「この宇宙はどうやってできているのか?」「自然界のすべての力を統一的に説明できる理論はあるのか?」
物理学者たちは何世紀にもわたって、こうした根源的な問いに答えようとしてきました。
その答えの有力候補とされているのが「超弦理論」です。
この理論は、私たちの宇宙を構成する最も基本的な要素が、極めて小さな「ひも」であると考えます。
この記事では、超弦理論とは何か、どのように誕生し発展してきたのか、そして何が画期的なのかを、わかりやすく解説していきます。
超弦理論とは
超弦理論(ちょうげんりろん、英語:Superstring Theory)は、物質の最も基本的な構成要素を理解するための物理学の理論です。
別名「超ひも理論」「スーパーストリング理論」とも呼ばれます。
従来の考え方:素粒子は「点」
超弦理論を理解するには、まず従来の素粒子物理学の考え方を知る必要があります。
20世紀の物理学では、物質の最小単位である素粒子(電子やクォークなど)を、大きさを持たない0次元の「点粒子」として扱ってきました。
原子は原子核と電子でできていて、原子核は陽子と中性子でできていて、陽子と中性子はクォークという素粒子でできている——というように、物質をどんどん細かく分けていった最後の最小単位が、大きさのない「点」だと考えられていたのです。
超弦理論の革新:素粒子は「ひも」
これに対して、超弦理論は全く異なる発想を提案します。
素粒子は大きさのない点ではなく、1次元の広がりを持った「ひも」(弦)であるというのです。
このひもは、想像を絶するほど小さく、その長さは約10^-35メートル(プランク長)です。
これは、原子核の大きさ(10^-15メートル)と比べても、さらに10^20分の1という、人間の感覚では全く捉えられない微細なスケールです。
ひもの振動が素粒子を生む
超弦理論では、この極めて小さなひもが様々な振動の仕方をすることで、異なる種類の素粒子が生まれると考えます。
ギターの弦が異なる振動をすることで異なる音を出すように、超弦理論のひもも異なる振動パターンを持つことで、電子、クォーク、光子など、様々な素粒子として現れるのです。
つまり、宇宙のすべての物質と力は、たった一種類の「ひも」の異なる振動モードとして説明できるというのが、超弦理論の核心的なアイデアです。
超弦理論が目指すもの:万物の理論
物理学の最大の謎
現代物理学には、2つの非常に成功した理論があります。
- 量子力学(quantum mechanics)
ミクロな世界(原子や素粒子)の振る舞いを記述する理論です。
電磁気力、強い力、弱い力という3つの力を、素粒子の「標準模型」として統一的に説明できます。 - 一般相対性理論(general relativity)
アインシュタインが1915年に完成させた、マクロな世界(惑星や銀河)を支配する重力を記述する理論です。
問題は、この2つの理論が数学的に矛盾していることです。
量子力学と一般相対性理論を単純に組み合わせようとすると、計算結果が無限大になってしまい、物理的に意味のある答えが得られません。
特に、重力を量子力学的に扱おうとすると、この問題が深刻になります。
万物の理論(Theory of Everything)
物理学者たちは、自然界に存在する4つの力(重力、電磁気力、強い力、弱い力)を統一的に説明し、量子力学と一般相対性理論を矛盾なく融合させる「万物の理論」(Theory of Everything、TOE)を探し求めてきました。
超弦理論は、この万物の理論の最有力候補とされています。
なぜなら、超弦理論では、素粒子を点ではなく広がりを持ったひもとして扱うことで、計算結果が無限大になるという問題が自然に解決されるからです。
さらに驚くべきことに、超弦理論は、重力を記述するために必要な「重力子」(グラビトン)という粒子の存在を、理論の自然な帰結として予言します。
つまり、重力を無理やり理論に組み込むのではなく、理論が自動的に重力を含んでいるのです。
超弦理論の誕生と発展
1960年代後半:弦理論の誕生
超弦理論の起源は、1960年代後半にさかのぼります。
当時、物理学者たちは「強い力」(原子核を構成する陽子や中性子を結び付けている力)を説明しようとしていました。
1968年、イタリアの物理学者ガブリエーレ・ヴェネツィアーノ(Gabriele Veneziano)が、ハドロン(強い力の影響を受ける粒子)の性質を数学的に記述する公式を発見しました。
その後、日本の南部陽一郎(1970年にノーベル物理学賞受賞)らが、ヴェネツィアーノの公式が「振動するひも」のモデルで説明できることを示しました。
