Nintendo Switchのカスタムファームウェア(CFW)環境を使っていると、「AutoRCM」という用語に出会うことがあります。
ジグなしでRCMモードに入れる便利な機能ですが、仕組みや注意点を理解しないまま使うと本体に深刻なダメージを与えるリスクもあります。
この記事では、AutoRCMの意味・仕組み・メリット・デメリット・注意点をまとめて解説します。
AutoRCMとは
AutoRCMとは、Nintendo Switchの起動時に自動的にRCM(Recovery Mode、リカバリーモード)へ移行させる機能のことです。
「Auto」は「自動」、「RCM」はRecovery Mode(リカバリーモード)の略で、合わせて「RCMへの自動移行」を意味します。
RCMとは
RCM(Recovery Mode)は、Nintendo Switchに搭載されているNVIDIA製SoC「Tegra X1」に組み込まれた修理・復旧用のモードです。
本来は任天堂のサービスセンターなどが修理の際に使用することを想定した機能で、デバイスメーカー(NVIDIA)が設計した公式の機能です。
RCMに入ると画面は真っ黒のままになりますが、本体が壊れているわけではありません。
USB接続したPCやスマートフォンなどから「ペイロード(payload)」と呼ばれるプログラムを送信することで、HekateなどのカスタムブートローダーやCFWを起動できます。
通常のRCM入力方法(ジグ使用)
AutoRCMを使わない場合、RCMに入るにはジグ(RCMジグ)という専用の治具(じぐ)が必要です。
ジグをJoy-Conレールの右側に差し込んで「音量上ボタン」と「電源ボタン」を同時に押すことでRCMに入れますが、毎回この操作が必要になります。
AutoRCMの仕組み
AutoRCMは、BOOT0パーティション内のBCT(Boot Configuration Table、ブート設定テーブル)のRSA署名を意図的に1バイト破壊することで機能します。
起動時にBoot ROMがBCTの署名を検証しようとしますが、署名が壊れているため検証に失敗します。
この状態を本体は「本体に問題がある」と判断し、自動的にRCMへ移行します。
つまりAutoRCMは、本体を意図的にソフトブリック(ソフトウェア的な故障状態)させることでRCMへの自動移行を実現する機能です。
BOOT0とBOOT1の両方に変更が加わるため、事前のBOOT0/BOOT1バックアップが強く推奨されます。
AutoRCMの主なメリット
- ジグが不要になる:毎回ジグを挿す手間がなくなり、Joy-Conレールへのダメージリスクを減らせる
- フューズの書き込みを防げる:Nintendo公式のブートローダーが動作しないためファームウェアアップデート時のフューズ書き込みが発生しない(ダウングレードの選択肢を残しておきたい場合に有効)
- ペイロード注入専用デバイスとの相性が良い:RCMオートインジェクターと組み合わせれば、ジグなしで完全ワイヤレス起動に近い運用ができる
AutoRCMの主なデメリット・注意点
単独で起動できなくなる
AutoRCMが有効な状態では、本体単独では通常起動できません。
電源ボタンを押すと画面が真っ黒のままになりますが、これは故障ではなくRCMに入った状態です。
起動するにはPCやスマートフォン、ペイロードインジェクターなどの外部機器でペイロードを送信する必要があります。
バッテリーが空になったときの充電が遅くなる
バッテリーが完全に切れた状態では、AutoRCMが有効だと充電速度が大幅に低下します。
これはBCTが破損した状態ではSwitchが正常な充電制御を行えないためで、ある程度充電が溜まるまでペイロードを受け付けられません。
完全放電した場合は、まず20〜30分程度充電してからペイロードを送信する必要があります。
公式ファームウェアでアップデートするとAutoRCMが無効化される
公式のOFW(オリジナルファームウェア)の状態でシステムアップデートを行うと、AutoRCMが解除されます。
アップデート後は再度AutoRCMを有効化するか、ジグを使ってRCMに入る必要があります。
対策機・Mariko世代には使用不可
AutoRCMが機能するのは未対策機(fusee-gelée脆弱性が存在する旧世代機)のみです。
2019年以降に製造された対策機(Mariko世代)に対してAutoRCMを導入しようとすると、本体が実際にブリック(文鎮化)するおそれがあります。
Atmosphereの開発者からも、対策機へのAutoRCM導入に対して明確に警告が出されています。
スリープモードには影響しない
スリープモードは電源をOFFにする操作ではないため、AutoRCMの影響を受けません。
スリープからの復帰は通常どおり行えます。
AutoRCMの有効化・無効化
AutoRCMはブートローダーのHekate(ヘカテ)から設定できます。
Hekateの「Tools」→「Arch Bit・AutoRCM・Touch・Pkg1/2」から「AutoRCM」をタップすることでON/OFFを切り替えられます。
有効化する前には必ずBOOT0/BOOT1のバックアップを取っておくことが強く推奨されています。
バックアップはHekateの「Tools」→「Backup」→「eMMC BOOT0 & BOOT1」から実行できます。
まとめ
AutoRCMとは、Nintendo SwitchのBOOT0パーティションを意図的に破損させることで、起動時に自動でRCMへ移行させる機能です。
ジグを使わずにRCMへ入れる利便性がある一方、バッテリー切れ時の充電速度低下・単独起動不可・公式アップデート時の自動解除など、理解しておくべき動作仕様が複数あります。
対策機(Mariko世代)への導入は本体の実ブリックにつながるため絶対に行わないこと、また有効化前にはBOOT0/BOOT1のバックアップを必ず取っておくことが前提です。
参考情報源:
- NH Switch Guide「AutoRCM」(2026年3月確認)
- GBAtemp「AutoRCM with the Nintendo Switch 101」(2026年3月確認)
- DeepWiki「AutoRCM | CTCaer/hekate」(2026年3月確認)

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