太陽神ビラ(Bila)とは?オーストラリア・アボリジニの恐ろしくも神聖な太陽女神

神話・歴史・文化

オーストラリアのアボリジニ神話には、独特で印象的な太陽神が登場します。
その名は「ビラ(Bila)」。
食人の力を持ちながらも、日光の起源となった神聖な女神なんです。

この記事では、アドニャマタンハ族に伝わるビラの神話と、なぜトカゲが神聖視されるようになったのかを詳しく解説します。

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ビラ(Bila)とは?

ビラは、オーストラリア南部のフリンダース山脈北部に住むアボリジニ、アドニャマタンハ族(Adnyamathanha)に伝わる太陽の女神です。
「Belah(ベラー)」と表記されることもあります。

オーストラリアのアボリジニと太陽女神

オーストラリアのアボリジニの多くは、太陽を女性の神として捉えています。
これは世界的に見ても珍しい特徴なんです。

ギリシャ神話のヘーリオスやエジプト神話のラーなど、多くの文化では太陽神は男性として描かれることが一般的ですが、オーストラリアでは逆。
ビラもこの伝統に従い、女性の神として語り継がれてきました。

ビラの名前の意味

ビラ(Bila)という名前そのものの語源については、確実な資料が見つかっていません。
アドニャマタンハ語で太陽を意味する言葉との関連性が考えられますが、詳細は不明です。

ビラの神話:食人と日光の起源

恐ろしい食人神としてのビラ

ビラは単なる太陽の女神ではなく、食人神としての側面を持っています。
彼女は犠牲者を火で炙り焼きにし、その炎こそが日光の起源だと伝えられているんです。

さらに、ビラは黒と赤の犬を遣わして犠牲者を引きずってきたとされ、村全体が虐殺されることさえあったと言います。

トカゲ男たちの反乱

ビラの食人行為を恐れたのが、二人のトカゲ男でした。

  • クドゥヌ(Kudnu):ゴアナ(オオトカゲ)のトカゲ男
  • ムダ(Muda):ゲッコー(ヤモリ)のトカゲ男

彼らはビラの行為に憤慨し、攻撃を仕掛けました。
攻撃を受けたビラは逃げ出し、空中へと逃れます。

世界を照らす太陽へ

ビラが逃げたことで、世界は闇に包まれてしまいました。
日光の源であるビラがいなくなったからです。

しかしクドゥヌは、ブーメランを使ってビラを捕まえました。
そして彼女を、ゆっくりとした弧を描いて空を横切るようにしたんです。

こうしてビラは、毎日空を横切る太陽となり、世界は再び光に照らされるようになりました。

アドニャマタンハ族とトカゲの崇拝

なぜトカゲが神聖なのか

このビラの神話には、重要な文化的意味があります。

クドゥヌとムダの英雄的な行為によって、アドニャマタンハ族はオオトカゲ(ゴアナ)とヤモリ(ゲッコー)を神聖な存在として尊敬するようになったんです。

現代に続く伝統

この神話は、単なる昔話ではありません。
現代のアドニャマタンハの人々にとっても、トカゲは特別な存在です。

2011年に制定されたアドニャマタンハ族の旗には、太陽のシンボルが描かれています。
この太陽は「Yura(アドニャマタンハの人々)の結集」を表す共通のシンボルとされ、ビラの神話と深い関わりがあるんです。

アドニャマタンハ族について

「岩の人々」という意味

アドニャマタンハ(Adnyamathanha)という名前は:

  • adnya(アドニャ) = 岩
  • matha(マタ) = 集団、人々

つまり「岩の人々」という意味なんです。

言語と文化

アドニャマタンハの人々は、自分たちを「Yura(ユラ)」と呼びます。
そして自分たちの言語を「yura ngarwala(ユラ・ンガルワラ)」、つまり「私たちの言葉」と呼んでいます。

アドニャマタンハ語は、トゥーラ・ユーラ語族に属する言語です。
現在でも流暢に話す人がいる、数少ない言語の一つとして知られています。

伝統的な土地

アドニャマタンハ族の伝統的な土地は:

  • 北はフリンダース山脈北部
  • 南はポート・オーガスタ
  • 東はブロークン・ヒルまで

広大な範囲に及びます。

2009年には、オーストラリア連邦裁判所がアドニャマタンハ族の先住権を正式に認めました。

ビラ神話の記録と研究

チャールズ・P・マウントフォードの調査

1937年、アデレード大学の調査隊がネパブンナ(アドニャマタンハ族のコミュニティ)を訪れました。

その中心人物がチャールズ・P・マウントフォード(Charles P. Mountford)です。
彼は民族学者で写真家として、アドニャマタンハ族の芸術、神話、儀式に深い関心を持ち、その後も何度も訪問して、アドニャマタンハ語と文化を記録し続けました。

マウントフォード・シアード・コレクション

マウントフォードが記録した資料は、南オーストラリア州立図書館に「マウントフォード・シアード・コレクション」として保管されています。

この膨大なコレクションには:

  • 手書きの日誌
  • 写真
  • 音声記録
  • 映像記録

が含まれ、2008年にはUNESCOの世界の記憶プログラムに登録されました。

ビラの神話も、このコレクションを通じて詳細に記録されています。

ビラ神話が示す太陽観

恐怖と恵みの二面性

ビラの神話は、太陽の二つの側面を表しているとも解釈できます。

恐ろしい側面:

  • 焼き尽くす炎
  • 食人という破壊的な力

恵みの側面:

  • 世界を照らす光
  • 生命に不可欠な存在

この二面性は、オーストラリアの厳しい気候と無関係ではないでしょう。
太陽は生命に必要不可欠ですが、同時に乾燥や酷暑をもたらす脅威でもあるんです。

秩序をもたらす英雄の物語

クドゥヌとムダがビラを制御したことで、太陽は「ゆっくりとした弧を描いて空を横切る」規則正しい動きをするようになりました。

これは混沌(食人で暴れるビラ)から秩序(規則正しく昇る太陽)への移行を象徴しているとも考えられます。

まとめ

ビラは、オーストラリア・アボリジニのアドニャマタンハ族に伝わる太陽女神です。
彼女の神話は、以下の要素を持っています:

  • 食人神としての恐ろしい側面
  • 日光の起源としての神聖な役割
  • トカゲ男たちによる制御
  • 規則正しい太陽の動きの説明
  • ゴアナとゲッコーが神聖視される理由

この神話は、太陽の恐ろしさと恵みの二面性を表現し、自然現象に秩序をもたらす英雄の物語として、何千年も語り継がれてきました。

現代でも、アドニャマタンハ族の文化と伝統の中で、ビラの神話は生き続けています。

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