地獄の一番底で、想像を絶する苦しみが永遠に続く場所があるって知っていますか?
仏教には「八大地獄」という8つの地獄があるんですが、その最下層にあるのが阿鼻地獄(あびじごく)です。
別名を無間地獄(むけんじごく)ともいい、そこに落ちた者は一瞬たりとも苦痛から解放されることがありません。
なんと、この地獄に落ちるまでには2000年もかかり、いったん落ちたら349京年以上もの間、想像を絶する責め苦を受け続けることになるんです。
この記事では、仏教における究極の地獄「阿鼻地獄・無間地獄」について、その恐ろしい世界観を分かりやすく解説していきます。
概要:仏教で最も恐ろしい地獄

阿鼻地獄は、仏教の世界観における八大地獄(八熱地獄)の最下層に位置する地獄です。
なぜ「阿鼻」「無間」と呼ばれるの?
阿鼻(あび)は、サンスクリット語の「アヴィーチ(Avīci)」の音写で、「間(ま)がない」という意味があります。つまり、休む間もなく苦しみが続くということなんですね。
無間(むけん)も同じく「間断なく」という意味で、次の5つの「無間」があるとされています:
- 趣果無間(しゅかむけん):命が終わるとすぐに落ちる
- 受苦無間(じゅくむけん):苦しみに休みがない
- 時無間(じむけん):時間の経過に関係なく苦しむ
- 命無間(みょうむけん):何度死んでも生き返って苦しむ
- 形無間(ぎょうむけん):地獄が罪人でぎっしり満ちている
地獄の構造と規模
阿鼻地獄の大きさは、他の地獄よりもはるかに巨大です。
- 縦・横・高さ:それぞれ2万由旬(1由旬=約7~14km)
- 位置:地下4万由旬の最深部
- 落下時間:地上から落ちるのに2000年かかる
この地獄の周りには七重の鉄の城壁があり、そこから逃れることは不可能とされています。
どんな罪で落ちるの?五逆罪と謗法罪
阿鼻地獄に落ちるのは、仏教で最も重い罪とされる「五逆罪」や「謗法罪」を犯した者です。
五逆罪(ごぎゃくざい)とは
五逆罪は、仏教において絶対に犯してはならない5つの大罪です:
- 殺母(せつも):母親を殺すこと
- 殺父(せっぷ):父親を殺すこと
- 殺阿羅漢(せつあらかん):聖者を殺すこと
- 出仏身血(すいぶっしんけつ):仏の身体を傷つけること
- 破和合僧(はわごうそう):教団の和を破壊すること
謗法罪(ほうぼうざい)とは
仏教の教えを否定したり、誹謗中傷したりすることです。これも五逆罪に匹敵する重罪とされています。
阿鼻地獄の責め苦:想像を絶する苦しみ
阿鼻地獄の苦しみは、他の地獄とは比較にならないほど激烈です。
基本的な責め苦
全身から炎が噴き出す
罪人の手足の関節から炎が吹き出し、全身が内側から焼かれます。口、鼻、目、耳などあらゆる穴から火が噴き出すんです。
巨大な獄卒による拷問
- 64の目を持つ奇怪な鬼
- 身長が4由旬(約28~56km)もある巨大な鬼
- 牛頭・馬頭の獄卒
これらの恐ろしい獄卒たちが、罪人を休みなく責め続けます。
熱鉄の山の昇り降り
燃え盛る鉄の山を、永遠に登ったり降りたりさせられます。山肌は真っ赤に焼けており、一歩踏むたびに激痛が走るといいます。
特徴的な責め苦
舌を抜かれる拷問
舌を引き抜かれて、そこに100本の鉄釘を打たれます。それでも舌は再生し、また同じ苦しみが繰り返されるんです。
毒蛇と虫による攻撃
- 火を吐く大蛇が罪人に巻きつく
- 無数の毒虫が体内に入り込んで内側から食い荒らす
- 鉄のくちばしを持つ鳥が肉をついばむ
苦しみの程度を表す比喩
