうぎ)、太昊(たいこう)
  • 役割:八卦の創始者、人類最初の帝王
  • 象徴:人頭蛇身(女媧と対をなす)

どんな神?

女媧の兄であり夫でもある伏羲は、人類に文明を授けた文化英雄です。
「三皇」の筆頭として、中国文明の始祖と崇められています。

伏羲の功績

伏羲は人類にさまざまな知識と技術を教えました。

  • 八卦(はっけ)の創始:陰と陽を組み合わせた占いの体系
  • 狩猟と漁労:網を使った魚の捕り方
  • 火の使用:調理の方法
  • 文字の基礎:記録を残す方法
  • 婚姻制度:家族の概念

特に八卦は、後の『易経(えきけい)』の基礎となり、中国思想に計り知れない影響を与えました。

女媧との関係

伝説によると、大洪水によって人類が滅びかけた時、伏羲と女媧だけが生き残りました。
二人は兄妹でしたが、人類を存続させるため、天に許しを求めます。

二人は別々の山に登り、それぞれ火を焚きました。
もし煙が空で交わったら、結婚せよという天の意志──。
結果、二本の煙は一つになり、二人は夫婦となって人類の祖先となったのです。

中国の古い墓の壁画では、伏羲と女媧が蛇の尾を絡み合わせた姿で描かれることが多く、これは陰陽の調和を象徴しています。

三皇五帝──神と人の境界にある聖王たち

三皇五帝とは?

三皇五帝(さんこうごてい) は、中国の伝説上の帝王たちです。
紀元前2800年頃から紀元前2000年頃まで、夏王朝の前に統治したとされています。

三皇は神に近い存在で、人類に基本的な技術を教えました。
五帝は道徳的に優れた聖王で、理想的な統治者のモデルとされています。

ただし、誰が三皇五帝に含まれるかは文献によって異なります。

三皇(さんこう)──神々に近い古代の帝王

最も一般的な組み合わせはこちらです。

名前読み方主な功績
伏羲ふくき八卦の創始、狩猟・漁労を教える
神農しんのう農業と医薬の始祖
女媧 または 燧人じょか / すいじん人類創造 / 火の発見

神農(しんのう)──農業と医学の父

基本情報

  • 別名:炎帝(えんてい)、神農氏
  • 役割:農業の神、医薬の神
  • 象徴:牛頭人身、透明な腹

どんな神?

神農は農業と漢方医学の始祖として崇められる神です。
「炎帝」の称号を持ち、火の徳を持つ帝王とされています。

農業の発明

神農は人々が飢えに苦しんでいるのを見て、農耕の方法を考案しました。
鋤(すき)を発明し、五穀(米・麦・粟・黍・豆)の栽培法を教えたとされています。

百草を嘗めた伝説

神農の最も有名な伝説は「百草を嘗める」エピソードです。

神農は透明な腹を持っていたとされ、様々な草木を口にしてその効能を調べました。
毒草を食べると内臓が黒く変色するのが見えたため、すぐに解毒できたといいます。

一日に70種類もの毒に当たりながらも研究を続け、薬草の効能をまとめた『神農本草経』の基礎を作りました。

しかし最期は「断腸草」という猛毒の草を食べ、解毒が間に合わずに命を落としたと伝えられています。
自らの命を犠牲にして医薬の知識を残した、まさに医学の殉教者なんです。


五帝(ごてい)──理想の聖王たち

五帝の最も一般的な組み合わせはこちらです。

名前読み方主な功績・特徴
黄帝こうてい中華民族の始祖、文明の創始者
顓頊せんぎょく暦法と祭祀の整備
帝嚳ていこく音楽と礼法の制定
ぎょう理想的な徳治の実践
しゅん孝行と謙譲の模範

黄帝(こうてい)──中華民族の始祖

基本情報

  • 別名:軒轅氏(けんえんし)
  • 役割:中華民族の祖先、五帝の筆頭
  • 象徴:黄色(五行の土に対応)

どんな帝王?

