11次元とは?M理論と超弦理論が描く宇宙の真の姿を徹底解説

私たちは縦・横・高さの3次元空間に時間を加えた4次元時空で生きています。
しかし、現代物理学の最先端理論である超弦理論とM理論によれば、この宇宙には実は11次元が存在する可能性があります。

この記事では、11次元という概念がどのように生まれたのか、なぜ物理学者たちはこの理論に注目しているのかを、中学生でも理解できるようわかりやすく解説します。

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次元とは何か

まず、次元という概念を整理しましょう。

私たちが認識できる次元

1次元(線):
前後の方向のみがある世界です。
点が一方向に移動すると線になります。

2次元(面):
縦と横の2方向がある平面の世界です。
紙の表面や画面上の絵がこれにあたります。

3次元(立体):
縦・横・高さの3方向がある空間です。
私たちが日常的に認識している世界がこれです。

4次元(時空):
3次元空間に時間を加えたものです。
アインシュタインの相対性理論では、空間と時間は切り離せない「時空」として扱われます。

高次元の概念

5次元以上の高次元は、日常的に認識することはできません。
しかし、数学的には定義可能であり、物理学の理論では重要な役割を果たします。

超弦理論とは

11次元を理解するには、まず超弦理論について知る必要があります。

物質の最小単位

従来の物理学では、物質の最小単位は「点」のような素粒子(電子、クォークなど)だと考えられていました。
しかし超弦理論では、これらの素粒子は実は極めて小さな「ひも」(弦)であると考えます。

この「ひも」の長さは、プランク長と呼ばれる約10の-35乗メートル程度です。
これは原子の直径(10の-8乗メートル)と比べても、想像を絶するほど小さいサイズです。

ひもの振動が素粒子を生む

同じひもでも、振動の仕方によって異なる素粒子として観測されます。

ひもが特定の振動をすると電子として振る舞います。
別の振動をすると光子(光の粒子)として振る舞います。
閉じたひも(輪っかの形)の特定の振動は重力子(重力を伝える粒子)になります。

つまり、自然界に存在するすべての素粒子は、ひとつの「ひも」の異なる振動モードにすぎないという考え方です。

なぜひも理論が必要なのか

現代物理学には大きな課題がありました。

一般相対性理論(重力の理論)と量子力学(ミクロな世界の理論)を統一できなかったのです。
点粒子を前提とした理論では、計算に無限大が現れてしまい、理論が破綻していました。

超弦理論では、点ではなくひもを基本単位とすることで、この無限大の問題を解決できる可能性があります。
重力を含むすべての力を統一的に説明できる「究極の理論(万物の理論)」の候補として注目されています。

