「雪やこんこ」とは?正しい歌詞と「こんこ」の意味・語源を徹底解説

神話・歴史・文化

「雪やこんこ あられやこんこ」――冬になると誰もが口ずさむ、あの懐かしいメロディ。
でも、ちょっと待ってください。
あなたが歌っているその歌詞、本当に正しいですか?
実は、この歌には多くの人が間違えて覚えているポイントがいくつもあるんです。
この記事では、唱歌「雪」の正しい歌詞から「こんこ」の意味、さらには明治時代にまでさかのぼる歴史まで、徹底的に解説します。

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概要

「雪やこんこ」で親しまれているこの曲の正式な曲名は、じつは「」(ゆき)です。
1911年(明治44年)に文部省唱歌として発表され、100年以上にわたって日本人に歌い継がれてきました。
2007年(平成19年)には文化庁と日本PTA全国協議会が選定する「日本の歌百選」にも選ばれています。
しかし、「こんこ」を「こんこん」と間違えたり、1番と2番の歌詞を取り違えたりと、正しく歌える人は意外と少ないのが実情です。

正式な曲名は「雪」

まず押さえておきたいのが、この曲の正式名称です。
一般に「雪やこんこ」と呼ばれることが多いのですが、正式な曲名は「」(ゆき)といいます。

「雪やこんこ」はあくまで歌い出しのフレーズであり、曲名そのものではありません。
ちょうど「春の小川」を歌い出しの「春の小川はさらさらいくよ」とは呼ばないのと同じですね。

「こんこ」と「こんこん」──正しいのはどっち?

この歌にまつわる最も有名な間違いが、「こんこ」と「こんこん」の取り違えです。

結論から言うと、正しい歌詞は「雪やこんこ」であり、「雪やこんこん」は誤りです。

昭和33年(1958年)発行の音楽之友社『しょうがくせいのおんがく 2』には、「こんこの ところは こんこんに ならないように きを つけて うたいましょう。」という注意書きが掲載されていたとされています。
つまり、60年以上前からすでに「こんこん」と間違える人が少なくなかったわけです。

なぜ「こんこん」と間違えやすいのか

「こんこん」と間違えやすい理由は、主に3つ考えられます。

1つ目は、擬音語としての「こんこん」の存在です。
日本語には「雪がこんこんと降る」という表現があり、これは雪がしきりに降り続くさまを表す副詞として辞書にも載っています。
この擬音語のイメージが強いため、歌詞も「こんこん」だと思い込んでしまうのです。

2つ目は、曲のリズムの影響です。
この曲は軽快な付点リズム(スキップリズム)が特徴的で、「こんこ」よりも「こんこん」と歌った方がリズムに乗りやすく感じるという指摘があります。

3つ目は、別の曲との混同です。
実は、「雪やこんこん」という歌い出しのまったく別の歌が存在するのです。
これについては後ほど詳しく解説します。

「こんこ」の意味と語源

では、「こんこ」とはいったい何を意味する言葉なのでしょうか。

実は、「こんこ」の正確な意味・語源は現在も確定していません
ただし、有力な説がいくつか提唱されています。

有力説①:「来む来む(こむこむ)」説

国語学者の大野晋は、著書『日本語をさかのぼる』(岩波書店、1974年)のなかで、「コンコン」の語源は古語の「来む来む(こむこむ)」であると述べています。
「来む」は「来い」を意味する古語で、「雪よ、もっと降れ降れ」という呼びかけの言葉だったと考えられています。

有力説②:「来う来う(こうこう)」説

国文学者の池田弥三郎も同様の見解を示しており、「来う来う(こうこう)」が語源だとしています。
こちらも「雪よ来い来い」と、雪を歓迎する意味を持つ言葉です。

辞書での扱い

『日本国語大辞典』(小学館、2001年)では、「こんこ」を「雨や雪、あられなどの降り続くさまを表す語。こんこん。」と定義しています。
つまり辞書上は擬態語として扱われていますが、語源的には動詞(来い・降れ)に由来するという見方が有力です。

わらべうたとの関連

「こんこ」や「こんこん」が雪の歌に使われるのは、文部省唱歌に限った話ではありません。
日本各地に古くから伝わるわらべうたのなかにも、雪を「こんこ」「こんこん」と呼びかける歌が存在しており、いずれも雪を歓迎する言葉として使われてきたとされています。

瀧廉太郎の「雪やこんこん」──別の歌が存在する

「こんこ」と「こんこん」が混同される大きな要因のひとつが、瀧廉太郎(たきれんたろう)が作曲した別の歌の存在です。

1901年(明治34年)に出版された『幼稚園唱歌』の第18曲目に、「雪やこんこん」という曲が収録されています。
こちらは東くめが作詞、瀧廉太郎が作曲を担当したもので、文部省唱歌の「雪」とはまったく別の曲です。

項目文部省唱歌「雪」幼稚園唱歌「雪やこんこん」
発表年1911年(明治44年)1901年(明治34年)
作詞不詳(文部省唱歌)東くめ
作曲不詳(文部省唱歌)瀧廉太郎
歌い出し雪やこんこ あられやこんこ雪やこんこん あられやこんこん
対象尋常小学校2年生幼稚園

