ATU分類とは?世界の昔話を整理する「物語の図書館システム」を徹底解説

神話・歴史・伝承

「シンデレラ」と「灰かぶり姫」が同じ物語だと知っていますか?

実は、世界中には驚くほど似た昔話が存在しています。継母にいじめられる娘が魔法の助けを得て王子と結ばれる物語は、ヨーロッパだけでなく、中国、韓国、エジプト、さらには日本にまで広がっているんです。

でも、これらの物語がどうつながっているのか、どう調べればいいのでしょうか?

そこで登場するのが「ATU分類」です。これは世界中の昔話を番号で整理した、いわば「物語の図書館システム」。民俗学者たちが100年以上かけて作り上げた、昔話研究の最重要ツールなんです。

この記事では、ATU分類の仕組みから歴史、具体的な使い方、そして批判点まで、わかりやすく解説していきます。

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ATU分類の基本

ATU分類って何?

ATU分類(アールネ・トンプソン・ウター分類)とは、世界各地に伝わる昔話をその類型(話型)ごとに収集・分類したカタログのことです。

図書館で本を探すとき、ジャンルや著者名で整理されていると便利ですよね。ATU分類は、それと同じことを「昔話」に対して行っているんです。

たとえば、シンデレラのような物語は ATU 510A という番号が振られています。この番号さえわかれば、世界中の研究者が「ああ、あの継母にいじめられて魔法の助けで幸せになる話のことね」と理解できるわけです。

名前の由来

「ATU」という名前は、この分類システムを作り上げた3人の学者の頭文字から取られています。

名前出身国主な貢献
Antti Aarne(アンティ・アールネ)フィンランド1910年に最初の分類を作成
Stith Thompson(スティス・トンプソン)アメリカ1928年と1961年に大幅改訂
Hans-Jörg Uther(ハンス=イェルク・ウター)ドイツ2004年に現代版へ改訂

最初は「AT分類」と呼ばれていましたが、2004年のウターによる改訂以降は「ATU分類」と呼ばれるようになりました。

「話型」とは何か

ATU分類を理解するために、まず「話型(タイプ)」という概念を押さえておく必要があります。

スティス・トンプソンは「話型」をこう定義しました。

「話型とは、独立した存在として成り立つ伝統的な物語のことである」

もう少しわかりやすく言うと、話型とは 物語の骨格 のことです。

シンデレラの物語には、国や時代によって様々なバリエーションがあります。ガラスの靴が金の靴になったり、妖精がカボチャを馬車に変えたり、魚の骨が魔法をかけたり。でも、根底にある「虐げられた娘が魔法の助けで幸せになる」という骨格は共通しているんです。

この共通の骨格こそが「話型」であり、ATU分類はこの話型ごとに番号を振っているわけです。

ATU分類の7つの大分類

ATU分類では、昔話を7つの大きなカテゴリーに分けています。それぞれに番号の範囲が割り当てられているんです。

1. 動物昔話(ATU 1〜299)

動物が主人公として活躍する物語です。

イソップ寓話でおなじみの「キツネとブドウ」(ATU 59)や、「オオカミと七匹の子ヤギ」(ATU 123)などがここに分類されます。動物が人間のように話し、知恵を使う物語が中心となっています。

代表的な話型の例を挙げてみましょう。

  • ATU 15: 狐がチーズを狙って狼をだます話
  • ATU 34: オオカミが水面に映ったチーズに飛び込む話
  • ATU 123: オオカミと子ヤギたち

2. 魔法昔話(ATU 300〜749)

いわゆる「おとぎ話」「フェアリーテイル」と呼ばれる物語がここに入ります。ATU分類の中でも最も豊富で、研究者に人気のカテゴリーです。

魔法の力、超自然的な助け手、変身、呪いといった要素が登場する物語が含まれます。

有名な話型を見てみましょう。

  • ATU 310: ラプンツェル(塔の中の乙女)
  • ATU 333: 赤ずきん
  • ATU 400: 失われた花嫁を探す旅
  • ATU 425C: 美女と野獣
  • ATU 500: ルンペルシュティルツキン(名前を当てる話)
  • ATU 510A: シンデレラ
  • ATU 709: 白雪姫

3. 宗教的昔話(ATU 750〜849)

神や聖人、天使、悪魔などが登場する物語です。キリスト教的な教訓を含むものが多く、善行が報われ、悪行が罰せられるという道徳的な結末を持つ傾向があります。

4. 現実的な説話(ATU 850〜999)

