「朝起きたら、昨日の洗い物が片付いていた……」
そんな不思議な体験、したことありませんか?
もしかすると、あなたの家にも「ブラウニー」が住み着いているかもしれません。
ブラウニーは、スコットランドや北部イングランドで語り継がれてきた家の精霊です。
夜中にこっそり現れて家事を手伝ってくれる——なんとも頼もしい存在ですが、実は扱い方を間違えると大変なことになるんです。
この記事では、ブラウニーの姿や性格、喜ばせる方法、そして絶対にやってはいけないタブーについて解説します。
ブラウニーとはどんな妖精?

ブラウニーは、イギリスの民間伝承に登場する「家の精霊」です。
ゴブリンの仲間とされることもありますが、悪意のある妖怪とは違い、基本的には人間に好意的な存在として知られています。
その名前の由来は、ずばり「茶色(Brown)」。
茶色い肌や茶色いボロ服をまとっていることから、「茶色いやつ」という意味でブラウニーと呼ばれるようになりました。
地域によって呼び名が変わるのも特徴です。
スコットランド・ゲール語では「ブラナッハ(brùnaidh)」、ハイランド地方では「ウリスク(ùruisg)」、ヘブリディーズ諸島では「グルアガッハ(gruagach)」など、さまざまな名前で親しまれています。
ブラウニーの姿はどんな感じ?
伝承によると、ブラウニーの身長は90cm〜1m程度。
大人の腰くらいの高さしかない、小柄な存在です。
見た目はお世辞にも美しいとは言えません。
シワだらけの顔に茶色い肌、全身を覆うもじゃもじゃの毛。
髪やヒゲは伸ばし放題で、服は茶色いボロ布か、あるいは何も着ていないこともあるとか。
面白いのは、地域によって姿が微妙に違うところです。
| 地域 | 特徴 |
|---|---|
| スコットランド低地 | 鼻がなく、顔の真ん中に穴が一つあるだけ |
| アバディーンシャー | 手足の指がない |
| ハイランド地方(ウリスク) | 半人半山羊の姿をしていることも |
どの地域でも共通しているのは、「見た目は怖いけど、心は優しい」という点です。
姿を見て驚かないよう、彼らは人前に出ることを極端に嫌います。
ブラウニーは何をしてくれる?
ブラウニーの一番の特徴は、とにかく働き者ということ。
家の人が寝静まった深夜、ブラウニーはこっそり現れて家事をこなします。
皿洗い、掃除、洗濯、バター作り、小麦の脱穀、牛の乳搾り、家畜の世話……。
朝起きたら終わっているんですから、まさに夢のような存在ですよね。
コーンウォール地方では、ブラウニーはミツバチの守護者としても知られています。
ブラウニーがいる家では蜂がよく集まり、蜂に刺されそうになったときに「ブラウニー!」と叫ぶと助けてくれるという言い伝えもあるんです。
ただし、整理整頓されすぎた家は要注意。
「やることがない」と感じたブラウニーは、暇つぶしに部屋を散らかしてしまうこともあるそうです。
イタズラ好きな一面もあるんですね。
ブラウニーを喜ばせる方法
ブラウニーに長く居てもらうには、「お礼」が大切です。
といっても、お金を払うわけではありません。
暖炉のそばに、ミルクやクリーム、パンやケーキ、ポリッジ(オートミールのお粥)と蜂蜜を置いておくのが伝統的な方法です。
ここで重要なのが、「さりげなく」置くこと。
「ブラウニー、いつもありがとう!これ報酬ね!」なんてあからさまに渡すのは絶対にNGです。
ブラウニーはとてもプライドが高い存在。
報酬として渡されると「俺は金のために働いているんじゃない!」と怒って出て行ってしまいます。
あくまでも「たまたまここに置いてあっただけ」を装って、ブラウニーが自分で見つけられるようにするのがコツです。
絶対にやってはいけないタブー
ブラウニーには、怒らせてはいけない「タブー」がいくつかあります。
服をプレゼントする
これが最大のタブーです。
ブラウニーに服を贈ると、その家から永遠に去ってしまいます。
ある伝承では、親切心から新しいマントとフードを作ってあげた女性がいました。
ブラウニーはそれを見つけると、こう言い残して消えてしまったそうです。
「新しいマントに新しいフード、かわいそうなブラウニー、もう何もできない!」
服を受け取ることで「解放された」と感じるのか、それともプライドを傷つけられたのか——理由は諸説ありますが、とにかく服は禁物です。
仕事を批判する
ブラウニーの仕事ぶりに文句をつけるのも厳禁。
スコットランドのクランショーズという土地では、何年も穀物の収穫を手伝ってくれていたブラウニーがいました。
ところがある日、誰かが「今年の刈り取りは雑だな」と言ったそうです。
その夜、ブラウニーは収穫した穀物をすべて3km先の崖まで運び、海に投げ捨ててしまいました。
「下手だって言うなら、もう二度とやらない!」というわけですね。
あからさまに観察する
ブラウニーは見られることを極端に嫌います。
働いている姿をこっそり覗き見したり、笑ったりすると、やはり怒って出て行ってしまいます。
怒ったブラウニーは「ボガート」になる?
ここからが怖い話です。
ブラウニーを怒らせると、「ボガート」という悪霊に変化することがあるそうです。
ボガートになったブラウニーは、もはや家事を手伝ってくれません。
代わりに、物を壊す、食べ物を腐らせる、寝ている人の布団を剥ぐ、冷たい手で顔を触る……といったイタズラ(というより嫌がらせ)を繰り返します。
ヨークシャーやスコットランドでは、ボガートはポルターガイストと同一視されることも。
家の繁栄をもたらしてくれた存在が、一転して災いをもたらすようになるわけですから、ブラウニーの扱いには本当に気をつけたいですね。
各地に伝わるブラウニーの仲間たち