これが弦理論の始まりです。
ただし、この初期の弦理論には重大な問題がありました。
ボース粒子(光子など、力を媒介する粒子)しか記述できず、フェルミ粒子(電子やクォークなど、物質を構成する粒子)を扱えなかったのです。
1971年:超対称性の導入
1971年、フランスのピエール・ラモン(Pierre Ramond)、アンドレ・ヌヴォ(Andre Neveu)、アメリカのジョン・シュワルツ(John Schwarz)の3人が、画期的な拡張を提案しました。
「超対称性」(supersymmetry)という概念を弦理論に導入することで、ボース粒子とフェルミ粒子の両方を扱えるようになったのです。
超対称性とは、ボース粒子とフェルミ粒子を入れ替える対称性のことです。
この概念を取り入れた弦理論が「超弦理論」(superstring theory)と呼ばれるようになりました。
同じく1971年、ロシアの物理学者エフゲニー・リヒトマン(Evgeny Likhtman)とユーリ・ゴルファンド(Yuri Golfand)も独立に超対称性の理論を構築していました。
1970年代:冬の時代
しかし、1970年代半ばになると、弦理論は深刻な理論的困難に直面しました。
強い力を説明する理論としては、「量子色力学」(QCD、Quantum Chromodynamics)という別の理論の方が実験結果とよく一致することがわかったのです。
その結果、弦理論の研究は衰退し、1970年代後半から1980年代前半にかけて、ほとんどの物理学者が弦理論から離れていきました。
ごく少数の研究者だけが、この理論の可能性を信じて研究を続けました。
1974年:重力との関係の発見
研究が下火になる中、1974年に重要な発見がありました。
ジョエル・シャーク(Joël Scherk)とジョン・シュワルツが、超弦理論に含まれる特定の粒子(スピン2の質量ゼロの粒子)が、実は重力子(graviton)である可能性を示したのです。
重力子とは、重力を媒介すると予想される素粒子です(まだ実験的には観測されていません)。
この発見により、超弦理論は強い力の理論ではなく、重力を含むすべての力を統一する理論である可能性が浮上しました。
1984-1985年:第一次超弦理論革命
1984年、マイケル・グリーン(Michael Green)とジョン・シュワルツが、超弦理論における「アノマリー」(理論の整合性を破壊する数学的な問題)が、特定の条件下で自動的にキャンセルされることを発見しました。
このグリーン-シュワルツの機構により、超弦理論が数学的に整合性のある理論であることが示されたのです。
この発見を契機に、超弦理論は一気に注目を集めるようになりました。
1984年から1986年にかけて、数百人の物理学者が超弦理論の研究に参入し、この時期は「第一次超弦理論革命」と呼ばれています。
この時期に、以下の重要な発見がありました。
1985年:ヘテロティック弦理論の発見
デビッド・グロス(David Gross)、ジェフリー・ハーヴェイ(Jeffrey Harvey)、エミール・マルティネック(Emil Martinec)、ライアン・ローム(Ryan Rohm)の4人が、「ヘテロティック弦理論」を発見しました。
1985年:カラビ-ヤウ多様体
フィリップ・キャンデラス(Philip Candelas)、ゲイリー・ホロウィッツ(Gary Horowitz)、アンドリュー・ストロミンジャー(Andrew Strominger)、エドワード・ウィッテン(Edward Witten)が、余剰次元をコンパクト化する方法として「カラビ-ヤウ多様体」を提案しました。
1995年:第二次超弦理論革命
1990年代前半まで、超弦理論には5つの異なるバージョンがあり、どれが正しいのかわからないという問題がありました。
1995年、驚くべき発見がありました。
M理論の提唱
エドワード・ウィッテンが、5つの超弦理論は実は一つの理論の異なる側面であり、11次元のM理論(M-theory)として統一できると提唱しました。
Dブレーンの発見
ジョセフ・ポルチンスキー(Joseph Polchinski)が、超弦理論にはひもだけでなく、「Dブレーン」と呼ばれる高次元の物体も含まれることを発見しました。
これらの発見により、超弦理論研究は「第二次超弦理論革命」を迎えました。
1997年:AdS/CFT対応
1997年、ファン・マルダセナ(Juan Maldacena)が、AdS/CFT対応という重要な関係を発見しました。