ノヴェラ(短編小説的な説話)とも呼ばれます。魔法的な要素は少なく、より現実的な設定の中で知恵や機転が試される物語が中心です。

  • ATU 850〜869: 王女を手に入れる物語
  • ATU 870〜879: 王女と普通の男の結婚
  • ATU 880〜899: 貞節や忠誠を試される物語

5. 愚かな鬼の話(ATU 1000〜1199)

巨人や悪魔、鬼といった恐ろしい存在が、人間に騙されたり出し抜かれたりする物語です。一見強そうな敵が実は間抜けで、主人公の知恵に負けてしまうパターンが典型的。

日本の「一寸法師」のように、小さな主人公が大きな敵を倒す物語もこのカテゴリーに近い性質を持っています。

6. 笑話と小話(ATU 1200〜1999)

ユーモアを目的とした物語が集められています。愚か者の話、夫婦のいさかい、聖職者をからかう話など、様々なサブカテゴリーがあります。

  • ATU 1200〜1349: 愚か者の話
  • ATU 1350〜1439: 夫婦の話
  • ATU 1440〜1524: 女性の話
  • ATU 1525〜1724: 賢いトリックの話
  • ATU 1725〜1849: 聖職者の話
  • ATU 1850〜1999: その他の笑話

7. 形式譚(ATU 2000〜2399)

累積譚や連鎖譚と呼ばれる、特殊な形式を持つ物語です。

「これはジャックの建てた家」のように同じフレーズを繰り返しながら積み重なっていく物語や、「終わりのない話」のような無限ループ構造を持つ物語が含まれます。

具体例で見るATU分類

シンデレラの場合(ATU 510A)

ATU分類がどのように使われるか、シンデレラを例に見てみましょう。

シンデレラは ATU 510「虐げられたヒロイン」 に分類され、さらに細かく 510A「シンデレラ型」510B「ロバの皮型(ドンキースキン)」 に分けられています。

ATU索引には、510Aについてこんな記述があります。

基本的なプロット要素

  • 継母と義理の姉妹による虐待
  • 魔法の助け手(妖精、動物、死んだ母親の霊など)
  • 舞踏会への参加と急な帰宅
  • 遺された靴による身元確認
  • 王子との結婚

これらの要素を共有する物語は、どの国のものでも「ATU 510A」として分類されるわけです。

興味深いことに、最古のシンデレラ型物語は紀元前1世紀のエジプトで記録された「ロドピス」の物語だとされています。また、9世紀の中国には「葉限(イェシェン)」という驚くほど完成度の高いシンデレラ物語が存在していました。

赤ずきんの場合(ATU 333)

赤ずきんは ATU 333 に分類されています。

この話型の面白いところは、世界各地に類似の物語が存在する点です。東アジアやアフリカにも、子供(または若い女性)が狼のような捕食者に騙される物語があり、ATU 333との関連が研究されています。

ただし、これらが同じ起源を持つのか、それとも独立して発生したのかについては、研究者の間でも議論が続いています。

2013年に発表されたジャムシッド・テフラーニの研究では、系統発生学的手法(生物の進化を調べる手法を応用したもの)を使って、赤ずきん型の物語の広がりを分析しました。その結果、ヨーロッパの「赤ずきん」とアフリカ・東アジアの類似物語は、異なる起源を持つ可能性が示唆されたんです。

ATU分類の歴史

始まり:アールネの挑戦(1910年)

ATU分類の歴史は、フィンランドの若き民俗学者アンティ・アールネから始まります。

1867年にフィンランドのポリ市で生まれたアールネは、ヘルシンキ大学でカールレ・クローンに師事しました。クローンが民話研究から叙事詩『カレヴァラ』の研究に移行したことをきっかけに、アールネは民話研究を引き継ぐことになります。

1910年、アールネはドイツ語で『昔話の型目録(Verzeichnis der Märchentypen)』を発表しました。これが現在のATU分類の原型です。

アールネは昔話を3つの大きなカテゴリーに分けました。

  1. 動物の話
  2. 本格的な話(魔法昔話など)
  3. 笑い話

この最初の索引には、ヨーロッパ各地から集められた約800の昔話が収録されていました。

残念ながら、アールネは1925年に57歳で亡くなってしまいます。しかし、彼が残した分類システムは、その後大きく発展していくことになるんです。

拡張:トンプソンの貢献(1928年・1961年)