ブラウニーに似た「家の精霊」は、イギリス各地だけでなくヨーロッパ全土に存在します。
| 名前 | 地域 | 特徴 |
|---|---|---|
| ホブ(Hob) | ヨークシャー、ランカシャー | 暖炉と関係が深く、子どもの百日咳を治す力があるとも |
| フェノデリー(Fenodyree) | マン島 | 大柄で毛むくじゃら、怪力の持ち主 |
| ブカ(Bwca) | ウェールズ | ブラウニーとほぼ同じだが、禁酒主義者と聖職者が大嫌い |
| トムテ/ニッセ | 北欧 | 赤い帽子をかぶった小人の姿で描かれることが多い |
| ドモヴォーイ | スラブ圏 | 家の守護霊で、主人に似た姿をしているとも |
日本にも似た存在がいます。
そう、「座敷童子」です。
家に住み着いて繁栄をもたらし、去ってしまうと家が衰える——という点で、ブラウニーと座敷童子はよく似ていますね。
ハリー・ポッターの「屋敷しもべ妖精」のモデルになった?
ブラウニーといえば、忘れてはならないのがポップカルチャーへの影響です。
J.K.ローリングの『ハリー・ポッター』シリーズに登場する「屋敷しもべ妖精(ハウスエルフ)」は、ブラウニーがモデルと言われています。
実際、共通点はたくさんあります。
- 主人の家で無償で働く
- 服を与えられると自由になる(解放される)
- 「ドビー」という名前はイギリスの妖精伝承にも存在する
ドビーがハリーから靴下をもらって自由になるシーン、覚えていますか?
あれはまさに、ブラウニー伝承の「服を贈ると去ってしまう」というモチーフそのものなんです。
他にも、ファンタジー映画『ウィロー』や児童書『スパイダーウィック・クロニクルズ』など、ブラウニーをモチーフにした作品は数多くあります。
まとめ
ブラウニーについてまとめると、こんな感じです。
- スコットランド・北部イングランドの民間伝承に登場する家の精霊
- 茶色い肌と茶色いボロ服が特徴で、身長は90cm〜1m程度
- 夜中にこっそり家事を手伝ってくれる働き者
- 報酬はミルクやクリームを「さりげなく」置いておく
- 服を贈ると永遠に去ってしまう
- 怒らせると「ボガート」という悪霊に変化することも
- ハリー・ポッターの屋敷しもべ妖精のモデルになった
もしあなたの家で不思議なことが起きたら、それはブラウニーの仕業かもしれません。
その時は、そっと暖炉のそばにミルクを置いておきましょう。
くれぐれも、服だけはプレゼントしないように——。


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