「式神を操り、呪術で人々を救った」——そんな超人的なイメージで知られる安倍晴明。
映画やアニメ、ゲームでも大活躍する平安時代のスーパースター陰陽師ですが、実は意外な一面があるんです。
実は晴明、40歳で世に出た「遅咲きの天才」だったって知っていましたか?
しかもそこから85歳まで現役バリバリで活躍し続けた、当時としては信じられないほどのバイタリティーの持ち主。
この記事では、伝説に包まれた安倍晴明の実像と、なぜ今もなお多くの人々を魅了し続けるのか、その秘密に迫ります。
安倍晴明とは?基本プロフィール
安倍晴明は921年(延喜21年)から1005年(寛弘2年)に生きた平安時代の陰陽師です。
「せいめい」と読むのが一般的ですが、平安時代にどう呼ばれていたかは実は確定していません。
陰陽師とは、朝廷に仕える官職の一つ。
天体観測や暦の作成、占いや儀式を行い、国家の重要な決定に深く関わっていました。
現代で言えば、天文学者・占星術師・祈祷師が一体になったような存在でしょうか。
晴明の出自については不明な点が多いのですが、中級貴族の安倍益材の子と伝えられています。
師匠は当時の陰陽道の第一人者、賀茂忠行・賀茂保憲父子でした。
意外な事実:40歳で世に出た遅咲きの天才
伝説では幼少期から天才ぶりを発揮したかのように描かれる晴明ですが、史実はかなり違います。
実は晴明、デビューがめちゃくちゃ遅かったんです。
40歳で天文得業生(いわば大学院生)になり、陰陽師に任じられたのは46歳頃。
天文博士に任命されて本格的に能力を発揮し始めたのは、なんと52歳になってからでした。
当時は40歳でもう引退を考える年齢。
そんな時代に40代でスタートし、そこから50代、60代、70代、80代と第一線で活躍し続けたんです。
957歳の時、師匠の賀茂保憲が亡くなると、晴明は急速に頭角を現し始めます。
花山天皇、一条天皇、そして権力者・藤原道長の信頼を次々と獲得していきました。
一条天皇が病に倒れた際、晴明が禊の儀式を行ったところたちまち回復したという記録が残っています。
また、83歳の時には深刻な干ばつの際に雨乞いの儀式を執り行い、見事に雨を降らせたとか。
最終的には従四位下という高位に昇進し、85歳まで生きました。
平均寿命が30歳前後だった平安時代、これは驚異的な長寿です。
晴明の本当の仕事:陰陽師って何をする人?
映画やドラマでは呪術で敵と戦う姿が描かれますが、実際の陰陽師の仕事はもう少し地味でした。
陰陽師の主な役割は以下の通りです。
天体観測と暦の作成
陰陽道の根底にあるのは、中国から伝わった陰陽五行説。
自然界のあらゆるものを「陰と陽」「木・火・土・金・水」の要素で理解し、天体の動きから吉凶を占うんです。
晴明は特に天文学に精通していました。
正確な星座盤を作成するには、コンピューターも計算機もない時代に相当な計算能力が必要。
この能力を買われて、税収を管理する主計寮にも異動しています。
占いと吉凶判断
重要な政治的決定や儀式の日取り、方角の吉凶などを占います。
藤原行成の日記には晴明を「陰陽道の傑出者」と称賛する記述があり、的中率が抜群だったことがわかります。
祈祷と厄払い
病気平癒、雨乞い、呪詛返しなどの儀式を執り行います。
特に晴明は「泰山府君祭」という呪術を得意としていました。
泰山府君は人間の生死を司る陰陽道の主祭神で、晴明はこの神に働きかける力が強かったとされています。
伝説の能力:式神を操る超人
史実の晴明は優秀な官僚・学者でしたが、平安時代後期から鎌倉時代にかけて、様々な伝説が生まれました。
式神(しきがみ)を操る
式神とは、陰陽師が呼び出して命令で動かす霊的存在のこと。
晴明は式神を自在に操り、家の戸締まりや家事まで式神にやらせていたという伝説があります。
ある時、修行僧が二人の子供を連れて晴明を訪ね、陰陽道を教えてほしいと頼みました。
しかし晴明は一瞬で見抜きます。
「その子供たちは式神だな」
手を一振りすると、二人の子供の姿は消え、正体が明らかになったそうです。
他人の呪いを見抜き、跳ね返す
藤原道長が飼っていた犬が、ある日急に外出を嫌がりました。
不審に思った道長が晴明に占わせると、何者かが道長を呪おうとしていることが判明。
晴明は呪いを跳ね返し、呪いをかけようとした陰陽師を捕らえたといいます。
物の怪を祓う
宮廷に現れた蛇の怪異を占ったり、遠方で起きる吉凶を言い当てたりと、様々な記録が残されています。
こうした能力は本当にあったのか?