超弦理論の5つのバージョン

超弦理論には、5つの異なるバージョンが存在します。

5つの理論

タイプI:
開いたひも(両端がある)と閉じたひも(輪っか)の両方を含む理論です。
SO(32)というゲージ群を持ちます。

タイプIIA:
閉じたひものみの理論です。
ひもの方向性がなく、左右対称です。

タイプIIB:
閉じたひものみの理論です。
ひもの方向性があり、左右非対称です。

ヘテロティック弦理論SO(32):
異なる次元を組み合わせたハイブリッド理論です。
SO(32)というゲージ群を持ちます。

ヘテロティック弦理論E8×E8:
ヘテロティック理論のもうひとつのバージョンです。
E8×E8という特殊なゲージ群を持ちます。

すべて10次元を必要とする

これら5つの超弦理論は、すべて理論の整合性を保つために10次元時空を必要とします。
空間が9次元、時間が1次元で合計10次元です。

なぜ10次元が必要なのかは、ひもの量子力学的な振る舞いを数学的に記述すると、10次元でなければ矛盾が生じるためです。

M理論の登場

1995年、理論物理学者エドワード・ウィッテンが、超弦理論の新たな展開を提示しました。
それがM理論です。

5つの理論を統合する

ウィッテンは、5つの超弦理論が実は互いに関連しており、より根源的な11次元の理論の異なる側面にすぎないことを示唆しました。
この根源的な理論がM理論です。

M理論の「M」は、「Mother(母)」「Membrane(膜)」「Mystery(謎)」など、様々な解釈があります。
正式な定義はまだ確立されていません。

11次元への拡張

M理論は、10次元の超弦理論にもうひとつ次元を加えた11次元時空で定義されます。
空間が10次元、時間が1次元で合計11次元です。

M理論では、基本的な構成要素は1次元のひもではなく、2次元の膜(メンブレーン)や5次元の膜など、様々な次元を持つ「ブレーン」です。

双対性による統一

5つの超弦理論は、M理論から見ると「双対性」によって互いに結びついています。

S双対性:
ひもの結合が強い領域と弱い領域を関係付けます。

T双対性:
空間の大きい領域と小さい領域を関係付けます。

U双対性:
S双対性とT双対性を統合したものです。

これらの双対性により、異なる超弦理論は実は同じ理論の異なる極限状態を記述していることがわかりました。

なぜ11次元なのか

11次元という数字は、どのように導き出されたのでしょうか。

数学的必然性

超弦理論で光子(質量ゼロの粒子)を正しく記述するには、特定の次元数が必要です。

光子のエネルギーをひもの量子ゆらぎとひもの振動エネルギーに分解して計算すると、数学的に整合性が取れるのは10次元のみです。
この計算にはリーマンのゼータ関数という高度な数学が使われます。

M理論では、超弦理論の結合定数(ひもの相互作用の強さ)を大きくすると、10次元理論から11次元理論に移行することが示されました。
11次元目は、ひもの結合定数に対応する次元と考えられています。

11次元超重力理論

M理論の低エネルギー極限では、11次元超重力理論が現れます。

11次元超重力理論は、1970年代に提唱されていた理論です。
この理論に登場する場は、重力場、グラビティーノ場、3形式場のみで、10次元の超重力理論よりも単純です。

実は、超対称性を持つ超重力理論の最高次元は11次元なのです。
12次元以上では、理論的に超対称性を維持できません。

余剰次元はどこにあるのか

私たちは3次元空間しか認識できませんが、残りの7次元はどこに消えたのでしょうか。

コンパクト化の概念

余剰次元は、極めて小さく「丸まっている」(コンパクト化されている)と考えられています。

身近な例で説明しましょう。
遠くから見たホースは1次元の線に見えますが、近づくともうひとつの次元(円周方向)があることがわかります。
この円周がとても小さければ、遠くからは認識できません。

余剰次元も同様に、プランク長(10の-35乗メートル)程度の極小スケールで丸まっているため、私たちには観測できないと考えられています。

カラビ・ヤウ多様体

余剰次元の「丸まり方」を記述する数学的構造が、カラビ・ヤウ多様体です。

カラビ・ヤウ多様体は、複雑な幾何学的形状を持つ6次元空間です。
その形状は無数に存在し、どの形状を選ぶかによって、観測される物理法則が変わってきます。

例えば、素粒子の質量や電荷、自然界に存在する力の強さなどは、カラビ・ヤウ多様体の形状に依存する可能性があります。

大きな余剰次元の可能性

一部の理論では、余剰次元がプランク長よりも大きい可能性も検討されています。

例えば、数センチメートル程度の大きさの余剰次元が存在し、重力のみがその次元にアクセスできるという「大きな余剰次元」のシナリオもあります。
これが事実なら、将来の実験で検証できるかもしれません。

M理論の重要性

M理論は、現代物理学において極めて重要な位置を占めています。

究極の統一理論への道

M理論は、自然界の4つの基本的な力(重力、電磁気力、強い力、弱い力)をすべて統一的に説明できる可能性を持っています。

現在の物理学では、重力以外の3つの力は「標準模型」で記述できますが、重力だけは一般相対性理論で別に扱われています。
M理論は、これらすべてを統一する「万物の理論(Theory of Everything)」の最有力候補です。

ブラックホールの謎を解く

M理論は、ブラックホールのエントロピー(無秩序さの度合い)を正しく説明できることが示されています。

ブラックホールの表面積に比例するエントロピーを、Dブレーン(M理論に登場する膜状の構造)上の弦の状態を数え上げることで導き出せるのです。
これは、M理論が正しい方向性を持っていることを示す重要な成果です。

