「アッポッシャー、アッポッシャー」と叫びながら、赤い顔の鬼が家々を回る……怖そうに聞こえますが、実はちょっと可愛い理由があるんです。
福井県に伝わる「あっぽっしゃ」は、なまはげのような来訪神でありながら、その名前の由来は「餅が欲しい」という素朴な願いから生まれました。遭難した渡来人が食べ物を求めた言葉が、400年以上も続く伝統行事になったなんて、なんだか心温まる話ですよね。
毎年2月6日になると、海の彼方からやってきて、悪い子を戒めながら餅をもらって帰っていく不思議な存在。
この記事では、福井県に伝わる来訪神「あっぽっしゃ」について、その正体や行事の様子、興味深い起源をわかりやすくご紹介します。
概要
あっぽっしゃは、福井県福井市の旧越廼村蒲生・茱崎地区に伝わる伝統行事であり、同時に海からやってくる鬼のことを指します。
毎年小正月の2月6日(昔は1月6日)になると、遠い海の彼方からやってきて、家々を回るという来訪神なんです。
あっぽっしゃの基本情報
- 地域:福井県福井市(旧越廼村蒲生・茱崎地区)
- 時期:2月6日の夜(小正月)
- 歴史:400年以上前から続く伝統
- 分類:来訪神(らいほうしん)
- 危険度:★★☆☆(子どもを戒める程度)
秋田県の「なまはげ」や石川県・新潟県の「あまめはぎ」と同じような存在で、日本海側に多く分布する来訪神の一つです。これらは「悪い子どもを戒めて、その年の幸せを願う」という共通の目的を持っているんですね。
「あっぽっしゃ」の意味
名前の由来がとてもユニークです。
「あっぽっしゃー」=「あっぽ(餅)欲しや」
つまり、「餅が欲しい」という福井県の方言が変化したものなんです。なまはげが怖い名前なのに対して、あっぽっしゃは「餅をください」という、なんとも親しみやすい名前ですよね。
特徴と行事の様子
あっぽっしゃには、独特の姿と行動パターンがあります。
あっぽっしゃの外見
- 赤い顔をしている
- 顔が大きい
- 目がつり上がっている
- 髪が海水で濡れている(海から来たため)
海の彼方からやってくるという設定なので、髪が濡れているという細かい特徴があるのが面白いですね。
行事の流れ
2月6日の夜になると、地区の若者たちがあっぽっしゃに扮して行事が始まります。
あっぽっしゃの訪問パターン
- 茶釜の蓋を叩きながら家々を回る
- 「アッポッシャー、アッポッシャー」と大声で叫ぶ
- 行儀の悪い子どもがいないか確認
- 悪い子を見つけたら戒める(おどかす)
- 家の人から餅をもらう
- 次の家へ移動
茶釜の蓋を叩く音と「アッポッシャー」という声が響く夜は、子どもたちにとってドキドキの体験になるでしょう。
行事の意味と効果
あっぽっしゃの訪問には、深い意味があります。
教育的な役割
- 子どもの躾(しつけ)
- 悪いことをしたら鬼が来るという戒め
- 地域全体で子どもを育てる仕組み
福をもたらす役割
- 来訪神として厄払い
- 新年の幸福を運ぶ
- 地域の絆を深める
起源の物語
あっぽっしゃの起源には、心に残る物語があります。
昔、海で遭難した渡来人が越廼の海岸にたどり着きました。空腹だった彼らは民家を訪ね、「あっぽ(餅)欲しや」と食べ物を求めたといいます。この出来事が、後に伝統行事として定着したんです。
遭難者を助けた優しさの記憶が、子どもを戒めながらも餅を分け与える行事として、400年以上も続いているというのは感動的ですね。
まとめ
あっぽっしゃは、怖い顔をしていても、その本質は優しさに満ちた来訪神です。
あっぽっしゃの重要ポイント
- 福井県福井市に伝わる400年以上の伝統行事
- 「餅が欲しい」という素朴な名前の由来
- 2月6日に海からやってきて家々を回る
- 子どもを戒めながら餅をもらって帰る
- 遭難した渡来人への優しさが起源
なまはげと同じような来訪神でありながら、「餅をください」という名前を持つあっぽっしゃ。その背景には、困っている人を助けた地域の優しさの記憶がありました。
怖い顔で子どもたちを戒めながらも、最後は餅をもらって満足そうに帰っていく。そんなあっぽっしゃは、厳しさと優しさを併せ持つ、日本の伝統文化の素晴らしさを教えてくれる存在といえるでしょう。
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