【改心した妖鬼の大将】阿久良王(あくらおう)とは?岡山に伝わる鬼退治伝説をやさしく解説!

神話・歴史・伝承

田畑を荒らし、村人を苦しめる恐ろしい鬼。 でも最後には心を入れ替えて、人々を守る存在になった――。

岡山県の瑜伽山(ゆがさん)に住んでいた妖鬼の大将「阿久良王(あくらおう)」は、まさにそんな珍しい鬼なんです。
坂上田村麻呂との7日間にわたる壮絶な戦いの末、改心して神の使いになったといいます。

この記事では、岡山県に伝わる鬼退治伝説の主役「阿久良王」について、その特徴と退治伝説を詳しくご紹介します。

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概要

阿久良王は、平安時代に岡山県の瑜伽山を根城にしていた妖鬼の大将です。

別名「阿久羅王」「阿黒羅王」とも呼ばれ、吉備国(現在の岡山県)で最も恐れられた鬼でした。 3人の強力な家来を従えて、村々に出ては悪事を働いていたんです。

阿久良王の基本情報

  • 種族:妖鬼
  • 活動地域:岡山県倉敷市児島由加
  • 本拠地:瑜伽山(ゆがさん)の館
  • 時代:平安時代(794~1185年)
  • 危険度:★★★
  • 最期:改心して神の使いとなる

他の鬼退治伝説と大きく違うのは、阿久良王が最後に改心したという点です。

特徴

阿久良王には、普通の鬼にはない特別な力がありました。

妖術の使い手

阿久良王の最大の特徴は、妖術を使えることでした。

特に恐ろしかったのが:

  • 雲のように消える術:姿を消して攻撃をかわす
  • 神出鬼没の移動能力
  • 普通の武器では倒せない強靭な体

この妖術のせいで、あの坂上田村麻呂でさえ7日7夜も戦い続けることになったんです。

3人の家来たち

阿久良王は単独ではなく、強力な部下を従えていました。

主な家来(文献により名前が異なる):

  • 東郷太郎(孫桓太郎)
  • 加茂二郎(加茂三郎)
  • 稗田三郎(緋竜三郎)

このうち稗田三郎は、実は元は人間だったという興味深い設定があります。

悪事の数々

阿久良王一味が行った悪事は村人たちを恐怖に陥れました。

  • 田畑を荒らして作物を台無しにする
  • 金品や食料を奪う
  • 女性を拐う
  • 武将や家来を捕らえて食べる

まさに吉備国一帯を恐怖で支配していたんですね。

伝承

阿久良王退治の物語は、岡山県に今も語り継がれています。

坂上田村麻呂の派遣

村人たちの苦しみを知った朝廷は、都で一番強いといわれた坂上田村麻呂を鬼退治に派遣します。

田村麻呂は通生の浦へ船でやってきて、まず神宮寺八幡院で7日7夜にわたって鬼退治の祈願をしました。

神の助け

瑜伽山へ進んだ田村麻呂一行は断崖に阻まれますが、祈ると白ひげの老人が現れます。

この老人は:

  • 綱を降ろして道を作ってくれた
  • 食料が尽きると食べ物を出してくれた
  • 霊酒を授けてくれた(人が飲めば薬、鬼が飲めば毒)

実はこの老人、瑜伽大権現の化身だったんです。

家来との遭遇

最初に現れた鬼は稗田三郎でした。 激しく切り合いましたが勝負がつかず、田村麻呂が瑜伽大権現に祈ると三郎は降参します。

驚くことに、三郎は「元は人間だった」と告白し、田村麻呂に協力することになりました。

7日7夜の大決戦

ついに阿久良王は、東郷太郎と加茂二郎を引き連れて田村麻呂に戦いを挑みます。

阿久良王の妖術「雲のように消える術」により、戦いは7日7夜にも及びました。 まさに死闘といえる戦いだったでしょう。

改心と最期

ついに敗れた阿久良王ですが、ここで驚きの展開が待っていました。

死の間際、阿久良王は:

  • これまでの悪事を深く悔いた
  • 罪滅ぼしをしたいと申し出た
  • 瑜伽大権現の神使となり人々を助けたいと願った

田村麻呂が首を斬ると、阿久良王の体は金色の光を放って飛び散り、75匹の白狐になったといいます。 以後、これらの白狐は瑜伽大権現のお使いとして、人々を助けるようになったのです。

金甲山の由来

鬼退治の後、田村麻呂は援助してくれた円通寺の竜王へのお礼として、身に付けていた金の鎧を山頂付近に埋めました。 これが現在の「金甲山」の名前の由来とされています。

早良親王伝説

『備陽国史』という書物には、阿久良王の正体は早良親王(桓武天皇の弟)だという説も記されています。 政治的な陰謀で失脚した親王が、実は児島へ逃れて阿久良王と名乗ったという話ですが、これはあくまで伝説で史実ではありません。

まとめ

阿久良王は、悪から善へと転じた珍しい鬼の物語です。

阿久良王伝説の重要ポイント

  • 瑜伽山を根城にした妖鬼の大将
  • 妖術(雲のように消える術)の使い手
  • 3人の強力な家来を従えていた
  • 坂上田村麻呂と7日7夜の死闘
  • 敗北後に改心して罪を悔いた
  • 75匹の白狐となって神の使いに
  • 岡山県の金甲山の名前の由来

この伝説の特別なところは、鬼が単に退治されるだけでなく、最後に改心して人々を守る存在になったことです。

全力で戦った末に敗れ、その戦いに満足した阿久良王。 悪事を心から悔い、生まれ変わって人々のために尽くすことを選んだその姿は、「悪人でも心を入れ替えれば救われる」という仏教的な教えを感じさせます。

今も岡山県では、瑜伽山護の神様として祀られ、万病に効く神として信仰されているんです。

恐ろしい鬼から守り神へ――阿久良王の物語は、改心と救済の可能性を教えてくれる貴重な伝説なのかもしれませんね。

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