Mozillaは世界的に有名なFirefoxブラウザを開発する非営利団体ですが、ブラウザ以外にも多くのサービスを提供しています。
この記事では、2026年2月時点でMozillaが提供している全サービスと、過去に終了したサービスについて詳しく解説します。
Mozillaとは

Mozilla Foundation(モジラ・ファウンデーション)は、2003年に設立された非営利団体です。
「オープンでアクセス可能なインターネット」を目指し、ユーザーのプライバシーとセキュリティを最優先にした製品開発を行っています。
営利企業であるGoogleやAppleとは異なり、Mozillaは利益ではなくユーザーのためのソフトウェア開発を理念としています。
2005年にはMozilla Corporation(子会社)を設立し、Firefoxなどの製品のマーケティングと配布を担当しています。
現在提供中のMozillaサービス一覧
2026年2月時点でMozillaが提供している主要サービスは以下の通りです。
ブラウザ関連サービス
Firefox(ファイアーフォックス)
Mozillaの主力製品であるオープンソースのウェブブラウザです。
Windows、macOS、Linux、Android、iOSなど、マルチプラットフォームに対応しています。
主な特徴は以下の通りです。
プライバシー保護機能として、2000以上のデータトラッカーを自動的にブロックする「強化型トラッキング防止機能」が標準搭載されています。
アドオン(拡張機能)により機能を追加できます。
特にAndroid版Firefoxは、標準ブラウザがアドオンに非対応な中で、450種類以上のアドオンをインストールできる貴重な存在です。
Geckoレンダリングエンジンを搭載し、Google Chromeと同等のベンチマーク結果を記録しています。
2024年1月時点での世界シェアは約8%です。
バージョン管理は4週間ごとのラピッドリリースを採用しており、最新のセキュリティアップデートが迅速に提供されます。
Firefox for Android
Android端末向けに最適化されたFirefoxです。
2023年12月以降、450種類以上のアドオンに対応しており、モバイル端末でも拡張機能を活用できます。
Firefox for iOS
iPhone、iPad、iPod touch向けのFirefoxブラウザです。
iOS版は技術的制約によりWebKitエンジンを使用していますが、Firefoxの同期機能やプライバシー保護機能は利用できます。
Firefox Focus
プライバシーに特化したモバイル向けブラウザです。
自動的にトラッキングをブロックし、広告をブロックする機能が標準搭載されています。
ブラウジング履歴を残さず、アプリを閉じるだけで全てのデータが消去されます。
Firefox ESR(Extended Support Release)
企業や組織向けの長期サポート版Firefoxです。
通常版の約1年間、同じメジャーバージョンを維持し、セキュリティアップデートのみを提供します。
大規模な組織での導入や、特定のシステムとの互換性維持が必要な場合に適しています。
プライバシー・セキュリティサービス
Mozilla VPN
Mullvadとの提携により提供されるVPN(仮想プライベートネットワーク)サービスです。
主な特徴は以下の通りです。
30カ国以上のサーバーに接続できます。
インターネットトラフィックを暗号化し、ISP(インターネットサービスプロバイダ)からユーザーのオンライン活動を隠します。
最大5台のデバイスで同時接続できます。
Windows、Mac、Linux、Android、iOSに対応しています。
有料サブスクリプションサービスとして提供されています。
Firefox Relay
メールアドレスと電話番号のマスキングサービスです。
無料版と有料版(Firefox Relay Premium)があります。
無料版では最大5つのランダムなメールマスクを作成できます。
有料版では、無制限のメールマスク、1つの電話番号マスク、カスタムサブドメインの作成が可能です。
電話番号マスキング機能は現在、アメリカとカナダでのみ利用可能です。
メールマスキングサービスは、オーストリア、ベルギー、カナダ、フィンランド、フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、マレーシア、オランダ、ニュージーランド、シンガポール、スペイン、スウェーデン、スイス、イギリス、アメリカで利用できます。
実際のメールアドレスや電話番号を隠すことで、スパムやトラッキングから保護します。
Mozilla Monitor
個人情報の漏洩を監視するサービスです。
無料版と有料版(Mozilla Monitor Plus)があります。
Have I Been Pwned(HIBP)との提携により、既知のデータ漏洩事件でメールアドレスやパスワードが漏洩していないか確認できます。
有料版(Mozilla Monitor Plus)では、データブローカーサイトから個人情報を削除する機能が提供されます。
