1998年、台湾で撮影された1本の家族旅行ビデオが、全土を恐怖に陥れました。
映像に映り込んでいたのは、誰も記憶にない「赤い服を着た少女」。
顔は老婆のように蒼白で、目はくぼみ、まるで別世界の存在のよう。
この映像が心霊番組で放送されると、台湾全土が騒然となりました。
「紅衣小女孩(ホンイーシャオニューハイ)」――この都市伝説は、20年以上経った今でも台湾人の心に深く刻まれています。
この記事では、台湾で最も有名なこの都市伝説の起源、魔神仔との関係、そして現代に与えた影響まで詳しく解説します。
紅衣小女孩とは
紅衣小女孩は、台湾で最も有名な都市伝説のひとつです。
1998年に撮影された家族旅行の映像に映り込んだ、赤い服を着た謎の少女のこと。
その少女の姿は、子供のような小柄な体つきなのに、顔は老婆のように蒼老していたと言われています。
映像が放送された後、台湾全土で様々な憶測が飛び交いました。
「山の精霊・魔神仔ではないか」
「身代わりを探す怨霊だ」
「映像は捏造されたものだ」
真相は未だに明らかになっていません。
しかし、この都市伝説は台湾の文化に深く根付き、映画化されるほどの影響力を持つに至りました。
事件の発端:1998年の映像
すべての始まりは、1998年3月1日のことでした。
台中市北屯区の大坑風景区で、ある家族が登山を楽しんでいました。
呂さんという人物がV8カメラで家族の様子を撮影し、楽しい一日を記録していました。
ところが、旅行から戻って数日後、参加者の一人が突然病に倒れ、亡くなってしまったのです。
葬儀の際、誰かがその日の映像を見返すことを提案しました。
そして、映像を再生したとき――家族全員が凍りつきました。
登山隊の列の最後尾、男性の後ろに、見覚えのない人影が歩いているのです。
それは、真っ赤な服を着た小さな少女でした。
顔は異様に蒼白で、目のある部分はくぼんでおり、まるで老婆のよう。
誰一人として、この少女の存在を覚えていませんでした。
家族は、この映像が親族の死と関係があるのではないかと考え、当時人気だった心霊番組『神出鬼没』に映像を送りました。
心霊番組での放送と社会現象
1998年、台湾のGTV電視台で放送されていた心霊番組『神出鬼没』。
この番組で紅衣小女孩の映像が放送されると、台湾全土が騒然となりました。
番組には、宗教関係者や「専門家」が集められ、映像について議論が交わされました。
支持派の意見:
- 磁場の異常が検出された
- 密教の僧侶が「何かの魂が憑依している」と指摘
- 山の精霊・魔神仔の可能性が高い
懐疑派の意見:
- 単なる別のグループの登山客が映り込んだだけ
- カメラの光影効果で顔が異様に見えただけ
- 映像が編集・加工されている可能性
番組制作者は後に「映像は本物である」と断言しましたが、議論は決着しませんでした。
さらに、番組放送後、複数の視聴者が番組に連絡してきました。
「自分も同じような赤い服の少女を見た」
「目撃後に交通事故に遭った」
「体調を崩した」
こうした証言が相次いだことで、紅衣小女孩の都市伝説は確固たるものとなっていったのです。
紅衣小女孩の正体:魔神仔との関連
台湾では、紅衣小女孩は「魔神仔(モーシンナア)」という妖怪の仕業ではないかと広く信じられています。
魔神仔とは、台湾に古くから伝わる山林の精怪です。
人を迷わせて連れ去る妖怪で、特に子供や高齢者が狙われやすいとされています。
魔神仔の特徴:
- 小柄で、猿のような姿または赤い服を着た子供の姿で現れる
- 人を山奥に連れて行き、迷わせる
- 連れ去られた人は「美味しいご馳走をもらった」と言うが、実際には虫や牛糞、泥などを食べている
- 突然姿を消したり、霧を呼んだりする不思議な能力を持つ
紅衣小女孩の映像に映った少女の姿は、まさに魔神仔の特徴と一致していました。
台湾の民俗学者も、この都市伝説を魔神仔伝承の現代版として位置づけています。
その後の類似事件
紅衣小女孩の都市伝説が広まった後、台湾各地で類似の失踪事件が報告されるようになりました。
2014年の花蓮事件
80歳の女性が観光地で行方不明になり、5日後に発見されました。
女性は「赤い服を着た少女が赤い傘を持って、私を川に連れて行った」と証言したのです。
この事件をきっかけに、紅衣小女孩の伝説は再び台湾全土で話題となりました。
映画化と文化的影響
2015年、紅衣小女孩の都市伝説は映画化されました。
程偉豪(チェン・ウェイハオ)監督による『紅衣小女孩』(原題:紅衣小女孩)は、台湾で大ヒットを記録。
2017年度の台湾映画興行成績第1位を獲得し、続編『紅衣小女孩2』も製作されました。
さらに2018年には、前日譚となる『人面魚:紅衣小女孩外傳』も公開。
これら3部作は「魔神仔ユニバース」として、台湾ホラー映画の新たな地平を切り開きました。
映画では、都市化が進む台湾社会で居場所を失った魔神仔が、都市にまで現れるという設定が描かれています。
環境破壊、家族の絆、現代人の執念といった社会的テーマも織り込まれており、単なるホラー映画を超えた作品として評価されています。
科学的な検証と真相
では、紅衣小女孩の映像は本当に超常現象だったのでしょうか?