黄帝はすべての漢民族の祖先とされる伝説的な帝王です。
現在も陝西省の黄帝陵には多くの人々が参拝に訪れます。

黄帝の功績

黄帝は多くの発明と文化の創始に関わったとされています。

  • 衣服:葉や毛皮から布製の服へ
  • 住居:定住生活の基礎
  • 車と船:交通手段の発明
  • 弓矢:狩猟と戦争の道具
  • :季節と時間の把握
  • 文字:部下の倉頡(そうけつ)が発明

黄帝の妃・嫘祖(らいそ) も重要な人物です。
彼女は養蚕と絹織物を発明したとされ、「蚕神」として崇められています。

蚩尤との戦い

黄帝の最も有名な神話は、蚩尤(しゆう) との戦いです。

蚩尤は銅の頭と鉄の額を持つ戦神で、81人の兄弟を率いて黄帝に挑みました。
蚩尤は濃霧を発生させて黄帝軍を混乱させますが、黄帝は指南車(方位を示す車)を発明して対抗します。

最終的に黄帝は応龍旱魃(かんばつ) などの神々の助けを借り、蚩尤を討ち取りました。
この戦いは「涿鹿の戦い」と呼ばれ、中華民族統一の象徴とされています。

道教の最高神──天界を統べる神々

玉皇大帝(ぎょくこうたいてい)──天界の最高神

基本情報

  • 別名:玉皇上帝、天公(てんこう)、玉帝
  • 役割:天界の支配者、道教の最高神
  • 住処:天上の宮殿

どんな神?

玉皇大帝は道教と民間信仰における天界の最高神です。
「天公」とも呼ばれ、中華圏では最も広く信仰されている神の一人です。

ただし、道教の教義では、玉皇大帝の上位に「三清(さんせい)」と呼ばれる三柱の根源的な神がいます。
玉皇大帝は、その三清の一柱「元始天尊」の補佐役とされることもあります。

玉皇大帝の神話

ある伝説によると、玉皇大帝はもともと普通の仙人でした。

古代、地上は怪物や悪鬼がはびこる過酷な場所でした。
心優しい仙人は人々を助けようとしましたが、自分の力の限界を感じていました。

そこで彼は山中にこもり、道(タオ)を修行することにします。
3,200回の試練を経て、それぞれ約300万年かかったとされています。

ちょうどその頃、強大な悪魔が天界を征服しようとしていました。
修行を終えた仙人は天界に昇り、悪魔と戦って勝利します。
その功績により、神々から天界の最高の支配者として認められたのです。

天界の官僚制度

玉皇大帝の宮廷は、地上の中国皇帝の朝廷を模した官僚制度を持っています。

  • 灶神(そうしん):各家庭のかまどの神、年末に玉皇大帝に報告
  • 土地神:各地域を守護する神
  • 城隍神(じょうこうしん):都市の守護神
  • 閻魔大王:冥界の裁判官

旧正月には、灶神が一年間の家族の行いを玉皇大帝に報告します。
そのため、中国では灶神の口を甘くするために飴を供える習慣があるんです。


三清(さんせい)──道教の根源的な三神

道教において、玉皇大帝よりも上位に位置するのが三清です。

名前読み方役割
元始天尊げんしてんそん宇宙の根源、最高位の神
霊宝天尊れいほうてんそん道教経典の守護者
道徳天尊どうとくてんそん老子の神格化、太上老君とも

三清は「道(タオ)」そのものの化身とされ、宇宙創造以前から存在する根源的な存在です。


西王母(せいおうぼ)──不老不死の女神

基本情報

  • 別名:王母娘娘、瑤池金母
  • 役割:不老不死、女仙の長
  • 住処:崑崙山の瑤池(ようち)

どんな女神?

西王母はすべての女仙を統率する女神で、不老不死の仙桃を管理しています。

崑崙山の頂上にある瑤池に住み、3000年に一度だけ実る「蟠桃(ばんとう)」を守っています。
この桃を食べると不老不死になれるため、多くの神話で重要な役割を果たします。

『西遊記』では、孫悟空がこの蟠桃を盗み食いして大騒動を起こす有名なエピソードがありますね。

四神(しじん)──方位を守る聖獣たち

四神とは?