この機能はOneRepとの提携により実現されています。
新たなデータ漏洩が発生した際に通知を受け取れます。
世界中のユーザーが利用可能です。
メール・コミュニケーションサービス
Mozilla Thunderbird(サンダーバード)
オープンソースの電子メールクライアントです。
MZLA Technologies Corporation(Mozilla Foundationの子会社)が運営しています。
主な特徴は以下の通りです。
OAuth 2.0、POP、IMAPをサポートし、Yahoo!メールやGmailなどのフリーメールを受信できます。
複数のメールアカウントを一元管理できます。
ベイズ理論による学習型の迷惑メールフィルタリング機能を搭載しています。
カレンダー機能やRSSフィード購読機能も利用できます。
Windows、macOS、Linuxで動作します。
他のメールソフトからのデータ移行機能(インポート)が充実しています。
2026年のロードマップには、Thunderbird ProとThundermailのリリースが含まれています。
開発者向けサービス
MDN Plus
MDN Web Docs(Mozilla Developer Network)のサポーター向けカスタムユーザー体験を提供するサブスクリプションサービスです。
MDN Web Docsは、ウェブ技術に関する包括的なドキュメントとして、世界中の開発者に利用されています。
その他のサービス
Mozillaアカウント
Mozilla VPN、Firefox Relay、Mozilla Monitor、Firefox Syncなど、複数のMozillaサービスにアクセスするための統合アカウントシステムです。
1つのアカウントで全てのMozillaサービスを管理できます。
Firefox Sync
複数のデバイス間でFirefoxのブックマーク、パスワード、履歴、開いているタブなどを同期する機能です。
Mozillaアカウントにログインすることで利用できます。
Mozilla Maintenance Service
Windows環境でFirefoxやThunderbirdの更新をバックグラウンドで自動的に行うオプションサービスです。
UAC(ユーザーアカウント制御)ダイアログの表示なしに更新を適用できます。
更新プロセス中のみ動作し、通常時はコンピューターリソースを使用しません。
終了したMozillaサービス

Mozillaは長年にわたって様々なサービスを提供してきましたが、戦略的な理由や利用状況の変化により、いくつかのサービスが終了しています。
2025年に終了したサービス
Pocket(ポケット)
2025年7月8日にサービスを終了した「後で読む」アプリです。
Mozillaが2017年に買収した最初のサービスでした。
終了の経緯は以下の通りです。
2025年5月22日に終了が発表されました。
2025年7月8日に通常サービスが終了し、エクスポート専用モードに移行しました。
当初は2025年10月8日までデータエクスポートが可能とされていましたが、11月6日、さらに11月12日まで延長されました。
2025年11月12日にユーザーデータが完全削除され、APIも無効化されました。
Mozillaは「ウェブの利用方法が進化したため、現在のブラウジング習慣により適したプロジェクトにリソースを集中する」と説明しています。
Pocket Premiumの有料購読者には自動返金が行われました。
Pocket Hitsニュースレターは「新しい名前」で2025年6月17日から継続されました。
Fakespot(フェイクスポット)
2023年にMozillaが買収したレビュー分析サービスで、2025年に終了しました。
Amazon、Walmartなどのショッピングサイトのレビューを分析し、偽レビューや信頼性の低いレビューを識別する機能を提供していました。
終了スケジュールは以下の通りです。
2025年6月10日にFirefox統合機能「Review Checker」が終了しました。
2025年7月1日にFakespotブラウザ拡張機能、モバイルアプリ、ウェブサイトが全て停止しました。
Mozillaは「アイデアには共感したものの、持続可能なモデルには適合しなかった」と説明しています。
Orbit
2025年6月26日に終了したFirefox拡張機能です。
大規模言語モデル(Mistral 7B)を使用して、メール、記事、動画などのコンテンツを要約する機能を提供していました。
2025年6月8日に終了が発表され、6月26日以降は使用できなくなりました。
過去に終了した主なサービス
Firefox Send
エンドツーエンド暗号化ファイル共有サービスでした。
2020年7月に悪用問題により一時停止され、2020年9月に完全終了しました。
Firefox Notes
Firefoxの拡張機能またはAndroidアプリで暗号化されたメモを作成・同期できるサービスでした。
2020年11月に終了しました。
Mozilla.social
MozillaのMastodonインスタンスでした。
2025年4月に約60名の従業員レイオフの一環として、小規模なチームでの運営に縮小されました。