瀧廉太郎の「雪やこんこん」の方が10年早く発表されており、文部省唱歌「雪」はこの幼稚園唱歌から影響を受けている可能性が指摘されています。
2つの曲が似た歌い出しを持つことが、「こんこ」と「こんこん」の混同をさらに助長しているといえるでしょう。

作詞者・作曲者は誰なのか

文部省唱歌「雪」の作詞者・作曲者は、公式には不詳とされています。

一部の資料では、国文学者の武笠三(むかさ さん)が作詞を担当したとする説がありますが、確定的な根拠はありません。

これは「雪」に限った話ではなく、文部省唱歌全体に共通する事情です。
1911年から1914年にかけて文部省が編纂した『尋常小学唱歌』は、東京音楽学校の編纂委員会が合議制で作詞・作曲を行いました。
文部省は作詞者・作曲者に高額な報酬を支払う代わりに、名前は一切出さず、本人にも口外しないという契約を結んでいたとされています。

「国が作った歌」という権威づけを重視した結果、個々の作者名は意図的に伏せられました。
後年になって著作者を明らかにする試みも行われましたが、学問的に厳密な形で行われたわけではなく、多くの曲で根拠が弱いままとなっています。

よく間違える歌詞のポイント

「こんこ」と「こんこん」以外にも、この歌には間違えやすいポイントがあります。

1番と2番の取り違え

多くの人が2番の歌詞を1番だと思い込んでいます

「犬は喜び 庭かけまわり 猫はこたつで丸くなる」というフレーズは非常に有名ですが、これは2番の歌詞です。
1番は雪が積もっていく風景を描写した内容で、動物は登場しません。

1番と2番をつなげて歌ってしまう

さらに、1番の途中から2番の途中につなげて歌ってしまうケースも多いとされています。
1番と2番は似た構造を持ちながらも、描かれている情景が異なるため、正確に区別して覚えることが大切です。

歌詞に込められた情景を読み解く

この歌は、わずか2番の短い歌詞のなかに、冬の日本の美しい情景を巧みに描き出しています。

1番:雪に覆われた風景

1番では、雪とあられが降り積もっていくようすが歌われています。
特に注目したいのは「枯木残らず 花が咲く」という表現です。
これは、葉も花もない冬の枯れ木に雪が積もり、まるで白い花が咲いたように見えるという比喩表現です。

「山も野原も わたぼうしかぶり」というフレーズも、一面の銀世界を「綿帽子」に見立てた美しい表現といえるでしょう。

2番:犬と猫の対比

2番で描かれるのは、雪の日における犬と猫の対照的なふるまいです。
犬は喜んで庭を駆け回り、猫はこたつのなかで丸くなる――この対比は、100年以上経った現在でも共感を呼ぶ場面描写です。

実際に、犬は先祖がオオカミであるため寒さに強い個体が多く、いつもと違う環境を楽しむ性質があるとされています。
一方、猫は体温調節のために暖かい場所を好む傾向があり、歌詞の描写は動物の習性をよく捉えているといえます。

文部省唱歌としての歴史的背景

「雪」は1911年(明治44年)の『尋常小学唱歌』第二学年用に掲載されました。
『尋常小学唱歌』は全6巻・120曲からなり、すべて日本人による新作で構成された画期的な唱歌教科書です。

それ以前の唱歌教科書は、西洋の曲に日本語の歌詞をつけた「翻訳唱歌」が主流でした。
『尋常小学唱歌』はこの翻訳唱歌から脱却し、日本独自のメロディと歌詞による唱歌教育を目指したものです。

この教科書は昭和初期まで20年近く使用され、その後の改訂版にも多くの曲が再録されました。
「雪」もそのひとつで、現在の小学校の音楽教科書にも掲載され続けています。

メロディの起源に関する説

メロディについては、19世紀チェコの作曲家ドヴォルザーク(Antonín Dvořák)が1894年に作曲した歌曲集『聖書の歌』(Biblické písně)の一曲との類似性を指摘する説があります。
当時の日本の唱歌は西洋のクラシック音楽や賛美歌から影響を受けたものが少なくなかったため、偶然の一致とは言い切れないという見方もありますが、真相は明らかになっていません。

まとめ

  • 正式な曲名は「」(ゆき)であり、「雪やこんこ」は歌い出しのフレーズ
  • 正しい歌詞は「雪やこんこ」であり、「こんこん」は誤り
  • 「こんこ」の語源は「来む来む」(降れ降れ)が有力説。雪を歓迎する言葉とされている
  • 瀧廉太郎作曲の「雪やこんこん」(1901年)はまったく別の歌
  • 作詞者・作曲者は公式には不詳。文部省唱歌の合議制による編纂のため
  • 「犬は喜び 庭かけまわり 猫はこたつで丸くなる」は2番の歌詞
  • 1911年の発表以来、100年以上にわたって日本人に愛され続けている名曲

冬の寒い日に、ぜひ正しい歌詞で歌ってみてくださいね。

参考情報

この記事で参照した情報源

学術資料・辞書

  • 大野晋『日本語をさかのぼる』岩波書店、1974年 – 「こんこん」の語源を「来む来む」と解説
  • 『日本国語大辞典 第5巻』小学館、2001年 – 「こんこ」の辞書的定義
  • レファレンス協同データベース(国立国会図書館) – 「雪やこんこ」の語義と教科書掲載情報に関するレファレンス事例

百科事典・データベース

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