イギリスの古い家で、誰もいないはずなのに物音がしたり、物が勝手に動いたりすることってありませんか?
もしかしたら、それは悪戯好きの妖精「ボギー」の仕業かもしれません。
時には人を驚かせ、時にはとんでもない悪戯を仕掛ける、イギリス各地に伝わる不思議な存在。子供たちを怖がらせて言うことを聞かせるために使われることもあれば、農夫と知恵比べをする話も残されています。
この記事では、イギリスの民間伝承に登場する悪戯妖精「ボギー」について、その神秘的な姿や特徴、興味深い伝承を分かりやすくご紹介します。
概要

ボギー(Bogie、Bogy)は、イギリス各地に棲むといわれる悪戯好きの妖精たちの総称です。
ゴブリンやホブゴブリンの仲間の中でも、特に性格が悪くて人間にちょっかいを出すのが大好きな存在として知られています。
実は「ボギー」というのは特定の妖精を指す言葉ではなく、仲間からはぐれて一人で暮らしながら、人間を困らせることに喜びを見出している妖精たち全体を指す言葉なんです。
いわば妖精界の不良たちといったところでしょうか。地域によって呼び名も変わり、北イングランドではボグル、ウェールズではボグと呼ばれることもあります。
姿・見た目
ボギーの姿は、実はとても不思議で決まった形がないんです。
基本的な外見の特徴
- 大きさ:小さい(子供程度のサイズが多い)
- 色:黒っぽい
- 体毛:毛深く、毛むくじゃら
- 変身能力:牛や黒犬などの動物に化ける
幽霊のような存在とも言われ、その時々で姿を変えることができます。人間型よりも動物の姿で現れることが多く、特に黒い犬の姿を好むそうです。
バグベアのように毛むくじゃらの熊に似た姿で現れることもあれば、まったく姿を見せずに音だけで存在を知らせることもあります。赤い目をしているという特徴もあり、これは邪悪な妖精の象徴とされています。
特徴
ボギーには、普通の妖精とは違う独特な性質があります。
ボギーの主な能力と性格
- 変身能力:様々な動物に化けることができる
- 姿を消す:完全に姿を消して音だけで脅かす
- 人間への関心:常に人間の生活に興味を持っている
- 後頭部に浮かぶ:人間の頭の後ろに浮かんでいるという説も
性格面では、基本的に悪戯好きで狡猾ですが、それほど頭が良いわけではないとされています。そのため、機転の利く人間なら、ボギーの悪巧みを見破って撃退することも可能なんだそうです。
面白いのは、人間が何となく「後ろに誰かいる気がする」と感じる時、それはボギーがいるからだという言い伝えがあることです。
伝承

ボギーにまつわる話で特に有名なのが、農夫との駆け引きの物語です。
ノーサンプトンシャー地方の伝承
ある農夫がボギーと知恵比べをすることになりました。悪戯ばかりするボギーに困った農夫は、頭を使って対抗します。結局、賢い農夫がボギーを出し抜いて勝利するという話が伝わっています。
子供部屋のボギー
イギリスでは昔から、子供を怖がらせて行儀よくさせるために「ボギーが来るよ」と脅かす習慣がありました。「悪い子のところにはボギーが来て連れて行ってしまう」という話で、しつけに使われていたんですね。
各地のボギー伝承
地域によって様々な名前で呼ばれるボギーたち:
- ヘドリーの牛っこ:牛の姿で現れる
- スクライカー:叫び声で人を脅かす
- ボガート:家に住み着いて悪戯をする
これらはすべてボギーの仲間とされ、それぞれ独自の悪戯や脅かし方を持っています。
起源
ボギーという言葉の起源は、実はかなり古いんです。
語源と歴史
英語の「bogey」には「お化け」「幽霊」「怖いもの」「悩みの種」という意味があります。1530年頃にはすでに使われていた記録があり、それ以前から存在していた可能性が高いとされています。
妖精分類での位置づけ
もともとイギリス各地には、様々な妖精や精霊の伝承がありました。その中でも特に性格が悪く、群れから離れて一人で暮らす妖精たちが「ボギー」と呼ばれるようになったんです。
ゴブリンやホブゴブリンとの境界線は曖昧で、性格によって呼び名が変わることもあります。つまり、普通のゴブリンが悪い方向に変化すると「ボギー」と呼ばれるようになるという考え方もあるんですね。
ヨーロッパの類似妖精
ボギーに似た存在は他の国にもいます:
- ドイツ:ボーマン、ボッケルマン
- アイルランド:プーカ、ボーカン
- ボヘミア:ボバク、ブバク
これらの存在も、人を驚かせたり悪戯をしたりする点で共通しています。
まとめ
ボギーは、イギリスの民間伝承に深く根付いた悪戯妖精の総称です。
重要なポイント
- イギリス各地に伝わる悪戯好きの妖精たちの総称
- 小さく黒く毛深い姿が基本だが、変身能力を持つ
- 妖精界の不良として、群れから離れて生活
- 人間の生活に興味を持ち、常に悪戯を企んでいる
- 子供のしつけにも使われた身近な存在
- 頭はあまり良くないので、賢い人間なら撃退可能
今でも「何となく後ろに気配を感じる」時、それはもしかしたらボギーがあなたの後頭部に浮かんでいるのかもしれませんね。でも心配はいりません。機転を利かせれば、きっとその悪戯を防ぐことができるはずです。
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