これは、重力を含む理論(超弦理論)と、重力を含まない量子場の理論が、ある条件下で等価であるという驚くべき予想です。
この発見は、超弦理論だけでなく、量子重力理論やゲージ理論に新しい知見を与え、現在も活発に研究されています。
超弦理論の5つのバージョン
1984年から1995年までの間、超弦理論には5つの異なるバージョンが知られていました。
タイプI(Type I)
開いた弦(両端が自由)と閉じた弦(ループ状)の両方を含みます。
10次元時空で定義され、1つの超対称性を持ちます。
タイプIIA(Type IIA)
閉じた弦のみを含みます。
10次元時空で定義され、2つの超対称性を持ちます。
「非キラル」(左右対称)という性質を持ちます。
タイプIIB(Type IIB)
閉じた弦のみを含みます。
10次元時空で定義され、2つの超対称性を持ちます。
「キラル」(左右非対称)という性質を持ちます。
ヘテロSO(32)(Heterotic SO(32))
SO(32)というゲージ群を持つヘテロティック弦理論です。
閉じた弦のみを含み、10次元時空で定義されます。
ヘテロE8×E8(Heterotic E8×E8)
E8×E8というゲージ群を持つヘテロティック弦理論です。
閉じた弦のみを含み、10次元時空で定義されます。
素粒子の標準模型を導出しやすいという特徴があります。
M理論:6つの理論の統一
1995年以降、これら5つの超弦理論は、すべて11次元のM理論の異なる極限として理解されるようになりました。
M理論では、基本的な物体は1次元の弦ではなく、2次元の膜(membrane、メンブレーン)であると考えられています。
現在では、5つの超弦理論とM理論を合わせた6つの理論が、「双対性」(duality)という数学的な関係で互いにつながっていると考えられています。
10次元時空と余剰次元
なぜ10次元が必要なのか
超弦理論には、不思議な特徴があります。
理論が数学的に整合性を持つためには、時空が10次元でなければならないのです。
(M理論の場合は11次元)
私たちが普段認識している時空は、空間3次元(縦・横・高さ)に時間1次元を加えた4次元です。
では、残りの6次元はどこにあるのでしょうか?
余剰次元のコンパクト化
超弦理論の答えは、余剰次元は非常に小さくコンパクト化されているというものです。
これを理解するための例えとして、「ガーデンホースの比喩」がよく使われます。
遠くから見るとガーデンホース(散水用のホース)は1次元の線に見えますが、近づいてよく見ると、実は2次元の円筒形をしています。
ホースの長さ方向が目に見える大きな次元で、ホースの円周方向が小さく丸まった次元です。
同様に、私たちの宇宙も、3次元空間に見えますが、実は6次元の余剰次元が極めて小さく丸まっていて、私たちには観測できないだけかもしれないのです。
カラビ-ヤウ多様体
余剰次元がどのような形にコンパクト化されているかは、理論にとって重要です。
超弦理論では、余剰次元は「カラビ-ヤウ多様体」(Calabi-Yau manifold)という特殊な幾何学的形状をしていると考えられています。
カラビ-ヤウ多様体は、イタリアの数学者エウジェニオ・カラビ(Eugenio Calabi)が1950年代に予想し、中国系アメリカ人数学者シン=トゥン・ヤウ(Shing-Tung Yau、丘成桐)が1970年代に証明した、複雑な幾何学的構造です。
弦の振動は、このコンパクト化された6次元の形状によって制約を受け、その結果として特定の素粒子が生成されます。
超弦理論の主要な概念
開いた弦と閉じた弦
超弦理論には2種類の弦があります。
開いた弦(open string)
両端が自由になっているひもです。
端点がDブレーンと呼ばれる高次元の物体に固定されることもあります。
光子やグルーオンなど、重力子以外のゲージ粒子を記述します。
閉じた弦(closed string)
端と端がつながってループ状になっているひもです。
重力子を含むすべての粒子を記述します。
重要なのは、閉じた弦は必ず存在しなければならないが、開いた弦は存在しなくても理論として成立するということです。
Dブレーン
Dブレーン(D-brane)は、1995年にジョセフ・ポルチンスキーによって発見された、超弦理論に含まれる高次元の物体です。
Dブレーンは、様々な次元の広がりを持つことができます。
- D0ブレーン:0次元(点)
- D1ブレーン:1次元(線)
- D2ブレーン:2次元(面)
- D3ブレーン:3次元(立体)