アールネの仕事を引き継いだのが、アメリカの民俗学者スティス・トンプソンでした。

1885年にケンタッキー州で生まれたトンプソンは、インディアナ大学で長年教鞭をとりながら、民俗学研究所の設立にも尽力した人物です。

トンプソンは1928年に、アールネの目録をドイツ語から英語に翻訳し、大幅に増補しました。アメリカ先住民の説話なども追加され、対象範囲が広がったんです。

さらに1961年には第2改訂版を発表。アールネの3分類を5分類に拡張し、「形式譚」と「その他」のカテゴリーを新設しました。この時点で約2,500の話型が収録されるようになり、「AT分類」として世界的に普及していきます。

トンプソンはまた、ATU分類とは別に 『民間文芸のモチーフ索引』 という全6巻の大著も編纂しました。こちらは物語全体ではなく、「ガラスの靴」「変身する王子」「森の中の小屋」といった 物語を構成する最小単位(モチーフ) を分類したものです。

この2つの索引を組み合わせることで、昔話研究はより精密に行えるようになりました。

現代化:ウターの改訂(2004年)

21世紀に入り、ドイツの民俗学者ハンス=イェルク・ウターが大規模な改訂を行いました。

ウターは従来のAT分類にいくつかの問題点を見出していました。

ウターが指摘した問題点

  • 記述が簡潔すぎて不正確なものが多い
  • 「不規則な話型」とされていたものの中に、実は古くから広く分布しているものがあった
  • 口承伝統を重視するあまり、より古い文献資料が軽視されていた
  • 東欧や南欧の物語が過小評価されていた

これらの問題を解決するため、ウターは『国際昔話話型カタログ(The Types of International Folktales)』全3巻を2004年に出版しました。

ウターの改訂では、以下のような変更が加えられています。

  • 話型名の見直し:性差別的だった名称を修正(たとえばATU 451は「鳥に変えられた兄弟たち」から「姉妹による救出」へ)
  • 地域的なバランスの改善:東欧・南欧の物語を追加
  • 文献資料の重視:口承だけでなく、中世の文献なども参照
  • 「小さな物語形式」の追加:より短い説話も収録

この改訂により、「AT分類」は「ATU分類」へと進化しました。日本では2016年に小澤昔ばなし研究所から『国際昔話話型カタログ 分類と文献目録』として日本語訳が出版されています。

ATU分類とモチーフ索引の違い

昔話研究では、ATU分類と並んで「モチーフ索引」も重要なツールとして使われています。この2つの違いを理解しておくと、ATU分類の特徴がよりはっきり見えてきます。

話型とモチーフの関係

話型(ATU分類) は物語全体のプロット、つまり「筋立て」を分類したものです。

一方、モチーフ(モチーフ索引) は物語を構成する最小単位——特定のキャラクター、アイテム、行動、状況などを分類したものです。

シンデレラを例にとると、こうなります。

分類システム対象
ATU分類(話型)物語全体ATU 510A「シンデレラ」
モチーフ索引個別の要素H36.1「靴による身元確認」、L500-599「虐げられたヒロイン」、N815「魔法の名付け親」

つまり、一つの話型は複数のモチーフで構成されているわけです。研究者はこの2つを組み合わせて使うことで、「この物語はATU 510Aに分類され、モチーフH36.1を含んでいる」といった精密な分析ができるようになります。

モチーフ索引の分類体系

トンプソンのモチーフ索引は、アルファベットと数字の組み合わせで分類されています。

大分類内容
A神話的モチーフ(創造、神々など)
B動物
Cタブー
D魔法
E死者
F驚異(不思議な存在・場所)
G鬼・人食い
H試練
J知恵者と愚か者
K欺き
L運命の逆転
M契約・約束
N偶然・運命
P社会
Q報酬と罰
R捕囚と脱出
S残酷な行為
T性と結婚
U人生の性質
V宗教
W性格特性
Xユーモア
Zその他

日本の昔話とATU分類

国際的な比較研究

ATU分類は主にヨーロッパの昔話をもとに作られましたが、日本の昔話研究にも大きな影響を与えてきました。

柳田國男は1936年に民話の分類を試み、『日本昔話名彙』にまとめています。その後、関敬吾や稲田浩二らが収録話数や話型を大幅に拡充し、ATU番号を振って世界的な対比を可能にしました。

また、トンプソンのもとで学んだ日本人の民俗学者・池田弘子は、1976年に『A Type and Motif Index of Japanese Folk-Literature』を発表。日本の昔話にAT分類を適用した重要な業績として知られています。

