仏教 宗派一覧|13宗から現代の156宗派まで、系統別にわかりやすく解説

日本に仏教が伝来したのは、6世紀のことです。
以来1500年近くの歴史の中で、数多くの宗派が生まれてきました。
現在、文部科学大臣が所轄する仏教系の宗教法人だけで156にのぼります。

「うちのお寺はどの宗派?」「宗派によって何が違うの?」という疑問を持つ方は多いはずです。
この記事では、伝統仏教の基軸となる13宗を中心に、各宗派の特徴・開祖・本山をわかりやすく解説します。


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日本の仏教宗派とは?──13宗56派の成り立ち

日本の仏教は、大きく「13宗」という枠組みで理解されてきました。
1939年(昭和14年)に公布(翌1940年〈昭和15年〉施行)された宗教団体法以前、国に公認されていた宗派は「13宗56派」です(文化庁『宗教年鑑』)。

13宗とは次の宗派を指します。

  • 奈良仏教系(南都六宗の流れ):法相宗・華厳宗・律宗
  • 平安仏教系:天台宗・真言宗
  • 鎌倉仏教(浄土系):融通念仏宗・浄土宗・浄土真宗・時宗
  • 鎌倉仏教(禅宗系):臨済宗・曹洞宗・黄檗宗
  • 鎌倉仏教(法華系):日蓮宗

第二次世界大戦後は国の認可制度がなくなり、多くの宗派が分派・独立しました。
令和4年(2022年)末現在、文部科学大臣所轄の仏教宗派は156にのぼります(文化庁『令和5年版宗教年鑑』)。


宗派一覧表

宗派名成立時期開祖主な本山教系
法相宗飛鳥〜奈良時代道昭(玄奘三蔵が源流)興福寺・薬師寺(奈良)奈良仏教
華厳宗奈良時代(740年頃)審祥東大寺(奈良)奈良仏教
律宗奈良時代(754年)鑑真唐招提寺(奈良)奈良仏教
天台宗平安時代(806年)最澄(伝教大師)比叡山延暦寺(滋賀)平安仏教
真言宗平安時代(816年頃)空海(弘法大師)高野山金剛峯寺(和歌山)・東寺(京都)平安仏教
融通念仏宗平安時代(1117年頃)良忍大念仏寺(大阪)浄土系
浄土宗鎌倉時代(1175年)法然(円光大師)知恩院(京都)浄土系
浄土真宗鎌倉時代(13世紀)親鸞西本願寺・東本願寺(京都)浄土系
時宗鎌倉時代(1274年)一遍清浄光寺〔遊行寺〕(神奈川)浄土系
臨済宗鎌倉時代(1191年)栄西建仁寺ほか13本山(計14本山・京都ほか)禅宗
曹洞宗鎌倉時代(13世紀)道元永平寺(福井)・總持寺(神奈川)禅宗
黄檗宗江戸時代(1654年)隠元隆琦(いんげんりゅうき)万福寺(京都)禅宗
日蓮宗鎌倉時代(1253年)日蓮(立正大師)身延山久遠寺(山梨)法華系

奈良仏教系(南都六宗の流れ)

奈良時代、平城京を中心に栄えた6つの学派の総称を「南都六宗(なんとろくしゅう)」といいます。
三論宗・成実宗・法相宗・倶舎宗・華厳宗・律宗の6宗ですが、現在まで続いているのは法相宗・華厳宗・律宗の3宗のみです(Wikipedia「南都六宗」)。

奈良仏教の特徴は、強い学問的性格にあります。
民衆への布教よりも教理の研究を重視したため、後の鎌倉仏教のような檀家制度は存在しません。
なお奈良仏教系では、葬儀・法事といった儀礼は行わないことで知られています。

法相宗(ほっそうしゅう)

法相宗は、唐の玄奘三蔵(三蔵法師)が基礎を築いた「唯識思想」を根本とする宗派です。
「すべての現象は、自らの認識(心)が生み出したものに過ぎない」という深い哲学的思想を持ちます。
日本には7世紀に道昭が伝え、興福寺・薬師寺を中心に大きく発展しました。

法隆寺はかつて法相宗に属していましたが、1950年(昭和25年)に独立して「聖徳宗」を宗派名としています。

華厳宗(けごんしゅう)

華厳宗は、「毘盧遮那仏(びるしゃなぶつ)」を本尊とし、「一が多であり多が一である」という宇宙的なつながりを説く宗派です。
奈良の東大寺はまさにその象徴で、「奈良の大仏」として知られる毘盧遮那仏は華厳宗の思想を体現しています。
日本への伝来は740年頃、審祥(しんじょう)によるとされます。