…と続きます。
開いた弦の端点は、このDブレーン上にのみ存在できます。
一方、閉じた弦(重力子など)は、Dブレーンに依存せずに時空全体を移動できます。
双対性(Duality)
双対性とは、一見異なる2つの理論が、実は数学的に等価であるという関係のことです。
超弦理論には、いくつかの重要な双対性があります。
S双対性(S-duality)
理論の結合定数(相互作用の強さ)が弱い場合と強い場合を関係づけます。
T双対性(T-duality)
コンパクト化された次元の半径Rの理論と、半径1/Rの理論が等価であることを示します。
ミラー対称性(Mirror symmetry)
異なるカラビ-ヤウ多様体でコンパクト化された理論が等価になることがあります。
これらの双対性により、5つの超弦理論とM理論が互いにつながっていることがわかりました。
超弦理論の成果
超弦理論は、まだ実験的に検証されていませんが、理論物理学に多くの重要な貢献をしてきました。
ブラックホールのエントロピー
1996年、アンドリュー・ストロミンジャー(Andrew Strominger)とカムラン・ヴァファ(Cumrun Vafa)が、超弦理論を使ってブラックホールのエントロピー(乱雑さの度合い)を統計力学的に導出することに成功しました。
これは、超弦理論が重力の量子論として機能する証拠の一つとされています。
AdS/CFT対応の応用
AdS/CFT対応は、超弦理論の枠を超えて、さまざまな物理学の問題に応用されています。
- 量子色力学(QCD):クォークとグルーオンの相互作用の理解
- 凝縮系物理学:高温超伝導体や量子相転移の研究
- ブラックホール物理学:ブラックホールの情報パラドックスの研究
数学への貢献
超弦理論は、純粋数学の分野にも大きな影響を与えています。
- ミラー対称性の発見は、代数幾何学の新しい分野を切り開きました
- Dブレーンの研究は、ホモロジー理論の発展に貢献しました
- 弦理論の数学的構造は、トポロジー、表現論、数論などの分野に新しい知見をもたらしています
超弦理論の課題と批判
実験検証の困難さ
超弦理論の最大の課題は、実験的に検証することが極めて困難であることです。
弦の大きさは約10^-35メートル(プランク長)であり、これを直接観測するには10^16 TeV(テラ電子ボルト)という超高エネルギーが必要です。
現在最大の粒子加速器である大型ハドロン衝突型加速器(LHC)でも、到達できるエネルギーは10 TeV程度です。
弦を観測するには、LHCの1000兆倍のエネルギーが必要で、現在の技術では全く不可能です。
超対称性粒子の未発見
超弦理論は超対称性を前提としているため、通常の素粒子に対応する「超対称性粒子」の存在を予言します。
しかし、LHCでの探索にもかかわらず、現時点(2025年)で超対称性粒子は一つも発見されていません。
この事実は、超対称性が低エネルギーでは破れているか、あるいは超対称性が自然界に存在しない可能性を示唆しています。
予言の困難さ
超弦理論には、多数の可能な「真空」(基底状態)が存在し、それぞれが異なる物理法則を生み出す可能性があります。
この「ランドスケープ問題」により、理論が一意的な予言を行うことが難しくなっています。
どの真空が私たちの宇宙に対応するのかを決める原理がまだ見つかっていないのです。
理論の未完成
超弦理論は、まだ完全には完成していません。
理論の多くの側面は「摂動論」(小さな相互作用を仮定した近似計算)の範囲でしか定義されておらず、「非摂動論的」な性質は完全には理解されていません。
M理論に至っては、その基礎方程式さえまだ書き下されていません。
批判と反論
一部の物理学者は、超弦理論を厳しく批判しています。
主な批判:
- 実験検証できない理論は科学ではない
- 予言能力がない
- 多くの研究者が超弦理論に集中しすぎて、他のアプローチが軽視されている
支持者の反論:
- 理論的整合性が高く、数学的に非常に美しい
- 間接的な検証方法(宇宙論的観測など)が存在する可能性がある
- 数値シミュレーションによる検証も進んでいる
- たとえ最終的に自然界の理論でなかったとしても、数学や他の物理学分野への貢献は大きい
日本の貢献
日本の物理学者は、超弦理論の発展に大きく貢献してきました。
南部陽一郎(1921-2015)
弦理論の創始者の一人です。
1970年、ヴェネツィアーノの公式を「振動するひも」のモデルで説明し、弦理論の基礎を築きました。
2008年にノーベル物理学賞を受賞(自発的対称性の破れの発見)。