四神(四象、四霊とも)は、四方位を守護する霊獣です。
古代中国の天文学では、空を四つの領域に分け、それぞれに聖獣を配置しました。

これらの霊獣は、日本にも伝わり「青龍・白虎・朱雀・玄武」として広く知られています。

名前方位季節五行
青龍(せいりゅう)青(緑)
白虎(びゃっこ)西
朱雀(すざく)
玄武(げんぶ)

青龍(せいりゅう)──東方の龍神

象徴:春、木の気、生命力、吉祥

青龍は四神の中で最も高貴な存在とされています。
中国では龍は皇帝の象徴であり、あらゆる神獣の中で最上位に位置づけられているからです。

道教では「孟章神君」という名前が与えられ、東方を守護する神として祀られています。


白虎(びゃっこ)──西方の虎神

象徴:秋、金の気、武勇、正義

白虎は戦いの神として崇められました。
古代の軍隊では、白虎の紋章が旗印に使われることが多かったんです。

500年を生きた虎は毛が白くなると信じられており、白虎は「徳のある統治者の時代にのみ現れる」瑞獣とされています。

道教では「監兵神君」と呼ばれています。


朱雀(すざく)──南方の霊鳥

象徴:夏、火の気、幸運、再生

朱雀は炎をまとった赤い鳥の姿をしています。
フェニックス(鳳凰)と混同されることがありますが、厳密には別の存在です。

道教では「陵光神君」として崇められ、後に戦いの女神「九天玄女」と同一視されることもあります。


玄武(げんぶ)──北方の亀蛇

象徴:冬、水の気、長寿、知恵

玄武は亀に蛇が巻きついた姿で描かれます。
亀の長寿と蛇の知恵を兼ね備えた存在なんです。

道教では「執明神君」と呼ばれていましたが、後に独立した神格「玄天上帝(真武大帝)」として非常に高い地位に昇格しました。
武術の守護神として、武当山(ぶとうさん)の主神としても祀られています。


黄龍(こうりゅう)──中央を司る龍

四神に加えて、中央を司る「黄龍」が存在することもあります。

黄龍は五行の「土」に対応し、黄帝の化身とも言われています。
四神すべてを統率する存在として、最も強大な霊獣とされることもあるんです。

その他の重要な神々

関聖帝君(かんせいていくん)──忠義の神

基本情報

  • 本名:関羽(かんう)
  • 役割:武神、商売の神、義の守護者
  • 時代:後漢末期〜三国時代(?-220年)

どんな神?

三国志の英雄・関羽が神格化した存在です。
劉備への忠義を貫いた姿から、忠誠と正義の象徴として崇められるようになりました。

関帝廟は世界中の中華街に建てられ、華僑の信仰の中心となっています。
また、そろばんを発明したという伝説から商売繁盛の神としても人気があるんです。


媽祖(まそ)──航海の女神

基本情報

  • 本名:林黙娘(りんもくじょう)
  • 役割:航海・漁業の守護神
  • 時代:宋代(960-987年頃)

どんな女神?

媽祖は実在した人物が神格化された例です。
福建省の漁村に生まれた林黙娘は、幼い頃から神通力を持ち、海難から人々を救いました。

28歳で亡くなった後、海上で遭難しかけた人々を救う姿が目撃されるようになり、航海と漁業の女神として崇められるようになったのです。

台湾や福建省では特に信仰が厚く、媽祖の巡行は世界最大級の宗教行事の一つとなっています。


羿(げい)──九つの太陽を射落とした英雄

基本情報

  • 別名:后羿(こうげい)
  • 役割:弓の達人、英雄神
  • 妻:嫦娥(じょうが)

どんな神?

羿は中国神話における最大の英雄とされています。

太古の昔、天帝の息子である10の太陽が同時に空に現れ、地上は灼熱地獄となりました。
羿は天帝から遣わされ、弓で9つの太陽を射落として地上を救います。

しかしその功績にもかかわらず、天帝は息子たちを殺された怒りから羿を地上に追放してしまいます。

嫦娥と月

羿の妻・嫦娥は、西王母から不死の薬を手に入れます。
しかし嫦娥はその薬を一人で飲んでしまい、月へと飛んでいってしまいました。

この神話が「中秋節」の由来となっています。
中秋の名月を眺めながら、月に住む嫦娥を偲ぶ風習は今も続いているんです。


龍王(りゅうおう)──海と水を司る神々

基本情報

  • 別名:四海龍王
  • 役割:海・川・雨を支配
  • 住処:水晶宮(海底の宮殿)

どんな神?