律宗(りっしゅう)

律宗は、仏教の「戒律(かいりつ)」の実践と研究を中心とする宗派です。
唐から来日した鑑真(がんじん)が、6度にわたる渡航の試みの末に754年に日本へ渡り、正式な戒律制度を確立したことで知られています。
総本山の唐招提寺は、1998年に世界遺産「古都奈良の文化財」の一部として登録されました。


平安仏教系(密教)

平安時代初期、最澄と空海という2人の偉大な仏教者が唐から密教を持ち帰りました。
この2宗は「平安二宗」とも呼ばれ、後の鎌倉仏教の母体ともなりました。

天台宗(てんだいしゅう)

天台宗は、最澄(伝教大師、767〜822年)が806年に開いた宗派です。
総本山は比叡山延暦寺(滋賀県)で、「日本仏教の母山」とも称されます。

天台宗の最大の特徴は、その「総合性」にあります。
顕教・密教・禅・戒律をすべて取り入れる「円・密・禅・戒」の教えを持ち、特定の本尊を定めていません。
のちに浄土宗(法然)・浄土真宗(親鸞)・禅宗(道元・栄西)・日蓮宗(日蓮)など多くの宗派の開祖たちが、天台宗で修行した後に独立していきます。

真言宗(しんごんしゅう)

真言宗は、空海(弘法大師、774〜835年)が開いた密教の宗派です。
「大日如来(だいにちにょらい)」をすべての仏の根本とし、真言(マントラ)・印・観想の「三密(さんみつ)」の実践によって成仏を目指します。

総本山は高野山金剛峯寺(和歌山県)と東寺(京都府)です。
現在は豊山派・智山派・東寺真言宗・真言宗醍醐派など多くの派に分かれています。


鎌倉仏教(浄土系)

平安末期から鎌倉時代にかけて、政治・社会の大変動と民衆の苦難を背景として、より分かりやすく実践しやすい仏教が相次いで誕生しました。
「念仏を唱えて極楽浄土へ往生する」ことを説く浄土系の宗派は、現代日本でも最も広く信仰されています。

融通念仏宗(ゆうずうねんぶつしゅう)

融通念仏宗は、良忍(りょうにん、1072〜1132年)が開いた宗派で、浄土系宗派の中で最も早く成立しました。
「自分の念仏と他者の念仏が互いに力を及ぼし合う(融通する)」という独特の考え方を特徴とします。
大阪の大念仏寺を総本山としています。

浄土宗(じょどしゅう)

浄土宗は、法然(源空・円光大師、1133〜1212年)が1175年に開いた宗派です。
「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」の念仏を唱えることによって誰もが極楽浄土へ往生できると説き、貴族から庶民まで広く受け入れられました。

「ただひたすら念仏を唱える(専修念仏)」という、シンプルで実践しやすい教えが特徴です。
総本山は知恩院(京都府)で、増上寺(東京都)や光明寺(神奈川県)が大本山として知られています。

浄土真宗(じょどしんしゅう)

浄土真宗は、親鸞(しんらん、1173〜1262年)が開いた宗派です。
法然の弟子として修行した親鸞は、さらに「絶対他力(ぜったいたりき)」の思想を深め、「阿弥陀如来を信じる一念によってすでに往生は決定している」と説きました。

現在の信者数は日本の仏教宗派の中で最多で、西本願寺(浄土真宗本願寺派)と東本願寺(真宗大谷派)が両本山として知られます。
浄土真宗では「般若心経を唱えない」「戒名ではなく法名を用いる」など、他宗派と大きく異なる独自の慣習があります。

時宗(じしゅう)

時宗は、一遍(いっぺん、1239〜1289年)が1274年(文永11年)に開いた宗派です。
一遍が熊野本宮証誠殿に参籠した際に神勅を受けたことが開宗のきっかけとされています。
「念仏を唱えること自体がすでに往生である」という教えを持ち、信心の有無を問わずすべての人が念仏によって救われると説きます。

一遍は全国を遊行(ゆぎょう)して念仏の教えを広め、総本山の清浄光寺は「遊行寺(ゆぎょうじ)」とも呼ばれます。
「踊念仏(おどりねんぶつ)」という踊りながら念仏を唱える独自の行法は、現在も重要無形民俗文化財に指定されています。


鎌倉仏教(禅宗系)