その他の日本人研究者
- 大栗博司:カリフォルニア工科大学教授、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)機構長
- 立川裕二:東京大学カブリIPMU教授
- その他、多くの日本人研究者が超弦理論の最前線で活躍しています
日本では、スーパーコンピュータ「京」を使った超弦理論の数値シミュレーションなども行われており、理論の検証に向けた研究が進められています。
超弦理論の現在と未来
数値シミュレーション
実験検証が困難な超弦理論を研究する新しいアプローチとして、スーパーコンピュータを使った数値シミュレーションが進められています。
日本の研究グループは、スーパーコンピュータ「京」を使って、超弦理論の「タイプIIB行列模型」という数学的モデルによるシミュレーションを実施し、時空がどのように創発するかを研究しています。
宇宙論への応用
超弦理論は、初期宇宙の研究にも応用されています。
- ブレーン宇宙論:私たちの宇宙が高次元空間に浮かぶDブレーンの上にあるという考え
- エキピロティック宇宙論:ビッグバンが異なるブレーン同士の衝突によって起こったとするモデル
量子重力の理解
超弦理論は、ブラックホールの情報パラドックスなど、量子重力に関する謎の解明に貢献しています。
今後の課題
超弦理論が真に「万物の理論」となるためには、以下の課題を克服する必要があります。
- M理論の完成:11次元M理論の基礎方程式を書き下す
- 真空の選択:無数にある真空の中から、私たちの宇宙に対応するものを特定する
- 実験検証:間接的であれ、何らかの実験的証拠を見つける
- 予言の精密化:観測可能な物理量を正確に予言する
まとめ
超弦理論は、物質の最小単位を「点」ではなく「ひも」として扱うことで、量子力学と一般相対性理論を統一し、自然界のすべての力を説明しようとする理論です。
超弦理論の要点:
- 基本要素は約10^-35メートルの極小の「ひも」
- ひもの異なる振動モードが異なる素粒子として現れる
- 理論の整合性のために10次元時空が必要(M理論は11次元)
- 5つのバージョン(タイプI、IIA、IIB、ヘテロSO(32)、ヘテロE8×E8)が存在
- 1995年に11次元のM理論として統一された
- 重力を自然に含む唯一の量子理論
- 万物の理論(Theory of Everything)の最有力候補
歴史:
- 1968-1970年:弦理論の誕生(ヴェネツィアーノ、南部陽一郎)
- 1971年:超対称性の導入(ラモン、ヌヴォ、シュワルツ)
- 1974年:重力との関係発見(シャーク、シュワルツ)
- 1984-1985年:第一次超弦理論革命(グリーン-シュワルツ)
- 1995年:第二次超弦理論革命(M理論、Dブレーン)
- 1997年:AdS/CFT対応(マルダセナ)
課題:
- 実験検証が極めて困難
- 超対称性粒子が未発見
- 理論が完全には完成していない
- 一意的な予言が難しい
超弦理論は、まだ完成しておらず、実験的検証も得られていませんが、量子重力や初期宇宙の理解、さらには純粋数学にまで広範な影響を与えている、現代物理学の最前線の理論です。
この理論が最終的に自然界を正しく記述しているかどうかはまだわかりませんが、宇宙の根源的な仕組みを理解しようとする人類の知的挑戦として、今後も研究が続けられていくでしょう。
(最終更新日:2025年2月10日)
参考情報
- Wikipedia「超弦理論」 – 日本語での包括的な解説
- 計算基礎科学連携拠点「スーパーコンピュータを使った超弦理論の数値シミュレーションによる時空創発の研究」 – 日本での数値シミュレーション研究
- Kavli IPMU「超弦理論」 – 東京大学カブリIPMUによる解説
- Wikipedia “Superstring theory” – 英語版の詳細な解説
- Wikipedia “History of string theory” – 超弦理論の歴史
- PNAS “Recent developments in superstring theory” – 第二次超弦理論革命の解説論文(1998年)
- Britannica “String theory” – ブリタニカ百科事典による解説
- リクルートワークス研究所「21世紀の宇宙の数学、超弦理論」大栗博司氏インタビュー – わかりやすい日本語での解説

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