Hubs
3D仮想世界サービスでした。
2025年4月に終了が発表されました。
Online Footprint Scrubber
データブローカーサイトから個人情報を削除するサービスでしたが、後にMozilla Monitor Plusに統合されました。
2025年4月のレイオフで「縮小」対象となりました。
Thimble
教育向けウェブベースコードエディタでした。
Webmakersプロジェクトの一部として提供されていました。
2019年12月に終了し、プロジェクトはGlitchに移行されました。
Mozilla Persona
分散型ウェブ認証システムでした。
開発が終了しました。
Mozilla Sunbird
カレンダークライアントでした。
後にThunderbirdのカレンダー機能の基礎となりました。
SeaMonkey
Mozilla Application Suiteの後継として、Mozillaから独立したボランティアコミュニティが開発を継続しています。
Mozillaは2006年にMozilla Suiteの開発を終了し、FirefoxとThunderbirdに開発を集中しました。
ChatZilla
IRCクライアントとして提供されていました。
Firefox拡張機能としても利用可能でした。
Mozilla IRC Network(irc.mozilla.org)
Mozillaの公式IRCネットワークでした。
2019年に終了が発表され、悪用やハラスメントの問題、技術的障壁を理由にMatrixへの移行が決定されました。
2020年3月2日に完全終了しました。
Mozillaの今後の展開
2026年のロードマップには以下の項目が含まれています。
Firefoxのパフォーマンス、プライバシー、相互運用性の向上に投資します。
企業向けFirefoxの提供を予定しています。
Thunderbird ProとThundermailのリリースを計画しています。
オプトイン機能としてFirefoxにAI機能(AI Windowなど)を構築します。
「AIコントロール」機能をFirefoxに導入し、現在および将来のAI機能を完全にオフにする明確な方法を提供します。
オープンソースAIエコシステムの成長をサポートします。
Mozilla.aiのオープンソースライブラリスイートを拡大します。
ホスト型AIエージェントプラットフォームを立ち上げます。
2025年1月に発表された「State of Mozilla 2025/26」では、MozillaがAIの未来を選択可能なものにし、ユーザーが完全にAIを拒否するオプションも含めて提供することを約束しています。
サブスクリプションサービスの価格体系
Mozillaの有料サブスクリプションサービスには以下のものがあります。
Mozilla VPN
月額料金と年間料金プランが用意されています。
最大5台のデバイスで同時接続可能です。
Firefox Relay Premium
無制限のメールマスク作成、1つの電話番号マスク(米国・カナダのみ)、カスタムサブドメインが利用できます。
VPN + Relay バンドルプラン
Mozilla VPNとFirefox Relayの両方にアクセスできるバンドルプランが提供されています。
年間契約の場合、月額6.99ドル相当になります。
Mozilla Monitor Plus
データブローカーサイトからの個人情報削除機能を含む有料版です。
一部地域でのみ利用可能です。
MDN Plus
開発者向けのプレミアムサポート機能を提供します。
Mozillaサービスの特徴
Mozillaのサービスには共通する特徴があります。
プライバシーファーストの設計で、ユーザーのデータ保護を最優先しています。
オープンソースソフトウェアを基盤としており、透明性が確保されています。
非営利組織として、利益よりもユーザーの利益を重視した開発を行っています。
クロスプラットフォーム対応により、Windows、Mac、Linux、モバイルデバイスで利用できます。
コミュニティ主導の開発体制で、世界中のボランティアや開発者が貢献しています。
ウェブ標準への準拠を重視し、オープンでアクセス可能なインターネットの実現を目指しています。
まとめ
Mozillaは2026年現在、Firefox、Thunderbird、Mozilla VPN、Firefox Relay、Mozilla Monitorなど、プライバシーとセキュリティに重点を置いた多様なサービスを提供しています。
一方で、Pocket、Fakespot、Orbitなど、いくつかのサービスは戦略的な理由により終了しています。
MozillaはFirefoxブラウザの強化とユーザー重視のAI機能の開発に注力しており、今後もプライバシーを尊重したインターネット環境の実現を目指しています。
非営利組織としての理念を維持しながら、持続可能なビジネスモデルと公共の利益のバランスを取ることが、Mozillaの継続的な課題となっています。

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