日本の昔話の例

日本の昔話がATU分類とどう関連するか、いくつかの例を見てみましょう。

鶴の恩返し
これは動物報恩譚の一種で、恩を受けた動物が人間に恩返しをする物語です。「見るなの禁」というモチーフを含み、世界各地に類似の物語があります。

浦島太郎
異界(竜宮城)を訪れて帰還する物語で、時間の流れが現世と異なるという要素を持ちます。ケルト神話のオシーンの物語など、世界各地に類似のモチーフがあります。

海の水はなぜ塩辛い
柳田國男編『日本の昔話』に収録されたこの話は、ノルウェー民話集の「海の底の臼」と酷似しており、いずれも AT 565型「魔法の臼」 に分類されます。

このように、ATU分類を使うことで、一見独自に見える日本の昔話が、実は世界の物語と深いつながりを持っていることがわかるんです。

最新の研究動向

系統発生学を使った昔話研究

近年、生物学で使われる系統発生学(phylogenetics)の手法を昔話研究に応用する試みが注目を集めています。

2016年、ポルトガルの民俗学者サラ・グラサ・ダ・シルヴァと人類学者ジャムシッド・テフラーニは、ATU分類の「魔法昔話」(ATU 300〜749)の起源を探る画期的な研究を発表しました。

この研究では、印欧語族の言語系統樹と昔話の分布を照らし合わせ、どの物語がどの時代まで遡れるかを統計的に分析しました。

結果として、4つの話型が印欧祖語(Proto-Indo-European)の時代、つまり6,000年以上前から存在していた可能性が示されました。

  • ATU 328「少年が鬼の宝を盗む」(ジャックと豆の木の原型)
  • ATU 330「鍛冶屋が悪魔を出し抜く」
  • ATU 402「動物の花嫁」
  • ATU 554「感謝する動物たち」

この発見は、口承伝統が文字による記録なしに何千年も維持されうることを示唆しており、昔話研究に新たな視点をもたらしました。

デジタル時代のATU分類

インターネットの普及により、ATU分類を使った昔話研究はより身近になっています。

Multilingual Folk Tale Database(多言語民話データベース) というウェブサイトでは、世界中の昔話がATU番号で整理され、原文や翻訳で読むことができます。10,000以上の物語が収録されており、研究者だけでなく一般の人々も利用できる貴重なリソースとなっています。

ただし、このデータベースもまだ発展途上であり、すべてのATU話型が網羅されているわけではありません。特に珍しい話型や、アジア・アフリカの物語については、まだ十分に収録されていない部分があります。

ATU分類の批判と限界

ヨーロッパ中心主義への批判

ATU分類に対する最大の批判は、その ヨーロッパ中心主義 です。

トンプソン自身も、AT索引が「ヨーロッパ、西アジア、およびこれらの人々が移住した地域の民話の型」と呼ぶべきものだと認めていました。

実際、以下のような問題が指摘されています。

  • アフリカやアジアの多くの地域の昔話が十分に収録されていない
  • ヨーロッパの物語を「基準」とし、他の地域の物語を「変種」として扱う傾向がある
  • 非ヨーロッパ圏の独自の昔話が、ATU分類の枠組みにうまく収まらないことがある

2004年のウターの改訂では東欧・南欧の物語が追加されましたが、それでも根本的な構造はヨーロッパの素材に基づいたままです。

研究者のR.B.レンベルグは、ATU分類を「多様な」昔話アンソロジーの選定基準として使うことの問題点を指摘しています。非西洋の物語がATU索引に載っていないという理由だけで排除されてしまうケースがあるからです。

名称の偏りへの批判

話型の名称にも批判があります。

たとえば「白雪姫」(ATU 709)という名称は、白い肌を美の基準としない文化圏でも使われています。また、初期のAT分類では女性の主体性を無視した名称が多く、ウターの改訂で一部は修正されましたが、完全ではありません。

性的・同性愛的な素材の検閲

民俗学者アラン・ダンデスは、トンプソンが性的な内容や同性愛に関連する素材を意図的に排除したと批判しています。

ダンデスはこれを「過度の潔癖」による一種の検閲だと見なし、2002年の論文で問題提起しました。伝統的な昔話には性的な要素を含むものも少なくありませんが、それらが学術的な索引から除外されることで、民話の全体像が歪められているという指摘です。

分類そのものへの疑問

より根本的な批判として、「そもそも昔話を話型に分類すること自体に意味があるのか」という疑問もあります。

ロシアの民俗学者ウラジーミル・プロップは、AT分類の方法論に異議を唱えました。プロップによれば、物語を表面的なプロットで分類すると、本質的に異なる物語が同じ話型に入れられたり、逆に似た構造を持つ物語が別の話型に分けられたりする問題が生じます。