「座禅によって悟りを開く」ことを中心に置く禅宗は、中国から鎌倉・室町時代に伝えられ、武士を中心に広まりました。
現在の日本では臨済宗・曹洞宗・黄檗宗の3宗が禅宗として数えられます。

臨済宗(りんざいしゅう)

臨済宗は、栄西(えいさい、1141〜1215年)が1191年に中国から伝えた禅宗の宗派です。
「公案(こうあん)」と呼ばれる問答を通じて悟りを目指す「看話禅(かんなぜん)」が特徴的です。

臨済宗は14の派に分かれており(建仁寺派・妙心寺派・南禅寺派・東福寺派など)、それぞれが独立した本山を持ちます。
「禅問答」「一期一会」「日々是好日」など、日本文化に根ざした多くの禅語は臨済宗に由来しています。

曹洞宗(そうとうしゅう)

曹洞宗は、道元(どうげん、1200〜1253年)が中国から伝えた禅宗の宗派です。
「只管打坐(しかんたざ)」──ただひたすら座禅を組むことそのものが悟りであるという「黙照禅(もくしょうぜん)」を説きます。

臨済宗が「公案」で悟りを目指すのに対し、曹洞宗は「何も考えずに座ること」自体を修行とします。
総本山は永平寺(福井県)と總持寺(神奈川県)で、寺院数は約14,700か寺と全宗派中最多を誇ります(文化庁『宗教年鑑』)。

黄檗宗(おうばくしゅう)

黄檗宗は、17世紀に中国から来日した隠元隆琦(いんげんりゅうき、1592〜1673年)が1654年に伝えた禅宗の宗派です。
臨済宗・曹洞宗が鎌倉時代に成立したのに対し、黄檗宗は江戸時代の成立という点で特異な位置を占めます。

「禅・念仏・戒律」を融合した独自のスタイルと、中国・明代(みんだい)の文化的雰囲気を色濃く残す建築・儀礼が特徴です。
隠元は仏教の伝播だけでなく、隠元豆(インゲンマメ)・スイカ・蓮根などの食文化を日本に持ち込んだことでも知られています。
総本山は宇治の万福寺(京都府)です。


鎌倉仏教(法華系)

日蓮宗(にちれんしゅう)

日蓮宗は、日蓮(立正大師、1222〜1282年)が1253年に開いた宗派です。
「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」というお題目を唱えることを根本の修行とします。

日蓮は法華経だけが真実の教えであるという立場から、当時の他宗派を激しく批判しました。
その結果、流罪・弾圧を受けながらも信仰を曲げなかったことが、現在も多くの信者に尊敬される理由の一つです。

日蓮宗の特徴として、教えが「現世利益(げんせりやく)」を重んじる傾向にあります。
総本山は山梨県の身延山久遠寺で、創価学会や立正佼成会など近現代の新宗教も日蓮の思想を源流に持ちます。


宗派によって何が違う?──日常・葬儀における違い

日本人の多くが宗派を意識する機会は、主に「葬儀」や「お墓参り」のときです。
宗派によって、読まれるお経・焼香の作法・念仏の唱え方・戒名の様式などが異なります。

代表的な唱え名の違いは以下の通りです。

宗派唱え名(念仏・題目)
天台宗南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)
真言宗南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)
浄土宗南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)
浄土真宗南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)
曹洞宗南無釈迦牟尼仏(なむしゃかむにぶつ)
臨済宗南無釈迦牟尼仏(なむしゃかむにぶつ)
日蓮宗南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)

また、奈良仏教系(法相宗・華厳宗・律宗)については、学問宗としての性格から葬儀・法事を行わないことが特徴として挙げられます。


まとめ

日本の仏教宗派は、時代ごとに新たな問いへの答えとして生まれてきました。

  • 奈良時代:学問として国家を守る仏教(南都六宗)
  • 平安時代:加持祈祷による密教(天台宗・真言宗)
  • 鎌倉時代:苦しむ民衆のための実践的な仏教(浄土系・禅宗・日蓮宗)
  • 江戸時代:中国の新たな禅の流入(黄檗宗)

それぞれの宗派には、時代と人々の苦悩に向き合った祖師たちの思想が凝縮されています。
自分の家の宗派を調べることは、先祖たちの信仰と歴史を知る入口にもなるでしょう。


参考情報

この記事で参照した情報源

一次資料・公式資料

  • 文化庁編『令和5年版宗教年鑑』(文化庁、2023年)PDF公開

信頼できる二次資料・百科事典

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