科学的な説明:
- 当時のV8カメラは画質が低く、遠くにいる人の顔は誰でも不鮮明に映る
- 光と影の加減で、普通の人の顔も恐ろしく見えることがある
- 番組側が視聴率のために映像を編集した可能性がある
一部の報道では、「紅衣小女孩の正体は、先天性脳性麻痺を患う老婦人だった」という説も流れました。
しかし、この情報も後に炒作(やらせ)だったという報道があり、真相は依然として謎のままです。
また、失踪事件についても別の見方があります。
高齢者の失踪は、認知症や糖尿病による低血糖、脱水症状などで説明できる場合が多いのです。
恐怖や混乱の中で幻覚を見て、それを魔神仔の仕業だと解釈した可能性もあります。
紅衣小女孩が今も語り継がれる理由
真相が何であれ、紅衣小女孩の都市伝説は台湾文化の一部として定着しました。
この伝説が長く語り継がれる理由は何でしょうか?
映像という「証拠」の存在
多くの都市伝説は口伝えだけですが、紅衣小女孩には実際の映像があります。
たとえそれが本物かどうか疑わしくても、「見える証拠」があることで、人々の想像力を刺激するのです。
台湾固有の文化との結びつき
魔神仔は台湾に古くから伝わる妖怪です。
紅衣小女孩の伝説は、現代と伝統が結びついた物語として、台湾人の文化的アイデンティティを象徴しています。
山への畏怖
台湾は山がちな地形で、深い森林が多くあります。
都市化が進んでも、山に対する畏怖の念は人々の心に残っており、そうした恐怖が魔神仔伝説と結びついているのです。
未解決の謎
はっきりとした答えが出ていないからこそ、人々は想像をめぐらせ続けます。
「もしかしたら本当に…」という可能性が残されていることが、都市伝説を生き続けさせているのです。
まとめ
紅衣小女孩は、1998年の映像事件から生まれた台湾最大の都市伝説です。
- 家族旅行の映像に映り込んだ、誰も記憶にない赤い服の少女
- 台湾の妖怪・魔神仔との結びつき
- 映画化され、台湾ホラー映画の金字塔となった
真相が何であれ、この都市伝説は台湾人の集合的記憶の一部となり、現代にも語り継がれています。
山への畏怖、伝統と現代の融合、そして「未知への恐怖」――これらが結びついた、台湾ならではの都市伝説なのです。
参考情報
この記事の作成にあたり、以下の情報源を参照しました:
- Wikipedia「紅衣小女孩」(中国語・繁体字版、2025年1月確認)
- Wikipedia「魔神仔」(中国語・繁体字版、2025年5月確認)
- Wikipedia「The Tag-Along」(英語版、2024年3月確認)
- 映画『紅い服の少女 第一章 神隠し/第二章 真実』公式サイト
- webムー「『紅い服の少女』は妖怪・魔神仔(モシナ)か?台湾ホラー映画が描く怪異の正体」(2022年9月)
- BANGER!!!「死者・失踪者続出の怪異『魔神仔』伝説を徹底解説!」
- RTI台湾国際放送「台湾ミニ百科:都市伝説:赤い服の女の子、人面魚」(2020年8月)
- The News Lens International “The Rise of Taiwanese Horror: Corpse Brides and Little Girls in Red” (2024年9月)
- 中央研究院「魔神仔、鬼故事、看見人們的悲歡離合」
さらに詳しく知りたい方へ:
- 林美容『魔神仔的人類學想像』(台湾、2014年)
- 何敬堯『妖怪台灣』(台湾、2017年)
- 映画『紅衣小女孩』三部作(2015年、2017年、2018年)


コメント