プロップは代わりに、物語を構成する「機能」(主人公が禁止を破る、敵対者が現れる、など)に基づいた分析を提唱しました。

それでも使われ続ける理由

これだけの批判があるにもかかわらず、ATU分類は今日でも昔話研究の基本ツールとして使われ続けています。

アラン・ダンデスは、批判者でありながらもこう述べています。

「誤植や冗長性、検閲といった欠点はあるものの、話型索引は民俗学における比較研究法の要石である。ポストモダンの批判者がいるにもかかわらず、この方法は国際的な民俗学研究の特徴であり続けている」

完璧ではないものの、世界中の昔話を比較・参照するための「共通言語」として、ATU分類に代わるものはまだ存在しないのです。

ATU分類の活用法

研究者としての使い方

民俗学や文学の研究者にとって、ATU分類は欠かせないツールです。

比較研究に使う
同じ話型に属する世界各地の物語を比較することで、物語がどのように変化・伝播してきたかを探ることができます。たとえば、シンデレラ型(ATU 510A)の物語を東西で比較すれば、共通点と相違点から文化的な価値観の違いを読み取ることも可能です。

先行研究を探す
ATU番号がわかれば、その話型についての先行研究を効率的に見つけることができます。学術論文や書籍でも、話型番号で検索すれば関連文献にたどり着けるのです。

一般読者としての使い方

昔話や童話が好きな一般の読者にとっても、ATU分類は新しい物語との出会いをもたらしてくれます。

好きな話の「仲間」を探す
「シンデレラが好きなら、同じATU 510Aに属する世界各地のバリエーションを読んでみる」——こんな楽しみ方ができます。中国の「葉限」、韓国の「コンジとパッジ」、ベトナムの「タム・カム」など、知らなかった物語に出会えるかもしれません。

物語のルーツを知る
ディズニー映画や現代のファンタジー小説の多くは、ATU分類に載っている古典的な話型をもとにしています。原典を知ることで、現代の作品をより深く楽しめるようになるでしょう。

クリエイターとしての使い方

小説家、脚本家、ゲームデザイナーなど、物語を作る人々にとっても、ATU分類は有用なリソースです。

インスピレーションを得る
ATU索引を眺めていると、知らなかった話型に出会えることがあります。特に番号の若い動物昔話や、あまり知られていない宗教的昔話には、現代作品のアイデアの種になりそうなものがたくさんあります。

物語のパターンを学ぶ
何千年も語り継がれてきた話型には、人々の心を捉える普遍的な構造があります。そのパターンを学ぶことで、自分の物語作りにも活かせるはずです。

ただし注意点があります。ATU分類を「正解」として使ってしまうと、索引に載っていない独自の物語を軽視することにもなりかねません。あくまで参考ツールとして、柔軟に活用することが大切です。

まとめ

ATU分類は、100年以上の歴史を持つ昔話研究の基本ツールです。

重要なポイント

  • ATU分類は、世界中の昔話を「話型」ごとに番号で整理したカタログ
  • 名前は3人の学者(Aarne、Thompson、Uther)の頭文字から
  • 7つの大分類(動物昔話、魔法昔話、宗教的昔話、現実的説話、愚かな鬼の話、笑話、形式譚)がある
  • 1910年にアールネが作成し、トンプソン、ウターによって改訂・拡充されてきた
  • トンプソンの「モチーフ索引」と組み合わせて使われることが多い
  • 日本の昔話研究にも応用され、国際比較が可能になっている
  • 系統発生学的手法を使った最新研究では、一部の話型が6,000年以上前から存在した可能性が示されている
  • ヨーロッパ中心主義などの批判はあるものの、代替となるシステムはまだない

世界の昔話は、表面上は多様に見えても、根底では驚くほど共通した構造を持っています。シンデレラのような物語が世界中に存在するのは、人類が共通して抱える願望や恐れが、物語という形で表現されてきたからなのかもしれません。

ATU分類は、そうした「人類共通の物語」を探求するための地図のようなものです。完璧ではないけれど、物語の広大な世界を旅するための、今のところ最良のガイドなのです。

次に昔話を読むとき、「これは世界のどの物語とつながっているんだろう?」と考えてみてください。ATU分類という地図を手に、物語の奥深い世界への旅が始まるかもしれません。

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