夜道を歩いていて、突然青白い光が飛んでいくのを見たら、あなたはどう思うでしょうか?
江戸時代の人々は、その光る物体を見て「妖怪だ!」と恐れおののいていました。
実はその正体、鷺(サギ)という鳥が光っている現象だったかもしれないんです。
この記事では、鳥が妖怪に見えてしまう不思議な現象「青鷺火」について詳しくご紹介します。
青鷺火ってどんな現象なの?

青鷺火(あおさぎのひ、あおさぎび)は、サギの体が夜間に青白く発光して見えるという日本の怪現象です。
江戸時代の妖怪図鑑でも紹介されていて、別名「五位の火(ごいのひ)」「五位の光(ごいのひかり)」とも呼ばれています。年を経た青鷺(アオサギ)やゴイサギが夜飛ぶときに、その羽が青白く光って見えることから、人々は妖怪だと思い込んでしまったんですね。
江戸時代の記録
江戸時代にはたくさんの目撃談や記録が残されています。
主な文献での記載
- 『和漢三才図会』(1712年):ゴイサギが夜飛ぶと火のように見え、特に月夜には明るく光ると記載
- 『今昔画図続百鬼』(1779年):鳥山石燕が描いた妖怪画集で、青鷺火を紹介
- 『絵本百物語』(1841年):五位鷺が闇夜に息をつくと、青い火のように光ると説明
『耳嚢』の興味深い話
文化2年(1805年)の記録では、江戸四谷で夜道を歩いていた人が、腰から下がない幽霊のような白い物体に遭遇。一つ目が光っていたので斬りつけたところ、正体は大きな五位鷺だったという話があります。しかも、その鷺は持ち帰って食べられてしまい、「幽霊を煮て食った」と噂になったそうです。
目撃される状況と特徴
青鷺火には、いくつかの共通した特徴があります。
見え方の特徴
- 青白い光や青い火のように見える
- 遠くから見ると丸い火の玉に見える
- 月夜に特に明るく光る
- 提灯(ちょうちん)のような光に見えることも
目撃されやすい場所
- 水辺(川、池、沼地など)
- 夜の暗い道
- 木の茂った場所
正体についての考察
じゃあ、本当にサギは光るのでしょうか?
実は、現代でも「サギが光って飛ぶのを見た」という目撃談があるんです。昭和初期の茨城県では、青白い光が飛ぶのを見たという報告もあります。
科学的な説明
現代の科学では、以下のような説明がされています。
- 発光バクテリア説
- 水辺に生息する発光性のバクテリアがサギの体に付着
- 月光に照らされて青白く光って見える
- 白い羽毛の反射説
- ゴイサギの胸元の白い毛が月光を反射
- 暗闇では光って見える
- 静電気説
- 羽が摩擦で静電気を帯びて光る可能性
- 江戸時代にも「猫を逆なですると光る」という観察から推測
文化的な影響
青鷺火は、ただの怪現象ではなく、日本の文化にも影響を与えました。
妖怪としての扱い
- 災いの前兆として恐れられた
- 妖怪画や黄表紙(江戸時代の絵本)の題材に
- 各地の伝説や民話に登場
地域の伝承
- 新潟県佐渡島:龍燈(龍神の灯す火)と思われていた光の正体がサギだった
- 大和国(奈良県):毎晩光る「化け柳」の正体が青鷺だった
まとめ
青鷺火は、科学が発達していなかった時代の人々が、自然現象を妖怪として解釈した興味深い例です。
重要なポイント
- サギ(青鷺やゴイサギ)が夜間に青白く光って見える現象
- 江戸時代には多くの文献に記録され、妖怪として恐れられた
- 現代でも目撃談があり、完全な作り話ではない
- 発光バクテリアや羽毛の反射など、科学的な説明が可能
- 昔の人々の自然に対する畏怖の念を表す文化遺産
暗い夜道で青白い光を見たら、それは妖怪ではなく、ただのサギかもしれません。でも、そんな不思議な現象を「妖怪」として語り継いできた日本の文化って、とても豊かで面白いと思いませんか?
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