当時の貴族たちが「晴明には不思議な力がある」と信じていたのは確かです。
実際に超能力を持っていたというより、卓越した観察力と洞察力で相手の意図を見抜いていたのかもしれません。
母は白狐?晴明の出生伝説
晴明にはもう一つ、有名な伝説があります。
母親が白狐(きつね)だったという伝承です。
阿倍野に住んでいた安倍保名という男が、和泉国の信太明神で参拝を終えて帰ろうとしたところ、狩りで追われた白狐が逃げてきました。
保名は白狐をかくまって助けます。
その後、葛の葉(くずのは)と名乗る美しい女性が保名のもとを訪れ、二人は結婚。
やがて子供が生まれ、安倍童子(晴明の幼名)と名付けられました。
しかしある日、幼い晴明が母親の正体が白狐であることに気づいてしまいます。
葛の葉は障子に一首の和歌を残して、森へ帰っていきました。
「恋しくば 尋ねきてみよ 和泉なる 信田の森の うらみ葛の葉」
(私のことを恋しく思うなら、信太の森へ訪ねてきてください)
狐は古来から霊力を持つ動物とされており、白狐の血を引く晴明だからこそ、天才陰陽師になれたという伝説です。
実際には晴明の母親についての確かな記録は残っていません。
だからこそ、こうした幻想的な物語が生まれたのでしょう。
この伝承は江戸時代の浄瑠璃や歌舞伎でも上演され、「葛の葉」という演目は今でも人気があります。
ライバル蘆屋道満との対決
多くの伝説で晴明と対決するのが、もう一人の陰陽師・蘆屋道満(あしやどうまん)です。
道満は晴明よりかなり年上で、自分こそが最高の陰陽師だと信じていました。
ところが晴明という若手(といっても50代ですが)が現れ、天皇からの信頼を得ているのを見て、激しい嫉妬を抱きます。
みかん15個の対決
ある時、二人は占いの技を競うことになりました。
木箱の中に何が入っているかを当てる勝負です。
道満は自信満々に「みかんが15個入っている」と宣言。
しかし晴明は「ネズミが15匹入っている」と答えました。
箱を開けてみると——なんと15匹のネズミが飛び出してきたのです!
実は箱には確かにみかんが入っていたのですが、晴明は瞬時にみかんをネズミに変えてしまったんですね。
道満は完敗しました。
秘伝書を盗む道満
負けて悔しい道満は、なんと晴明の妻・梨花を誘惑し、晴明の秘伝書を盗み出したという伝説もあります。
しかし結局、晴明の実力には及ばなかったとされています。
史実では道満がどんな人物だったのか、実在したのかすら定かではありません。
伝説の中の悪役として創作された可能性もあります。
ただ、こうしたライバル対決の物語が、晴明の伝説をより面白くしたのは間違いありません。
現代に生き続ける安倍晴明
晴明が亡くなって1000年以上が経ちますが、その人気は衰えるどころか、むしろ現代で再燃しています。
映画・ドラマ
2001年、狂言師・野村萬斎主演の映画『陰陽師』が大ヒット。
夢枕獏の小説を原作としたこの作品で、晴明は再び脚光を浴びました。
2023年にはNetflix『陰陽師』、2024年には『陰陽師0』が公開され、新たなファンを獲得しています。
NHK大河ドラマ『光る君へ』(2024年)にも登場し、平安時代の雰囲気とともに話題を呼びました。
アニメ・ゲーム
スマートフォンゲーム『陰陽師』では主人公として登場。
『Fate/Grand Order』などの人気ゲームにも登場し、若い世代にも知られています。
フィギュアスケート
羽生結弦選手が映画『陰陽師』の音楽を使ったプログラム「SEIMEI」を演じ、このプログラムで2018年の平昌オリンピック金メダルを獲得。
世界中に安倍晴明の名が広まりました。
神社
京都には晴明が住んでいた場所に建てられた晴明神社があり、現在も多くの参拝者が訪れます。
大阪の阿倍野区にも安倍晴明神社があり、こちらは晴明の生誕地とされています。
神社の至る所に見られる五芒星(ごぼうせい)は、晴明が魔除けに使ったとされる印です。
安倍晴明が愛される理由
なぜ晴明はこれほどまでに人々を惹きつけるのでしょうか?