龍王は海や川、雨を支配する神です。
東西南北の四つの海にそれぞれ龍王がおり、「四海龍王」と総称されます。

  • 東海龍王・敖広(ごうこう):最も有力な龍王
  • 西海龍王・敖欽(ごうきん)
  • 南海龍王・敖明(ごうめい)
  • 北海龍王・敖順(ごうじゅん)

『西遊記』では、孫悟空が東海龍王の宮殿から如意金箍棒(にょいきんこぼう)を持ち去るエピソードが有名です。
また『封神演義』では、哪吒(なた)が龍王の息子を殺してしまう話が描かれています。

中国神話の神 一覧表

最後に、中国神話に登場する主要な神々をまとめます。

創世・創造の神々

名前読み方役割・特徴
盤古ばんこ天地を開いた創造神、体が世界になった
女媧じょか人類を創造、天を修復した母なる女神
伏羲ふくき八卦を創始、文明を授けた始祖
華胥かしょ伏羲と女媧の母

三皇五帝(伝説の帝王)

名前読み方役割・特徴
神農しんのう農業と医薬の始祖、炎帝
燧人すいじん火の発見者
黄帝こうてい中華民族の祖先、文明の創始者
顓頊せんぎょく暦法の制定
帝嚳ていこく音楽と礼法
ぎょう理想の徳治
しゅん孝行の模範

道教・民間信仰の神々

名前読み方役割・特徴
玉皇大帝ぎょくこうたいてい天界の最高神
元始天尊げんしてんそん三清の筆頭、宇宙の根源
西王母せいおうぼ不老不死の女神、蟠桃を管理
太上老君たいじょうろうくん老子の神格化、道徳天尊
玄天上帝げんてんじょうてい武術の神、真武大帝
関聖帝君かんせいていくん忠義と商売の神
媽祖まそ航海の女神
灶神そうしんかまどの神、家庭を監視

四神(四象)

名前読み方方位五行
青龍せいりゅう
白虎びゃっこ西
朱雀すざく
玄武げんぶ
黄龍こうりゅう中央

英雄・その他の神々

名前読み方役割・特徴
羿げい九つの太陽を射落とした英雄
嫦娥じょうが月に住む女神、羿の妻
共工きょうこう水神、天柱を壊した
祝融しゅくゆう火の神
蚩尤しゆう戦神、黄帝と戦った
応龍おうりゅう翼を持つ龍、黄帝を助けた
龍王りゅうおう海と水を司る神
哪吒なた少年の戦神、蓮から再生
二郎神にろうしん玉皇大帝の甥、三つ目の戦神

中国神話が現代文化に与えた影響

ゲーム・アニメ・漫画での登場

中国神話の神々は、現代のエンターテイメントでも大人気です。

日本の作品

  • 真・女神転生シリーズ:四神や道教の神々が多数登場
  • ペルソナシリーズ:女媧、伏羲などがペルソナとして
  • Fate/Grand Order:哪吒、項羽などがサーヴァントとして参戦
  • 封神演義(藤崎竜版):中国神話を大胆にアレンジ

中国・世界の作品

  • 原神:璃月(中国モチーフ)に多くの神話要素
  • 黒神話:悟空:西遊記を題材にしたアクションゲーム
  • 陰陽師:中国の妖怪や神々が登場

言葉や慣用句への影響

中国神話は、日常で使われる言葉にも影響を与えています。

  • 「盤古開天」:物事の始まり、創始
  • 「女媧補天」:欠けたものを補う、修復する
  • 「青龍白虎」:風水における理想の配置
  • 「月下老人」:縁結びの神から転じて仲人の意味

まとめ

中国神話の神々は、単なる古い物語の登場人物ではありません。

創世の神々が象徴するもの

  • 盤古の自己犠牲による世界創造
  • 女媧の慈愛と人類への献身
  • 伏羲の知恵と文明の光

道教の神々が示すもの

  • 玉皇大帝の修行と努力による神格
  • 西王母の永遠の生命への憧れ
  • 関聖帝君の忠義と信頼

四神が守護するもの

  • 東西南北の調和
  • 季節の循環
  • 宇宙の秩序

中国神話は歴史・哲学・宗教が融合した独特の体系です。
神々の中には実在の人物が神格化されたものも多く、これは「人間も修行次第で神になれる」という道教の思想を反映しています。

ギリシャ神話や北欧神話と比べると、中国神話には明確な「創造神」が存在しないという特徴があります。
盤古でさえ、意志を持って世界を創ったわけではなく、その存在自体が世界になったのです。

この独特の世界観は、「宇宙は自然に生成・変化するものである」という中国思想の根底にある考え方を表しています。

興味を持った神様がいたら、ぜひ『山海経』や『封神演義』、『西遊記』などの原典にも触れてみてください。
神話の世界は、知れば知るほど奥深く、現代の私たちにも多くの示唆を与えてくれるはずです。

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