宇宙誕生の解明

M理論は、宇宙の誕生にも新しい視点を提供します。

ブレーン宇宙論では、私たちの宇宙は高次元空間に浮かぶ3次元のブレーン(膜)であり、別のブレーンとの衝突がビッグバンを引き起こしたという考え方もあります。

量子重力理論の構築

一般相対性理論と量子力学を統合した「量子重力理論」の構築は、物理学最大の課題のひとつです。

M理論は、その解決策を提供する可能性があります。
ひもやブレーンという拡がりを持つ物体を基本とすることで、点粒子で生じていた無限大の問題を回避できるのです。

M理論の課題と限界

M理論は魅力的ですが、現時点では多くの課題を抱えています。

完全な定式化がない

M理論は、まだ完全には定式化されていません。

低エネルギー極限では11次元超重力理論として記述できますが、高エネルギー領域での正確な方程式はわかっていません。
現在は、様々な極限状況での近似理論しか得られていない状態です。

実験的検証が困難

M理論を直接検証する実験は、現在の技術では不可能です。

プランク長スケールの現象を観測するには、ブラックホールができるほどの超高エネルギーが必要とされます。
現在の最大の加速器である大型ハドロン衝突型加速器(LHC)でも、到底及びません。

予言の曖昧さ

カラビ・ヤウ多様体の形状が無数に存在するため、M理論から明確な予言を導くことが困難です。

どの形状が正しいのかを決める原理がまだわかっていないため、理論の予測力が限られています。

超対称性粒子の未発見

M理論は超対称性を前提としており、既知の素粒子に対応する超対称性粒子の存在を予言します。

しかし、LHCでの実験でも、これまで超対称性粒子は発見されていません。
もし存在するとしても、予想よりずっと重い(高エネルギーの)粒子である可能性があります。

検証への試み

完全な検証は困難ですが、M理論の影響を間接的に観測しようとする試みがあります。

LHCでの探索

大型ハドロン衝突型加速器(LHC)では、以下のような現象を探索しています。

余剰次元の存在を示す証拠として、特定のエネルギー領域でのミニブラックホールの生成を探しています。
超対称性粒子の発見は、M理論を支持する重要な証拠となります。
重力が他の力に比べて極端に弱い理由を、余剰次元の存在で説明できるかもしれません。

宇宙論的観測

宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の精密観測から、宇宙初期の情報を得られます。

ブレーン衝突による宇宙誕生のシナリオが正しければ、CMBに特定のパターンが残っている可能性があります。
現在、プランク衛星などによる詳細な観測が進められています。

数値シミュレーション

スーパーコンピュータを使った数値シミュレーションも重要です。

日本の計算基礎科学連携拠点では、「富岳」などを使ってM理論の数値シミュレーションが行われています。
時空の自発的な創発(次元の分離)や、宇宙の膨張が再現できるか研究が進められています。

11次元の世界をイメージする

11次元は直接イメージすることはできませんが、類推によって理解を深めることができます。

紙の厚みのたとえ

A4の紙を考えてみましょう。

遠くから見ると縦と横の2次元に見えますが、実際には約0.1ミリメートルの厚みがある3次元の物体です。
もしこの厚みが電子よりも小さいプランク長まで圧縮されたら、どんな精密な機器でも2次元のシートとしか認識できなくなります。

余剰次元も同じ発想です。
空間の6~7次元がプランク長スケールで折り畳まれているため、私たちには認識できないのです。

蟻と人間のたとえ

細いホースの表面を歩く蟻を想像してください。

蟻は前後の方向(ホースの長さ方向)と、円周方向の2次元を移動できます。
しかし、円周が非常に小さければ、遠くから見ている人間には、蟻は1次元の線上を移動しているように見えます。