ミステリアスな魅力
出生や幼少期の記録がほとんどなく、謎に包まれています。
だからこそ想像の余地があり、様々な物語が生まれやすいんです。
遅咲きの成功者
40代から頭角を現し、80代まで活躍し続けた晴明の人生は、「いつからでも遅くない」というメッセージを感じさせます。
現代の私たちにも勇気を与えてくれる存在です。
科学と神秘の狭間
天文学という科学的な知識を持ちながら、呪術という神秘的な力も扱う。
この二面性が、現代人の心にも響くのかもしれません。
日本文化の象徴
陰陽道は中国の思想を日本独自にアレンジしたもの。
晴明は日本文化の独自性を体現する存在として、海外でも注目されています。
まとめ:伝説と史実が交差する平安のスーパースター
安倍晴明は、史実としては40代で世に出た遅咲きの天才陰陽師でした。
卓越した天文学の知識と的中率の高い占いで、天皇や貴族たちの信頼を獲得。
85歳という当時としては驚異的な長寿を全うし、陰陽師の頂点に君臨しました。
そして時代を経るごとに、式神を操る超人、白狐の子、ライバルと対決する英雄といった伝説が加わっていきます。
史実と伝説が絶妙に混ざり合った晴明の物語は、1000年経った今も色褪せることなく、私たちを魅了し続けているんです。
京都や大阪を訪れる機会があれば、ぜひ晴明神社に足を運んでみてください。
平安の都で活躍した天才陰陽師の息吹を、きっと感じられるはずです。
参考情報
この記事の作成にあたり、以下の情報源を参照しました。
Web資料
- Wikipedia「安倍晴明」 – 基本情報、年表
- Wikipedia “Abe no Seimei” – 英語版の情報
- nippon.com「陰陽師・安倍晴明 : 神秘のベールで脚色された謎多き異能者」 – 史実の詳細
- 歴史人「映画『陰陽師0』主人公の安倍晴明とは、どのような人物だったのか?」 – 生涯の詳細
- THE GATE「【簡単解説】陰陽師は何者? 安倍晴明はどんな人物?」 – 式神の解説
- 福島稲荷神社「陰陽師 安倍晴明とは」 – 出生伝説
- 刀剣ワールド「安倍晴明」 – 経歴の詳細
- 和樂web「安倍晴明はシルバー人材だった!」 – 遅咲きの視点
- Japaaan「安倍晴明とは」 – 基本情報
- FUN! JAPAN「What is an Onmyoji? Who Was Abe no Seimei?」 – 英語での解説
- Kansai Odyssey「The Mysterious Onmyo-ji Abe no Seimei」 – 晴明神社の情報
- Yokai.com「Abe no Seimei」 – 伝説の詳細
古典文献(記事中で言及)
- 『御堂関白記』(藤原道長の日記)
- 『権記』(藤原行成の日記)
- 『小右記』(藤原実資の日記)
- 『本朝世紀』(平安末期の歴史書)
- 『今昔物語集』
- 『大鏡』
- 『宇治拾遺物語』
現代作品
- 夢枕獏『陰陽師』(小説シリーズ)
- 映画『陰陽師』(2001年)
- 映画『陰陽師0』(2024年)
- NHK大河ドラマ『光る君へ』(2024年)

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