お釈迦様は、阿鼻地獄の苦しみをこう説明されました:
「大きな海の水をひとすくいの水とすれば、前の七つの地獄の苦しみは、そのひとすくい。阿鼻地獄の苦しみは、大海のようなものだ」
つまり、等活地獄から大焦熱地獄までの苦しみを全部合わせても、阿鼻地獄に比べれば夢のような幸福に思えるということなんです。
どれくらいの期間苦しむの?気の遠くなる刑期
阿鼻地獄での刑期は、人間の感覚では理解できないほど長いんです。
基本的な計算
- 人間界の6400年 = 阿鼻地獄の1日
- 阿鼻地獄での寿命 = 6万4000歳
- 人間界に換算すると = 約349京2413兆4400億年
この期間を一中劫(いちちゅうこう)といいます。
一中劫の長さを表す有名なたとえ
- 石のたとえ:
縦横高さが1由旬(約7km)の巨大な石を、100年に一度、柔らかい布で軽く払う。その石が完全にすり減ってなくなるまでの時間 - ケシ粒のたとえ:
縦横高さ1由旬の城にケシ粒をぎっしり詰めて、100年に一粒ずつ取り出す。すべてなくなるまでの時間
どちらも、人間には想像もつかない長さですよね。
十六小地獄:阿鼻地獄の周辺にある副地獄
阿鼻地獄の四方には4つの門があり、それぞれの門の外に4つずつ、合計16の小地獄があります。
代表的な小地獄
烏口処(うこうしょ)
阿羅漢を殺した者が落ちる地獄。口を裂かれて閉じないようにされ、沸騰した泥の河に落とされます。
鉄野干食処(てつやかんじきしょ)
仏像や寺院を破壊した者が落ちる地獄。鉄の狐に食われ続けます。
十一焰処(じゅういちえんしょ)
仏塔や寺院を燃やした者が落ちる地獄。11の方向から炎に焼かれます。
誰が落ちた?阿鼻地獄に堕ちた人物
仏典には、実際に阿鼻地獄に落ちたとされる人物が記されています。
提婆達多(だいばだった)
釈迦の従兄弟で、最初は弟子でしたが、後に釈迦に反逆しました。教団を分裂させようとした罪(破和合僧)で、生きながら地面が裂けて阿鼻地獄に落ちたとされています。
ただし、『法華経』では遠い未来に成仏するという予言も残されているんです。
阿鼻地獄から逃れる方法は?
生前にできること
- 五逆罪を絶対に犯さない
- 仏教の教えを謗らない
- 善行を積む
- 懺悔する
特に重要なのは、もし過ちを犯してしまっても、心から懺悔することです。仏教では、真の懺悔によって罪を軽くすることができるとされています。
地獄に落ちてから
残念ながら、いったん阿鼻地獄に落ちてしまったら、刑期を全うするまで出ることはできません。ただし、地蔵菩薩が地獄で苦しむ衆生を救済するという信仰もあります。
まとめ
阿鼻地獄・無間地獄は、仏教における究極の地獄世界です。
重要なポイント
- 八大地獄の最下層にある最も恐ろしい地獄
- 五逆罪や謗法罪を犯した者が落ちる
- 一瞬の休みもなく苦痛が続く(だから「無間」)
- 苦しみの期間は349京年以上という途方もない長さ
- 他の地獄の苦しみが「ひとすくいの水」なら、阿鼻地獄は「大海」
この恐ろしい地獄の教えは、単に人を脅すためのものではありません。親や聖者を大切にし、正しい教えを尊重することの大切さを説いているんですね。
私たちが日常生活で「地獄のような」という表現を使いますが、仏教の阿鼻地獄は、人間の想像をはるかに超えた究極の苦しみの世界。この教えを知ることで、今を大切に生きることの意味を改めて考えさせられます。


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