私たちも、11次元空間の中で、一部の次元が極小にコンパクト化されているため、4次元時空しか認識できていないのかもしれません。

関連する概念

M理論を理解するには、いくつかの関連概念を知っておくと役立ちます。

Dブレーン

Dブレーン(D-brane)は、開いたひもの端点が存在できる空間領域です。

Dブレーンは様々な次元を持ちます。
D0ブレーンは0次元(点)、D1ブレーンは1次元(ひも)、D2ブレーンは2次元(膜)といった具合です。

Dブレーンの発見により、超弦理論の理解は大きく進展しました。

ホログラフィック原理

ホログラフィック原理は、高次元の物理現象が、より低次元の境界面上の情報で完全に記述できるという考え方です。

AdS/CFT対応として知られる具体例では、5次元の重力理論が4次元の場の理論と等価であることが示されています。
これは、M理論の研究から生まれた重要な発見です。

マルチバース(多元宇宙)

カラビ・ヤウ多様体の形状が無数にあることから、無数の異なる物理法則を持つ宇宙が存在する可能性が示唆されます。

私たちの宇宙は、その中のひとつにすぎないかもしれません。
これをマルチバース(多元宇宙)の考え方と呼びます。

現代物理学における位置づけ

M理論は、現代物理学でどのように評価されているのでしょうか。

理論物理学の最前線

M理論は、理論物理学の最も活発な研究分野のひとつです。

世界中の多くの理論物理学者が、M理論の定式化、数学的性質の解明、実験的検証方法の開発に取り組んでいます。
プリンストン高等研究所、カリフォルニア工科大学、東京大学などが主要な研究拠点です。

数学への影響

M理論は、純粋数学にも大きな影響を与えています。

カラビ・ヤウ多様体の研究、ミラー対称性の発見、結び目理論への応用など、M理論から生まれた数学的概念は数多くあります。
物理学と数学の境界領域で、新しい発見が続いています。

批判と論争

M理論には批判的な見解もあります。

実験的検証が困難であること、予言の曖昧さ、完全な定式化がないことなどが指摘されています。
一部の物理学者は、M理論は科学というより数学に近いと主張しています。

しかし、多くの研究者は、M理論が提供する統一的な枠組みの価値を認めており、研究は継続されています。

将来の展望

M理論の研究は、今後どのように発展していくのでしょうか。

完全な定式化への挑戦

最大の課題は、M理論の完全な定式化です。

様々な極限での近似理論を統合し、すべてのエネルギー領域で有効な理論を構築することが目標です。
行列模型やAdS/CFT対応など、様々なアプローチが試みられています。

実験的手がかり

LHCでの実験結果、宇宙論的観測、重力波観測などから、M理論の間接的な証拠が得られる可能性があります。

超対称性粒子の発見、余剰次元の痕跡、原始重力波のパターンなどが、重要な手がかりとなるでしょう。

宇宙誕生の解明

M理論は、宇宙誕生のメカニズム解明に貢献する可能性があります。

ブレーン宇宙論やサイクリック宇宙論など、従来のビッグバン理論を超える新しい宇宙論モデルが提案されています。

量子コンピュータとの融合

将来的には、量子コンピュータを使ってM理論の複雑な計算を実行できるかもしれません。

カラビ・ヤウ多様体の分類、弦の散乱振幅の計算など、従来のコンピュータでは困難だった問題に取り組めるでしょう。

まとめ

11次元の世界は、私たちの日常的な感覚をはるかに超えた概念です。

超弦理論の5つのバージョンを統合するM理論は、11次元時空を必要とします。
余剰次元はプランク長スケールでコンパクト化されており、私たちには観測できません。
M理論は、すべての力を統一する究極の理論の候補として注目されています。

しかし、完全な定式化はまだ得られておらず、実験的検証も困難です。

それでも、M理論が提供する統一的な枠組みは、宇宙の根本原理を理解する上で重要な手がかりとなっています。
ブラックホールの性質、宇宙の誕生、素粒子の性質など、様々な謎に新しい視点を提供しています。

11次元の世界は、まだ謎に包まれています。
しかし、その謎を解き明かそうとする挑戦こそが、科学の醍醐味なのです。

私たちが日常的に経験している4次元時空は、より大きな11次元宇宙のほんの一部にすぎないのかもしれません。
その可能性を探求し続けることで、いつか宇宙の真の姿が明らかになる日が来るでしょう。

参考情報

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